神機に選ばれたとはいえ、操縦士はただの人間である。当たり前に空腹になり、当たり前に睡眠を必要とする。特殊な処置や訓練、あるいは過度な極限状態による例外はあるだろうが、チムニー・ディプスに関していえば彼女は腕が立つ技術者であるとは言っても当たり前に生まれ育った当たり前の人間なのである。
なので昼食どきの詰め所、ぽつんと一人椅子に座った彼女が小さな手に余る大きさの如何にも手製らしい包みに向かって大きく口を開いていたのは当然のことであった。きらきらと光る星形や滴型のシールなどで後付けの装飾を施されたあたりまえの包み紙の中身は具材を挟んだパンであろう。旺盛で健康的な食欲を示す、食への歓びのにじむ口元から覗く小さな歯が大きく噛みとる、咀嚼する。
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