迷子「買いたいものがあるから、ちょっと寄り道してもいい?」
大型ショッピングモールの片隅にある、小さな電気屋の前で立ち止まると、青年はこっちを振り返ってそう言った。鞄を開け、中から小さな紙切れを取り出す。
「すぐに戻ってこいよ」
僕は気のない返事をした。こんな場所に用事はないし、僕は電気屋という場所が嫌いなのだ。僕が発するモーメントエネルギーは、電化製品に影響を与えてしまうらしい。逆もしかりで、電化製品が発する電磁波は、僕に妙な不快感を感じさせた。以前に面倒な目にあって以来、電気屋には近づかないようにしていたのだ。
返事を聞くと、彼はそそくさと店内へと入っていく。盗み見た紙切れには、商品名が五つくらい記されていた。彼は機械に詳しいわけではないが、疎い訳でもない。しっかりと吟味する性格だから、十分どころでは済まないだろう。
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