幕間の楓恒㊼口づけを交わすときは目を閉じるべきだという話をしたのは丹楓の方だと言うのに、感じる視線から丹楓が此方をじっと見つめていることがわかる。
それならばと丹恒も目を開けていようとしたことが何回もあったが、唇が触れ合う直前、丹楓の顔や吐息をすぐそこに感じてしまうと恥ずかしさもあり目を閉じてしまう。
今日も丹楓の膝の上に抱きかかえられたと思った瞬間に近づいてきた丹楓の吐息に、ゆっくりと瞼を下ろしながら丹恒は丹楓の服の裾を握りしめてしまった。
だが、そんな二人の耳に届いた扉を叩く音に、丹恒はびくっと体を跳ね上がらせる。
「丹恒様、ご依頼を受けていた書物をお持ちいたしました」
「…ッ! あ、あぁ…」
そういえば、丹楓が部屋へと戻ってくる前に、指南書を探していると屋敷に居た誰かに頼んだかもしれない。
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