eatachurros
DONE寝ぼけた真が柏さんに甘えた夜の話もう寝るとしようリビングの照明はすでに落ち、寝室にも深い静けさが漂っている。
ベッドの上で、柏木は仰向けのまま目を閉じていた。
眠気はとうに遠のいている。
昼間の会議で張り詰めていた神経がまだ身体の奥に残っていて、ただ隣の穏やかな寝息をぼんやりと聞いていた。
ふと、気配が揺れる。
掛け布団がかすかにずれて、ふわりと温もりが近づいてきた。
寝返りかと思った、その瞬間──
「……ん……」
小さく喉を鳴らす声。
「起きたのか」
珍しく先に寝落ちていた恋人が、すり寄るように近づいてきていた。
ふわりと乱れた髪が柏木の頬に触れ、ひんやりとした指先が胸元を探るように伸びてくる。
「……柏木、さ…ん…」
「どうした」
寝ぼけているのか、掠れた小さな声。
1018ベッドの上で、柏木は仰向けのまま目を閉じていた。
眠気はとうに遠のいている。
昼間の会議で張り詰めていた神経がまだ身体の奥に残っていて、ただ隣の穏やかな寝息をぼんやりと聞いていた。
ふと、気配が揺れる。
掛け布団がかすかにずれて、ふわりと温もりが近づいてきた。
寝返りかと思った、その瞬間──
「……ん……」
小さく喉を鳴らす声。
「起きたのか」
珍しく先に寝落ちていた恋人が、すり寄るように近づいてきていた。
ふわりと乱れた髪が柏木の頬に触れ、ひんやりとした指先が胸元を探るように伸びてくる。
「……柏木、さ…ん…」
「どうした」
寝ぼけているのか、掠れた小さな声。
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CAN’T MAKE8柏真。前回の続き。今回は真島視点。ほぼ自分の書いた作品のセルフパロみたいなお話になってしまっています…。ピクシブのほうの『本編軸』とあるものをどうぞご覧頂いてから読んで頂ければ幸いです。俤柄杓の入った水桶を片手に、舗装されていない土の道を歩く。昨夜の大雨で洗われた緑は、色鮮やかに、初夏の日差しにキラキラと輝いていた。御影石の並ぶそこは霊園。線香の匂いが、少し落ち着く。ここには生者の気配がしない。
二年前まで、自分が訪れていたサバイバーはそんなところだった。世間から名を隠した男が、ひっそりとやっているバー。生き残った者、という賛歌をその店の名に込めながらも、それを作った人は、殊更それを言いふらさず、静かな佇まいをしていた。店の中には彼の気配で満ちていた。テリトリー、というのだろうか。強固な守りのまじないすらかけられているような、そんな安心する空間。初めて訪れた時より、良い店だ、と思った。
8836二年前まで、自分が訪れていたサバイバーはそんなところだった。世間から名を隠した男が、ひっそりとやっているバー。生き残った者、という賛歌をその店の名に込めながらも、それを作った人は、殊更それを言いふらさず、静かな佇まいをしていた。店の中には彼の気配で満ちていた。テリトリー、というのだろうか。強固な守りのまじないすらかけられているような、そんな安心する空間。初めて訪れた時より、良い店だ、と思った。
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CAN’T MAKE8柏真。サバイバーのマスター視点。SACRED『今年も各地で、七夕飾りが飾り付けられています。』
商店街やファッションビル、市役所などに飾られたそれをテレビは画面いっぱいに煽りのアングルで映し出す。幼稚園児が、笹に折り紙で作った飾りや一生懸命書いた可愛らしい願いごとの短冊をつるしている。
『今年こそ、景気が上向くようになってほしいですね。』
そうアナウンサーが、ニュースを〆た。ぱちん、とテレビを消す。そろそろ七夕の日が終わる。二人でキッチンの食卓に腰かけた午後十一時前。目を伏せてスマホを確認してから、また置いた真島。上の空な様子に、声をかける。
「早く寝たほうがいいんじゃないか。」
「そうやな。」
頷いた後も、やはり何か気になるのか、スマホを取り上げ何度かスワイプした。目は文字を追っているが、内容はまったく頭に入っていないような顔。ここのところ、真島はずっとこんな感じだ。
3142商店街やファッションビル、市役所などに飾られたそれをテレビは画面いっぱいに煽りのアングルで映し出す。幼稚園児が、笹に折り紙で作った飾りや一生懸命書いた可愛らしい願いごとの短冊をつるしている。
『今年こそ、景気が上向くようになってほしいですね。』
そうアナウンサーが、ニュースを〆た。ぱちん、とテレビを消す。そろそろ七夕の日が終わる。二人でキッチンの食卓に腰かけた午後十一時前。目を伏せてスマホを確認してから、また置いた真島。上の空な様子に、声をかける。
「早く寝たほうがいいんじゃないか。」
「そうやな。」
頷いた後も、やはり何か気になるのか、スマホを取り上げ何度かスワイプした。目は文字を追っているが、内容はまったく頭に入っていないような顔。ここのところ、真島はずっとこんな感じだ。
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PROGRESSメール軸。前回の続きです。長編のなかで、上手くつながらない部分があったので切ったエピソードです。『カフェー』をめぐるエトセトラ(仮)後編電話をかけると、解決してもうたか?と真島は、この間の『カフェー』のオーナーの話を持ち出した。
「いや、まだだが…。」
「せやったら、俺連れていってくれや。」
ええ案あるねや、とやけに自信たっぷりに言われ、他に代案もなかった柏木は、オーナーの元へ真島を連れていくことにした。
『カフェー』のオーナーとの約束をとりつけた当日、真島は、本当に“変装”してやってきた。白のドレスシャツの上に、ボウタイ、黒のズボン、そして黒のドレッシーなダブルの細身のジャケットを羽織っていた。今、というより、少し前の黒服が着ていた模範的な服装のようにも見えた。
「ひひっ、見慣れんやろ。」
そう言って長くくくってみせた髪の毛を指でつまんでみせる。
9365「いや、まだだが…。」
「せやったら、俺連れていってくれや。」
ええ案あるねや、とやけに自信たっぷりに言われ、他に代案もなかった柏木は、オーナーの元へ真島を連れていくことにした。
『カフェー』のオーナーとの約束をとりつけた当日、真島は、本当に“変装”してやってきた。白のドレスシャツの上に、ボウタイ、黒のズボン、そして黒のドレッシーなダブルの細身のジャケットを羽織っていた。今、というより、少し前の黒服が着ていた模範的な服装のようにも見えた。
「ひひっ、見慣れんやろ。」
そう言って長くくくってみせた髪の毛を指でつまんでみせる。
PSYCHO
DOODLE十一様のお誕生日に(勝手に)捧げます。初書き柏真につきお目汚し申し訳ありません。
月見で一服予想通り長引いた幹部会が終わり、疲れた身体に鞭打って漸く事務所に戻る。
机に残っている書類から目を背け、少し一息つこうと屋上に出てみると既に来ていた先客が丁度煙草に火をつけたところだった。
「お。お疲れさん」
「あぁ……お前も来てたのか」
「西田から逃げてきたわ。休憩や」
久しぶりに顔を見た先客は鮮やかな真紅のシャツと黒のスーツを纏い、普段の派手さはなりを潜めている。
商談帰りだろうその見慣れぬ格好に視線が奪われそうになるが、素知らぬ風を装い隣に並ぶ。律儀にこちらが咥えた煙草へ火をつけようとするのを目線で制した。
「気ぃ回すな。俺も休憩だ」
「そっちは相変わらずみたいやなぁ、眉間に皺寄ってんで」
「まぁな……面倒臭いことしか起こりゃしねぇ」
1180机に残っている書類から目を背け、少し一息つこうと屋上に出てみると既に来ていた先客が丁度煙草に火をつけたところだった。
「お。お疲れさん」
「あぁ……お前も来てたのか」
「西田から逃げてきたわ。休憩や」
久しぶりに顔を見た先客は鮮やかな真紅のシャツと黒のスーツを纏い、普段の派手さはなりを潜めている。
商談帰りだろうその見慣れぬ格好に視線が奪われそうになるが、素知らぬ風を装い隣に並ぶ。律儀にこちらが咥えた煙草へ火をつけようとするのを目線で制した。
「気ぃ回すな。俺も休憩だ」
「そっちは相変わらずみたいやなぁ、眉間に皺寄ってんで」
「まぁな……面倒臭いことしか起こりゃしねぇ」
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PROGRESSメール軸。その後のお話、つづきの長編にいれられなかったシーン。前半です。柏木視点。『カフェー』をめぐるエトセトラ(仮)前編 ひょんなことから真島とメールのやり取りをするようになり、数か月。同僚ともいえない、かといって純粋な友人関係とも言い切れない距離感のまま、宅飲みまでする仲になっていた。
今日も今日とて、柏木の家で他愛無い話をしながら酒を飲み交わしていた折、こちらの携帯電話が激しく鳴った。ちらりとディスプレイをみやった後、着信を切ったが、続けて三度電話が鳴った。向かいに座る真島に、悪い、といって立ち上がる。携帯電話で折り返し、相手に一言二言言葉を返した後、テーブルに戻った。
「なんや、アクシデントか? 俺、帰ろか。」
「いや…。」
と首を振る。せやけど、と真島が遠慮した風に言うのに、
「もう長いこと、のびのびになってる問題なんだ。」
5478今日も今日とて、柏木の家で他愛無い話をしながら酒を飲み交わしていた折、こちらの携帯電話が激しく鳴った。ちらりとディスプレイをみやった後、着信を切ったが、続けて三度電話が鳴った。向かいに座る真島に、悪い、といって立ち上がる。携帯電話で折り返し、相手に一言二言言葉を返した後、テーブルに戻った。
「なんや、アクシデントか? 俺、帰ろか。」
「いや…。」
と首を振る。せやけど、と真島が遠慮した風に言うのに、
「もう長いこと、のびのびになってる問題なんだ。」
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MEMO2023年クリスマスネタ。推敲間に合わなかったので、ちょっと文章が拙いですがUP。(明日の夜くらいにまた書き直したのをUPするかもしれません) あれよあれよといううちに8の発売がせまってるので、7に続く本編軸用にとっておいたネタ(書いてなかったネタ)を小出しにするようにしました。いろはちゃんは知っている(仮)真島にもらった真珠のカフスをつけて出勤すると、それを目敏く見つけたいろはが、店に入ってくるなり、
「なになにそれぇ、おしゃれしちゃって!」
と笑顔でカウンターに近づいてきた。見せて、というので腕をあげてやると、ふふーん、とこちらの顔をうかがうように笑ってから、この後デートかな?と目を細める。
「まぁ、そんなところだ。」
「わー、あっつい!ごちそうさま!」
そう笑ってから、いろははバックヤードに荷物を置きにいった。こちらは、引き続きクリスマスパーティー用の料理の仕込みにかかった。今年も春日達が、ここでパーティーをするというので、25日は貸し切りだった。チキンをスパイスに漬け込む間、腕まくりをするので、カフスをはずす。どこかに落としてしまわないよう、ズボンのポケットに入れた。
6128「なになにそれぇ、おしゃれしちゃって!」
と笑顔でカウンターに近づいてきた。見せて、というので腕をあげてやると、ふふーん、とこちらの顔をうかがうように笑ってから、この後デートかな?と目を細める。
「まぁ、そんなところだ。」
「わー、あっつい!ごちそうさま!」
そう笑ってから、いろははバックヤードに荷物を置きにいった。こちらは、引き続きクリスマスパーティー用の料理の仕込みにかかった。今年も春日達が、ここでパーティーをするというので、25日は貸し切りだった。チキンをスパイスに漬け込む間、腕まくりをするので、カフスをはずす。どこかに落としてしまわないよう、ズボンのポケットに入れた。
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PROGRESSメール軸柏真、なれそめ間の小ネタ。真島視点。春くらい、前回の傘のネタ(六月)より前のこと。この視界とも二十年の付き合いで、普段はあまり隻眼での不自由は感じない。免許の更新だとか、それに関わる書類事。あとは、バッターボックスに立った時だとか、両目でなくてはならない事、と世間で決められているとなればちょくちょく困ることはある。
だが最近片目で困る時、というのが出てきた。目にゴミが入った時だ。そんな事、と笑う莫れ。季節性の花粉や黄砂が原因で目を掻いてしまった時は最悪である。おそらく今回も睫毛が目に入ってしまったのだと思うが、鏡を見てとろうとしても、瞼を指であげると視界が滲む。単焦点の困りどころだった。
「………。」
涙袋の周りを指でなぞってみても取れなくて、むぅ、と唸る。チクチクとする感覚はあるが、どこにゴミが入っているか、それとも何か出来物でもあるのかも分からなかった。瞼をこする。
3565だが最近片目で困る時、というのが出てきた。目にゴミが入った時だ。そんな事、と笑う莫れ。季節性の花粉や黄砂が原因で目を掻いてしまった時は最悪である。おそらく今回も睫毛が目に入ってしまったのだと思うが、鏡を見てとろうとしても、瞼を指であげると視界が滲む。単焦点の困りどころだった。
「………。」
涙袋の周りを指でなぞってみても取れなくて、むぅ、と唸る。チクチクとする感覚はあるが、どこにゴミが入っているか、それとも何か出来物でもあるのかも分からなかった。瞼をこする。
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DONEピクシブに載せてある『お友達から始めましょう』(ここの、酔いどれメール軸)の柏真。春夏秋冬柏真企画、雨のお題より。イニシャル『差出人:柏木さん
件名:傘
日時:2003/06/23 13:47
本文:傘、弁償したい。この時期、ないと困るだろ。
今夜、飯でもどうだ。』
柏木からきたメールに、保存のクリップをつけてから、返信した。
『気にせんでええって言うたのに。でも、飯は行かせてもらいます👌』
OKと打って画面にでた絵文字を入れて送ったら、柏木からすぐに、じゃあ七時に、と返信がきた。それに、
『いつものところで待っとる💛』
と送ると、了解、と固い返事がきた。
(まぁ、まだ夜中のテンションやないか。)
今はまだ昼間。柏木とひょんなことからメールのやり取りをするようになってから、かれこれ四か月経つ。以前のことを思えば、昼間にもこうして仕事の合間をぬってメールをする仲になったことが喜ばしい。あれから、色々小さな事件らしきものが積み重なり、今は時間が合えば夕飯を食べに行くこともあるまでに進展した。
3141件名:傘
日時:2003/06/23 13:47
本文:傘、弁償したい。この時期、ないと困るだろ。
今夜、飯でもどうだ。』
柏木からきたメールに、保存のクリップをつけてから、返信した。
『気にせんでええって言うたのに。でも、飯は行かせてもらいます👌』
OKと打って画面にでた絵文字を入れて送ったら、柏木からすぐに、じゃあ七時に、と返信がきた。それに、
『いつものところで待っとる💛』
と送ると、了解、と固い返事がきた。
(まぁ、まだ夜中のテンションやないか。)
今はまだ昼間。柏木とひょんなことからメールのやり取りをするようになってから、かれこれ四か月経つ。以前のことを思えば、昼間にもこうして仕事の合間をぬってメールをする仲になったことが喜ばしい。あれから、色々小さな事件らしきものが積み重なり、今は時間が合えば夕飯を食べに行くこともあるまでに進展した。
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INFO企画のお知らせです。よろしくお願いいたします。春夏秋冬柏真新作の気配と情報が出始めてワクワクドキドキかつ、キャラのリストラなどないか不安に駆られている昨今ですが…そんな中、いつでも、いつまでも柏真が見たい!ということで、『春夏秋冬、柏真の生活のワンシーンを描く』企画を、来年の春にかけて、柏真の森の住人たちでぼちぼちやっていきたいと思っています。(別名:少しでも作品を増やして自給自足の生活を安定させようという企画)
今回は前哨戦、梅雨の季節にちなんで『雨』という漠然としたお題でやってみました。それぞれの住人の世界観の出た作品となっていることと思います。
この企画に関する作品は、『#春夏秋冬柏真』こちらのハッシュタグをつけたものを作品に付与してUPする予定です。普段表現している世界観と続き物の作品、というものだけでなく、実験的な二人であったり、まだこれから発展する世界の二人であったり、さまざまな物語の発端や、試作のようなものもUPされる予定です。どうか温かく見守って頂ければ幸いです。
1978今回は前哨戦、梅雨の季節にちなんで『雨』という漠然としたお題でやってみました。それぞれの住人の世界観の出た作品となっていることと思います。
この企画に関する作品は、『#春夏秋冬柏真』こちらのハッシュタグをつけたものを作品に付与してUPする予定です。普段表現している世界観と続き物の作品、というものだけでなく、実験的な二人であったり、まだこれから発展する世界の二人であったり、さまざまな物語の発端や、試作のようなものもUPされる予定です。どうか温かく見守って頂ければ幸いです。
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MOURNINGさなぎのつづき、エンディング。ここで一旦完結となります。真島視点から始まります。ここまで長らくのお付き合い、どうも有難うございました。たくさんの絵文字スタンプ、応援絵文字など、どうも有難うございます!大変励みになっております!さなぎのつづき8(終)ずっと見るだけになっていた。この街に沿うように姿を変えていったあの人を。
昔から、あの人を知っている、誰も知らないだろうあの人を知っている、その優越感だけで見るだけになっていた。
人も物も世界も変わっていってしまうけれど、彼の匂い。男っぽいヤニの混じった香り。それを纏うあの人の中身は、何も変わっていなかった。
ずっと昔に自分に情けをかけてくれた、その男らしさのまま自分を探していてくれた。その優しさにもう一度触れることができた。その記憶があるうちは、死んでも幸せな気がする。
事務所に戻ってきた。子分たちが固唾を飲んでこちらの動きを見ている。
組長室で着替えた。経口の痛み止めが効いていない。引き出しから注射器を取り出す。とっておきのモルヒネを打った。
9365昔から、あの人を知っている、誰も知らないだろうあの人を知っている、その優越感だけで見るだけになっていた。
人も物も世界も変わっていってしまうけれど、彼の匂い。男っぽいヤニの混じった香り。それを纏うあの人の中身は、何も変わっていなかった。
ずっと昔に自分に情けをかけてくれた、その男らしさのまま自分を探していてくれた。その優しさにもう一度触れることができた。その記憶があるうちは、死んでも幸せな気がする。
事務所に戻ってきた。子分たちが固唾を飲んでこちらの動きを見ている。
組長室で着替えた。経口の痛み止めが効いていない。引き出しから注射器を取り出す。とっておきのモルヒネを打った。
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MAIKINGほぼ没になりそうな文章たち…供養のほうがよかったか。真島視点から始まります。次で終わり。もう少しだけお付き合いください。さなぎのつづき7翌日、目覚めはすこぶる良かった。ホテルの一室、広いベッドで、伸びをする。ここに柏木がいないことは少し寂しかったが、
『俺の女だ。』
咄嗟の嘘だったとしても、その言葉がとても嬉しかった。柏木が、あの夜のことを覚えてくれていたことが嬉しい。自らの手で葬った青年は、柏木の中で生きていた。一人静かに、あの人の心の中であの日の姿で守られていたのかもしれない。
(ほんまもんは、もう…。)
朝のぱっとしない老いた姿が映るたび、鏡をぶち割りたくなる。でも、今朝は今までの死にたくなるような憂鬱はなかったかのように、身体も軽い。この不穏な街の気配にすら、ウキウキしている自分がいる。現金なものだ。
この事件が無事終わったら引っ越ししようかな、とふと思い立った。身軽でいたいが、日常の澱のようにどうしても色々と生活品がたまってしまうのだ。あの部屋も憂鬱な原因だったのかもしれない、と思い、ホテルを数日連泊するよう手続きした。
15493『俺の女だ。』
咄嗟の嘘だったとしても、その言葉がとても嬉しかった。柏木が、あの夜のことを覚えてくれていたことが嬉しい。自らの手で葬った青年は、柏木の中で生きていた。一人静かに、あの人の心の中であの日の姿で守られていたのかもしれない。
(ほんまもんは、もう…。)
朝のぱっとしない老いた姿が映るたび、鏡をぶち割りたくなる。でも、今朝は今までの死にたくなるような憂鬱はなかったかのように、身体も軽い。この不穏な街の気配にすら、ウキウキしている自分がいる。現金なものだ。
この事件が無事終わったら引っ越ししようかな、とふと思い立った。身軽でいたいが、日常の澱のようにどうしても色々と生活品がたまってしまうのだ。あの部屋も憂鬱な原因だったのかもしれない、と思い、ホテルを数日連泊するよう手続きした。
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MAIKINGその6。真島が乙女すぎて真島じゃない気がする…けれども、とりあえず、とりあえずは最後まで完成させます。あと二回。さなぎのつづき6風間組事務所。昨夜は夜中遅くまで走りまわっていたのと、衝撃的な事実に向き合うあまり、よく眠れなかった。重い頭を抱えて昼食をとる。いつも通り贔屓の焼き肉屋から出前をとった冷麺をすする。テレビでは、真夜中の首都高で銃撃戦があった、という情報が報道されていた。高速道路に設置されたカメラ、緑がかった白黒映像でカーチェイスの様子を伝えている。横浜方面からの車両を、中国マフィアが銃撃した、とおよそ日本ではないような派手な映像が流れている。逃走する車は警視庁の車両ナンバーのようですが、盗難の恐れもあり、誰が乗っているか不明、とのこと。ただ、捜査関係者の情報からは、捜索願がだされている女の子を誘拐した犯人が乗っている可能性もある、と言われている。まだ会見は開かれていないので、マフィアの抗争かどうか詳細は不明です、と現場レポーターは言う。
15504sueki11_pxv
MAIKING5のつづき。同じ章(同じ事件の日)ですが、前回の更新で入りきらなかったところです。柏木、真島の視点で続きます。さなぎのつづき5.5西公園が燃えて、花屋と連絡がつかなくなった。緊急車両のサイレンが落ち着いたと見た頃、様子を見に、事務所を出た。
(これは、本降りかな…。)
宵の口にぽつぽつときていた雨脚が強くなっている、傘をさし西公園へむかう。
西公園の中には、久しぶりに入る。この周辺は嶋野組の取り分のシマも多いため、極力近づかないようにしていた。真島組の事務所があるのも、このあたりであった。相変わらず、日本のものとも思えぬ悪臭が鼻をついた。それに混じり、プラスチックの燃えた化学薬品のような臭いがした。ブルーシートで作られた家も、損傷が見えた。だいぶと酷くやられたようだ。ここいらにいるのは、ただのホームレスではない。元極道や犯罪者、戸籍を持たぬものなど、あの神室町にすら居場所がない人間がここにはいる。普通の極道すら近づかない、といわれているが、地下のシステム含め、ここは日侠連のシマであった。ここに逃げて来る人間をスカウトし、世良はヒットマンに仕立てていた。下手をうち、殺されても誰も文句の言われない人間を見つけるには、うってつけの穴場だった。
10080(これは、本降りかな…。)
宵の口にぽつぽつときていた雨脚が強くなっている、傘をさし西公園へむかう。
西公園の中には、久しぶりに入る。この周辺は嶋野組の取り分のシマも多いため、極力近づかないようにしていた。真島組の事務所があるのも、このあたりであった。相変わらず、日本のものとも思えぬ悪臭が鼻をついた。それに混じり、プラスチックの燃えた化学薬品のような臭いがした。ブルーシートで作られた家も、損傷が見えた。だいぶと酷くやられたようだ。ここいらにいるのは、ただのホームレスではない。元極道や犯罪者、戸籍を持たぬものなど、あの神室町にすら居場所がない人間がここにはいる。普通の極道すら近づかない、といわれているが、地下のシステム含め、ここは日侠連のシマであった。ここに逃げて来る人間をスカウトし、世良はヒットマンに仕立てていた。下手をうち、殺されても誰も文句の言われない人間を見つけるには、うってつけの穴場だった。
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MAIKINGさなぎのつづき、その5。後半戦の始まりです。柏木視点、真島視点と続きます。メタ要素が多い…!さなぎのつづき5バッティングセンターに救急車はきていたようだが、はたして誰が運ばれたかはわからなかった。花屋から連絡をうけて周辺を子分を現場に行かせたが、嶋野組の組員が辻で立っていたので近づけない、どうしましょう、と連絡がきた。今はやりあうときではない、と告げた。子分は、バッティングセンター前にいた嶋野組のやつらは、どうも桐生ではなく真島組のやつらを見張っているような気配でした、子供を横取りされた、親父に楯突いただのと喚いていました、と言われ、
「狂犬が、本領発揮してやがるな。」
とつい笑ってしまった。ほかの子分からも連絡がある。救急車とともに警官もきたので一旦離れます、と。桐生は少女を連れて後からでてきたようなので、無事のようだった。
14313「狂犬が、本領発揮してやがるな。」
とつい笑ってしまった。ほかの子分からも連絡がある。救急車とともに警官もきたので一旦離れます、と。桐生は少女を連れて後からでてきたようなので、無事のようだった。
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DONE7柏真。ナチュラルに同棲。柏木視点。この日がくると、思い出すこと。(過去の事件の話は4というより0準拠)四月二十一日珍しく朝から自主的に起きた真島が、リビングで電話をしている。午前中に外せないリモートの会議などある時は、こちらに一言声をかける、というより、前日から予め、起きんかったら叩きおこしてくれ!頼むで!と常に言うほど朝が弱い真島だ。何やら緊急の用かと思い、音をたてないように、一旦皿洗いを中止した。
「…ほんで、兄弟の様子はどうや?」
次いで、そうかぁ、と少し案じるような低い声で真島は相槌を打った。
(冴島になにかあったのか?)
ふと時計を見、まだ九時前か、と思ったその時、視界の端にカレンダーが目に入った。互いの予定が色々と書きつけてあるそこに目を凝らす。今日は、四月二十一日、金曜日。そこに予定のメモ書きはなかった。これは仕事で何かトラブルがあったのだろうな、と思った瞬間、重要な事実を思い出した。
7477「…ほんで、兄弟の様子はどうや?」
次いで、そうかぁ、と少し案じるような低い声で真島は相槌を打った。
(冴島になにかあったのか?)
ふと時計を見、まだ九時前か、と思ったその時、視界の端にカレンダーが目に入った。互いの予定が色々と書きつけてあるそこに目を凝らす。今日は、四月二十一日、金曜日。そこに予定のメモ書きはなかった。これは仕事で何かトラブルがあったのだろうな、と思った瞬間、重要な事実を思い出した。
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MAIKINGここまでで前半終了。ソシャゲのキャラストネタが入っています。さなぎのつづき4真島にかけられた香水は、時間が経つと、女物の化粧品のような香りになった。呼吸を奪うようなそれ。息をしていても、まとわりつく香りが、正常な判断を失わせた。このまま事務所には帰れない。止まっていたタクシーに乗り込み、一度自宅に戻った。
スーツもシャツも脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。肌に直接かかった部分を重点的に洗う。特に首筋を念入りにボディーソープで擦った。
「……っ。」
ようやっと香りがなくなった、と脱衣所に出た途端、洗面台に置いたシャツからまたその香りがした。それは夜の女の匂い。先日、ゴロ美だなんだと真島がふざけて女装していた時の香りな気がした。
(なんだ…どうしてこんな…。)
シャツには香水が吹きつけられたところに点々とゴールドのシミがついてる。確かめるために顔を近づける。ふわっと花の香り、次いで何か甘い匂いが強烈に残る。香水はあいにく詳しくないが、男性がつけるムスクなどの香りではない気がする。百貨店の一階の化粧品売り場の匂い、女がつける香水な気がした。
9650スーツもシャツも脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。肌に直接かかった部分を重点的に洗う。特に首筋を念入りにボディーソープで擦った。
「……っ。」
ようやっと香りがなくなった、と脱衣所に出た途端、洗面台に置いたシャツからまたその香りがした。それは夜の女の匂い。先日、ゴロ美だなんだと真島がふざけて女装していた時の香りな気がした。
(なんだ…どうしてこんな…。)
シャツには香水が吹きつけられたところに点々とゴールドのシミがついてる。確かめるために顔を近づける。ふわっと花の香り、次いで何か甘い匂いが強烈に残る。香水はあいにく詳しくないが、男性がつけるムスクなどの香りではない気がする。百貨店の一階の化粧品売り場の匂い、女がつける香水な気がした。
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MAIKING去年の夏まえ頃にプロット練っていたので、ちょうど真の香水が発売された頃でした。金色のボトルの香りが衝撃的だったネタ、っていっても過言ではない。さなぎのつづき3桐生の番号と言って渡されたものの、その夜はかけることが出来なかった。もしこの番号が嶋野組の誰かのもので、自分と真島が通じているなどと言われたら事である。真島はそういう策を弄するタイプてはないと思う。
(だが、今回は…。)
嶋野の命令で少女を探していると言った真島。少女とは何者だろうか。あの時の真島の声音を信じないわけではないが、状況が状況であった。この情報が錯綜している状態で、フェイクの情報を掴まされて判断を誤るわけにはいかない。風間がいない間に組に何かがおこれば、すべてこちらの責任である。花屋からの連絡はまだない。この街が騒がしい。今日四度目の痛み止めを飲んで、眠りについた。
朝、携帯の着信で起きた。まだ暗い時間。シンジからであった。病院に組員ではない者の影が見えるので、風間が目覚め次第、風間を移送するという。
9791(だが、今回は…。)
嶋野の命令で少女を探していると言った真島。少女とは何者だろうか。あの時の真島の声音を信じないわけではないが、状況が状況であった。この情報が錯綜している状態で、フェイクの情報を掴まされて判断を誤るわけにはいかない。風間がいない間に組に何かがおこれば、すべてこちらの責任である。花屋からの連絡はまだない。この街が騒がしい。今日四度目の痛み止めを飲んで、眠りについた。
朝、携帯の着信で起きた。まだ暗い時間。シンジからであった。病院に組員ではない者の影が見えるので、風間が目覚め次第、風間を移送するという。
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MAIKINGさなぎの続き。時系列は極。ソシャゲのシナリオネタも入っています。柏木視点、真島視点と続きます。さなぎのつづき22005年12月4日。東城会三代目であった世良が何者かに狙撃され殺害された。その葬儀の翌日、前夜に出所してきたという桐生を街で探したが、見つからなかった。桐生は風間が狙撃されたその場にいた。自分か駆け付けた時にはもうその姿はなかったが、シンジ曰く、風間が呼んだらしかった。相変わらず自分が知らないところで風間は動いているな、と苦虫を噛んだが、親の思考が読めないのは別に今に限ったことではない。とかく桐生と連絡をとることが先だと、シンジに聞くと、昔からの桐生たちのたまり場であったセレナというバーが連絡拠点になっているという。そちらに電話をかけたが、あいにく不通だった。社外秘ならぬ、組外秘のことだが、桐生には、風間の容態は伝えた方がいい気がした。きっと心配しているだろう。風間は搬送先で一度意識は回復したものの、手術の影響からか再び眠りについた。心臓付近を撃ち抜かれ、予断は許さない。だが、とにもかくにも一命はとりとめたことを教えてやらねばならない。会場では、桐生が風間を襲撃したという噂がまことしやかに流れていた。
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MAIKINGピクシブにUPしてあるChrysalis(さなぎ)の続き。柏ゴロ(柏真)。極のどこマジシステムのメタな部分を頑張ってシナリオに落とし込もうとした話。導入部分。さなぎのつづき1鮮やかに生まれ変わった男が、街中で派手に暴れている姿を横目で見る。嶋野組若頭真島組組長、真島吾朗。巷では、嶋野の狂犬と呼ばれ、この神室町をそのサイケデリックな姿で好きなように騒がしていた。今日もどこかへカチこみでもかけにいったのか、凹んだ金属バットを片手に、子分を連れて、ネオン光る大通りを闊歩していた。一般人も、その異様な雰囲気に、思わず端に身をよせる。極道らしき者も、苦虫を噛んだ顔でその一団を見ていた。
真島は他の組の持ち分だけでなく、嶋野組のなかでまで引っ掻き回しているらしく、困ったやつだ、気がおかしいのじゃないのか、どうして親父もだまっているんだ、と同じ組の者たちからも、怨嗟の声が聞かれた。同門の米櫃に手をつっこんで、取り分をもらおうとするのは、極道界のタブーである。たとえそれが、自分より格下の組のシノギであっても、同じ組内であれば、手順を踏まずに横取りすることは、上からも下からも嫌われる行為であった。
6745真島は他の組の持ち分だけでなく、嶋野組のなかでまで引っ掻き回しているらしく、困ったやつだ、気がおかしいのじゃないのか、どうして親父もだまっているんだ、と同じ組の者たちからも、怨嗟の声が聞かれた。同門の米櫃に手をつっこんで、取り分をもらおうとするのは、極道界のタブーである。たとえそれが、自分より格下の組のシノギであっても、同じ組内であれば、手順を踏まずに横取りすることは、上からも下からも嫌われる行為であった。
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MAIKINGバレンタインにあげられなかった柏真メールSS。とりあえずここで完結。長らくお付き合い有難うございました!酔いどれメール(仮)六日目夜から最後まで六日目の夜
柏木は日が落ちると見るや、そそくさと事務所から帰ってきた。こちらのいつにない陽気に、カシラどうしました、と言いたげな目をしていた子分もいたが、明日は時間通りに来る、と言って足早に退散してきた。
日曜日の神室町は、スーツ姿の男は少なく、若い子たちが多かった。百貨店で開催されているバレンタインフェアに行ってきたところなのか、色とりどりの紙袋を手にして楽しそうに歩いている女子も多く見かけた。例年、そんな季節か、と思うだけだが、今年はいやに肯定的にその光景を見た。
家に帰りつき、黄緑色の箱をテーブルにのせる。花とレースとクローバーの意匠がほどこされた丸い小箱だ。
水商売の女からは貰いそうにない値段帯のもの。それこそ女子高生が友達同士に送りあう時に買いそうな、本当に可愛らしいものだ。
9357柏木は日が落ちると見るや、そそくさと事務所から帰ってきた。こちらのいつにない陽気に、カシラどうしました、と言いたげな目をしていた子分もいたが、明日は時間通りに来る、と言って足早に退散してきた。
日曜日の神室町は、スーツ姿の男は少なく、若い子たちが多かった。百貨店で開催されているバレンタインフェアに行ってきたところなのか、色とりどりの紙袋を手にして楽しそうに歩いている女子も多く見かけた。例年、そんな季節か、と思うだけだが、今年はいやに肯定的にその光景を見た。
家に帰りつき、黄緑色の箱をテーブルにのせる。花とレースとクローバーの意匠がほどこされた丸い小箱だ。
水商売の女からは貰いそうにない値段帯のもの。それこそ女子高生が友達同士に送りあう時に買いそうな、本当に可愛らしいものだ。
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MAIKINGバレンタインにあげられなかった柏真の続きのつづきのつづき。今日で終われませんでした…あともう1日くらいです、お付き合いください。酔いどれメール(仮)6日目六日目。
柏木は珍しく朝九時ごろ起きた。オフの日でも、基本的には通常通り七時半ごろ起きるのだが、昨日の接待は自分でも思った以上に気を使ったのだと思った。かなり酔っていた為、妙な夢を沢山みた気がした。なにも覚えていないが、頭が重い。ベッドサイドの煙草に手をのばした。ベッドに腰かけ、タバコを吸い、少し目がさめてくる。充電していた携帯電話に、青い着信ランプがともっていた。だいたい組の用事か、接待で使用した店か何かからの営業メールか、と普段なら思うはずだったが、この日はなにか確信があった。柄にもなく心を躍らせながら携帯を開く。
『差出人:真島吾朗(嶋野組)
日時:2003/02/08 03:39
件名:ほんまつかれた。
9608柏木は珍しく朝九時ごろ起きた。オフの日でも、基本的には通常通り七時半ごろ起きるのだが、昨日の接待は自分でも思った以上に気を使ったのだと思った。かなり酔っていた為、妙な夢を沢山みた気がした。なにも覚えていないが、頭が重い。ベッドサイドの煙草に手をのばした。ベッドに腰かけ、タバコを吸い、少し目がさめてくる。充電していた携帯電話に、青い着信ランプがともっていた。だいたい組の用事か、接待で使用した店か何かからの営業メールか、と普段なら思うはずだったが、この日はなにか確信があった。柄にもなく心を躍らせながら携帯を開く。
『差出人:真島吾朗(嶋野組)
日時:2003/02/08 03:39
件名:ほんまつかれた。
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MAIKING今年のバレンタインに間に合わなかった柏→←真SS。つづきの続き。21日追記:五日目シーンを追加しました。
酔いどれメール(仮)四日目・五日目四日目。
柏木は、らしくなく苛立ったように寝返りをうった。夜中二時をまわりベッドに入ったが、メールがこない、と頭のどこかで気になって眠れなかった。たった三日なのに、真島からのメールを心待ちにする自分がいる。真島だって組の若頭。忙しいのかもしれないし、三日坊主という言葉もあるように、飽きた、という可能性もあるのだろう。
(相手は狂犬、その可能性も大いにある。)
と自分を納得させ、なぜこれほどまでに苛立っているかという自己分析はせず、無理やり眠りについた。
午前三時前、うつらうつらしてる時に着信音で飛び起きる。かなり長く鳴っているようだ。組からか、と慌てて携帯電話を見ると、それは電話の着信ではなく、メールの着信だった。携帯を開く。メールが十件ほど入っていた。
12906柏木は、らしくなく苛立ったように寝返りをうった。夜中二時をまわりベッドに入ったが、メールがこない、と頭のどこかで気になって眠れなかった。たった三日なのに、真島からのメールを心待ちにする自分がいる。真島だって組の若頭。忙しいのかもしれないし、三日坊主という言葉もあるように、飽きた、という可能性もあるのだろう。
(相手は狂犬、その可能性も大いにある。)
と自分を納得させ、なぜこれほどまでに苛立っているかという自己分析はせず、無理やり眠りについた。
午前三時前、うつらうつらしてる時に着信音で飛び起きる。かなり長く鳴っているようだ。組からか、と慌てて携帯電話を見ると、それは電話の着信ではなく、メールの着信だった。携帯を開く。メールが十件ほど入っていた。
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MAIKINGバレンタインにあげられなかった柏→←真SSの続きです。酔いどれメール(仮)二日目&三日目翌日。
柏木は歯磨きをする前に携帯電話を見た。一日経ったが真島からの返信はない。昼間に謝罪のメールがあるか、と気にしていたが、それもなく、昨日と同じ時刻になったが、あれの続きのメールもなかった。
(やはり間違いだったのだろう。)
酔っ払いが、寄越したメール。朝になって、真島も愕然としたに違いない。今日返事がないのが何よりの証拠だ。だからこそ、寝る前にあんな調子にのったメールを送ってしまったことを悔やんだ。昨日のことは見てみぬふりをして、互いに忘れるのが最善なのだろう。
(なんで、一夜の過ちみたいになってんだ。)
そう苦笑して、携帯電話を充電器に刺し、明日の着替えを準備した。
同じ頃、真島は自室で時計を睨み上げた。一時半。昨日のメールの始まりは、このくらいの時刻だった。
9225柏木は歯磨きをする前に携帯電話を見た。一日経ったが真島からの返信はない。昼間に謝罪のメールがあるか、と気にしていたが、それもなく、昨日と同じ時刻になったが、あれの続きのメールもなかった。
(やはり間違いだったのだろう。)
酔っ払いが、寄越したメール。朝になって、真島も愕然としたに違いない。今日返事がないのが何よりの証拠だ。だからこそ、寝る前にあんな調子にのったメールを送ってしまったことを悔やんだ。昨日のことは見てみぬふりをして、互いに忘れるのが最善なのだろう。
(なんで、一夜の過ちみたいになってんだ。)
そう苦笑して、携帯電話を充電器に刺し、明日の着替えを準備した。
同じ頃、真島は自室で時計を睨み上げた。一時半。昨日のメールの始まりは、このくらいの時刻だった。
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MAIKINGバレンタインに間に合わなかった、今年のバレンタイン柏真、その冒頭。いつもの本編軸の二人ではなく、読み切りの柏→←真SSです。酔いどれメール(仮)一日目ソファでうつらうつらとしていた柏木は、メールの着信音ではっと目を開いた。
組から何かあれば電話がかかってくるので、夜中でも着信音は切っていない。着信は三回以内でとれ、と厳命されている。風間組に限ったことではなく、それは極道組織に属するものなら全てそう躾けられていた。素っ気ない音だが、メールの着信は短いスパンで四回鳴っていた。これは何かあったな、と億劫だが体を起こす。
充電のコンセントに刺さったそれは、青い着信ランプがついていた。真夜中のメール、嫌な予感にさいなまれながら、折りたたまれた携帯を開ける。画面には新規メールの着信を知らせる封筒が表示されていた。決定ボタンを押す。最新の着信メールが画面に表示された。
15083組から何かあれば電話がかかってくるので、夜中でも着信音は切っていない。着信は三回以内でとれ、と厳命されている。風間組に限ったことではなく、それは極道組織に属するものなら全てそう躾けられていた。素っ気ない音だが、メールの着信は短いスパンで四回鳴っていた。これは何かあったな、と億劫だが体を起こす。
充電のコンセントに刺さったそれは、青い着信ランプがついていた。真夜中のメール、嫌な予感にさいなまれながら、折りたたまれた携帯を開ける。画面には新規メールの着信を知らせる封筒が表示されていた。決定ボタンを押す。最新の着信メールが画面に表示された。