リビングで珍しくスマートフォンに集中するクリスを見つけ、雨彦は近寄りながら声をかけた。
「何を熱心に見てるんだい?」
「雨彦」
雨彦の声にクリスはぱっと顔を上げる。そのままスマートフォンを向けてくるので、雨彦は画面を覗き込んだ。
「この間の仕事の記事か……」
クリスが見ていたのは、先日雨彦が単独で出演した仕事の取材記事。事務所を越えてアイドルが集うその仕事で、雨彦は執事の衣装に身を包んだ。周囲はかわいらしいメイド服を着た女性アイドルばかりで、少々戸惑ったのも記憶に新しい。
仕事の記憶を辿っていると、記事中の雨彦の写真を眺めるクリスはふふ、と笑みをこぼす。
「雨彦は何でもスマートにこなしますから、執事としても優秀でしょうね」
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