氷の花が咲くところ1.花に秘める
―花というものは、これほど冷たいものだっただろうか
頬に、額に、唇に。触れるどころか視界を塞がんばかりの花々に埋もれながら、そんなことを思った。
頭を振ってみれば、冷たくて甘い匂いのするそれらは音もなく落ちていった。そうして漸く視界が開けた。それでも目に映るのは花ばかり。
青・白・紫。そんな色が散見される。種類も多様なようだ。
何故、これほどまでに花に埋もれているのかといえば、例の如く吸血鬼のポンチ能力のせいである。
街中で能力を発動させる吸血鬼が現れ、ひと騒動起きる。それに巻き込まれるのも、最早何の変哲もない日常である。
しかし、今回に限って言えば、一筋縄ではいかなかった。その能力というのが、
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