『ただいま』 ルチアーノが部屋を訪ねて来たときは、すぐに分かる。部屋の中を光の粒子が包み込んで、時空が歪む感覚がするのだ。光が消えると、そこにはルチアーノが佇んでいる。
「来てやったぜ。一人で寂しがったりしてなかったかい?」
からかうように言って、彼はにやりと笑みを浮かべる。
「寂しくはなかったけど、会いたかったよ」
僕が答えると、彼は嬉しそうに笑って、僕の隣に座るのだ。
「さて、今日は何をして過ごそうか」
僕とルチアーノが半同棲生活を送るようになって、ひと月と少しが経った。既に、ルチアーノが家にいることが当たり前になっているし、彼にとっても、ここは第二の家のような感覚になっているようだった。
でも、僕にはひとつだけ引っ掛かっていることがある。それは、とても些細なことで、だけど、僕にとっては大きなことだった。
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