自分は人間だから仕方ない。
と、ヒュンケルは長年、諦めていた。
性欲についてである。
二次性徴が進んだころから、衝動を抑えることが難しくなってきた。女を得られる環境ではあったが、なまじ子を成されてしまうと利用されるおそれもあるため、行為は憚られた。自ら刺激をしての排出も頻繁に行いはしたが、しかしどうしても、暴れ狂う欲念を晴らすには容赦のない律動が必要となる。
ゆえに、子を成さぬ男との情交に勤しむしかなかった。
自分ほどではないが、魔族にもなかなかに性欲の強い者は多い。しかしそれでも男であれば征服と挿入を好む。受け身でいるほうが相手が潤沢だ。
そういう、幾つもの仕方なさの果てに、ヒュンケルは男を求める性質なのであった。
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