メイドの日「今日は、メイドの日なんだって」
その日の夜、彼は唐突にそう言った。絶対に言及すると思っていた、俗世間のくだらない記念日だ。この話題に触れたのなら、言われることはひとつしかない。僕は容赦なく相手を睨んだ。
「絶対に嫌だからな!」
「まだ、何も言ってないんだけど……」
苦言を呈してはいるが、頭の中は簡単に読める。聞く価値も無いようなことだ。先回りして、拒否の意思を示す。
「メイド服を着てほしいとか言い出すつもりだろ。絶対に嫌だからな」
この男は、コスプレと女扱いが好きなのだ。僕が嫌がると知りながら、コスプレ衣装を持ち込んだり嫁扱いをしてくる。本当に遺憾だった。
「違うよ。明日メイドカフェに行こうって言いたかったんだよ」
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