黒雲 黒い空には雷鳴が響いていた。強い風が吹き、重たい雲が引き摺られるように動いている。それは大きな化け物のように空を覆っていた。
ポップはまだ信じたくない気持ちで二人を見つめていた。空に浮かぶ二人の人物。それはポップにとっての先生と師匠だった。
「おやぁ、今日はポップが相手をしてくれるんですか?」
アバン先生はにこやかに言った。黒いマントと服が強い風に靡いている。
「ねえマトリフ。ほらポップですよ」
マトリフは腕を組んだままポップからは視線を外していた。まるで見ないようにするかのように。
「アバン先生、マトリフ師匠、なんでこんなことするんだよ!」
ポップの背後には街があった。豊かで人口の多い大きな街だった。だが今は跡形もなく破壊されている。ポップは知らせを聞いて文字通り飛んできたが、間に合わなかった。
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