孤児の君孤児の君
ミスタは孤児だった。物心着く頃から孤児院で保護されていたが、保護とはよく言えたもので酷く虐げられて暮らしていた。そんな日々に耐えられなくなり、孤児院を抜け出したのが今朝のこと。既に日は暮れ、お腹はなり路地裏で倒れ込みそうになっていた。
「あれ?子ども?」
その声は凛と澄み渡り、ミスタの耳に届く。うっすらと目を開くと、暗闇の中に光る紫色。
「君、家は?こんな時間にこんなところにいたら危ないよ」
「い、え……」
あの孤児院は家と言えるのろうか。否、あんな環境が家と言うならない方がマシだ。
「ん〜…かなり衰弱してる。帰るところ、無いの?」
「……ない」
「そっかあ」
僕の家くる?
その紫色は優しい声色でミスタに声をかける。にまりと細められた瞳に気づいてか気づかずか、ミスタはこくりと頷いた。
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