七夕 ショッピングモールの片隅に、普段は見かけない植物が設置されていた。節を持った太い柱を中心に、いくつかの枝が生えた、この時期になると至るところで見かける植物だ。それは、色とりどりの紙切れを衣装のように纏い、来客を見下ろしながらそこに鎮座していた。隣には机があり、細長く切られた折り紙の山とボールペンが置かれている。
僕は思わず足を止めた。そういえば、そろそろ七夕の季節だ。普段は祝ったりしないから、すっかり忘れていたのだった。
「どうしたんだよ」
急に足を止めた僕を見て、ルチアーノが怪訝そうに声をかけた。危うくぶつかりかけたようで、少し不機嫌になっている。
「七夕の笹があったから、つい」
僕が言うと、彼は目の前の植物に視線を向けた。天井まで届きそうな大きな笹に、色とりどりの折り紙が吊るされている。たくさんの人々が願い事を書いていたようで、笹の枝は蓑虫のようにもさもさになっていた。
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