きつねのおまじない④「真っ直ぐな背筋、優雅な仕草、落ち着いた佇まい──正に理想的な所作。加えて風に乗ってなびくオリーブ色の髪、整った目鼻立ち、氷を彷彿とさせるクールな表情……あの『氷の姫』と同室なんて羨ましいわ、スレッタさん!」
「は、はぁ……」
次の日のお昼休みの食堂で、スレッタは数人の生徒──恐らく先輩にあたる女生徒たちに囲まれていました。
同室になったのは昨日の話だというのに、どこから聞きつけたのでしょう。漫画でたくさん見かけた女子の噂話は早いというのは事実だったのです。スレッタは咀嚼しながら、他人事のように目を輝かせました。
しかし、言っていることの殆どは分かりません。それもそのはず、顔の美醜や所作の美しさについて、人間社会に来たばかりのスレッタに判断できるはずもないのですから。ただ、エランがどうやら好かれているらしい、ということだけ感じ取れました。
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