アイスキャンデー「なんで、36度なんだよ……」
アドラー・ホフマンは虚空に呟いた。肩まで垂れたウルフヘアはもう湿気でまとわりつき、シャツの襟元も見るも無惨にぐっしょり濡れている。部屋の空気は重く、壁際に立てば息が詰まるほどの熱気が肌に張り付いた。そんな環境下で、彼の唯一の救いは——今、右手にある一本のミルク味アイスキャンデーだった。
「せめてこのぐらいは冷えててくれよな……」
そう願って唇に運んだ瞬間、滴る。
まだ一口しか齧ってないのに、信じられないほどの速度で溶け始めたアイスの白い汁が、手の甲を伝い、肘にかけてじっとりと落ちる。慌てて舐め取った時にはもう、第二の雫がシャツの裾を狙っていた。
「ちっ……あっつい、なんだこれ……!」
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