昔の話2 目が覚めると、薄い布団の中にいた。人間の話し声やバタバタとした足音が、遥か遠くから聞こえてくる。まだ身体は重かったが、二度寝する気にはならなくて、ゆっくりとその場に身体を起こした。
目の前に広がる光景を見て、僕は言葉を失った。そこは、煉瓦で作られた建物の一室だったのだ。壁際には机と椅子だけが並べられ、それ以外の家具はベッドしか置かれていない。そのベッドも、固いマットレスに薄い布団という粗末なものだった。
僕は、ゆっくりと部屋から抜け出した。狭い廊下の中央には、下へと続く階段がある。どうやら、この階段を降りた下から、にぎやかな音声は聞こえているようだった。
急斜面の階段を、踏みしめるように下へと降りていく。うっかり足を踏み外したら、一階まで転げ落ちて怪我をしてしまうだろう。慎重に足を前に出し、気が遠くなるほど長い階段を下る。
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