sc16受「失敗」萩景 失敗した。
失敗した、失敗した、失敗した!
胸の内で頭で泣き叫びながら、俺は至極冷静を装って手にした鍵を捻った。ガチャン、と重いような軽いような音が響く。鍵穴に差すまでに何度かカツンカツンとシリンダーにぶつけて細かい傷をつくったのは無かったことにした。
それからいつもの様に金属製の外階段を小気味よく鳴らしてようやく地面に足をつける。いつもよりテンポが狂ってたのは他の住人にはバレてしまっただろうか。だっていつもの通りの平気な顔をしてみせてはいるが、内心それはもう大変大荒れなのだ。今季最大の大寒波なんて目じゃない。多分竜巻と雪と雷が全部発生してる。そのくらい大惨事だ。そりゃあ手元も足元も狂う。正直こうしていつも通りの時間に出勤していることを褒めてもらいたいくらいだ。
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