ぴんぽん、とインターホンが鳴る音が遠くに聞こえる。誰かが出るだろう、と無視していたら、もう一度、二度と鳴った。
濡れた髪の毛先を確認しつつ、しつこく鳴るインターホンに意識を向ける。
「誰もいないのかなぁ」
なんだよ、ここ二階だぞ。階下に行くのが面倒じゃないか。宅配便なら不在票を置いて行って欲しい。というか、時間指定をしろ、と心の中で毒付いて、首にタオルを掛けたまま、鳴り止まぬインターホンを止めるべく、玄関に向かう。
「お待たせしま……あっ、」
「あっ」
誰かを確認せず開けたドアの向こうには、ネムがいた。
(えっ、なんでネムちゃんが?インターホン鳴らしすぎじゃない?)
「ごめんなさい、たまたま近くに来たものだから寄ってみたんだけど、忙しかった?」
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