夜 目を覚ました時、部屋が暗闇に覆われていると、少しだけ安心する。周囲は静寂に満たされていて、生命の気配は何もない。死に絶えたように静かな部屋の中には、機械の稼働する低い音だけが響いている。その音は、僕の生まれ育った故郷であるアーククレイドルを思い出させた。
隣を見ると、青年がすやすやと寝息を立てていた。子供のように無防備であどけない顔を晒しながら、夢の世界を漂っている。その安らかな寝顔は、この世の苦しみなど何一つ知らないとでも言うような、能天気な表情だった。
僕は、そっと布団から抜け出した。音を立てないように、最低限の動作で足を引っ張り出し、ゆっくりと床に着地する。隣の青年は寝入っているのか、少しも目を覚ます様子などなかった。
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