111strokes111 @111strokes111https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A何かありましたら。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 308
111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.15───祖霊や神霊に選ばれて巫者になるものは精神に異常をきたすことが多い。あるはずがないものを見て聞こえないはずの声を聞くうちに日常に支障が生じるのは想像に難くない。だがこうやって祖霊や神霊は巫者候補が他者を二心なく助けられる人物であるかどうか確かめているのだという。選ばれたものが祖霊や神霊の指示に逆らって巫者にならないと今度は家族や飼っている動物の命を奪うのだ─── あの日のディミトリはグレンの断末魔を聞いた。父の首が落ちるところを見た。にも関わらず首謀者の姿だけは見ることが叶わなかった。《許さない、殺す前に手足をもいでやる》あの日以来、死者は毎日ディミトリの耳元で首を捧げよと訴えて来る。名前が分からなければ、顔が分からなければこの手で首を捩じ切ることもできない。だがそんな歯痒い日々は地道な努力とは関係なく終わりを告げた。 2804 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.14───ダスカー人は憑霊状態になった巫者と巫者本人の間に明確な一線を引く。巫者は祖霊と交流するのに欠かせない特殊技能の持ち主であると認めているが、それでも巫者本人は祖霊の入れ物に過ぎないからだ。依頼者は巫者がその身に宿した祖霊にしか用はない。憑霊状態の時には平伏しても巫者本人は人として扱う。(中略)老いや病でその身に祖霊を下ろせなくなった巫者は弟子に地位を譲り、依頼者そして信者としてかつての弟子を相手に平伏すらするのだ─── シルヴァンの副官として儀式に参加しているローレンツは緊張しているのか、ずっと黙っていた。本来なら俗人が入ることを許されない聖域は静謐さに満ちている。軽口を飛ばすのも憚られるような状況で儀式は失敗に終わった。望んだ時に望んだような奇跡は起こらない。 2865 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.13───巫者が祖霊に肉体を明け渡している際は暗闇の中にいるようで周囲で何が起きているのかよく分からないし覚えていられず意識も保てないのだという。辺りを見回す目、物音を聞く耳、思考する頭、言葉を発する口を貸し出していると考えれば納得できる。(中略)言葉と思考は切り離し難いものだ。思考だけがあっても言葉がなければその思考は他者から理解されない。思考と言葉は互いに根源にも結果にもなりうる。思考の限界と言葉の限界は一致しているのだ─── セイロス騎士団は出自を問わない。シャミアのような信徒ではないものも所属しているし、ハンネマンやマヌエラのような帝国出身者も、同盟出身者も王国出身者もいる。だからクロードとディミトリは同じ手法を取っていた。血筋を利用して騎士たちを油断させ、レアの出した箝口令を掻い潜っている。図々しい話だが、女神と教会は無謬だとしても騎士やその実家の面々は俗世間に属しているので責めないでやって欲しいと思う。 1992 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.12───ダスカーでは葬儀を終えた一週間から四週間後に巫者を呼ぶ。巫者は遺族や故人の友人たちの前で死後の世界へ旅立ったばかりの故人の魂を呼び戻し、己の身体に憑依させる。遺族や友人は故人と生前の思い出話をして死後の世界での暮らしぶりを聞き、何かして欲しいことがないか、言い残したことがないかを問う。この場では遺族と死者との口論が起きることも珍しくない。葬儀は死者を悪霊ではなく祖霊にするための儀式で、巫者による呼び戻しは死者個人のために行われる─── 昨日は本当にいい日で、フェリクスとイングリットがそれぞれに踊る姿を見たディミトリはずっと微笑んでいた。彼の伯父であるイーハ公は絶対に認めようとしないが、ディミトリは他人の幸福に喜びを見出す。それなのに続いて欲しい日常は儚い。 1971 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.11───魂の抜けた身体は御者のいない馬車に例えられる。馬はあちこち好き勝手に走り回り、方々にぶつかり馬も傷つく。そのうち御者がいないことに気づいた悪霊が馬車に乗り込む。一方で巫者は御者に例えられる。自らの意思で魂を抜いた身体に精霊を憑依させるからだ。だが巫者の内なる世界で何が起きているのか、は彼らを外部から観察するしかない余所者が客観的に判断するのは不可能だ。─── 日頃は施錠されていて出入りの許されない女神の塔はわざとらしく鍵が外されていた。修道院の粋な計らいだろうか。クロードは少し離れた場所から、散り散りに塔へ向かっては見つからないように出てくる学生たちを眺めた。結果として入れ替え制になっていることに皆が気が付かないのは見つからないように必死だからだろう。意識はお相手に集中しているので前後に誰がいたのか、など考えもしない。 1973 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.10───巫者が精霊や神と交流を持つ際にどのような手順を踏むのか、は巫者自身の魂をどう扱うのかによって変化する。ダスカーの巫者は己の肉体から魂を抜き、空き家状態となった肉体に精霊や神を宿して助言を得る。助言の内容を巫者は把握することができず、依頼人や助手に聞き取って貰わねばならない。(中略)安全に魂を抜くには手順が決まっている。太鼓に合わせて歌いながら踊るのだ─── 士官学校の舞踏会は白鷺杯の翌日に行われる。制服着用で本来の舞踏会より地味な催しだが、ルミール村で見てしまったものから気を逸らすのには丁度いい。《家も人も黒焦げだ》舞踏会に慣れている貴族階級の学生は淡々としているが、平民や位階があまり高くない貴族の学生からすると王子や皇女と踊る一生に一度の機会だ。《そのまま突き飛ばせ》ディミトリもエーデルガルトも忙しい夜になることだろう。 2839 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.9───鉄鍛治職人の道具に生贄の雄山羊を捧げる儀式を執り行うのは精霊や神と交流する力を持つ巫者だ。金槌や大槌などの鉄鍛治道具はそれぞれに神が宿っている。巫者はそれらの神々の名前を巧みに取り入れた祈祷歌を歌いながら順番に祈りを捧げていく。(中略)ダスカーの悲劇の後、ファーガス本土からの入植者たちはダスカー人の鉄鍛治小屋の建造を制限した。生活必需品である農機具の数を管理することによって支配力を強化し─── 疫病、と聞いてシルヴァンの胸は再びざわついた。疫病が蔓延していなかったらシルヴァンはこの世に生まれていない。疫病が蔓延したからシルヴァンの父は身重であった前妻を北方に避難させた。そこで彼女が命を落としたからシルヴァンの母はゴーティエ家に後添えとして入っている。 1991 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.8───鉄鍛冶職人は武具、馬具、調理器具、農機具と言った人間の生活に関わる品だけでなく巫者が使う呪具、つまり精霊や祖霊が関わる品も作る。霊を呼ぶ時に鳴らす鈴や儀式の際に使う角付きの兜、捧げ物を載せておく皿などだ。ダスカーの神話では、鉄鍛治の技法は天から授かったとされている(中略) 霊力がある鉄鍛治職人は祈祷を捧げながら呪具を作り、霊力を移す。霊力を吸い取ってしまわぬよう彼らの仕事道具には数年に一度、生贄が捧げられる─── アドラステア帝国からディミトリの母国ファーガス神聖王国が独立し、ファーガス神聖王国からレスター諸侯同盟が独立した。どの国もセイロス教を信じているせいか帝国は南征、王国は北伐、同盟もパルミラの侵攻を止める防衛戦しかしない。国の周縁がちぎれていく時以外フォドラの中で大乱が起きることはなかった。 1991 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.7───ダスカーやパルミラの巫者は患者の主体的な経験としての苦しみを癒す。フォドラの回復魔法や医術のように客体的な疾患を治療するわけではない。だから霊的な理由で体調不良に陥る、と信じるものたちも骨折や脱臼の際には骨接ぎを利用するし、発熱の際はまず、薬師に薬草を煎じてもらう。(中略)おそらく病という単語の意味がフォドラとは違うのだ。彼らの苦しみは他者に認められて初めて認識される─── フレンが行方不明になった。学生も彼女の行方を探すようとのお達しが出ていて、シルヴァンはひどく居心地が悪い。自分がマイクランに殺されかけた時もこんな騒ぎだったのかもしれない、と思うと感情が昂る。───お前を山に還せば母上が喜ぶ─── 2821 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.6───病に苦しむだけではない。霊魂が抜けだし、空になった肉体は日頃の本人とかけ離れた行動をする。行動を律していた霊魂が抜け出すと病は治る兆しを見せず生気が抜け、無気力になることが多い。そこに悪霊が取り憑くと本人だけでなく、周りに死や不幸をもたらす存在になってしまうのだと言う。その場合、巫者は悪霊を祓い、見つけた魂を本人の身体に戻さねばならない─── 出席が義務付けられている礼拝が終わり、学生たちはそれぞれに次の教室へ向かおうとしている。そんな大聖堂の中にクロードのくしゃみの音が響いた。顔を咄嗟に肘の内側に当てていたがそれでも完全に音を殺すのは難しい。《寒がり、寒がり、襟巻きで首を絞められるのが怖いのさ》ディミトリの頭に響く声がクロードを小馬鹿にする。夜な夜な修道院の敷地内を彷徨くクロードはディミトリが部屋にいないことを知っているが、沈黙を守っていた。 2004 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.5───つまりフォドラとは因果が異なるのだ。霊魂を失った結果、体調を崩す。肉体から離れた霊魂は我々の世界を漂っていることもあれば、神々の住む世界まで飛んでいってしまうこともある。(中略)霊魂は様々な理由で肉体を離れる。呪いをかけられた時、肉体や精神が激しい衝撃を受けた時、先祖や精霊が何か伝えたいことがある時─── イーハ公リュファスがブレーダットの紋章をその身に宿していたら、ディミトリは命を狙われなかっただろう。マイクランがゴーティエの紋章をその身に宿していたら、シルヴァンに殺意を抱かなかったはずだ。ディミトリもシルヴァンも殺意には慣れきっている。 だからシルヴァンはディミトリが何を言いたいのかすぐに察した。推理ではなく経験が答えを導く。この殺意は見せかけに過ぎない。騎士団は真に守るべきものを見誤っている。大司教より大切な存在が彼らにはないのだろうか。 2021 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.4───フォドラの常識で言えば身体が一つであるように霊魂も一つだ。だが近隣諸国にはそのように考えない人々が存在する。精神を司る霊魂と肉体を司る霊魂の二つがある、と考える人々もいれば五つだと考える人々もいる(中略)失われた霊魂を身体に戻すことによって身体は健康をとり戻す。では失われた霊魂は何処にあるのか。巫者は目に見えない霊魂の所在を明らかにせねばならない─── ロナート卿の名を耳にして叔父の顔がよぎったディミトリは叛乱についてレアとセテスから話を詳しく聞きたかったのだが、通り抜ける風が耳元でやかましく騒ぐ。《お前も仇を討て、殺せ、首を、》無駄だと分かっているが大きな溜息をついた。彼も、彼の民も破滅させられる。全てが終わった後を任されるのは辛いがせめて戦後の処理が苛烈にならないよう尽力するしかない。 2816 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.3───精霊や神と交流する力に恵まれた巫者も大まかに二つに分類することができる。過酷な修業と儀式を経て、力を得たものたちと精霊や神に選ばれて力を得たものたちだ。一晩中、呪文を唱えながら己の身体を鞭打つ修業や焼けた炭の上を裸足で歩く儀式などが有名だ。(中略) 選ばれた、というと修業や儀式抜きで楽に力を得たような印象を受ける。だが神に選ばれたものたちは巫病と呼ばれる謎の病に長期間、苦しむ。巫病は当初、巫病として認識されない─── 敵わない。多少はある年の功も、この身に宿す紋章も残酷な格差をシルヴァンに思い知らせるだけだった。退屈なほどに静かだった夜は切り裂かれている。彼を守るためグレンは命を落としたというのにディミトリは駆け出してしまった。 1980 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。家出息子たちの帰還.2───ダスカーでは巫者は大まかにふたつに分類される。精霊や神と交流を持つ力に恵まれたものたちと儀礼や占いや医術を学んだものたちだ。真偽の判断がつけにくいにも関わらず、前者の方が評価が高い。 手元で再現できる技術に絶望したものたちが巫者に頼るからだ。(中略)計り知れない神秘の力にすがる人々を愚かだと断じるのは容易い。ただし真偽の判断がつかない領域はよからぬものが参入してしまう─── 平地にあるフェルディアと山中にあるガルグ=マクは寒さの質が異なる。空気が乾燥していて風が強いせいかフェルディアにいる時より喉が渇きやすい。蝋燭の心許ない灯りに照らされながら、ディミトリは水差しから杯に水を汲んだ。どちらも銅製なので陶器や硝子と違って砕けることがない。不注意で歪めてしまってもドゥドゥに直してもらえる。 1976 111strokes111DONEVer.3に大体7000文字くらい加筆しました。手直しはしますがこのまま書き下ろしの短編を足して5/4こくほこで本にします。クロロレ オメガバース ↑18?↑y/n 27502 111strokes111MAIKING蒼月ルートのクロロレです。またちまちまと書いていきます。家出息子たちの帰還.1 ───ダスカー人の中には人間がその霊魂を喪失したことにより病が生ずる、と考えるものたちがいる。彼らの中で病人が出ると巫者はその魂を探すための儀礼を行う。(中略)一方でパルミラの霊媒文化は国土が広いこともあり、寄り合い所帯のようになっている。一言では言い表すことは不可能だ。だが基本的には災厄の原因を霊的に突き止め、除去することに変わりはない─── クロードは仕立ててもらったばかりの士官学校の制服に身を包み、言われていた通りに扉を叩いた。書斎にいる祖父は先ほどは制服姿を見せに来い、と言っていたが昼食後しばらく経っていてこの陽気なのでうたた寝をしているのではないだろうか。数秒待ってみたが反応がない。いつもなら入室を促す声がする。 1982 111strokes111MAIKINGクロロレ ビッチングネタver.3https://poipiku.com/1455236/9748156.htmlから1万文字加筆ラスト5000〜7000文字くらい加筆して5/4こくほこで本にする予定です↑18?→y/n 19680 111strokes111DONE翠風ルートのクロヒル+ロレマリ本「かのひとはうつくしく」のboostお礼冊子に載せた小説の全年齢版です。「かのひとはうつくしく」本文はこちらで全て読むことが出来ます。https://horreum.sub.jp/teg/?cat=novel3通販はこちらhttps://111strokes111.booth.pm/items/5447195「雷雨」子孫繁栄は民草から皇族までありとあらゆる階級の願いだ。爵位がある貴族の家ともなれば子を成すことは大前提で、それが紋章を受け継ぐ男子であれば尚良いとされている。マリアンヌを見そめたグロスタール家の嫡子は周囲の期待を裏切ることなくグロスタールの紋章を持つ男子として生まれた。彼の御母堂はきっと安堵の涙を流したのであろう、とエドマンド辺境伯は思う。一方で養女のマリアンヌはモーリスの紋章を持たずに生まれてくることを期待されたが、実父から呪いを受け継いだ。行方不明になった妹と彼女の夫のことを思うと呪いが解けた今でさえ───辺境伯は未だに涙を禁じ得ない。 寂しくもめでたいことがあり、呑みすぎたエドマンド辺境伯は真夜中に目が覚めてしまった。目覚めてよかったのかもしれない。辛うじて上着は脱いでいたが寝巻きに着替えてもいないし、何もかぶらずに寝てしまったので耳や頭が冷え切っている。喉の渇きを潤すために杯に注いだ水差しの水も冷え切っていた。 12355 111strokes111DONEクロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート。pass:↑18?y/n有情たちの夜.20「その後・下」 3321 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート。有情たちの夜.19「その後・中」 七年近く失踪していた代償は大きかった。無事、パルミラの大王である父への目通りが叶い、王宮での身分は復活したが、昔と同じく心の置き場がない。血筋の良いシャハドが大して軍功を積んでいなかったことだけが救いだが、先方もそう考えていることだろう。野垂れ死していなかったのは残念だが、華々しい戦果を上げていないのなら許容範囲のはずだ。 均衡を崩したくて大勝負に出たのに王宮内での状況は全く変わっていない。生還を喜ぶ母にせがまれてパルミラと違って熾烈な変化を遂げたフォドラの話をしたが、どうしても祖父、そしてジュディッドの死が影を落とす。不死隊をも打ち破ったエーデルガルトとベレスにどうすれば勝てたのか。苦い記憶は日々、心を蝕むが、それでも───みっともなくベレスとエーデルガルトの慈悲に縋らなかったら母をどれほど悲しませていただろうか。 3316 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提ですのでご注意ください。紅花ルート有情たちの夜.18「その後・上」 ローレンツを解放した翌日、ヒューベルトは帝国が接収したデアドラ港で遠眼鏡を手にしていた。クロードがちょっかいを出している沖合の島は遠眼鏡を使えばかろうじて目視が出来る。 「ヒューベルト、私にも貸してくれないか?」 好奇心旺盛なフェルディナントが差し出した手に遠眼鏡を渡した。ヒューベルトの主君エーデルガルトが中央教会に宣戦布告するまで、レンズを縦に二枚並べることは禁忌だった。心底くだらない規制だったと思う。 「艀(はしけ)も使うのでしょうがこれは……」 デアドラ港を管理しているのは帝国本土から派遣された官吏たちだ。彼らは帝国の双璧が語り合う様子を緊張した面持ちで見つめている。一人歩きする噂をヒューベルトたちは放置していた。怖がられている方が便利な時もある。 3335 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提ですのでご注意ください。紅花ルート。有情たちの夜.17「枠の外へ5_5」 残念ながらローレンツはテフが嫌いなのだ───いつだったか定かではないが、寝物語にフェルディナントが語ってくれたことがある。戯れに、褥を共にしているのに他の男の話など、とヒューベルトが返したらフェルディナントはなんともいえない顔をしていた。 親友であるフェルディナントにテフを振る舞われた時もこんな風に笑みを浮かべていたのだろう。態度は友好的に、だが口にする意見は明確でなくてはならない。ゆっくりと口角をあげ、ローレンツはヒューベルトに微笑んでみせた。見るものによっては妖艶、とすら感じるかもしれない。彼は確実に名家の嫡子として教育を受けて育っている。 「奴と僕は断じて、友人などではない」 紋章石絡みの話題が出た時と違い、声が上擦るようなことはなかった。だが、その芝居が続く限りは旧同盟領の安全が保たれる。ローレンツは何重にもクロードに守られていて───フェルディナントの言うとおり、その奥にはきっとクロードの感情が秘められているのだ。 1711 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提なのでご注意ください。紅花ルート有情たちの夜.16「枠の外へ4_5」 タルティーンの野で敵がかつての再現を狙う様にヒューベルトは失笑してしまった。教会はネメシスを破り、王国は帝国軍を破っている。そんな夢に縋るくらい追い詰められた時点で負けなのだ。 「復興は道半ばですな。王が冷静であればああなっていないでしょう」 紫の瞳がヒューベルトをじっと見つめている。病的なまでに冷静だったクロードとディミトリを比べているのだろうか。ディミトリはタルティーンに出てくる必要などなかった。進軍するふり、だけに留めておけば王都フェルディアを守れただろう。 「僕は魔道学院にいたことがある。情勢が悪化して入学早々、帰国せざるを得なかったが」 「ローレンツには焼け落ちる前のフェルディアの記憶があるのだな。我々と違って」 1704 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提なのでご注意ください。紅花ルート。有情たちの夜.15「枠の外へ3_5」 クロードの腹立たしい点はいくつもある。まず、ヒューベルトたちと考えが重なる点があったことが腹立たしい。英雄の遺産に頼らずやってのけようとしたこと、全力を尽くさなかったこと、そのどちらも神経に触る。 「クロードは人の手だけで何とかしようとしたのだ……。知識は間違っていることがあるし、信頼も儚い。未来は観察できないからな」 親友の淹れた紅茶を口にして気が緩んだのか、ローレンツはそう呟いた。領主は即決する力と判断を保留する力、矛盾する二つの力をどちらも求められる。 「ローレンツ、これは私見でしかない。だが私が思うに……最後に残るのは感情や想像力なのだ」 当事者である自分なしに全てが決まっていくことへの憤り、そして悲しみがヒューベルトの主君エーデルガルトの原動力だ。ローレンツは彼自身が傷つかぬよう、得するようにクロードからお膳立てされたがそれでもひどく馬鹿にされた気分だろう。 1727 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.14「枠の外へ2_5」 資格のないものが英雄の遺産に触れると何が起きるのか、ヒューベルトもフェルディナントも目撃している。そしてレアは破裂の槍を手中に収めようとしていた。今思えばベレスはあの時から中央教会に対して不信感を覚えていたのかもしれない。シルヴァンに直接、破裂の槍を返却していた。タルティーンではそのせいでヒューベルトたちは苦労することになる。 だからこそ自分もフェルディナントもローレンツの言うことが俄かには信じがたかった。英雄の遺産は禍々しい面もあるが使用者の力を千人力にする。悪用を恐れて弱体化させておくなど考えられない。 「クロードは英雄の遺産に興味を持っていたが、機序が理解出来ないものを切り札にするつもりはなかったのだ」 1714 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜13.「枠の外へ1_5」 せっかく手に入れたデアドラを闇に蠢くものたちに荒らされたくなかったヒューベルトは後事を軍務卿であるベルグリーズ伯に託した。自領を長男に任せられるとは言え、それでも多忙な彼は親帝国派の諸侯の領地には殆ど立ち入っていない。故に領主が親帝国派であった場合、その土地の平民の暮らしは戦前と全く変わらなかった。そのことを親帝国派の領主たちは誇っても構わない、とヒューベルトは思う。 ベルグリーズ伯は元よりアミッド大河を挟んで、領地が隣り合うグロスタール家とは長年の消極的な交流があった。そんな蓄積のある彼から見たグロスタール伯エルヴィンは信頼に足るようで、リーガン領はほぼ全域がグロスタール家預かりになりつつある。戦わずして豊かな地域を手に入れたグロスタール家、戦時中に掴んだ商機と利権をいまだに手放さないエドマンド家は妬まれていた。 1706 111strokes111MAIKINGクロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルートPass:↑18?y/n有情たちの夜.12「幕間3_3」 4949 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.11「幕間2_3」 フェルディナントとローレンツはガルグ=マクで出会ってすぐに意気投合した。理想の貴族の在り方を語り合った日々は未だに愛おしい。共に何かを成し遂げよう、と言われた時のこともよく覚えている。父親が失脚しても主君を恨むことはなく、彼の帝国への忠誠心は揺らがなかった。フェルディナントの理想として特に不自然なところはない。 不本意ではあったが帝国出身の学生たちが修道院を去ったあと、ローレンツはクロードと共に彼の部屋を漁った。計画的とは思えなかったが、それでも何か手掛かりがあるかもしれない。フェルディナントの部屋は彼らしく整理整頓されていたが、あくまでも日常の延長、という印象を受けた。あの時、彼がエーデルガルトについていったのは咄嗟の判断だったのだろう。クロードと二人でそう、結論を出した。 3353 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意ください。紅花ルート有情たちの夜.10「幕間1_3」 ヒューベルトはデアドラの軍港近くにある館へと足を運んだ。デアドラの街中にあるリーガン邸も接収したが、クロードによってどんな罠が仕掛けられているか分からない建物を本部として使うわけにいかない。それに移動距離の短さがありがたかった。 すぐ拠点としているガルグ=マクへ戻り、今度は王国へ北上する手筈となっている。だが同盟軍の武装解除とクロードの尋問に続けてベルグリーズ伯への引き継ぎも終えたため、ヒューベルトは体力の限界を迎えつつあった。主への報告を終えたら、出発までの数刻で構わないから身体を横たえて瞼を閉じたい。そう考えていたのだが黒鷲遊撃軍の将たちはリンハルトとベレスを除いてとにかく声が大きかった。 3331 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.9「枠の中7_7」 聖墓での誓いなど反故にしてやりたい。この距離で椅子に括り付けられたクロードにダークスパイクを直撃させてやったらどれだけ気分がいいだろうか。だがこれまでに嵩んだ戦費の件が絡んでいる。主君であるエーデルガルトがベレスの提案を受け入れたのはそういうことだ。ほぼ無傷の同盟領はともかく荒廃した王国を併合すれば復興費用がかかる。それをパルミラとの貿易で賄う算段がついて安堵できたことは否定できない。 ベレスが黒鷲遊撃軍に合流して以来───あと一押し何かあれば、一気に戦局を傾けられるのに───という主君エーデルガルトの口癖はすっかり鳴りを潜めていた。正直言ってヒューベルトにはベレスが何を考えいるのかさっぱり分からない。分からないがそれで構わないとも思っている。ヒューベルトにとってそんな存在は彼女しかいなかった。 1707 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意ください。紅花ルート有情たちの夜.8「枠の中6_7」 ヒューベルトは主君であるエーデルガルトの身の安全が脅かされること以外怖いものはない。中央教会も闇に蠢くものたちも強大な敵だが対処できる。いや、対処できるように手を打ってきた。 頭は心にそのように感じよという命令を出すが、心は理屈通りにいかない。無理やりねじ伏せた心は次第に何も感じなくなっていったが、近頃はその心に肉迫する者たちがいる。 工作のため主君に付き従って入学した士官学校時代の知己たちは皆、個性的で誰一人として重なるところがない。名前と姿を奪われたアランデル公やモニカのことを思えば、良くないことだとわかっていてもこの五年間ですっかり級友たちに情が湧いてしまった。一度緩んだ蓋はすぐ開いてしまう。だが、諦めにも似た予測を、予測より遥かに上をいくことで驚かされるのは嬉しいのだ。尋問の前にわざわざ時間を作ってヒューベルトを訪ねてくれたフェルディナントの言葉が脳裏に浮かぶ。彼の言う通りクロードのような人間を打ち解けさせる鍵は素直さや誠実さかもしれない。 1670 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.7「枠の中5_7」 クロードはセイロス教の影響を受けずに育っているので時に思いもよらないようなことを言う。 「再現性ですか」 「俺やヒューベルトだってやろうと思えば人間が魔獣に変化する条件を整えられるんじゃないのか?」 それには紋章石が必須で白きものの血液もあるに越したことはない。だから彼らはフレンを拐かしたのだ。レアの要請がなければセテスとフレンはガルグ=マクにやって来なかったのだから、彼らだけに責を負わせるのは間違っている。それでもヒューベルトはどうして人里離れた土地で安全を確保してくれなかったのか、と思ってしまう。 「それともあれはトマシュさんの顔を奪ったような連中にしか出来ないのか?」 ヒューベルトの答えを待たずに話し続けたクロードは暗に取り上げられたフェイルノートとフライクーゲルのことを言っている。紋章を持たない者に英雄の遺産を握らせれば魔獣になるだろう。だがヒューベルトの脳裏に浮かんだのは闇に蠢くものたちの拠点のことだった。奪ったら即座に破壊せよ、と主君であるエーデルガルトから命じられている。だが─── 1716 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.6「枠の中4_7」 クロードは一気に杯を空けるようなことはせず、一口ずつ味わって飲んだ。喉を潤せた礼のつもりか両手首をヒューベルトに差し出している。 「結構です」 どうせ尋問が終わったら解放するのだ。親指に鎖を巻き直すより聞き取りを再開したい。ロナート卿の事件の後、ベレスが天帝の剣を手にした。あれこそが淀んだ空気が入れ替わる予兆だったのかもしれない。ガルグ=マクに潜入していた自分に何の断りもなく手を突っ込んできた者たちが失敗したのは愉快だった。 「水の礼をしたいが今は手持ちがなくてね」 「憶測で構いません」 クロードが帝国の者に直接語りかける機会は当分訪れない。ヒューベルトに回答を用意する義務はないが、彼が英雄の遺産についてどんなことを考えているのかは知りたかった。それに統一後はパルミラとも国交を樹立することになる。クロードの考えを把握しておくのは必要なことだ。 1704 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.5「枠の中3_7」 同盟と帝国が手を取る未来もあったのかもしれない。アミッド大河とデアドラを血に染めておきながらそんな妄想をした、とフェルディナントに知られたら彼はどんな顔をするだろうか。 エーギル公失脚後、彼は五年間辛酸を舐めたが真っ直ぐなままだ。折れた骨は強くなるのだ、と言って朗らかに笑う。ヒューベルトに嬉しい驚きをもたらした彼は元から親帝国派であったグロスタール伯そしてエドマンド辺境伯に宛てた書状を書いている。ヒューベルトが前もって作った文面を確認したエーデルガルトがこれでは威圧的すぎる、と眉を顰めたからだ。 「カトリーヌさんはレアさんお気に入りだったが俺としてはああいうのが一番困るんだよ」 彼女はロナート卿の息子クリストフを中央教会に突き出した張本人で、雷霆を振るってセイロス教会に仇なす者を屠る。 1703 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.4「枠の中2_7」 同胞の血で染まった谷を見て赤い、と感じたのは白きものたちだ。やはりクロードは恐ろしく勘が良い。レアのあの姿は見ていないはずなのに。 「その件に関して推測をお話ししたいのであればお聞きしましょう」 「拒否する。それよりロナート卿の話をしようぜ」 緑色の瞳がゆらぐ蝋燭の灯りを受けている。新品のものを用意させたので尽きてしまうことはないだろう。西方教会関連の工作を担当していたのはアランデル公たちだ。彼らに利用された者たちは皆、捨て石にされまともな取り調べも裁判もなしに処刑されている。ダスカーの際もそうだったが、セイロス騎士団と中央教会の乱暴なやり方を目の当たりにしたヒューベルトは改めて彼らを味方に付ける気を失った。神がかった言いがかりをつけ後ろから背中を刺しかねない。 1701 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜3.「枠の中1_7」 春の日差しの中、礼服に身を包んだ学生たちが大聖堂に集まる様をヒューベルトは他人事のように眺めていた。今となっては遠い昔のように感じる。実りある一年を過ごして欲しい、と語るレアの言葉に吐き気を覚えた。 「ではまず一年のはじめである春から、話していただきましょう」 「春が一年の初め?誰がそんなことを決めたんだ?暦に対する違和感は今も残ってるぜ」 クロードはもう隣国出身であることを隠そうともしない。ヒューベルトも夜目が効く方だがそれでもあの時の彼が何故あんなことが出来たのか、本当に謎だった。クロードは答え合わせの機会など与えてやる気はなかっただろう。 先ほど意識を失ったクロードの身体を検めた際、ゆったりとした袖の中にフォドラで禁じられている遠眼鏡を見つけた。レンズが縦に並び、フォドラで流通しているものよりもはるか遠くを見渡せる。星を見て方角を把握していたから彼はあの時、駆け出せたのだ。 1717 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.2「箱の中」 もしフォドラにクロード=フォン=リーガンが現れなかったらレスター諸侯同盟はどうなっていただろうか。オズワルド公亡き後はエルヴィン=フリッツ=グロスタール伯が盟主の座に就いたはずだ。親帝国派の彼をどのように遇するか、で意見が割れたかもしれない。闇に蠢く者たちが彼に成り代わった可能性もあった。 その場合、彼の嫡子ローレンツはヒューベルトたちと同じ地獄を見ただろう。彼はクロードのもたらした混沌に救われている。そんなローレンツは───クロードを見極めねばならない─── そう言ってベレスの勧誘に対し、首を頑として振らなかった。不規則な彼女の意志は混沌を呼び、世界は撹拌され不規則な救いをもたらす。 目の前で口角を上げている緑の瞳の男が、金継ぎしやすい形で皿を割れたのはグロスタール家の協力があってこそだが、その協力も或いは───という気持ちになる。腹立たしいのが帝国の国庫を当てにしてデアドラの軍港を派手に壊したことだ。これから直接、王国と戦うには海上における補給路を確保せねばならない。黒鷲遊撃軍の中では比較的港湾経営に明るいフェルディナントにこの件を任せる必要があった。 1710 111strokes111MAIKINGそのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート有情たちの夜.1「檻の中」 黒い仮面を付けた部下二人が扉の両脇に立っている。ヒューベルトが片手を挙げると左側に立っている部下が恭しく扉を開けた。 物理的に距離を作るために置かれた机の反対側には背もたれ付きの椅子がある。この背もたれは着席する者が快適に過ごすために存在するわけではない。縛りつけるための物だ。そしてそこにはクロード=フォン=リーガンが座って───いや、座らされている。腰を椅子の背もたれに、足首を椅子の脚に縛り付けられても尚、余裕ある態度を崩さない。 「これなら死ぬ前の最後の祈りも捧げられそうだ。身包みも剥がされなかったし案外慈悲深いな」 緑色の瞳にはまだ強い意志の光が宿っている。時間の感覚を奪うため窓を潰したこの部屋を照らす洋燈よりも輝いていた。デアドラでの戦闘が終わり、戦闘不能となった彼はベレスの意志で助命されている。 1658 111strokes111DONEクロロレ飼ってる犬がきっかけでくっつかねえかなあという現パロです。(作曲家×パタンナー)二人が飼ってる犬はサルーキです↑18?y/n 5642 111strokes111MAIKINGクロロレ飼ってる犬がきっかけでくっつかねえかなあという現パロです。(作曲家×パタンナー)二人が飼ってる犬はサルーキです。↑18?y/n 4038 111strokes111MAIKINGクロロレ飼ってる犬がきっかけでくっつかねえかなあという現パロです。(作曲家×パタンナー)二人が飼っている犬はサルーキです。犬の話(仮).5 故郷の砂漠を駆け回る犬が石畳の敷き詰められた街にいることが信じがたい。クロードはネヴァと街中のペットショップで出会った。運命に従うことを躊躇してはならない。客の視線に気づいた店員が彼女をケージから出してくれた結果、クロードは一般受けするような曲をいくつか書いた。そこそこヒットしたそれらの曲はいまだにクロードの生活を潤してくれる。 こうしてネヴァはまだふくふくと丸く将来の細長さを感じさせない子犬の頃に鼻先から尻尾の先までクロードのものとなり、クロードの助手席はネヴァのものとなった。ケージを使っていても犬を乗せるとどうしても車は汚れる。ここ数日、何故かネヴァは散歩に行きたがらなかったのでクロードは久しぶりに車の面倒を見ていた。 1996 111strokes111MAIKINGクロロレ飼ってる犬が理由でくっつかねえかなあという現パロです。(作曲家×パタンナー)二人が飼っている犬はサルーキです。犬の話(仮).4 ローレンツはネヴァに似ている。まだ一歳になるかならないか、という愛犬より成人男性であるローレンツの方がもっと前からこの世に存在しているが、クロードが存在を認識した順番の話なのでこれで正しい。 どこもかしこも細長く、それでいて筋肉質な身体つきやじっと何かを観察している時の首の傾げ方が似ている。それに見ただけでさらさらだ、と分かる真っ直ぐな紫の髪はネヴァの飾り毛のように風になびく。悪意に晒されずに育ったのか、天真爛漫なところも似ている。 「普通、助走つけて棒投げたりしないよな?」 きりの良いところまで作業を終えたクロードは大きなビーズクッションに埋まっているネヴァの毛並みに顔を埋めつつ、そう語りかけた。今は傷ひとつない身体だが、そろそろ避妊手術を受けさせねばならない。ノーリードが許可されている場所で遊ばせるには様々な条件がある。あの公園でローレンツに棒を投げてもらうのが大好きなネヴァからその機会を奪いたくない。 2018 111strokes111MAIKINGクロロレ飼っている犬がきっかけでくっつかねえかなあという現パロです。(作曲家×パタンナー)二人が飼っている犬はサルーキです。犬の話(仮).3 ネヴァは自分と同じくらい足の早いパブロのことが気に入ったらしい。匂いも鳴き声も完璧に覚えていて公園で会うたびに握れんばかりに尻尾を振っている。パブロのパパ、であるローレンツにもすっかり懐いていた。パブロもクロードに懐いているので別に不思議ではない。 「ほら、取ってこい!」 「陸上でもやってたのか?」 クロードは持参したピクニックシートに横たわりつつ、わざわざ助走つきで棒を遠投するローレンツに語りかけた。長身の彼が身体全体を使って投げるとクロードが腕の力だけで投げる時より遥か遠くに棒が飛んでいく。ローレンツは二匹が風のように駆けていく姿を見てからクロードの隣に腰を下ろした。 「高校で陸上をやっていた」 1987 111strokes111MAIKINGクロロレ飼っている犬が理由でくっつかねえかなぁという現パロ(作曲家×パタンナー)二人が飼っているのはサルーキです犬の話(仮).2 生垣の向こうにも犬連れがいるらしい。息遣いや飼い犬に話しかける飼い主特有の優しい声が聞こえて来て、自然と視線がそちらに向いてしまう。 角を曲がって入って来た犬連れの男性はかなりの長身でおそらくクロードより背が高い。紫の瞳に真っ直ぐな紫の髪、白く長い手足と華やかな見た目だがそれよりも連れている犬が気になる。近所ではあまり見かけない犬種なのだ。先方も全く同じことを思ったらしい。 「パブロ、あの子を見たか?君にそっくりだ!」 性別が違うと体格や顔立ちは異なってくるが、それでも飾り毛の色や生え方がよく似ている。犬種が同じであってもスムースコートと耳や後ろ足、そして尻尾に飾り毛のあるフェザーコートでは見た目が違う。飼い主から愛おしげに名を呼ばれていたパブロもネヴァと同じくクリーム色のフェザーコートだった。 1980 111strokes111MAIKINGクロロレ飼ってる犬が理由でくっつかねえかなあという現パロです。(作曲家×パタンナー)二人が飼っている犬はサルーキです。犬の話(仮).1 犬は飼い主の見た目を判断しない。収入を、身分を、立場を問わずひたすら飼い主を愛する。クロードを故郷や実家と繋ぎ止めていたのは愛犬だった。どんなに居心地が悪く、嫌な思いをさせられても残していった愛犬に会わずにはいられない。 子供時代を支えてくれた尻尾のある親友はクロードが進学で国を離れた頃から老いが目立つようになった。撫でるといぼの感触がして会うたびに目の白さが増していく。遠方での暮らしに耐えられそうにない、と分かっていたからこまめに帰省した。 残していった犬が亡くなって以来、クロードは里帰りをしていない。 「ネヴァ!」 クリーム色の大きな犬がクロードの声を聞いて長い飾り毛が生えた耳を動かした。大きなビーズクッションの上で寛いでいる姿は猟犬に見えない。だがいくつかの単語を聞いた瞬間の俊敏さは見事なものだ。 2022 111strokes111TRAININGhttps://poipiku.com/1455236/9493908.html以前書いた「さかしま」とは関係ないオメガバースのビッチングネタに前後合わせて5000文字くらい加筆したもの、です。↑18?y/n 9321 111strokes111DONE無双青ルート準拠のクロヒル+ロレマリ小説です。本文はここまで。2024.2.11ピクスク開催「5年目の同窓会」に合わせて紙の本にします。書き下ろしは晩餐会の話かマリアンヌちゃんの爵位継承の話になる予定でまだ一文字も書いていません!真昼の月と花冠.10───ガルグ=マク講和会議でベルグリーズ領とフリュム領がレスター諸侯同盟に割譲されるのは勿論、僕やマリアンヌさん、僕の騎士であるイグナーツくん、そしてラファエルくんの活躍あってこそだがそれも君の人選が正しかったからだ。西部派遣部隊として、短期間だがフェルディアに滞在したことがある僕と相性が良い者を選んでくれたことに改めて感謝する。 これでレスター諸侯同盟はアミッド大河の両岸と豊かな穀倉地帯を擁することになった。百年後も彼の地がレスター諸侯同盟のものであり続けるよう我々は努力せねばならない。他人の顔を奪って成り代わる者たちが跋扈していた土地だ。平民たちの間にもどんな禍根が残されているかわからない。 3527 111strokes111MAIKING無双青ルート準拠のクロヒル+ロレマリ小説です。全10話予定。真昼の月と花冠.9 クロードの目論見は悔しいが当たっていた。エーギル公、そしてシェズの仇である灰色の悪魔がディミトリとエーデルガルトの間には立ちはだかっている。ディミトリたちに助太刀が必要なのは確かだった。 何故か帝国軍はアリルからガルグ=マクへ直行するせず、ガルグ=マク周辺を彷徨っているのだという。軍議では罠かもしれないので各方面を力押しをするべし、という結論になっていた。しかしマリアンヌの意見は違うらしい。軍議の後、ローレンツたちは出立前にシェズと食事をすることになった。形勢が決定的になったと看做した商人たちが品を持ってくるので食事の質は以前より上がっている。ラファエルはイグナーツを連れて塊肉を貰いに行ってしまった。 2681 12345