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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🍙 🍣 🍩 🍨
    POIPOI 67

    ナンデ

    DOODLE鰈→彼→カレー

    千司Webオンリー「賢者と旗手を結ぶ糸」展示小説です。
    二日目の彼 千空は研究所へ、司は外交へ。数年会わない日々が続いて、やがて二人の関係性が過去になっていく。笑顔を作って世界を周り、過ごす日々がつまらなかったかと言うとむしろ真逆で、科学王国時代からしても仲が深まったゲンと肩を寄せ合って思い出話をするのも、五年の月日の間に丸く大人しくなったゼノが幼馴染との再会をきっかけにまた口数が増えたのも、普段は煙草をくわえて静観しているのに四人の中で一番喧嘩っ早いスタンリーに慣れていくのも、世界を石に変え、全てを奪い、けれど確かに司の妹を助けた機械生物と明日の天気のことを話すのも、司は楽しかった。何もかも分からない中で命を懸けていた冒険の日々よりは穏やかで、旧時代に生きていたころよりは治安が悪く、でもあの頃よりずっと愛に溢れ、優しい世界のひとつひとつに触れていく毎日が楽しかった。けれど晴れた日に移動のために乗った車の中で十年でも二十年でもこうしていられると思った時……思ってしまった時に、司はふと「ああ、千空に会いたいな」と気が付いてしまったのだった。千空に会いたいな、十年、二十年、彼と会わない生活を続けて過去の人になってしまうのが、何よりも嫌だな。真っ白なテーブルクロスに落ちた、ワインの染みみたいにその気持ちは残って、徐々に広がっていく。
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    ナンデ

    DOODLE慣れれば可愛いスイートベイビー

    龍スタ
    しかめっ面しないでハニー ゼノと一緒にいたころ、スタンリーに煙草を吸う気はさらさらなかった。お喋り好きな幼馴染に「きみはどう思う?」と聞かれたら、即座に返答をしたかったし、目を離すとなんにでも手を出す彼に「ストップ」と声をかけるためには、煙草どころかロリポップキャンディだって齧りたくなかった。それどころか本当なら出来ることなら炭酸水のボトルも、バーガーの包みも持ちたくないのだ。だって砂糖たっぷりの飲みものをお気に入りのシャツにこぼすのはテンションが下がるし、バーガーの包みは放り投げるとソースが垂れる。ゼノと初めてしたケンカは、彼が垂れた前髪をアルコールランプで焦がした時に食べていたチーズバーガーを放り捨てて駆け寄って、買ったばかりのコンバースにケチャップがべったりついて取れなくなった時だった。「ゼノのせいで」と泣き言をいうスタンリーに、ゼノはむくれて「別に頼んでなかったよ」と返した。初めてとっくみあいのケンカになって、スタンリーが勝った。幼馴染を守りたかったのに、スタンリーがたたいたせいでゼノの頬は腫れたし、膝にいくつも擦り傷を作って、スタンリーはそれからコンバースを履くのは止めて、食事もゼノより早く食べ終えることで両手を開けた。だから子どもの頃のスタンリーにはとても煙草だの酒だのをやるよう余裕も、憧れるような必要も無かった。ゼノがいたから。
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    ナンデ

    DOODLE
    私の彼氏は餃子を焼いてる 餃子を包む間、子どもは彼氏が面倒見てくれる。
    「また餃子?買ったほうが安いだろ、早いし」
    「キャベツまたもらったんだもん。ひき肉も安かったし」
    「また?隣のばあさん?」
    「そう。趣味でね、畑やってるんだって。いいなあ、そういうの」
     市村は言いながらも手を止めない。手元のボウルから餃子餡をスプーンですくう。すくった餡は皮にのせる。スーパーで50枚158円の餃子皮。特別モチモチもしてないし、パリッと焼けるようにもなってない、普通の餃子の皮。
    「ああーん、ああーーん」
    「ほら、山本さん。泣いてるよ」
    「あ、ああ。ほら……どうしたぁ?ママかぁ?ママにタッチ交代するかぁ?」
    「ダメ。ママは今餃子包んでるから」
     スタンダードな包み方だと破れてしまうから、半分に折って、端と端を持ってくるりと丸めて止めるだけの帽子型。これなら大して技術もいらないし、50枚包む間に子どもがオムツを濡らしても待たせないで済む。何しろ市村の彼氏は、子どものお守りと言ったら下手くそな抱き方でオロオロしながら揺れて、赤ちゃん言葉であやすことしか出来ないし、する気もないのだ。ましてやオムツ替えなんて「無理」の一言だ。汚い。人の排泄物に触るなんて無理。市村はそれを聞く度に、でもこの子って素は山本さんがいつもおしっこ出すとこと、同じところから出てるんだけど、と思う。思っても言わない。機嫌が悪くなるから。
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    ナンデ

    DOODLEマサ→ホプ
    だいすき、だからどうかずっと 父親が残したのは海を渡った先にある古びた一軒家だけ、と分かった時、ママは泣きも恨みもしなかった。
    「クヨクヨしてたら、パパが悲しんじゃう」
     そう言って埃にまみれた窓を開け、真っ黒な床に箒をかけ、おれはというと家の外、門にもたれ掛かって口を開けていた。庭に住み着いていたスボミーたちは小さくて何の役にも立たない新しい住人であるおれに優しく(と言うのもママがスボミーたちを先住民として扱い追い出さず、ブラッシータウンで買ってきたきのみをひとつふたつと放ってやったからなのだが)ふるふる身体を震わせてはおれのほうを向き、太陽のほうを向き、ポケモンながらにいっちょまえにお兄さんお姉さんぶっている。
     おれは門の向こう側、ママのこしらえているおれの新しいおうちの外に全く知らない、見たこともない緑いっぱいの世界と、ガラル訛りがひどくっておれではとうてい聞き取れない言葉を話す大人たちがウールーを追いかけ回すのをぼうっと見ていた。ああ、せかいはなんてひろいんだろう!哀しいかな、齢四歳にして思い至ってしまった境地に、幼い身体は耐えられず、懐かしいホウエンの空を思い浮かべて涙をぽたりぽたりとこぼしてみたりもした。
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