蝶葬と後悔 後編「……さあ、着いたぞ。」
蝶男は棺から出て被験体の服を掴んで起き上がらせた。
被験体は棺の外に広がる空間を見て目を丸くして固まった。
全てが白と黒で統一されており、辺りには低い山が点々と存在していた。
そして空には白と黒の蜘蛛の巣のような筋が入っており、無数の蝶がこの空間を羽ばたいていた。
「さあ……邪魔だから取ってあげようか。」
蝶男は被験体の口元の轡を取ってやった。
被験体は大人しかった。
目の前に広がる光景に驚いているからなのか、蝶男と二人きりの状況だからかなのかは分からなかった。
「あは……動かないな。まあのんびりしなよ。ここには脅威なんて何も無いからな。」
蝶男は立ち上がって棺の側から離れて小山の側に座り、咥えていた煙草を口から離して煙を吐き出した。
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