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百戦百勝と謳われたテオ・マクドールの大隊を打ち破ってからというもの、解放軍の士気は明らかに高まっていた。
赤月帝国随一といわれた精鋭等からもぎ取った勝利に、兵たちが沸き立ったからだった。
それが解放軍リーダーの実の父親だと知る者も知らぬ者も、帝国打倒へ続く道を、同じ熱量で受け入れた。
五将軍の半数を討ち取り、各地に散らばった帝国兵の統率も崩れている。解放軍へ寝返る兵が増えていることが、その証左だった。
高揚を抑えきれない兵たちは、北の関所を守るカシム・ハジルを討とうと気勢を上げ、マッシュがそれを制止する光景も、今や珍しくないものとなっていた。
士気が高まる今、戦を仕掛けることには利も不利もある。
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