寝起きのキス その日は、珍しく自分から目を覚ました。そっと周囲を見渡すと、部屋はまだ薄暗い。壁にかけられた時計の針は、午前六時を指していた。
僕は、静かに寝返りを打った。できるだけ音を立てないように体勢を変えて、目の前のルチアーノに視線を向ける。彼は、まだすやすやと寝息を立てていた。起こさないように顔を近づけると、その寝顔を観察する。
ルチアーノは、穏やかな表情をしていた。枕に対して俯せの姿勢を取るように、布団の中から顔を出している。触覚のような前髪が乱れて、鼻の上に垂れていた。長い髪は扇のように広がり、背中や胸元を覆っている。頬はぷっくりと丸くて、柔らかく閉じられた目蓋には、控えめに睫毛が添えられていた。
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