七夕 旧サテライトエリアへと続く大きな橋を、Dホイールで駆け抜けていく。背後にはルチアーノが乗っていて、僕の背中に腕を回していた。頬に当たる潮風は、熱気に焦がされて生ぬるい。僕の額から流れる汗を、ルチアーノがタオルで拭いてくれた。
陸地に上がると、Dホイールは住宅街へと向かってく。家が建ち並ぶ大通りの片隅に、目的の建物は建っていた。周囲の家と比べると、二倍以上はある大所帯である。古くなった壁や門は、人の手で補修がされていた。
門の前にDホイールを停めると、門を開けて敷地内に入った。庭で作業をしていた雑賀さんが、僕たちの方へと視線を向ける。手には鋸を持っていて、額からは汗を流していた。彼の手元に固定されているのは、大きな笹の木である。それこそが本日の主役であり、僕の呼ばれた理由だった。
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