首輪「君に、渡したいものがあるんだ」
リビングに姿を現すと、ルチアーノは挨拶もせずにそう言った。声は楽しげに弾んでいて、口元がにやにやと歪んでいる。何かよからぬことを企んでいるのは確かだろう。
「おかえり。なんか嫌な予感がするんだけど、受け取らないとダメ?」
率直に言葉を返すと、ルチアーノは機嫌を損ねた様子で眉を動かした。頬も緩やかに膨らんで、いかにも怒った子供という表情になる。短時間で笑ったり怒ったりと、表情筋が忙しそうだ。
「僕がプレゼントをやるって言ってるのに、拒否するつもりかい? 君は、いつからそんな恩知らずになったのかな?」
「プレゼントをもらえることは嬉しいよ。ルチアーノが僕のために選んでくれたものだから。でも、今回は何かを企んでるんでしょう? だったら、ちょっとお断りしたいかな」
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