乱反射「なぁなぁ伏黒」
雨上がり。先を歩く伏黒がふいに名前を呼ばれ振り返ると、水たまりの中に手をついて何やらポーズをとる虎杖と目が合った。
「伏黒の真似!」
消えた雨雲から覗く太陽が水面を反射させた所為か、いつもより眩しい虎杖の笑顔に、伏黒は大きなため息を吐く。
水たまりを影に見立てて伏黒の術式の真似事をしているのは、そのセリフとドヤ顔から容易に想像できた。
いつもの虎杖のおふざけ。
誰かじゃあるまいし伏黒が同調することはないが、ソレに対して本気で嫌な訳でもない。これがもし今ここに二人だけならば、伏黒のため息はもう少し小さいものだっただろうし、雨水の地面に手を着ける虎杖に対し『んなことしてないで早く行くぞ』と促しただろう。
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