知恵の神がいるこのスメールに生まれたからには、知識や学術への探究心を唆されずに生きていくことは不可能だ。
みんな平等に才能を比べられ、結果を評価されつづけ、研究者の道を選べば、死ぬまで知恵のレールを進み続けることになる。
そしてその道が素晴らしいものだとされるこの国は、はっきり言ってクソだと常々思っているが、だとしても俺がその知識信仰から逃れることはできない。
俺にとって僥倖だったのは、知識と括られるものであるならば、その種類は問わないことだ。
手先の器用さと機術に興味があったこともあり、俺は教令院の妙論派に属しており、立派にレールに乗ったのだった。
その途中で色々とあり、神の目を手にすることになったが、理解できないことがどうにもそのままにしておけない俺は、相変わらず教令院にいる。
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