お薬ラプラス南側、廃棄された実験ブロックのひとつ。警告灯も点かず、空調も最小限に絞られたその空間に、ひとつだけ煌々と明かりを灯すステンレスの手術台があった。
白衣の袖を捲り上げ、ペアンで髪を固定し直したメディスンポケットは、無造作に台の上へと腰かけた。その手には、濁った琥珀色の液体が入った注射器。シリンジの先端はすでに、自身の腕に埋め込まれたケーブルの受け口に接続されていた。
「さて……今度のは、自己免疫系の抑制を一時的に解除して、神経伝達の速度を倍に……うまくいけばな。」
彼──あるいは彼女、あるいはそのどちらでもない存在は、静かに目を伏せる。白衣の裾がわずかに広がり、機械接続部が艶めいた金属の光を放った。
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