妖精族の女の子たちは恋のお話が大好きだ。自分たちのこと、森の動物たちのこと、人間のこと。もちろん全員がそうというわけではないし、妖精姫たるエレインは《そうではない》ほうの妖精だ。
そもそも妖精は生殖で増えるわけでもないのに、恋をしても仕方ないだろうに。
そんなふうにすら思っていた。
今はそうではない、と彼女はもう、自分をごまかせないくらいに自覚している。だって恋をしているから。全く我ながら呆れてしまうとエレインは、目の前で寝転ぶバンにバレないようにそっと嘆息した。出会ってたかだか数日だというのに、このおかしな気持ちはきっと恋と呼ぶものなのだろう。あの頃、まだここに沢山の妖精たちが集まり笑いさざめいていた頃、恋の話に花を咲かせていた彼女たちは果たしてこんな気持ちを味わったことがあるのだろうか。
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