sayuta38
DONE魈くんお誕生日おめでと~~な短文魈の誕生日「おかえり、魈」
「ただいま戻りました……」
降魔が一通り終わり、朝方望舒旅館に戻った。いつもはしんと静まり返った旅館に、朝靄の中濡れた霓裳花の花弁がふわりと開くような、そんな時分だ。
眠気を一切感じさせない表情をした鍾離は露台に立っていた。朝早くに鍾離がここを訪れることもあるが、それよりなにやら下が騒がしい。こんな時間に起きている凡人の方が珍しく思う。
「今日は何やら騒がしいですね。催し事でもあるのでしょうか?」
「ああ。今日は大事な行事があってな。俺もその準備の為にここへ来たんだ」
「さようでしたか……では、我は邪魔にならぬよう他の場所で待機いたします」
鍾離だけが何かの準備をしているのならば喜んで手伝いを申し出るが、鍾離が凡人と何かをしようとしているのならば話は変わってくる。魈は凡人への業障の影響を考えなければいけないからだ。すぐ様その場を離れようとする魈を引き止めないところを見るに、やはり自分はその場に必要ではなさそうである。
4007「ただいま戻りました……」
降魔が一通り終わり、朝方望舒旅館に戻った。いつもはしんと静まり返った旅館に、朝靄の中濡れた霓裳花の花弁がふわりと開くような、そんな時分だ。
眠気を一切感じさせない表情をした鍾離は露台に立っていた。朝早くに鍾離がここを訪れることもあるが、それよりなにやら下が騒がしい。こんな時間に起きている凡人の方が珍しく思う。
「今日は何やら騒がしいですね。催し事でもあるのでしょうか?」
「ああ。今日は大事な行事があってな。俺もその準備の為にここへ来たんだ」
「さようでしたか……では、我は邪魔にならぬよう他の場所で待機いたします」
鍾離だけが何かの準備をしているのならば喜んで手伝いを申し出るが、鍾離が凡人と何かをしようとしているのならば話は変わってくる。魈は凡人への業障の影響を考えなければいけないからだ。すぐ様その場を離れようとする魈を引き止めないところを見るに、やはり自分はその場に必要ではなさそうである。
sayuta38
DONE鍾魈短文「あまがっぱ」かっぱを着たミニ魈が、先生の所へやってくる話。
あまがっぱ それは、非常に小さな音だった。今日は雨が降っていて、少し風が吹いている。ただの凡人ならば、小石がドアに当たっただけだと気にする事はないだろう。
しかし、鍾離にはその先に、とある人物がいるのがはっきりとわかる。その気配を鍾離がわからない訳はない。あまりにも控えめにドアを叩くコツコツ、という音に、鍾離は来訪者を迎えるべくドアを開けた。
「魈。いつでも入って来て良いといつも言っ…………魈?」
「わっ」
ドアを開ける風圧に耐えられなかったのか、コロコロ……という音がしそうな程軽快に魈は転がっていってしまった。そんな馬鹿な。夢でも見ているのだろうか。と思うのだが、眠った覚えはない。
「しょうりさま……」
立ち上がった魈は合羽を着ていたが、髪の毛はぐっしょり濡れている。今転んだ事で、少し泥もついている。拭いてやらねばと、慌てて本能的に魈を手のひらに乗せた。
2216しかし、鍾離にはその先に、とある人物がいるのがはっきりとわかる。その気配を鍾離がわからない訳はない。あまりにも控えめにドアを叩くコツコツ、という音に、鍾離は来訪者を迎えるべくドアを開けた。
「魈。いつでも入って来て良いといつも言っ…………魈?」
「わっ」
ドアを開ける風圧に耐えられなかったのか、コロコロ……という音がしそうな程軽快に魈は転がっていってしまった。そんな馬鹿な。夢でも見ているのだろうか。と思うのだが、眠った覚えはない。
「しょうりさま……」
立ち上がった魈は合羽を着ていたが、髪の毛はぐっしょり濡れている。今転んだ事で、少し泥もついている。拭いてやらねばと、慌てて本能的に魈を手のひらに乗せた。
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DONE鍾魈短文「雨宿り」お茶のみしょしょ
雨宿り 雨が降っていた。口実はなんでも良かった。だからそれを理由に、ここへ留まるように言ってみたのだ。
「雨が止むまで、しばらくここへいてはどうだ?」
「? 我は、特に天候は……」
最後の一口を飲み終えて、魈が席を立った。今すぐにでもいなくなってしまいそうだった。今日はなんだか、魈ともう少し共に過ごしたい。そんな思いで言葉を紡いだ。案の定魈は気にするような素振りも見せず、少しだけ眉を寄せて困った顔をした。ここへ魈がいるのも、ただ茶を共に飲みたいという誘いに応えてくれただけである。その他には、何の用もない。
屋根へと振る雨粒の音が、二人の間へと訪れる沈黙を繋いだ。ポツ、ポツ、と雨がガラス戸を叩く。それ程激しくない雨だ。この程度なら、魈はこのまま外へ行ってしまうだろう。
2435「雨が止むまで、しばらくここへいてはどうだ?」
「? 我は、特に天候は……」
最後の一口を飲み終えて、魈が席を立った。今すぐにでもいなくなってしまいそうだった。今日はなんだか、魈ともう少し共に過ごしたい。そんな思いで言葉を紡いだ。案の定魈は気にするような素振りも見せず、少しだけ眉を寄せて困った顔をした。ここへ魈がいるのも、ただ茶を共に飲みたいという誘いに応えてくれただけである。その他には、何の用もない。
屋根へと振る雨粒の音が、二人の間へと訪れる沈黙を繋いだ。ポツ、ポツ、と雨がガラス戸を叩く。それ程激しくない雨だ。この程度なら、魈はこのまま外へ行ってしまうだろう。
sayuta38
DONE鍾魈短文「ホワイトデー」現パロのモブ視点しょしょ。
茶葉の味 私は販売店員をしている。取り扱っている主な商品は、茶葉である。緑茶、紅茶、烏龍茶、それに合うクッキーなどの茶菓子も多数置いていて、都会のビルの片隅にその店はある。
人通りはそれほどない。お客様の層も少し年齢が高めだ。自分より歳上の客人がマジマジと茶葉を眺め、サンプルの茶葉の香りを楽しんでいるところを見るとつい声を掛けたくなる。
初めてで何を選んだら良いかわからないお客様も大歓迎だ。その人の好みに寄り添える商品を提案できた時が至福の一時であり、仕事のやりがいでもある。
「……」
今日も元気に接客をしようと笑顔を作りながら店頭に立っていた。朝一番にここを訪れる客は少ない。だから、余計に目立ってしまったのだと思う。
2489人通りはそれほどない。お客様の層も少し年齢が高めだ。自分より歳上の客人がマジマジと茶葉を眺め、サンプルの茶葉の香りを楽しんでいるところを見るとつい声を掛けたくなる。
初めてで何を選んだら良いかわからないお客様も大歓迎だ。その人の好みに寄り添える商品を提案できた時が至福の一時であり、仕事のやりがいでもある。
「……」
今日も元気に接客をしようと笑顔を作りながら店頭に立っていた。朝一番にここを訪れる客は少ない。だから、余計に目立ってしまったのだと思う。
sayuta38
DONE鍾魈短文「チョコの気持ち」現パロチョコの気持ち「空、少し話したいことがある」
「? どうしたの?」
今日の授業も終わり、いそいそと帰り支度をしている空を呼び止めた。不思議そうに魈の方を見ながらも、鞄に筆箱を突っ込む動作は止めていない。空も特に恋愛に関して熟知している訳ではないと思うのだが、魈にとっては、このようなことを相談できるのが空しかいないのである。
「バレンタインの、チョコのことなのだが……」
「先生に渡すやつ?」
「そ、そうだ」
空に意図がすぐに伝わってしまい、心臓が跳ねた。もうすぐバレンタインデーである。日頃からお世話になっている鍾離への感謝の気持ちを少しでも伝えられれば良いと思い、渡す決心は既についている。問題は何を渡すかである。
「手作りとかどう? 溶かして固めるだけだからそんなに難しくないって蛍は言ってたよ」
1347「? どうしたの?」
今日の授業も終わり、いそいそと帰り支度をしている空を呼び止めた。不思議そうに魈の方を見ながらも、鞄に筆箱を突っ込む動作は止めていない。空も特に恋愛に関して熟知している訳ではないと思うのだが、魈にとっては、このようなことを相談できるのが空しかいないのである。
「バレンタインの、チョコのことなのだが……」
「先生に渡すやつ?」
「そ、そうだ」
空に意図がすぐに伝わってしまい、心臓が跳ねた。もうすぐバレンタインデーである。日頃からお世話になっている鍾離への感謝の気持ちを少しでも伝えられれば良いと思い、渡す決心は既についている。問題は何を渡すかである。
「手作りとかどう? 溶かして固めるだけだからそんなに難しくないって蛍は言ってたよ」
つつ(しょしょ垢)
DONEチョココロネ鍾魈。仙人様がチョココロネのように布団にくるまっていたら食べるしか選択肢はないよねという妄想大爆発。
ネタに加えられるかなーと由来を調べたら稲妻発祥と知る。のでネタに加えました。
面包鍾魈🐚小話
面包
「はいこれ」
公子殿から少し重みのある紙袋を渡される。
「開けていいよ」
贈り物を目の前で開けるのは時に無粋だが勧められたのであれば反応を楽しみたいのだろう。
斯くして中には茶色の巻貝を彷彿とさせる香ばしい香りがする何ものかが入っており、ぐっと眉間に力が入るのを感じた。相手が公子殿という警戒はしていたつもりだったが、友人という油断はしていたようだ。
気取られないように努めたが敏い公子殿には無駄だったようでにやにやと愉悦を隠すことなく向けてきた。
「まずは一本。それチョココロネっていうパン生地でチョコを包んであって、まぁいわゆる菓子パン。相棒に頼んで作ってもらったんだー」
上機嫌で別れを告げる公子殿を見送り帰路につく。
4852面包
「はいこれ」
公子殿から少し重みのある紙袋を渡される。
「開けていいよ」
贈り物を目の前で開けるのは時に無粋だが勧められたのであれば反応を楽しみたいのだろう。
斯くして中には茶色の巻貝を彷彿とさせる香ばしい香りがする何ものかが入っており、ぐっと眉間に力が入るのを感じた。相手が公子殿という警戒はしていたつもりだったが、友人という油断はしていたようだ。
気取られないように努めたが敏い公子殿には無駄だったようでにやにやと愉悦を隠すことなく向けてきた。
「まずは一本。それチョココロネっていうパン生地でチョコを包んであって、まぁいわゆる菓子パン。相棒に頼んで作ってもらったんだー」
上機嫌で別れを告げる公子殿を見送り帰路につく。
sayuta38
DONEしょしょ短文、先生のお誕生日生誕の日に コツン。控えめに扉に手の甲をつけた。この程度の響かない音では、呼び出しとしては不適切だろう。しかし、今日は呼ばれている訳ではない為に、まだ迷う心がそうしてしまっていた。
もう凡人であれば眠っている時間だ。璃月港の中もしんと静まり返り、灯りがついている家の方が少ない。凡人が穏やかに時を過ごしているのならば、それはそれで良いことだと思った。
鍾離の家の灯りはついていない。やはり帰ろうか。はたまた、眠っているのであればこっそりと中へ入り傍で目を閉じるのも良い。生誕の日に何をすれば良いかわからないと鍾離へ告げた時に、共に眠ってくれればそれで充分だ。と彼が言っていたのを遂行しようと、魈は今ここへ来ている。だが、実際に来たのはいいが本当にそれで良いのかと、ここに来て少し悩んでしまっていた。
1311もう凡人であれば眠っている時間だ。璃月港の中もしんと静まり返り、灯りがついている家の方が少ない。凡人が穏やかに時を過ごしているのならば、それはそれで良いことだと思った。
鍾離の家の灯りはついていない。やはり帰ろうか。はたまた、眠っているのであればこっそりと中へ入り傍で目を閉じるのも良い。生誕の日に何をすれば良いかわからないと鍾離へ告げた時に、共に眠ってくれればそれで充分だ。と彼が言っていたのを遂行しようと、魈は今ここへ来ている。だが、実際に来たのはいいが本当にそれで良いのかと、ここに来て少し悩んでしまっていた。
sayuta38
DONE鍾魈短文先生ガチャを頑張る旅人と呼ばれた魈
レベル1「魈~~! お願い~~!」
「なんだ」
望舒旅館の露台にて、堂主にでも呼ばれたのかと思うほどの声量で旅人に名を呼ばれた。屋根の上に姿を現した魈は、何事かと腕を組んで、旅人とパイモンを見下ろした。
「魈がいれば……きっと鍾離先生来てくれると思うんだよ……だから力を貸して欲しくて……」
「? 何の話だ」
魈は旅人がいる所に降り立った。鍾離ならばわざわざ魈がいなくとも旅人に力を貸すだろう。だから、余計にわけがわからず、魈は眉をひそめた。
旅人の話によるとこうだ。今は鍾離と共に旅に出られるチャンスなのだと。先程から星に祈っているものの青色か紫色に空が光るだけなのだと。あと数回しか空に祈ることが出来ないので、神頼みならぬ仙人頼みでもしたい。とのことだった。
3310「なんだ」
望舒旅館の露台にて、堂主にでも呼ばれたのかと思うほどの声量で旅人に名を呼ばれた。屋根の上に姿を現した魈は、何事かと腕を組んで、旅人とパイモンを見下ろした。
「魈がいれば……きっと鍾離先生来てくれると思うんだよ……だから力を貸して欲しくて……」
「? 何の話だ」
魈は旅人がいる所に降り立った。鍾離ならばわざわざ魈がいなくとも旅人に力を貸すだろう。だから、余計にわけがわからず、魈は眉をひそめた。
旅人の話によるとこうだ。今は鍾離と共に旅に出られるチャンスなのだと。先程から星に祈っているものの青色か紫色に空が光るだけなのだと。あと数回しか空に祈ることが出来ないので、神頼みならぬ仙人頼みでもしたい。とのことだった。
sayuta38
DONEしょしょドロライ25回目つなぐ日常
つなぐ日常「魈、お前から見て俺は……ちゃんとした凡人に見えているだろうか?」
「えっ、えぇ……と……? ですね……」
望舒旅館の露台にて、鍾離と共に茶を飲んでいる。いつもの風景だ……と言えるくらいには鍾離はここへ訪れている。しかし今日の鍾離はなぜか、ものすごく気落ちされている。茶を飲んだ後、これでもかという程に深い息を吐いている。このような鍾離を見かけることはあまりない。その訳は、おおよそ今聞かれたことに起因しているのだろうなということまでは、魈は理解できていた。
「我からすれば……鍾離様は凡人の生活に溶け込んでおられると思うのですが」
「そうだな。俺もそのつもりだったのだが……どうやら俺は、女性に好意を持たれないタイプのようなんだ」
3364「えっ、えぇ……と……? ですね……」
望舒旅館の露台にて、鍾離と共に茶を飲んでいる。いつもの風景だ……と言えるくらいには鍾離はここへ訪れている。しかし今日の鍾離はなぜか、ものすごく気落ちされている。茶を飲んだ後、これでもかという程に深い息を吐いている。このような鍾離を見かけることはあまりない。その訳は、おおよそ今聞かれたことに起因しているのだろうなということまでは、魈は理解できていた。
「我からすれば……鍾離様は凡人の生活に溶け込んでおられると思うのですが」
「そうだな。俺もそのつもりだったのだが……どうやら俺は、女性に好意を持たれないタイプのようなんだ」
つつ(しょしょ垢)
DONE懲りずに鍾魈⸜︎🐣⸝話、ゲストは水国アイドルとからくり師匠モラショ時代にすでにお世継ぎがいても良くない?という流れをお見かけして、ならばこっそり仙人sが面倒見てたらいいなの妄想。100年200年単位でまだ幼児なのも妄想。いや、かかさまが見た目幼妻…
たいっつーに投げたのを再編。
鍾魈🐣話忙しい合間に上手に息抜きするのもプロというものでね、決してフォンテーヌまで噂が届いている璃月の新作饅頭を買うために来たわけじゃないよ?こほん、いわゆる市場調査さ。璃月をテーマにした劇のあとなら璃月のおやつが食べたくなるんじゃないかってね。
ようやく店についた途端可愛い坊やがじーっと見つめてきた。うんうん、可愛いものは可愛いものに引かれる。仕方ない。
「坊や、パパかママは一緒じゃないのかい?」
「ぱ? ま、ま?」
あ、璃月の言葉だとえーと
「父様と母様だよ」
「ととさま!かかさま!おばちゃといっしょ」
結局誰と一緒なのか分からずにいると店の奥から女優かな?という美女現れた。
「あいすまぬ、若君。うっかり香菱と料理談義をしてしまいました。おや、そちらは…」
1403ようやく店についた途端可愛い坊やがじーっと見つめてきた。うんうん、可愛いものは可愛いものに引かれる。仕方ない。
「坊や、パパかママは一緒じゃないのかい?」
「ぱ? ま、ま?」
あ、璃月の言葉だとえーと
「父様と母様だよ」
「ととさま!かかさま!おばちゃといっしょ」
結局誰と一緒なのか分からずにいると店の奥から女優かな?という美女現れた。
「あいすまぬ、若君。うっかり香菱と料理談義をしてしまいました。おや、そちらは…」
sayuta38
DONEしょしょドロライ24回目「笑顔」
恋仲になったものの、ギクシャク期の二人。
笑顔のゆくえ ……魈の笑った顔が、一等好きだと気づいたのは、いつだっただろうか。
「……鍾離様……?」
「ああ、なんでもない」
「……はい……」
そう思った後に、今度は魈の笑顔を見れなくなったと感じ始めたのは、一体いつからだろうかと考えた。それ程までに、最近彼の笑った顔を見てはいない。そればかりか、今の魈の眉間には皺が寄っている。この場にいることに対して困っているようにも思う。とてもではないが、にこりとも笑いそうにはない。何故だ。少し前まではあんなに可憐に微笑む顔を見せていたというのに。自分の話に耳を傾けて、たまにふっと笑うその表情は、きっと旅人でも彼がこんなに微笑むことは知らないだろうと、そう自負しているくらいだったというのに。
1694「……鍾離様……?」
「ああ、なんでもない」
「……はい……」
そう思った後に、今度は魈の笑顔を見れなくなったと感じ始めたのは、一体いつからだろうかと考えた。それ程までに、最近彼の笑った顔を見てはいない。そればかりか、今の魈の眉間には皺が寄っている。この場にいることに対して困っているようにも思う。とてもではないが、にこりとも笑いそうにはない。何故だ。少し前まではあんなに可憐に微笑む顔を見せていたというのに。自分の話に耳を傾けて、たまにふっと笑うその表情は、きっと旅人でも彼がこんなに微笑むことは知らないだろうと、そう自負しているくらいだったというのに。
つつ(しょしょ垢)
DONE緋衣草でサルビア。2文字タイトル縛りで遊んでいるので草を外しました。サルビアの花言葉は家族愛。
はい、そのとおり、鍾魈🐥の話。
旅人はいつも先生に噛み付いてる感じですが、「俗世に慣れてない魈をもう少し緩やかに近づいて欲しい」と思っているだけの兄属性完凸冒険者。
緋衣「かかさま、かかさま」
望舒旅館の露台へ向かうにつれて小さな子どもの声が大きくなっていく。
親子連れが宿泊しているのだろうかとぼんやり思案しながら露台に辿り着き、視界に声の主らしい子どもが入ったと思った瞬間、風を伴って舞い降りた何者かが掬い上げるように子どもを抱えた。
見覚えのある、背丈の割に引き締まった背中に自分が声をかける前に相棒の方が彼に呼びかける。
背中越しでもため息をついているのが分かりタイミングが悪かっただろうかと少し歩む速度を落とす。
旅人の気遣いにはお構い無しに相棒のパイモンはふわっと少年...と言うには年齢を重ねているが外見はそうとしか言えない仙人、降魔大聖・魈の前に回り込む。
9048望舒旅館の露台へ向かうにつれて小さな子どもの声が大きくなっていく。
親子連れが宿泊しているのだろうかとぼんやり思案しながら露台に辿り着き、視界に声の主らしい子どもが入ったと思った瞬間、風を伴って舞い降りた何者かが掬い上げるように子どもを抱えた。
見覚えのある、背丈の割に引き締まった背中に自分が声をかける前に相棒の方が彼に呼びかける。
背中越しでもため息をついているのが分かりタイミングが悪かっただろうかと少し歩む速度を落とす。
旅人の気遣いにはお構い無しに相棒のパイモンはふわっと少年...と言うには年齢を重ねているが外見はそうとしか言えない仙人、降魔大聖・魈の前に回り込む。
つつ(しょしょ垢)
DONE大遅刻棒状チョコ菓子の日鍾魈ーー。棒状チョコ菓子のテーマが「幸福共有」(直訳)だったなーと過ぎって跳躍したらこうなりました。がんばって如何わしい先生に仕立てました。念の為ワンクッション起きますが、年齢指定にしていない時点でお察しレベル。
⛅️「助けてえんひーーーー!!」 1403
sayuta38
DONEしょしょドロライ23回目「うたた寝」うっかりうたた寝「……、……」
名を、呼ばれたのだ。確かに「魈」と。
もしかすると勘違いであったのかもしれない。ならばここを去るまでなのだが、些かそれをすることが出来ず、声の主の前で魈は立ち尽くしていた。
鍾離は邸宅にいた。ソファに寄り掛かり目を閉じている。いつもなら「ああ、呼び出してすまないな」と話し始める彼の唇は固く閉ざされていた。
魈は声を掛けるか悩んでいた。特段急ぎの用事もなく、呼ばれたのであればしばらくここに滞在しても構わない。しかしそれを尋ねることもできず、かと言って「気のせいでしたか。それでは」と言って去ることもできない。
じっと鍾離の様子を観察してみる。座ったまま眠っていらっしゃるようだ。端正な顔立ち、整えられた髪、乱れていない衣服。自分が目の前にいるのにも関わらずその気配で起きるという訳でもないということは……きっと大層疲れていらっしゃるのだ。
2326名を、呼ばれたのだ。確かに「魈」と。
もしかすると勘違いであったのかもしれない。ならばここを去るまでなのだが、些かそれをすることが出来ず、声の主の前で魈は立ち尽くしていた。
鍾離は邸宅にいた。ソファに寄り掛かり目を閉じている。いつもなら「ああ、呼び出してすまないな」と話し始める彼の唇は固く閉ざされていた。
魈は声を掛けるか悩んでいた。特段急ぎの用事もなく、呼ばれたのであればしばらくここに滞在しても構わない。しかしそれを尋ねることもできず、かと言って「気のせいでしたか。それでは」と言って去ることもできない。
じっと鍾離の様子を観察してみる。座ったまま眠っていらっしゃるようだ。端正な顔立ち、整えられた髪、乱れていない衣服。自分が目の前にいるのにも関わらずその気配で起きるという訳でもないということは……きっと大層疲れていらっしゃるのだ。
sayuta38
DONE鍾魈短文、ハロウィンネタとりっくおあ…?「トリックオアトリート。お菓子をくれないといたずらをするぞ」
「………………え、えぇと?」
魈は困惑していた。魈の部屋の扉を叩く音がして、鍾離が訪れたのであれば出迎えねばと扉を開けたのだ。
確かにそこには鍾離がいた。しかし、黒いマントを羽織り、手に籠を持った彼はよくわからない呪文を魈に投げ掛けたのである。
「我は……その……」
鍾離は魈の出方を伺っているようだ。なぜなら、鍾離はただ微笑んでいるだけで何の説明もせず、そればかりか何の動作もしなかったのだ。ならばと先程鍾離は何と言ったのか反芻してみる。とりっく……忘れてしまった。その後は菓子をくれと言っていた。さもなければいたずらをするぞ。と。
鍾離のいたずらとは何だろうか。湯殿からあがったらいつもの衣服を隠され、やたらふわふわする着ぐるみのような睡衣を着せられた時のようなことを指すのか。それとも、共寝をした後抜け出そうとしたら、腕の力が強すぎて結局共に寝るしかなかったような事か……そもそもそれはいたずらなのか。不明点が多いように思う。
1478「………………え、えぇと?」
魈は困惑していた。魈の部屋の扉を叩く音がして、鍾離が訪れたのであれば出迎えねばと扉を開けたのだ。
確かにそこには鍾離がいた。しかし、黒いマントを羽織り、手に籠を持った彼はよくわからない呪文を魈に投げ掛けたのである。
「我は……その……」
鍾離は魈の出方を伺っているようだ。なぜなら、鍾離はただ微笑んでいるだけで何の説明もせず、そればかりか何の動作もしなかったのだ。ならばと先程鍾離は何と言ったのか反芻してみる。とりっく……忘れてしまった。その後は菓子をくれと言っていた。さもなければいたずらをするぞ。と。
鍾離のいたずらとは何だろうか。湯殿からあがったらいつもの衣服を隠され、やたらふわふわする着ぐるみのような睡衣を着せられた時のようなことを指すのか。それとも、共寝をした後抜け出そうとしたら、腕の力が強すぎて結局共に寝るしかなかったような事か……そもそもそれはいたずらなのか。不明点が多いように思う。
sayuta38
DONEドロライ22回目「たからもの」布団でごろごろしょしょ!
たからものひとつ 俺は、かけがえのない宝物を手に入れてしまった。璃月に古くからある書物や置物などは、研究や保管に必要だと言われれば、惜しむらくも手放すことができるだろう。
しかし彼だけは、いくらモラを積まれ三日三晩懇願されたとしても、他の誰かに渡すことなど、到底できる気はしなかった。
「鍾離様?」
「魈、おはよう」
「おはようございます」
薄目を開けてぼうっとしているのが魈の目に入ったのだろう。起きたのならと、寝台で横になっている魈の身体を引き寄せた。腕に抱けば自分の身体にすっぽり収まってしまう彼の体躯は、柔らかいとは言い難いが、とても抱き心地が良い。温かい体温と、僅かに感じる魈の匂いは心を落ち着かせ、ここから出る気すら失せてしまうから不思議である。
1509しかし彼だけは、いくらモラを積まれ三日三晩懇願されたとしても、他の誰かに渡すことなど、到底できる気はしなかった。
「鍾離様?」
「魈、おはよう」
「おはようございます」
薄目を開けてぼうっとしているのが魈の目に入ったのだろう。起きたのならと、寝台で横になっている魈の身体を引き寄せた。腕に抱けば自分の身体にすっぽり収まってしまう彼の体躯は、柔らかいとは言い難いが、とても抱き心地が良い。温かい体温と、僅かに感じる魈の匂いは心を落ち着かせ、ここから出る気すら失せてしまうから不思議である。
sayuta38
DONE鍾魈短文※現パロ 腰痛の介護をしてくれる魈の話
お前がいないと情けない。「魈」
小さく呟いてみたが、彼の姿は目の前には現れなかった。それもそのはずだ。何せ鍾離は魔神ではないし、魈も仙人ではない。
特別重いものを持った訳ではない。ただ朝目が覚めて起き上がり、いつも通りベッドから足を下ろし、一歩踏み出した途端に腰に激痛が走った。痛みに膝をつくと、その場から動けなくなってしまったのである。
「鍾離様、もう朝ですが……鍾離様!?」
魈も起きたようで、ドアを開けて直ぐ様駆け寄ってくれた。俺はと言うと情けないことに、どうしたら良いかわからず腰に激痛が入った時の体勢のままであった。
「魈……おはよう」
「お、おはようございます」
魈は膝をつき、俺の顔を見たり床を見たりとそわそわしている。一体どのような状況なのかと、魈の中で理解が追いついていないようだった。
2072小さく呟いてみたが、彼の姿は目の前には現れなかった。それもそのはずだ。何せ鍾離は魔神ではないし、魈も仙人ではない。
特別重いものを持った訳ではない。ただ朝目が覚めて起き上がり、いつも通りベッドから足を下ろし、一歩踏み出した途端に腰に激痛が走った。痛みに膝をつくと、その場から動けなくなってしまったのである。
「鍾離様、もう朝ですが……鍾離様!?」
魈も起きたようで、ドアを開けて直ぐ様駆け寄ってくれた。俺はと言うと情けないことに、どうしたら良いかわからず腰に激痛が入った時の体勢のままであった。
「魈……おはよう」
「お、おはようございます」
魈は膝をつき、俺の顔を見たり床を見たりとそわそわしている。一体どのような状況なのかと、魈の中で理解が追いついていないようだった。
sayuta38
DONEしょしょ版ドロライ21回目お題「おはよう/おやすみ」
おはようとおやすみを「おはよう、魈」
「!? し、鍾離様。おはよう、ござい……ます」
明け方望舒旅館へ戻ると、露台に鍾離が立っていた。なぜ、ここに。と思ったのだが、鍾離は籠を背負っており、何かのついでにここに来たのだろうとすぐに予想できた。
「タケノコを掘った帰りに挨拶がてら望舒旅館へ寄ったのだが、丁度会えて良かった」
「はい……」
「では、また」
「も、もうお戻りになるのですか!?」
「ああ」
本当に挨拶だけをする為に望舒旅館へ寄られたようで、そそくさと鍾離は階段を降りて、あっという間に帰離原を歩いている姿が見えた。
ぽつんとその場に残された魈は、鍾離の歩いていく姿をしばらく見守っていた。姿が見えなくなった頃、本当に鍾離は挨拶だけをしにここに来たのだということを、やっと飲み込めていた。
3411「!? し、鍾離様。おはよう、ござい……ます」
明け方望舒旅館へ戻ると、露台に鍾離が立っていた。なぜ、ここに。と思ったのだが、鍾離は籠を背負っており、何かのついでにここに来たのだろうとすぐに予想できた。
「タケノコを掘った帰りに挨拶がてら望舒旅館へ寄ったのだが、丁度会えて良かった」
「はい……」
「では、また」
「も、もうお戻りになるのですか!?」
「ああ」
本当に挨拶だけをする為に望舒旅館へ寄られたようで、そそくさと鍾離は階段を降りて、あっという間に帰離原を歩いている姿が見えた。
ぽつんとその場に残された魈は、鍾離の歩いていく姿をしばらく見守っていた。姿が見えなくなった頃、本当に鍾離は挨拶だけをしにここに来たのだということを、やっと飲み込めていた。
sayuta38
DONE鍾魈短文「もふもふ」帝君のパジャマより、妄想
もふもふ「魈、魈」
「はい、い、いかがされ……」
いつもなら、ぽそりと呟くような声音で名前を呼ばれるのだが、この日は違った。明らかに何か今すぐ言いたいことがあって堪らない。という、嬉々とした表情をしているのがすぐわかるような声だった。今度はなんだろうかと思いながらも、迷うことなく魈はすぐに鍾離の元へと駆けつけた。
「……これは……」
呼び出されたのは鍾離の邸宅だ。いつもと違った香の匂いが部屋に充満している。その上なんだか鍾離の衣服がいつもと違うのだ。茶色の分厚い着ぐるみのようなものを羽織っている。しっぽもついているそれは、彼の方を想像できるような気もする。
「……今日も、お休みの日だったのでしょうか」
「いや、違う。今日は仕事の日であったのだが……見てくれ! 新しい商品を見つけて思わずお前の分まで購入してしまった。着てみてくれないか?」
1788「はい、い、いかがされ……」
いつもなら、ぽそりと呟くような声音で名前を呼ばれるのだが、この日は違った。明らかに何か今すぐ言いたいことがあって堪らない。という、嬉々とした表情をしているのがすぐわかるような声だった。今度はなんだろうかと思いながらも、迷うことなく魈はすぐに鍾離の元へと駆けつけた。
「……これは……」
呼び出されたのは鍾離の邸宅だ。いつもと違った香の匂いが部屋に充満している。その上なんだか鍾離の衣服がいつもと違うのだ。茶色の分厚い着ぐるみのようなものを羽織っている。しっぽもついているそれは、彼の方を想像できるような気もする。
「……今日も、お休みの日だったのでしょうか」
「いや、違う。今日は仕事の日であったのだが……見てくれ! 新しい商品を見つけて思わずお前の分まで購入してしまった。着てみてくれないか?」
sayuta38
DONE鍾魈短文「休みの日」休みの日「魈」
「はい。いかがされ……」
魈は驚いてしまった。もうとっくに太陽はてっぺんを通り過ぎているというのに、呼ばれた先で鍾離はまだ寝台で横になっていたのだ。
「……どこか、具合が……?」
「いや、大事ない」
緊急事態に招集されたのかと思ったが、違ったようで魈はほっと胸を撫で下ろした。
むくりと起き上がった鍾離はまだ睡衣を着たまま、髪も結うこともなくまさしく寝起きのように見える。
「昨日から仕事が休みでな、一通りやりたいことが終わったので朝寝坊をしてみたんだ」
「さようでございますか……」
朝寝坊をした結果、自分が呼ばれたという事実がイコールで繋がらない。凡人として過ごしていることの報告なのだろうかと、魈は相槌を打った。
1779「はい。いかがされ……」
魈は驚いてしまった。もうとっくに太陽はてっぺんを通り過ぎているというのに、呼ばれた先で鍾離はまだ寝台で横になっていたのだ。
「……どこか、具合が……?」
「いや、大事ない」
緊急事態に招集されたのかと思ったが、違ったようで魈はほっと胸を撫で下ろした。
むくりと起き上がった鍾離はまだ睡衣を着たまま、髪も結うこともなくまさしく寝起きのように見える。
「昨日から仕事が休みでな、一通りやりたいことが終わったので朝寝坊をしてみたんだ」
「さようでございますか……」
朝寝坊をした結果、自分が呼ばれたという事実がイコールで繋がらない。凡人として過ごしていることの報告なのだろうかと、魈は相槌を打った。
sayuta38
DONE鍾魈短文「耳かき」耳かきするしょしょ
耳かき「魈、少し頼みたいことがあるのだが」
「はい、どのようなことでしょうか……」
例えばこれが、魔神戦争の真っ只中であれば、何の疑問も抱くことはなく魔神や妖魔討伐の命だと思っただろう。
「お前は目が良かったな」
「はい……」
しかし、事実上契約関係が終わった今となっては、妖魔討伐を自ら進んですることはあっても鍾離から頼まれることはほぼない。だから、何を頼まれるのか予想がつかず、一歩後ずさってしまう。
「……耳かきをしてもらえないだろうか」
「……み、みみ、かき……ですか」
なんだそれは。少しにこやかに言った鍾離は手には、筆よりも細い棒状のものが握られていた。
「毛繕いのようなものと捉えてもらって構わない」
「……はぁ……」
3131「はい、どのようなことでしょうか……」
例えばこれが、魔神戦争の真っ只中であれば、何の疑問も抱くことはなく魔神や妖魔討伐の命だと思っただろう。
「お前は目が良かったな」
「はい……」
しかし、事実上契約関係が終わった今となっては、妖魔討伐を自ら進んですることはあっても鍾離から頼まれることはほぼない。だから、何を頼まれるのか予想がつかず、一歩後ずさってしまう。
「……耳かきをしてもらえないだろうか」
「……み、みみ、かき……ですか」
なんだそれは。少しにこやかに言った鍾離は手には、筆よりも細い棒状のものが握られていた。
「毛繕いのようなものと捉えてもらって構わない」
「……はぁ……」
つつ(しょしょ垢)
DONE限定マップで鍾魈デートしたいなぁと思いつつ、持ち前のコミュ障でフレさんにもふぉろわさんにも声掛けできず、もんもんとハートの積み木の前に立っていたら生まれました。片想い仙人好物。バレバレなのも大好物。
積木魔女が生み出した世界。
旅人から説明を受け、一緒に探索したいと請われて招かれれば幼子が絵筆を取ったような呑気な景色が広がっていた。
世界を変質させる力を有し、命を、元素を実験対象としか見ていない者達という我の認識と、足元を跳ねる紙や木の住人(?)は混乱に拍車をかける。
「まあまあ、たまには息抜き息抜き」
住人に頼まれて旅人は次々に仕掛けを解いていく。
「魈も解いてみる?」
渡された赤色の木の塊と足元にはモジモジする紙の鼠とすぐ側には面妖な形の赤い塊。欠けた部分は手にしたそれが丁度埋まりそうで、案の定きちんと嵌った。
紙の鼠は「勇気が湧いてきた」と他の鼠へと向かう。しばらくして二匹の間に楽しげな雰囲気が生まれた。
820旅人から説明を受け、一緒に探索したいと請われて招かれれば幼子が絵筆を取ったような呑気な景色が広がっていた。
世界を変質させる力を有し、命を、元素を実験対象としか見ていない者達という我の認識と、足元を跳ねる紙や木の住人(?)は混乱に拍車をかける。
「まあまあ、たまには息抜き息抜き」
住人に頼まれて旅人は次々に仕掛けを解いていく。
「魈も解いてみる?」
渡された赤色の木の塊と足元にはモジモジする紙の鼠とすぐ側には面妖な形の赤い塊。欠けた部分は手にしたそれが丁度埋まりそうで、案の定きちんと嵌った。
紙の鼠は「勇気が湧いてきた」と他の鼠へと向かう。しばらくして二匹の間に楽しげな雰囲気が生まれた。
sayuta38
DONE鍾魈短文「おつかれさま」疲れた先生が魈をぎゅってする話
おつかれさま「! 鍾離様、いらしていたのですか」
「ああ、邪魔をしている」
先日、古い友人達との集まりがあるので一週間程璃月を離れると言って出て行ったはずの鍾離だが、あれから三日程しか経っていない。望舒旅館の最上階、魈が寝泊まりしている部屋に降魔を終え戻ると、そこには鍾離がいた。備えつけの簡素な椅子に腰掛けており、テーブルには茶器が置いてあった。ここで一人茶を飲んでいたようだ。
「……すまない。俺がいては邪魔になってしまうな」
「あ、いえ。新しい茶を淹れてきますので、少々お待ちください」
鍾離は全く立ち上がる様子もなく、珍しく憔悴した顔をしていた。きっと何かがあったのだろう。
厨房へ降りていき言笑に茶を淹れてもらい、再び部屋へ戻る。鍾離は先程と何一つ変わらぬ姿でそこに座っていた。
1853「ああ、邪魔をしている」
先日、古い友人達との集まりがあるので一週間程璃月を離れると言って出て行ったはずの鍾離だが、あれから三日程しか経っていない。望舒旅館の最上階、魈が寝泊まりしている部屋に降魔を終え戻ると、そこには鍾離がいた。備えつけの簡素な椅子に腰掛けており、テーブルには茶器が置いてあった。ここで一人茶を飲んでいたようだ。
「……すまない。俺がいては邪魔になってしまうな」
「あ、いえ。新しい茶を淹れてきますので、少々お待ちください」
鍾離は全く立ち上がる様子もなく、珍しく憔悴した顔をしていた。きっと何かがあったのだろう。
厨房へ降りていき言笑に茶を淹れてもらい、再び部屋へ戻る。鍾離は先程と何一つ変わらぬ姿でそこに座っていた。
sayuta38
DONE鍾魈短文「かき氷とシロップ」現パロです。かき氷を食べるしょしょ。
かき氷とシロップ「お前は……夏休みに何か予定はないのか……?」
「予定……ですか? バイトの予定はありますが……」
「そうではなくてだな」
「?」
大学生の夏休みは長い。ほとんど二ヶ月くらいある程に長い。バイトに生を出す者、課題に励む者、学友と遊ぶ者など様々な過ごし方があるとは思うのだが、魈はそのほとんどを家から出ることもなく過ごしている。週に何回かバイトに行き、それ以外に日雇いのバイトもしているようだが、バイト以外では鍾離と買い物に行くくらいだろうか。友達がいない訳ではないとは思うのだが、こんなにも家にいるものだろうかと少し心配になってしまった。
魈は夏休みの間、掃除、洗濯、食事のほとんどをこなし、その上年末の大掃除でもしているかのように、普段は行き届かない部分まで掃除をしていたりする。 朝も特に変わらずいつもと同じ時間に起きてきて、鍾離が仕事へ行くのを見送ってくれたりもする。家政婦のように家のことをする必要はないと伝えても、前から気になっていたので今掃除することができて嬉しいです。と魈は言っていた。
3058「予定……ですか? バイトの予定はありますが……」
「そうではなくてだな」
「?」
大学生の夏休みは長い。ほとんど二ヶ月くらいある程に長い。バイトに生を出す者、課題に励む者、学友と遊ぶ者など様々な過ごし方があるとは思うのだが、魈はそのほとんどを家から出ることもなく過ごしている。週に何回かバイトに行き、それ以外に日雇いのバイトもしているようだが、バイト以外では鍾離と買い物に行くくらいだろうか。友達がいない訳ではないとは思うのだが、こんなにも家にいるものだろうかと少し心配になってしまった。
魈は夏休みの間、掃除、洗濯、食事のほとんどをこなし、その上年末の大掃除でもしているかのように、普段は行き届かない部分まで掃除をしていたりする。 朝も特に変わらずいつもと同じ時間に起きてきて、鍾離が仕事へ行くのを見送ってくれたりもする。家政婦のように家のことをする必要はないと伝えても、前から気になっていたので今掃除することができて嬉しいです。と魈は言っていた。
sayuta38
DONEしょしょドロライ20回目16回お題から「おかえり/ただいま」
ただいまとおかえり 鍾離が帰ってくるのを待つ生活を始めてから、数日が経った。
夕暮れと共に暗くなってくるリビングに、そろそろ灯をつけなければと魈は立ち上がる。電気をつけると部屋の中にぱっと暖かみが増す。晩御飯を作りだすのに良い時間だと、炊飯器のセットを始めた。
ガチャガチャ。晩御飯も無事に作り終えた頃に、玄関から音がした。鍾離がリビングに入ってくるまでのちょっとした時間は、未だに少しだけ緊張してしまう。家の中のどこにいようか。すぐ顔が見えるリビングのソファで座っているのが良いか、それともすぐに晩御飯が食べられるようにキッチンに行って用意を始めるのが良いか。無駄に家の中をウロウロしてしている間に、鍾離が廊下を抜けてリビングへと入ってきていた。
1406夕暮れと共に暗くなってくるリビングに、そろそろ灯をつけなければと魈は立ち上がる。電気をつけると部屋の中にぱっと暖かみが増す。晩御飯を作りだすのに良い時間だと、炊飯器のセットを始めた。
ガチャガチャ。晩御飯も無事に作り終えた頃に、玄関から音がした。鍾離がリビングに入ってくるまでのちょっとした時間は、未だに少しだけ緊張してしまう。家の中のどこにいようか。すぐ顔が見えるリビングのソファで座っているのが良いか、それともすぐに晩御飯が食べられるようにキッチンに行って用意を始めるのが良いか。無駄に家の中をウロウロしてしている間に、鍾離が廊下を抜けてリビングへと入ってきていた。
つつ(しょしょ垢)
DONE煙緋ちゃんおたおめーーー!!と絶叫していたら生まれました鍾魈。トリクラ煙緋ちゃんに贈れるものといったらもう鍾魈しかなかったよ(血迷い)
六千年生きてるくせに四千歳近く年下の所業に振り回される凡人。
選択昼時にふらりと望舒旅館を尋ねてみれば、相談があると珍しく彼の方から姿を現し、深刻な顔で打ち明けられ居住まいを正す。
「て、しょ、鍾離様は、一般的な少女が喜ぶ贈り物がなんであるかお分かりになりますか?」
緊張すると呼び方が混乱してしまうのが相変わらずで可愛いという半面、目測を誤って己の頭に天星をおとしてしまったかのような衝撃が走った。
動揺する俺に気づく訳もなく視線を泳がせ、どこか恥じ入るような様子に、あぁ、この子はとうとう「誰かを愛おしいと想う」ことに目覚めてしまったのかと、それが自分に向けられなかったことに嫉みという仄昏い感情が渦巻く。
「もうすぐ煙緋の誕生日だと旅人から聞きました。あれには我も世話になりましたので生誕の祝いぐらいはと……」
2256「て、しょ、鍾離様は、一般的な少女が喜ぶ贈り物がなんであるかお分かりになりますか?」
緊張すると呼び方が混乱してしまうのが相変わらずで可愛いという半面、目測を誤って己の頭に天星をおとしてしまったかのような衝撃が走った。
動揺する俺に気づく訳もなく視線を泳がせ、どこか恥じ入るような様子に、あぁ、この子はとうとう「誰かを愛おしいと想う」ことに目覚めてしまったのかと、それが自分に向けられなかったことに嫉みという仄昏い感情が渦巻く。
「もうすぐ煙緋の誕生日だと旅人から聞きました。あれには我も世話になりましたので生誕の祝いぐらいはと……」
sayuta38
DONEしょしょ短文、ラズベリー取りゲームラズベリー取りゲーム「ラズベリー取りゲームをやりたい人~!」
「……鍾離様は……このゲームの内容をご存知でしょうか」
考えもせずすぐに質問するのはいけないとは思っているものの、聞かずにはいられなかった。こそっと耳打ちするように背を伸ばすと、鍾離は身体を傾け、魈の言葉に耳を傾けてくれていた。
「実は俺もよくは知らない。こういったものは実際やってみる方が早いかもしれないな。手をあげてみるか」
「な、あ、はい」
岩王帝君でも知らないゲームがあるのかと、魈は驚いてしまった。しずしず「やらせてもらおうか」と言いながら手をあげる鍾離に合わせ、魈も手をあげた。
テーブルの上にはラズベリーが置いてあり、テーブルの回りには小さなハムスターが立っている。「よ~い……」というアルパカの号令と共に、ハムスターはぐるぐるとテーブルの周りをスキップしだしたので、ハムスターの間に入り、鍾離とテーブルの周りを一緒になって歩いてみた。
1282「……鍾離様は……このゲームの内容をご存知でしょうか」
考えもせずすぐに質問するのはいけないとは思っているものの、聞かずにはいられなかった。こそっと耳打ちするように背を伸ばすと、鍾離は身体を傾け、魈の言葉に耳を傾けてくれていた。
「実は俺もよくは知らない。こういったものは実際やってみる方が早いかもしれないな。手をあげてみるか」
「な、あ、はい」
岩王帝君でも知らないゲームがあるのかと、魈は驚いてしまった。しずしず「やらせてもらおうか」と言いながら手をあげる鍾離に合わせ、魈も手をあげた。
テーブルの上にはラズベリーが置いてあり、テーブルの回りには小さなハムスターが立っている。「よ~い……」というアルパカの号令と共に、ハムスターはぐるぐるとテーブルの周りをスキップしだしたので、ハムスターの間に入り、鍾離とテーブルの周りを一緒になって歩いてみた。
sayuta38
DONEしょしょドロライ19回目童話「鶴の恩返し」
ヤマガラのおんがえし むかしむかし、あるところに、魔神モラクスが住んでいました。モラクスは人間に興味を持ち、もっと知りたいと考え、普段は人間の姿に化けて街の外れに一人で暮らしていました。
ある雪の降る夜、モラクスが雪を踏み締め散策していると、か細い鳥の鳴き声が聞こえてきました。
声の主の所へ行くと、声の主は小さな翡翠色をしたヤマガラでした。足枷を付けられ、鎖で木に繋がれておりました。
「……これは、ただの足枷ではないな」
他の魔神の気配を感じたモラクスは、足枷をじっくり見ました。ヤマガラはここから動けないように呪詛を掛けられていました。足からは血が流れ、白い雪を朱に染めていました。この寒空の下でこのように放置されていては、そのうちヤマガラは息絶えてしまうだろう。モラクスはそう思い、足枷を手刀で叩き割ってヤマガラを救い出しました。足の治療も施し、自身の加護をつけた後に森へ帰してあげました。
2698ある雪の降る夜、モラクスが雪を踏み締め散策していると、か細い鳥の鳴き声が聞こえてきました。
声の主の所へ行くと、声の主は小さな翡翠色をしたヤマガラでした。足枷を付けられ、鎖で木に繋がれておりました。
「……これは、ただの足枷ではないな」
他の魔神の気配を感じたモラクスは、足枷をじっくり見ました。ヤマガラはここから動けないように呪詛を掛けられていました。足からは血が流れ、白い雪を朱に染めていました。この寒空の下でこのように放置されていては、そのうちヤマガラは息絶えてしまうだろう。モラクスはそう思い、足枷を手刀で叩き割ってヤマガラを救い出しました。足の治療も施し、自身の加護をつけた後に森へ帰してあげました。
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DONEしょしょドロライ19回目お題:童話
シンデレラ風
灰もかぶらない むかしむかし、ある所に、それはそれは大層綺麗な見目をしている夜叉がおりました。夜叉は元々魔神の元で扱き使われておりましたが、戦で主を失ってしまいました。
帰る所を失った夜叉は、主であった魔神を打ち負かしたモラクスに拾われ、他の夜叉の仲間達と暮らすことになりました。しかし、夜叉は他人を信じることができません。名も告げなかった為、他の夜叉からは金鵬と呼ばれていました。
金鵬は、よく働く夜叉でした。床を掃除して欲しいと言われれば箒が折れる程一日中床を磨いておりました。働かずともゆっくり過ごしてくれれば良いと他の夜叉からは伝えられ専用の部屋も用意されておりましたが、いつも隅っこに座り込み、目を瞑っておりました。
2854帰る所を失った夜叉は、主であった魔神を打ち負かしたモラクスに拾われ、他の夜叉の仲間達と暮らすことになりました。しかし、夜叉は他人を信じることができません。名も告げなかった為、他の夜叉からは金鵬と呼ばれていました。
金鵬は、よく働く夜叉でした。床を掃除して欲しいと言われれば箒が折れる程一日中床を磨いておりました。働かずともゆっくり過ごしてくれれば良いと他の夜叉からは伝えられ専用の部屋も用意されておりましたが、いつも隅っこに座り込み、目を瞑っておりました。
sayuta38
DONEしょしょドロライ19回目水遊び、手を繋ぐ
水遊び「あの……鍾離様……」
「ん?」
「これは……一体……」
望舒旅館が見える、そう遠くない浅瀬にて、川に沿うように鍾離と歩いている。
ただの散歩であれば、ここまで疑問に思うこともなかっただろう。魈の右手は、鍾離の左手と繋がれている。二人とも手套を外し、装具も付けていない装いだった。なんなら靴も履いていない。素手で鍾離と手を繋ぎ、ちゃぷ、ちゃぷ、と浅瀬を歩く水音だけが耳に聞こえる。
「水に慣れようと思ってな。お前と共になら急に蟹が現れても驚かないだろう」
「はぁ……」
「うっかり滑って転びそうになっても、お前であれば受け止めてくれると思ったが、違っただろうか」
「いえ……」
さようでございますか。我がお役に立てて良かったです。
2233「ん?」
「これは……一体……」
望舒旅館が見える、そう遠くない浅瀬にて、川に沿うように鍾離と歩いている。
ただの散歩であれば、ここまで疑問に思うこともなかっただろう。魈の右手は、鍾離の左手と繋がれている。二人とも手套を外し、装具も付けていない装いだった。なんなら靴も履いていない。素手で鍾離と手を繋ぎ、ちゃぷ、ちゃぷ、と浅瀬を歩く水音だけが耳に聞こえる。
「水に慣れようと思ってな。お前と共になら急に蟹が現れても驚かないだろう」
「はぁ……」
「うっかり滑って転びそうになっても、お前であれば受け止めてくれると思ったが、違っただろうか」
「いえ……」
さようでございますか。我がお役に立てて良かったです。
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DONEしょしょドロライ18回目恋煩い
無自覚な魈の話。
恋煩い 頭痛、吐き気、眩暈、身体の痛み、それらは常のことであるからにして、今更この不調をどうにかしようとは思わない。それは己の責務からの逃げとなるからだ。
「鍾離様……」
モラクスとの契約は終わったが、それ以外の生きる術を知らない魈にとって、近頃なんとなく鍾離のことを考える時間が増えていた。鍾離とゆっくり茶を飲み、話を聞き、共に璃月を散策する穏やかな時間は、己の心を落ち着かせ、穏やかな気分にさせてくれる。それは一過性のものではあるものの、ふとした時に思い出しては、心の支えにしていた。今もそうだ。降魔を終え、ほっと息を吐き、昨日お会いした時の鍾離の笑顔を思い出して気を保っていた。すると、特に休息を得なくても身体が軽くなって、次の戦闘へと身を投じることができていた。食欲もいつにも増してなくなっていたが、気にする程ではなかった。しかし、近頃は鍾離のことを思い浮かべると、それ以上に胸が苦しくなってくるので不思議であった。思わず木の幹に手をつき、胸を押さえた。呼吸が乱れる。心臓の音がうるさい。
2182「鍾離様……」
モラクスとの契約は終わったが、それ以外の生きる術を知らない魈にとって、近頃なんとなく鍾離のことを考える時間が増えていた。鍾離とゆっくり茶を飲み、話を聞き、共に璃月を散策する穏やかな時間は、己の心を落ち着かせ、穏やかな気分にさせてくれる。それは一過性のものではあるものの、ふとした時に思い出しては、心の支えにしていた。今もそうだ。降魔を終え、ほっと息を吐き、昨日お会いした時の鍾離の笑顔を思い出して気を保っていた。すると、特に休息を得なくても身体が軽くなって、次の戦闘へと身を投じることができていた。食欲もいつにも増してなくなっていたが、気にする程ではなかった。しかし、近頃は鍾離のことを思い浮かべると、それ以上に胸が苦しくなってくるので不思議であった。思わず木の幹に手をつき、胸を押さえた。呼吸が乱れる。心臓の音がうるさい。
sayuta38
DONE鍾魈短文「酒癖」酒癖「ほう……これは」
仕事を終え、いつものように三杯酔で講談を聞き、自宅へ戻った。時に仕事が長引いたり、留雲に会って食事をすることもあるが、毎日がそういう訳でもない。
日が港の方へゆっくり沈み、夜が訪れる。今日も平和な一日であったなと、鍾離は平穏な心持ちであった。
自宅へ戻ってからも、すぐに眠る訳ではない。茶を淹れ、書物を読み、一人の時間を過ごした後、睡衣に着替えてから寝台へと上がる。
その、着替えようと衣装棚へ近づき、寝台が目に入った時のことだった。
──魈が、鍾離の寝台のど真ん中で眠っていたのである。
あまりに景色に溶け込み過ぎて、思わず目を疑ってしまった。そもそも、彼がこの家にいる気配になぜ気づかなかったのだろうか。いるはずがないと思い込んでいたせいからかもしれない。
1542仕事を終え、いつものように三杯酔で講談を聞き、自宅へ戻った。時に仕事が長引いたり、留雲に会って食事をすることもあるが、毎日がそういう訳でもない。
日が港の方へゆっくり沈み、夜が訪れる。今日も平和な一日であったなと、鍾離は平穏な心持ちであった。
自宅へ戻ってからも、すぐに眠る訳ではない。茶を淹れ、書物を読み、一人の時間を過ごした後、睡衣に着替えてから寝台へと上がる。
その、着替えようと衣装棚へ近づき、寝台が目に入った時のことだった。
──魈が、鍾離の寝台のど真ん中で眠っていたのである。
あまりに景色に溶け込み過ぎて、思わず目を疑ってしまった。そもそも、彼がこの家にいる気配になぜ気づかなかったのだろうか。いるはずがないと思い込んでいたせいからかもしれない。