春の日差しの中、小鳥のさえずりが聞こえて、チチは洗濯物を干していた手を止めて空を見上げた。
歌うような、何かを話しているかのような小鳥の声は耳に聞こえているのに不思議と小鳥自身の姿は目視できない。
どこか高い場所で歌っているのかもしれないし、もしかしたら吸い込まれそうな空を羽ばたきながら話しているのかもしれない。
そう思いながら日差しを眩しいと感じていたチチの唇から零れた言葉は、「いいなぁ」というそれだった。
「なにがいいんだ?」
「んー? ほれ、鳥さんは空飛べるから」
「筋斗雲使えばチチだって空飛べるじゃねぇか。なんだったらまた舞空術教えてやってもいいぞ」
「筋斗雲はおらを乗せて飛んでくれるありがてぇ子だべ。舞空術は、おらには向いてなかったの悟空さも覚えてるべ」
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