──遡ること数日前。二月に入ってすぐのことだろうか。
何でこんな所にいるんだろう……何故、こうなった。
彼の頭の中は、これでいっぱいだった。場違いと一目で理解できる会場に来てしまったからだ。
「ほら、見てください! こんなにあるんですから、どれか気に入ったのがあるでしょう?」
何言ってんだ、こいつ……と怪訝な視線を隣に送るが、どこ吹く風と気にせず頬を緩ませて笑みをこぼしている。
「興味がない……」
「なっ?! なんて罰当たりな事言うんですか! このイベントに来て、興奮しないって有り得ませんよ!」
「お前が無理矢理連れてきたんだろ。朝早くに連絡してきて、何だこれは……」
「仕方ないじゃないですか。知ったのは昨日の夜でしたし、善は急げって言うじゃないですか。美味しいお菓子を作るには美味しいお菓子を研究する必要があります!」
3354