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    masasi9991

    @masasi9991

    妖怪ウォッチとFLOとRMXとSideMなど
    平和なのと燃えとエロと♡喘ぎとたまにグロとなんかよくわからないもの

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    DONE寝起きにいちゃいちゃしてるデググラいつもの白雪姫

    「キミがキスしてくれたら起きる」
    「本当だな? よぉし」
     お布団の中でグランツがくすくす笑っている。枕に頭を突っ込んでても、ブランケットで頭の半分を隠してたって、そんなに肩を揺らしていたらばればれだ。ん? 笑っている? ということはもしかしたら、もう起きているんじゃないか?
     ちょっと疑問が生まれてしまったが、それはそれ、こっちに置いといて。
     キスしてもいいとグランツが言うんだからキスしてしまおう!
    「よいしょ。グランツ、こっちを向いてくれ」
    「ふふっ、まぶしい」
     肩を掴んでコロン、と転がしブランケットをそっとめくる。ニコニコ笑って目を細めたグランツが、両腕で目を隠す。ベッドの横に立ったおれは、背を屈めてグランツのほっぺたを人差し指と親指でむにっとした。
    「うーん、腕をどけてくれないとキスしにくいぞ」
    「ん」
     とうなずいたグランツがゆっくり腕を動かした。ほっぺたの目の下のところが、窓から入ってくる朝の眩しい太陽に照らされてツヤツヤしてるし、元気なピンク色になっている!
     もしかしてグランツはキスに照れているのか? ワクワクしているのか? おれもお前とキスをする 525

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    DONEX6のOP前のゼロクス晴天の廃墟


     通信にノイズが混ざり始めた。高強度の電磁放射障害が残っている地域だからなのだろう。それを裏付けるように、割れたアスファルトの上に残った無数の人とレプリロイドの遺体はほとんど全てが無傷のままで、ただカラカラに干からびている。
    「き……える? エッ……ス、……なし、周囲に……反応、なし。安……確保……した……から、すぐに戻……」
    「大丈夫だよ、エイリア。誰も居ない」
    「ええ、だ……今すぐ……」
     ブチン、と一際大きなノイズが鳴って、以降通信が完全に途絶えてしまった。
     少し戻って、また通信を繋ごうか。どの辺りまで調査するつもりなのか、ちゃんと計算して伝えておく。その方がエイリアにも、ベースで待っている皆んなにも、心配をかけずに済む。
     ほんの一瞬だけそんな風に悩んだが、やっぱり振り返るのは止めにした。今は一分一秒が惜しかった。
     周囲にエネルギー反応はない。十日も前にはこんな筈ではなかった商店街は、天井にかかったアーケードの屋根が全て吹き飛んでしまって、金属製の何本もの柱だけが数百メートルの向こう側まで規則正しく並んでいる。道の両側のビルの多くは崩壊。ここは、廃墟だ。もち 1149

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    DONEデググラいちゃいちゃしてるだけ!退屈


     くわーっと大きく口を開いてあくびをしてしまったことまでは気がついた。なんだかこれはまずいぞ、と。しかしあくびとともに目を閉じた途端にもう、白くてふんわりとした気持ちのいい気分に飛び込んだ。
    「……んあ」
     覚えているのはそこまでだ。次に気がついたのは、自分の変な声にちょっと驚いた瞬間だ。
     なんだ? 驚きはしたものの、ふわふわした気分はそのまま。周りが見えないし、いい匂いがする。鼻をお花畑に突っ込んでいるみたいだ。
     なんちゃって。お花じゃないことはわかっているぞ。このサラサラでいい匂いの感じは、グランツの髪の毛だ!
    「お? ホワッ」
     いびき。いや、寝言。自分の二度目の寝言にびっくりして、今度こそ目が覚める。目の前いっぱいに青い色が広がって、慌てて顔を引き離した。
     うっかり寝てしまっていた! その上隣りに座っているグランツの頭に自分の頭を乗っけていた!
    「す、すまな」
    「シッ」
    「むむ?」
     慌てて謝ろうとしたら、グランツがこっちを見上げて唇に人差し指を当てている。ちょっとすぼめた唇がいかにも柔らかそうで、いいや実際に柔らかいのをおれは知っているがために。
     思わず吸い 935

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    DONE土蜘蛛さんと小さい大ガマさんわしづかみ


     しまった、と思ったときにはもう遅い。手を出したが手遅れだ。そも、先んじて気付かれなかった己が弛んでいるのか、ぬるいのか。ともかくその首根っこをわしづかみに持ち上げたが、どうにもならぬ。
    「ゲコ」
     のんびりと一声、あくびのような抜けた声。顔の半分はある口をぱくりと開いて鳴いた後、口も目もぎゅっと閉じる。もごもごと喉と腹を動かしている。咀嚼をしておるのだろうか。
     宙吊りに掴んだ身体をこちらに向けて、その腹をまじまじと見た。
     まったくこの子蛙がこれほど大食らいだとは知らなかった。しかも量ばかりでなく妙なものも食べたがる。悪食だ。
    「お主、腹を壊しても知らぬぞ」
     丸く膨れた腹は皮膚が薄く、濡れた緑色の内側に薄っすらと内臓、血管が透けて見える。それもどうやら日頃よりもよく見えるような、と思い目を凝らして見れば、何やら内側からほんのり光っている。昼間の座敷ではよく見えぬが。さては今食ろうた数珠のせいか。
     しかし元の玉は決して光ってはいなかった。
    「お主が呑んだがために光っておるのか? おかしな蛙だ」
    「ゲコゲコ」
     可愛げもない返事と共に薄く目を開き、真黒い翡翠のような 672

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    DONE土ガマいちゃいちゃしてるだけ視線をそらす

     ぐっ、と腹の奥から熱いものが湧いてきた。喉元まであっという間に通り過ぎて、吹き出しそうになったところで急ぎ顔を背ける。視線を、まるで何んの気なしに窓の外へ向けたかのように。そう見えたであろうか? と己で取り繕っておきながら、果たしてそれがうまくいったかどうかが気になって、目だけ動かしチラリと相手の様子を伺う。
     が、ところが奴め、こちらを見てすらおらぬのだ。丸窓の外へ顔を向けながら、視線の端で苦労して見下ろした己の膝の上には、此奴の頭の後ろばかりが見える。
    「おのれ……」
     思わずこぼしたため息を、ハッと飲み込む。
     しまった、未だ、吾輩の口元に笑みが浮かんだままやも知れぬ。
     また視線を窓の方へ向ける。今度は慌てて、己の口を手で隠した。
    「あ? 何んか言ったか?」
     膝に寝っ転がっていた頭がのっそり動いて、上を向く。こちらを見上げた、それをまた、視線の端に見てしまう。何んの気なしに、を装っているつもりなのだが。
    「何も言うてはおらぬ」
    「うん? そうかァ? なんか今日のてめえは、ぼんやりしてやがるな。さっきからまともに返事もしねえし」
     と大ガマの方こそぼんやりと間 647

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    DONEバレンタインのデググラこの世界はみんなバレンタイン初心者


     やっとだ。今日は一日、いつもより長かった気がする。仕事を終えてキミとこうして寝室で落ち着くまで、ずいぶん。仕事の帰りが遅くなったってわけでも、普段より他の予定が多かったってわけでもなく、ただ単純に待ち遠しくて、ソワソワして。
     もう夕食も風呂も済ませて明日の準備も問題なし、後は寝るだけ。しかしまだ眠る気はない。まだ眠くない。キミも同じか偶然か、まだまだ目が冴えているようで、ベッドの縁に腰掛けて、おれを待っていた。
    「グランツ! 遅かったじゃないか!」
     寝室に入ってすぐに、キミはパッと顔を上げて出迎えてくれた。
     すごく嬉しそうな顔をしてる。もしかしたらキミも今日のイベントのことをどこかで知ったのかな?
    「何をしていたんだ? 湯冷めしてしまうぞ!」
     ベッドのブランケットをめくって、ポンポンと叩いて催促する。まだ眠くないから、ベッドに入る気はないんだ。でも。
    「デグダス!」
     キミに誘われたのが嬉しくて思わずそこに飛び込んだ。ベッドの上……じゃなくて、キミの胸に。
    「うわっ、わわわっ」
    「ふっ、あは! あははっ! デグダス、キミはやっぱり強いな 2379

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    DONE何かと戦っているエックスとゼロ先輩TRAGEDY


     首が飛んでった。一つじゃない。いくつもだ。首だけじゃない。腕も足も胴も。一人じゃない。被害状況は? 考える暇はなく、情報も足りない。それはもはや俺の仕事じゃない。
     肉塊から吹き出した飛沫は混ざり合って一塊に路面に飛び散った。跳ね回る雫はどうせ全てひび割れたアスファルトの上へ落ち、やはり皆んな混ざって流れていく。
     薄暗い曇り空のビル街の隙間の時折雲間からちらつく昼間の光の反射する血液の表面の脂質様の虹色の光沢が未だ熱を持ち湯気を上げる、冬の市街に白い湯気を一種幻想じみた白さを、人血による霧が浮かび足元はぬかるむ、走れば血と肉が跳ね上がる、人混みを掻き分けながら、まだ生きている人々の群れを掻き分けながら、瞬時奪われていく命をセンサーに感じながら、命、悲鳴、首、体温、血液、呼気、言語、臓物、皮膚、眼球、衣服、排泄物、頭髪、飛んでく。両眼のカメラ・アイが曇る。
    「十三地区へ! 十三地区方面へ逃げてください!」
     カメラ・アイの曇ったレンズは瞬き一つでクリアになる。
     オペーレーターからの通信でリアルタイムに届く避難経路をそのまま口に出して叫ぶ。誰にも聞こえていない。上 2379

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    DONEちょっと弱った大ガマさんの土ガマ痛くてもかまわない


     めずらしく、戸を叩いて入ってきた。
     外は今に洪水となろうという大雨であり、一向に止む気配もない。昼間であるのに真っ暗だ。おまけに寒い。恐らくこの雨のために人里の畑は流され、病がはびこり、命を落とすものも少なくはないだろう。少し前からこの物哀しい天気が続いている。
     そんな折、静かに戸を叩く音と共に現れた。
     旅の帰りであろうか、笠と蓑をかぶって、降り続ける雨から身を守っている。がしかし雨は激しく、雨具などでは事足りず、その身体はすっかり濡れそぼっていた。
     して、濡れた身体はすっかり冷え切っている。無論、その身体はいつでも冷たい。しかし今日ばかりは常に増してことさら冷たい。それも、この雨も、彼奴にとっては望むべくものかと思っていたが、どうやらそうではないようだ。というのは、こうして膝の上に……寝間着の薄い襦袢越しに、膝の上にじわりと滲み、感ずるものが語っている。これは雨だれではあるまい。夜よりも前に、その身体はすっかり拭ってやったのだから。
    「まったくめずらしい。表の戸を叩いて入ってきたのもめずらしい。多くを語らぬのもめずらしい。こうもしおらしいのもめずらし 1346

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    DONE近未来とホラーっぽい大ガマさんバシリカの入り口へ


     ゴーストを知っているか? いいや、昔話じゃない。現代の話だ。ネットワーク上の話でもない。本当に居るんだ。俺は見た。隣の部隊の奴らも見たと言っていた。カメラに? もちろん映っていない。そうさ、何度も確認した。だが俺の目には見えたんだ。見えたはずだ。思い出せない。見えた筈なのに、どんな姿だったのか記憶にゃ残っていないんだ! 嘘じゃねえさ! 俺は見た、他の奴らも見た、嘘なものか。
     俺の目は壊れちゃいない。故障なんかあったら、今日この仕事もしてられんだろう。そうさ、そうさ、点検は入ってるよ。俺の記憶にゴミが混じってるってわけじゃねえ。見たのは俺だけじゃないんだからな。今にお前も見るさ。俺が見たのもこんな夜だったんだ。
     へへ。面白がらせてやろうって腹じゃねえよ。ゴーストってのは恐ろしいもんなんだぜ。昔話だ。死んだ人間の魂がどうのというやつだ。ありゃ一種のホラーだろうよ。居るんだよ、それが。死んだ人間がさ……そりゃごまんと居る。この研究所で死んだのも、居るわけだろう。そういうゴーストだ、多分。
     なんだ? ノイズが。足音? いや、聞こえねえな。お前のマイクの方が故障し 2319

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    DONE改札に引っかかる土蜘蛛さん只、見返してやりたいのだ


     随分気が立っている。お館様の短気はいつものことですから、ただ皆んなしてハイハイと頷いておけばいいのです。いくら気が立っているとしてもお館様のこと、よほどのことでなければご命令に間違いはありませんでしょうし、よほどのことでなければそのうち気が済むでしょう。
    「車ですか。牛車か馬車か妖力車か。それとも所謂自家用車を手配しますか。それでどちらまで? は? 人間界のその辺をブラブラするだけのために、手配せよと? 馬鹿馬鹿しい。自分の足で行けってんだ」
     客間の入り口まで呼び出され、つらつら命じられるままにハイハイと返事をしていた者が、途中から随分な呆れ顔になった。どうにもよほどのことらしい。お茶と茶菓子を抱えて台所と客間をふよふよと往復してるだけのわたくしには、関係のないことのようですが。
    「遠いなんて何を今更。電車に乗ればすぐでしょう。ここ最近は人間界の駅まで直通のやつも出てるし、それにまさか、一人で電車に乗れないなんてその歳になって、まさか」
     一笑に付されてお館様は口をつぐんだ。ぐうの音も出ないという顔のようで、白い顔にカッと赤く血が登って、額には青筋が浮 976

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    DONE一緒に暮らし始めたばっかりのジクイア鼓動、ひとつ、ふたつ


    「そうだ、今日はデザートを買ってあるんです。取ってきますね」
     と、少し早口で言って席を立った。声が少し浮ついていたかもしれない。ジークさんに変に思われたかも、焦ってしまって目をそらした。
     それでもやっぱり視界の端にジークさんの顔を見てしまう。少し首を傾げていたような気もする。でも微笑んでいた。
     なんとなくタイミングを図って言い出したけど、別にやましく思うことでも、緊張するようなことでもない。夕食後のデザートはいつものこと――というほどでもないけど、珍しくはない。ジークさんがプリンが好きだから、なにかあれば食後に用意があることもある。
     とはいえおれはそんなに甘いものが得意じゃない。嫌いでもないけど、ジークさんほどのこだわりがないから、いつもの食後に用意するとしたら、ジークさんが選んだものということが多い。
     今日みたいにおれが準備しておくとしたら時々のことで、そのたびにちょっとだけ緊張する。
     よろこんでもらえるかな。完全に下心だ。
     台所に置いている冷凍庫を開いて中を覗き込むと、そこから溢れ出たほんのり白い冷気に頬と耳がほんのりと撫でられた。
     顔が赤 2293

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    DONE寝起きのデググラです冬の朝


    「朝だぞ、グランツ! ほら! ものすごく朝だ!」
    「うーん……寒い……」
     デグダスが布団の上からおれの身体を揺さぶってくる。今日はいつもより起こし方が激しい。大きな手に力がこもって、がっちりとおれの肩と腰を掴んでいる。ゆさゆさ、と身体が揺れる。その揺れも逆に気持ちよくて、もっと眠くなってくる。
     それに、とても寒いし。
     キミが起こしてくれるのは嬉しいけど、身体がどうしても起きようとしない。揺さぶられてちょっとはだけた布団の隙間から冷たい隙間風が入り込んで、身体が縮こまる。おれはベッドの上でさらに丸くなって、布団の中に潜り込んだ。
    「まだ起きないつもりだな?」
     キミを困らせるのは本意じゃないが……でも今朝のキミは、とても楽しそうだ。声もそうだし、おれを揺さぶって楽しんでるみたいだし、それに次にはベッドがズシンと大きく沈んだ。キミがそこに膝を乗せて、ベッドに上がったのがわかった。
     キミはいつでも優しいが、朝おれを起こすのに布団を引っ剥がすぐらいの厳しさももちろん、ある。少しぐらい寒い日でもキミはあまりためらわない。
     ところが今日はそうしないらしい。キミがおれを起こすの 1395

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    DONE何かと戦っている土蜘蛛さんと大ガマさん落下


     足を滑らせた、かのように見えた。
     高く跳ね上がって、ご自慢の長い髪を振り上げる。同時に空が震える。よく晴れた雲ひとつない空が、水面のように波紋を広げた。
     錯覚である。しかしともかく、あれが妖気の波紋を広げた途端、そこで足を滑らせた。
     空を切り裂く波紋を残し、落下する。
     その仇は我々と異なる理を抱き、不可視であった。音ばかりは耳に届く。悲鳴のごとき轟音が響いた。
     空に巣食っていた目に見えぬ何者かが、目に見えぬ血しぶきを上げ、のたうち回りながら、逃げ去っていくのだった。
     地上では歓声が上がる。勝利と安堵の声を妖怪たちが上げている。
     仇は討った。逃げていく。しかしあれが、真っ逆さま、空から落ちる!
     仇の残した最後の一撃は、あれの胴を撃ち抜いた。だがまるで誰にも見えていない。ただ空で迂闊に足を滑らせたかのような。妖怪たちの軍勢は誰もその一撃を見ていない。だが落ちる。ただ一人、止めの一撃を放ったあれが真っ逆さまに落ちるのを、誰も気付いていない。
     勝利に酔った混沌の中を駆け抜けて、空白の――波紋も悲鳴も血反吐も音もかき消えた晴天の最中へ、たまらず飛び上がった。
     無我 548

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    DONE他愛のない喧嘩未満の土蜘蛛さんと大ガマさん追いかけっこ

     トン、トン、トン、と小気味の良い足音が空に響いている。閑静な町並みには些か騒がしいのではないか、と思われるのだが、かといって誰も天を見上げるものはない。
     人の耳には聞こえぬ音だ。彼奴が屋根から屋根へと伝って駆け跳ね回る足音。昨今の人家はかつて昔の城や要塞のりも高く天に向って伸び上がったものも多く、そこを跳ねる彼奴の足取りも、嘗てと異なる。時代の流れと共に少しずつ変わっている。
    「遅えなあ!」
     空で叫んだ。次いで、高らかに笑った。蛙の声色は、弾けるような音色である。これも天から地から四方八方あちらこちらへ響き渡ったが、無論それを聞いたのは吾輩だけであっただろう。人には聞こえぬし、低級の妖怪にも禄に聞こえまい。あれは疾すぎる。
    「早く捕まえねえとオレが全部食っちまうぜ」
     高い高い玻璃で造られた塔の上で一度立ち止まってそう言った。小袖の胸元に隠したそれをちらりと見せる。
     全く小癪な輩である。
    「まだ本気を出しておらぬだけだ」
     糸をたぐりたぐり、吾輩も塔を駆け上がる。笑い声がよく晴れた空に吹く風と一緒になって、ゆっくりとちぎれちぎれの雲を押し流す。
    「食い意地張って 920

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    DONE土蜘蛛さんと大ガマさんの出会いの話袖振り合うも……


    「ナァナァ、兄さん、案内人何んか、探してんじゃねえか」
     しつこく何度も馴れ馴れしく話しかけられ、仕方なしに振り向いた。
    「お」
     と相手は驚いた顔をする。二の句を失ったかのようで、あんぐり口を開いたまま立ち止まったその男を置いて、吾輩は再び踵を返して歩き出す。街道の人の波に押されてその顔は遠ざかる。
    「あ、おい。おい。そう睨むことはねえだろうよ」
     数歩遅れて再び追いかけてくる。にしてもなんと人の多い街であろう。人もそうだが、妖怪も多い。人に紛れた者もあれば、人には隠れて往来をうろつく者もある。この中から探すのは、いかにも骨が折れる。
    「あんた田舎から出てきたんだろう」
     派手な緑の小袖を尻端折り、白いふんどしを顕にし、そのくせ肩には獣の毛皮を巻いている。いかにも傾いてだらしがない。ろくな相手ではないだろう。とはいえやくざ者と呼べるほど年季の入ったようにも見えないし、まともに取り合うだけ無駄なこと。
    「どうも歩き慣れていねえようだし、案内役を買ってやってもいいぜ」
    「田舎ではない。上方からだ」
    「やっぱりそうか。しきりにキョロキョロしてるから、そんなこったろうと 1301

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    DONE土蜘蛛さんと大ガマさんの出会いの話井の中

     水の湧き出るところに、そいつは落ちてきた。流れてくる水が生ぬるく濁った。なにかの死骸だろう。たまにあることだが、そのままそこで腐ってしまうと水が汚れる。この生ぬるさはきっとまだ息があるということなのだろうが、知ったことか。ともかく水から引き上げて、水源から離れたところに捨て置かなければ。
     上流へ泳いで、湧き水の泉へ、暗い水底から岸を見上げると、そのほとりから垂れ下がったような影があり、影の真ん中から赤い靄がじわじわ広がっている。白い水面を汚している。あれだ。
     湧き水によって削り取られた水底の深いところから手を伸ばし、ひっ掴んでしまおうと思った矢先、浮かび上がろうと力を込めて水底の泥を蹴ったがためか、水面は波打ち、ほとりから垂れ下がった影がつるりと落ちて、底へ沈み始めた。
     暗く深い泉の半ばですれ違う。死骸は人のそれだった。乱れた髪が水草のように絡まって、白い頬にまとわりついている。白い顔、白い頬、白い額……しかし生気を失った死骸のそれとはどうにも違う。こんなに暗い水底なのに、それはまるで光を放つほどに白かった。泥と見紛う青白い死骸の肌とは違うのだった。そしてその唇からは 1171

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    DONE今日も寝起きのデググラ毎日

    「ふが」
     キミの寝言が聞こえたような気がして目が覚めた。キミの方に寝返りを打って転がって、まだうまく開かない目でぼんやりとキミの顔を見る。ベッドの中は暖かくて気持ちがいい。さっきのは寝言だったんだろうか、それともいびきかな。どっちでもかわいい。キミはまだ起きてないらしい。
     キミがまだ目を閉じているのかどうかは、よく見えない。外はぼんやり明るいみたいだ。ただおれの目がまだ開かない。がんばって起きようと目を開いても、やっぱり眠くてすぐに暗闇の中だ。ぼんやりまどろむ。すうすう、と寝息が聞こえる。キミの鼓動と呼吸に合わせて、静かにゆっくり、少しだけ、ベッドとブランケットが波打っている。とても柔らかく。
     ふかふかの雲の波に揺られているようだな、と頭に浮かんだのは半分夢みたいな考えだ。こんなふうに微弱な柔らかい揺れがもっと眠気を誘う。
     寝ようかな。全然、まだ起きなくてもいい時間だ、きっと。
     そう考えながら眠っていたのか、眠っていないのかもわからなくなってきた頃に、突然ベッドが大きく揺れた。
     ドシンと大きな波が雲のブランケットにぶつかった。……というのは、カーテンの隙間から差し込 738

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    DONE市場でソファを探しているデググラサイズがない

    「なかなか……あれもこれもどれもそれも……いい! ウーム」
    「さあどうしようか。ソファはなくても生活できなくはないし、これというのがなければまた後日でも」
    「む。いやしかし明日はまたさらにいいお店が出店していたら、困る。決めきれない!」
    「あはは。じゃあ今までに見た中から決めてしまうか」
    「あ! これはどうだ?! これはすごいぞ、ベッドにもなるソファだ!」
    「へえ、いいじゃないか。座り心地も良さそうだし、デザインも値段も申し分ない」
    「なあ座ってみてもいいか? 座ってみてもいいだろうか、店主! おお、思った以上にフカフカだ!」
    「そんなに端っこに座らずに真ん中に座ればいいじゃないか」
    「いやいや、おれが場所をとってお前が座れなくなったらいけない」
    「別に全く、問題ないとは思うけどな。キミの隣ならなんでも。ま、それはそれとして……。でもこれは確かにいいかもしれないな。これでベッドにもなるなら場所もお金も節約できる。一石二鳥だ」
    「そうだ、一石を投じている……ソファ界に一石を投じているのだ!」
    「待てよ、ベッドにするとこれはシングルサイズだ」
    「ジングルベル?」
    「キミかお 775

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    DONE寝起きのデググラ寝袋の中


     ここはいったいどこだろうな? ふ、と考えてすぐにわかった。ここは家のベッドの上ではないぞ。家の中と山の上ではやはり空気が違うのだ。それにテントで迎える朝は目を閉じていてもとっても眩しい。布地の向こうから朝の太陽がはりきっておはよう! と言っている。
     お布団の中のぬくもりは、いつもとそんなに変わりはしないが。今日もぬくぬくだ。外に出たらちょっぴり寒そうだが。
     でも朝が来たからには起きなければ。
    「よし!」
     気合を入れて、ぐわっと目を開く。うっ、眩しい。朝陽の眩しさで目がシュパシュパする。山の上で迎える朝は、村で迎える朝より眩しいような気もする。太陽に近いからだろうか。
     両目をこすって目を開かせるつもりで手を動かしたら、動かない。おれの両手はお布団の中でなにか重たいものを抱えているらしい。重たいしあたたかいし、柔らかい。いつもとおんなじだ。しかしこう狭いと、ベッドの上と違って全く身動きが取れないぞ。お布団じゃなくて、寝袋の中だからな。
     こうして採掘の途中で野宿をして迎える朝は、悪くない。今朝は天気もいいらしいからなおさらだ。少し肌寒いのも、寝袋の中のぬくもりがかえ 1440

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    DONEちょっとしたことでご機嫌なデググラ宝探しパイ


     今日はいい日だ。天気がよくて、寒くもないし暑くもない。秋の昼下がりらしい涼しい風と、青い空に少しだけ浮かんでいる白い雲がいい具合だ。
     空ばっかり見ているって、わけじゃない。キミを見上げると、どうしてもその向こうに空が見える。店を出てからご機嫌でスキップしながら先を行くキミを追いかけて、道の途中で突然キミが、あっと声を上げて振り返ったところ。
    「グランツ! おまえの分はどうだった?」
     と、キミはおれの手にした袋を指差しながら大慌てで尋ねた。
    「おれの? まだ開けてないな。というかこれはおれの分じゃなくて、おれたちの分だろう。一人でこんなに大きなパイは食べ切れないぜ」
    「そうかな?」
     首をかしげる、キミを見上げる。その向こうに空が見える。日差しも眩しい。とてもいい日だ。
    「まあさっき店で食べた分のパイはハズレだったけどな」
    「そうだったのか!? そ、それじゃおれのこの、大当たりのウサギの王子様の人形を、お、おまえに……」
     そう言いながらも踏ん切りが付かないのか、キミの手は小さな陶器の人形を大事に握っている。大きくて骨ばった手に握られた人形はそら豆のように小さく見え 1189

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    MAIKING夢で見た話 いわゆるゾンビもの的なパニックホラー「ざまァ見やがれ! 見たか!? 見てただろ! 今の! 簡単なんだよ、鬼を殺すのなんか、人間様の手にかかれば、なあ!?」
    「山崎、うるさい!」
     喚いていた山崎が、副委員長の叫びに急に怯えたようにビクッと身体を震わせた。
     山崎の視線が泳ぐ。上ばかり見ている。不完全な照明の天井は薄暗い。割れたLEDの破片は床に散らばって、散乱した血や肉に沈んでいる。
     震えてる山崎の手も汚れている。鉄パイプで殴ったんだから、それほど、だけど。指に付いた血が気になるらしく、何度も鉄パイプを握り直しながら、手についたそれを、鉄パイプに擦り付けようとしている。
    「副委員長、大丈夫」
     窓側の壁に背を向けてうずくまった副委員長に手を差し伸べたが、山崎と同じく汚れたおれの手を見て、彼女は忌々しそうに顔を歪め、首を振った。
    「大きな声出さないでよ。見つかるかもしれないじゃん」
    「うん。確かに、そうだ」
     差し伸べた手の行方に迷う。考えてみれば、副委員長を立ち上がらせたところで、どうしようと思ったんだろう。窓の外は完全に夜で、もうここの他にどこにも行けそうにもない。
    「見つかっても大丈夫だって。さっきのでわかっただろ 3426

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    DONEホラーっぽい雰囲気と大ガマさんうわさ


     そこは住宅街でも外れの方で、ひと気がない。どこまで行ったってここは現代日本の都市部には違いないのだから、そこは忽然と未開発の野や山になっているわけではなくて、ただ古い住宅がどこまでも続いているだけに過ぎない。しかしひと気が少なく、空き家が多く、街路樹とその植え込みは手入れもされず枯れるか、生い茂って歩道を犯すか、どこから飛んできた種なのだろうか、蔦のように伸びた正体のわからない草が電柱へ絡みついて電線まで腕を伸ばし一つになり、空を見上げればその電線こそが互いに弛み絡まって混雑しながら住宅街の上に蓋をしている。夕暮れともなるとその影が特に濃くなる。街そのものの影だ。街灯が少なく、すぐに街は暗くなるからだ。
     この区画は見通しが悪いので、事故や事件の噂が絶えない。あの坂道では十年くらい前から露出狂が出るとか、あそこにあった老人ホームは火事で全部なくなったとか、あの角では交通事故が一昨年起こってそこに住んでいた誰々が亡くなって、その亡くなった幼児の遺体はひどいものだったそうで、遺族は耐えきれず引っ越して空き家となったのが残っているのだが、庭の草や木が好き放題に伸びているのでもう 1554

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    DONE冬眠前の大ガマさん 土ガマ晩秋に


     夜にもなると少し冷える。夏は終わって、秋はあっという間に過ぎる。もうそろそろ冬の足音が聞こえるようだ。
     こう寒いと神経が鈍くなる。オレはどちらかというと夜に強い方なので、こんな冷える夜でも目ばかりは覚めているのだが。
     ぼんやり見上げる月が真っ白だ。十五夜はもうふた回り前になる。今夜の月は、冷えた空気の中で強く白く光っている。その強い眩しさに、どうしても頭に思い浮かべてしまうのは、あいつのことだ。どうにも似ているような気がする。土蜘蛛に。
    「大ガマ」
    「ゲコっ」
     急に声が聞こえて、びっくりして後ろにバタンと倒れた。天井でLEDの真っ白いライトがまるで昼間のような光を放っている。その中ににゅっと、土蜘蛛の顔が割り込んできた。
    「いつから居たんだ?」
    「なに、今しがただ。珍しがっておるようだな。たまには吾輩の方から、驚かしてやろうと思ったまでよ」
     と少し早口に弁明めいたことを言って、咳払いを一つ。
    「勝手に人の屋敷に上がるのは、日頃ならばお主のやることだが」
    「オレが来るたび、あんたは驚いてくれてたのか?」
    「いつも驚き呆れておる」
    「なんだ、素直じゃねえなあ」
     顔を 1420

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    DONE本編が始まるちょっと前のデググラです心臓の音


    「グランツ? グランツ? 大丈夫か!?」
    「う、わ、ああ……、大丈夫だ」
    「全然大丈夫じゃなさそうだ!」
    「いや、大丈夫、大丈夫なんだ」
    「だって今のおまえは何を言っているかぜんぜんわからないぞ」
     そんなことはない。全然しっかりわかっている。と答えようとしたけど、さっきまで以上にろれつが回らなくなってしまった。
     頭がくらくらする。視界もぐるぐる回っている。足にうまく力が入らなくて、自分の足なのに自分の足じゃないみたいだ。
     なのに地面とのキスだけは免れている。なぜだ? 身体中が熱い。飲みすぎだ。
    「さすがに飲みすぎだ。しょうがない」
    「う」
     もう返事はまともな声になってもいない。もっと前からそうだったかもしれない。胸が詰まって変な声が出る。
    「ゆっくり歩こう。家まで送るからな」
    「うん」
     辺りがぼんやり明るい。ほとんど暗い。いつの間にか店の外だ。そしてキミに引きずられるようにして、どうにか歩いている。
     そうだ、ほとんどキミに寄りかかって、歩いている。飲みすぎて倒れそうになったおれをキミが抱きかかえてくれて、それから。
     身体中が熱いし、身体で触れているところも熱 912

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    DONEハロウィンにいちゃいちゃするデググラおかしがあるからいたずらできない


     ビレッジを埋め尽くす大量のお菓子。聞いたところによると、お城の方までこんな状況らしい。おかげで今年のハロウィンは、大人も子どもも全員もれなく、お菓子のプレゼントを受け取ることができた。いたずらをしても、いたずらをしなくても。
    「これはこれで結構疲れるな」
     弟子たちや近所の子どもたちにお菓子を配り終えて一息をついたころには、もう夜も深くなっていた。一階のロックやロッタナの部屋は例年以上にお菓子でいっぱいだ。その上、前途の通り大人の分もきっちりあるから、おれとデグダスの二人分、リビングや台所にまで置かれている。
     こうなるとどこに行っても甘い匂いがしている気がする。さすがに寝室には、お菓子は置いてないはずなんだが。
    「楽しかったなあ」
     パジャマに着替えたデグダスは、まだまだ興奮が醒めないらしく、ベッドにも入らずソワソワしている。窓の戸締まりを確認したり、寝室に飾ったカボチャの顔を突き回したり。
    「キミが楽しんでるところが見れてよかった」
    「おう! ん? おまえはちょっとションボリしていないか? そうか、そういえばおまえは、甘いものはあまり好きでは 1967

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    DONE寝起きのデググラ(お昼寝)よくばりなので


    「ぐわ。うわ?」
     眩しい。目を開けようとしたが非常に眩しい。まだまぶたがうまいこと動かない。開いているのと閉じているのの中間だ。それでもやはりぼんやりと眩しい。
    「おれは寝言を言った気がする」
    「ふっ、くふふふ……」
    「すごく大きな声で寝言を言ってしまった気がする……むにゃ」
    「ふっふっふっふ、それは寝言じゃないのかい?」
    「ンン? グランツも寝言を言っている」
    「おれのは寝言じゃないぜ」
    「ぐわ」
     ぼんやりした天井の風景の中に、グランツの顔がにゅっと割り込んできた。
    「わ! グランツ! こんなところで寝ていると風邪を引くぞ!」
     びっくりしてしっかり目が覚めてしまった。もちろん目もちゃんと開いた。天井の明かりはとてもまぶしいが、おれを覗き込むグランツの顔で少し影になっている。
    「あっはっは、それはこっちのセリフだ。ソファなんかで寝てちゃ、今の季節はいくらキミでも風邪を引く」
    「ウムム、でも暖かだぞ」
    「おれは仕事上がりだからな」
    「おう! おつかれさん!」
     気がつくとグランツもおれと一緒になってソファに寝そべっている。いや、違うぞ。グランツが寝そべっているの 1322

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    DONEまだ蛙の姿の小さい大ガマさんと土蜘蛛さん天気予報


     雨の匂いがすると言う。わらかぬでもない。確かに天候の変わる前、彼方より雨雲を押し運んでくる風の匂い、それは水気を含んだ彼方の土地の匂いとして、わずかに感ぜられる。
    「ヘン」
     と咳払いをした。蛙が咳払いとは不思議なものだ。蓮の葉の上に座って、小さな身体でふんぞり返る。
    「まだまだだな」
     蛙の喉から、人らしき声が。いややはり人とは少し違っている。まだうまく舌を回して言葉にするのが難しいらしく、音の一つ一つが舌っ足らずな。それに小さな身体に釣り合って、微かで、跳ねるように高い。
     その声を聞き漏らさぬために、こちらも池の淵にしゃがみ込む。
    「まだまだとはどういうことだ」
    「雨の匂いについて、まだちっともわかっちゃいないってことさ。仕方ねえな。人間てぇ、そんなもんか」
    「吾輩は妖怪だが」
    「どっちも一緒だ。どう違うのかよくわからん。少なくとも蛙じゃない」
    「蛙は特別か」
    「そうだ、特別だ。こんなに雨に親しいのは蛙だけだ」
    「それはそうかも知れぬな」
    「うん、あんたはよくわかっている。いいか、雨の匂いというのは、水の匂いや土の匂いだけを嗅いではだめだ。それだけじゃねえ、ええ、 1190

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    DONE寝起きのデググラですたまには


     たまには、おれが先に起きることもある。いつもは、キミに起こしてもらうのを楽しみに待つ朝。でも今日のように、キミよりも先に目が覚めた朝は、時々のご褒美だ。
    「すやすや」
     規則正しいキミの寝息。本当にスヤスヤと言っている。寝相もきっちり大の字だ。太い二の腕が、腕枕にちょうどいい。
     腕にそっと頭を載せて、しばらくそのままでいる。寝息は相変わらず、規則正しい。早朝の静かな中にキミの寝息だけが聞こえてくるこの時間が、早起きしたおれにとってのご褒美のひとつ。
     でもあまり長くこうしてると、キミの腕がしびれてしまうかな。それじゃキミの腕がかわいそうだから、いい加減にして起きることにする。
    「ンお」
     起きた瞬間にいびきが。腕が軽くなったから起きたか? 普通は逆なんじゃないか。
     大きな口をあけて、一度だけいびきをかいたキミは、おれを乗せていたのと反対側の腕を大きく動かして、鼻の頭を人差し指でぽりぽり掻いた。
     そしてまた、スヤスヤ、と寝息。ちょっとだけ不規則になった。そういえば、少しずつ外も明るくなってきた。カーテンの隙間から青白い光が差し込んでくる。そろそろキミが起きてしまう時 1078

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    DONEテレビ電話初挑戦の土ガマスピーカー


    「いよう! 土蜘蛛、聞こえてるか?」
     妙に光る薄い板から声が聞こえる。玻璃の貼られた板の表面にはその顔も映っている。面妖な。
    「聞こえてるみたいだな」
    「吾輩はなにも言うてはおらんが」
    「顔見りゃわかるぜ。オレの顔と声にちゃんと反応してくれてるってのが、その眉間のシワでな」
    「なんだと」
     言われて思わず、己の眉間に手を伸ばそうとしたが、こらえる。そう思惑通り動いてなるものか。吾輩はこのまま腕組みのまま頑として動くまい。
    「どうせ面妖だと思っているんだろう。今どきビデオ通話も理解してねえんだもんな」
    「莫迦にするでない。びでおもわかる。通話もわかる。つまり、これがお主との電話……であることは、さすがにわかる」
    「おお、すげえ。わかることいっぱいじゃねえか」
    「幼子に語るかのようだな」
    「いやいや、土蜘蛛さんはご立派……ご立派な……ええ、古の大妖怪様だぜ」
    「ようもそう洒落臭いことばかり言えるものだ。そのような話をするばかりのために、この板を置いて帰ったのではあるまいな」
    「ま、ま、これなら有事の際に直ぐに連絡を取れるだろう」
    「言っておくが吾輩からはこれでお主に連絡を 993