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    アイドラ

    ちょこ

    DONEアイドラ話
    普くんと美男くんと世良の話
    放課後、授業も先生の長い話も終わりクラスの生徒はそれぞれユニット練習に行くために教室から出たり、他の同級生と話したりとしている。その中で世良は美男に話しかけた。
    「なぁなぁ王さま、もうすぐテストじゃん? 範囲狭いっては言われてるけどさ、よかったら俺の家で勉強会しない? 」
    「ん? いいぞ! 」
    大きな声で笑って言う美男に決まりだ、と笑った時後ろから声をかけられた。後ろをむくと同じクラスの普が話しかけてきた。
    「何話してたんだ2人とも? 」
    「あー、王さまとこれから俺ん家で勉強会するって話してたの。普もくる? 」
    「え? いいの? 行きたい! 」
    こうして普も来ることになり三人で話しながら教室を出る、周りからは今日もあの三人は仲がいいなと思われているがそんなことは露知らず校門を出て駅へ向かうために歩く。
    しばらくして、住宅街を歩きとある家の前にくるとそのまま中に入る、表札には【白石】と書かれており、ここが世良の家なのかと初めて来る普と対照的に、何度か来ているのだろう、そのままついて行く美男。玄関の鍵を開けてドアを開ける。
    「入っていいよー、母さん居ないし」
    「お、お邪魔します…… 1923

    ちょこ

    DONEアイドラ話
    日日日先生と瑪瑙の小話
    授業終わりの放課後、レッスン室へ向かう瑪瑙の前にとある人の後ろ姿が目に入る、それを見た瑪瑙はニヤリ、と口元を緩ませると足音や物音を立てずになおかつ、見失わないように歩く。そっと近くまで来るといきなり話しかけた。
    「先生、偶然ですね」
    「ばっ!? ………お前か」
    突然話しかけられ驚いた様子で身体が跳ねて慌てて後ろを向いた人物──日日日は瑪瑙の顔を見て呆れたようにため息を吐く。ふんわりとタバコの香りがした。
    「先生、またタバコ吸ったんですか? 体に悪いですよ」
    「違いますぅ〜、煙の出る棒を咥えて遊んでただけですぅ〜」
    「おや、先生ったらそんなもので遊ぶ年頃なんですね」
    「……お前……」
    顔を少し顰めた日日日に笑みを浮かべる瑪瑙、ある意味相手の反応を楽しんでいた。多分ムカつくだとか思っているのだろう、相変わらず目の前の相手は面白い反応をする。と瑪瑙はニヤニヤ、と笑いつつ要件を言った。
    「先生、今時間大丈夫ですか? ダンスを見てほしいんですが……断りませんよねぇ? 」
    「お前わざとだろ? まぁ時間あるからいいけど……」
    「ふふ、なら決まりですね。今日もご指導よろしくお願いします」
    にっ 670

    ちょこ

    DONEアイドラ話
    くまくんと世良の話
    カチ、カチ、と机の上に置かれた時計が静かに時を刻む。ペンを走らせていた世良は書き終えると一息ついた。出来たと五線譜に書かれたのを見て微笑む。今作った曲はとある人物に送るために書いたものだ。受け取ってくれるといいのだが、とファイルの中にしまうと次の日の準備をするために鞄の中を開ける。先程のファイルとボイスレコーダーを中に入れて。後は学院に行っての作業になる。そしてその日は終わった。
    それから何週間かたったある日、学院内を歩いていた世良、とある人物を探していた、連絡をひとつ入れれば良かったとスマホを手に取ろうとした時、前の方から歩いてくる人物が視界に入る。その相手が探していた人物だったため、丁度いいとスマホを制服のポケットの中に入れると小走りで駆け寄る。その人物──初雪は世良が駆け寄ってきた事に気づき、足を止めた。
    「白石? 」
    「先輩、あの、これ受け取ってください」
    手に持っていた紙袋を初雪に渡す。初雪はそれを受け取り中を見た。中にはファイルとボイスレコーダーが入っており、ファイルを手にして中に入っている紙を見てすぐに分かった、これは曲だと。ならこのボイスレコーダーは音源だろうと世 1045

    ちょこ

    DONEアイドラ話
    燕くんと時雨先生の話
    学院の使われていない音楽室、ここでたまにピアノを弾く時雨だったが、最近は生徒である燕が来るようになった。彼が来てはリクエストの曲を弾いたりレッスンをしたり。そんな時雨にとって今までが非日常だったものが日常になりつつある頃、燕が何か小さな紙袋を時雨に差し出した。一瞬なんだろうか、と受け取る。
    「……先生に似合いそうだと、思いまして」
    燕がそう言ったのでそっと中身を見る、中には小さな箱が入っていた。その箱を手にして書いてある文字を見た。沈丁花と書かれた文字に可愛らしい花のデザイン、香水かと気づくには時間はかからなかった。まさか生徒から香水を贈られるとは思わず、チラリと燕を見る。
    「……。教師に香水を贈る生徒はお前くらいかもな」
    「……すみません……」
    「謝らなくていい。……相当悩んで考えた結果なんだろう? それを否定するなんて野暮だからな」
    一瞬燕が悩みながら香水を選んだのを想像してしまい少し微笑む。箱から香水を取り出す、箱のパッケージに描かれたデザインからして可愛らしい瓶に入れられてるのかと思っていたが、シンプルな四角の瓶だった。蓋をとり手首につけた、優しくも甘い香りが鼻に入る。こ 946

    ちょこ

    DONEアイドラ
    想先輩と瑪瑙の話
    化粧品の広告の仕事が入った、それ自体は特に何もいつも通りの仕事だと思っていたが、内容を見て少しだけ眉をしかめてしまう。瑪瑙の先輩にあたり、そしてかつてユニットを組んだのだがデビューする前に解散した相手──想と対決のような内容だったのだ。簡単に言えば広告を務めた2人のうち、どっちの化粧品が多く売れるのか、そんな内容だった。対決要素を入れるのは別に構わないが、 少しだけどこか胸が気持ち悪いような、深い霧に迷い込んだような、なんとも言えない気持ち悪い気持ちが芽生えた。想とは何度も仕事を一緒にしている、相手は友好的に自分に接してくれる。そんな相手に毎回作り笑顔で接している自分がいた、もしかしたら作り笑顔なのは相手は察しているのではないかと思いつつ。
    控え室に入ると丁度想が雑誌を読んでいるところだった、入ってきたドアの音で顔を上げ、瑪瑙を見て笑って話しかける。あの時と変わらないような人懐っこい笑顔だ。
    「瑪瑙、内容聞いたけどなんだか対決みたいな感じだね」
    「……そうだね、でも周りはこういうのが好きだからね。お互い宣伝にもなるし……」
    そうだ、大人たちはこういうのが好きだ。と瑪瑙は考えた、あ 1131

    ちょこ

    DONEアイドラ
    織緒くんと世良の話
    世良は課題を進めるために放課後図書室へ足を運んだ、ついでに曲作りの資料も集められるのではと思いつつ中に入る。図書室を利用している生徒はすくなく、隅の方で本を読んでいる生徒や、カウンターで委員会の仕事をしている生徒がいるくらいだった。普通の学校とは違うため、そもそも利用する生徒は少ないか、と思いつつ辞典と参考になりそうな資料の本を数冊取った時、ふととある後ろ姿に気づいた。長い金髪でなにやらうんうんと唸っては辞典を開いている小柄な生徒。織緒ではないか? と世良は気づきそっと近づいた。織緒は近づく世良に気づかず、目の前の課題に頭を悩ませてる様子だった。
    「……? ここなんて意味だろ……」
    「そこの問題、まずここの文を理解してないと難しいと思う」
    後ろから手を差し出して、文をなぞるように指を動かす。突然後ろから声をかけたからか驚いた様子でば、と勢いよく後ろを振り向く織緒。
    「せ、世良先輩……!? なんで……? 」
    「織緒。ここ図書室だから」
    しぃ、と人差し指を口で押さえる仕草をすると声量を下げる織緒、隣に座り鞄から課題のプリントを出しつつ話す。
    「俺も課題出されてさ〜、それで来たわけ。ど 1057

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    こずえ先輩と世良の話
    専属になって欲しいと世良が言う話
    「こずえ先輩、今日もよろしくお願いします」
    「お、世良来たね〜座って座って」
    放課後、美容科の教室を覗いた世良は丁度準備をしていたこずえを見かけてそのままいつもの様に椅子に座る。こずえは世良のヘアゴムをゆっくり解くと髪を梳かしながら話す。
    「うん、ちゃんと手入れされてるね〜。オレが前勧めたシャンプー使ってる?」
    「はい!あれすごくサラサラしますよね」
    「でしょー?世良の髪質に合ってるやつ選んだからね、あと、今日勧めたいものがあって……」
    そう言うとバックの中を探し始めるこずえの後ろ姿を見て世良は見つめて口を開いた。ずっと考えてたことを。
    「……ねぇ先輩、俺の専属になりませんか?」
    「…………え?」
    突然言われたことに驚いたのだろう、なにやら容器を落としてしまってこちらを見て固まるこずえ。彼のそんな様子を見て少し笑ってしまったが、世良は話を続ける。
    「ずっと考えてたんですけど……。先輩の手、魔法の手だなぁって思ってて。初対面で俺の髪を綺麗って言ってくれたのも、今もこうして専属というわけじゃないのに髪の手入れとか、肌の手入れとか教えてくれたり……。先輩って魔法使いなんですよ、だから… 1095

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    シエリ解散話
    想先輩と瑪瑙の話(昔と最後は今の話)
    その場にいた想と瑪瑙は固まるしか無かった、お互い別の仕事だったが、たまたま一緒の部屋にいたためだったのだろう、目の前に来ていた関係者の淡々とした声から出た話を信じきれてなかった。
    「すまないがcieriのデビューの話はなくなった、急な話だが……わかってくれるな?」
    異論は認めない、と言わんばかりにそう言うとさっさと部屋を出ていった。シン、と静まる部屋の中。瑪瑙は信じきれてなかった。なんで、と口から勝手に出た言葉はすぐに消えた。想は何も言わなかった、いや、言えなかった、と言った方が正しいのかもしれない。今の瑪瑙にとっては、想の事まで気が回っていないため、ただ、先程の言葉がグルグルと頭の中を回っていく。そしてなぜか、胸が苦しくなった、初めての感情だ。手が震える、寒い訳でもないのに。
    「……なん、レッスン……先輩とがんばった、のに。髪だって、イメージに合うように、って……そんな……」
    「……瑪瑙」
    「あんな、あんなあっさり……?分かれって何を……何を分かれって……!」
    あぁ、この気持ちの正体がわかった。悔しいという感情だ、と瑪瑙が分かった頃には勝手に目から涙が出ていた。生まれてからずっと 1477

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    シエリ解散前の話
    想先輩と瑪瑙の話(昔の話)
    学院内のレッスン室にて、キュッ、キュッと靴と床の擦れる音、大きな鏡の前でダンスをしては振り付けの確認をしている想と瑪瑙。そつなくテンポよく振り付けをこなす想の一方、ステップのひとつに今ひとつ分かっていないのか止まってしまう瑪瑙。何度も見たはずだが上手く足が動かず思わす首を傾げてしまう。
    「……?」
    「あ、瑪瑙。そこは半テンポ早く右足を出すの」
    「……半テンポ」
    想が気づきお手本として踊ってみせた、ここで、こう、と想が言ったのを真似てつまづいたステップを練習する瑪瑙。何度かやっていくうちにすんなりと足が動き、出来なかったステップが出来た。
    「あ、想先輩出来ました」
    「おー、瑪瑙はやっぱ飲み込み早いなぁ〜。このままだったらデビューの日も上手くいくよ」
    「想先輩の隣でも相応しい僕でいられるように頑張ります」
    「そんな畏まらなくてもいいからな」
    想と瑪瑙はユニットを組んでいた、ユニット名は「cieri」、もうデビューの日に歌う曲も出来ており、音源も貰って練習していた、そして1週間後には実際に衣装を着て撮影などをして、デビューという形だ。まさか仕事の先輩である想とユニットを組むとは思わなかっ 1062

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    chic初ライブ
    学院の敷地内にある講堂、入口の看板には今日ライブをするユニットの名前が書いており、その脇には受け付けの人達がチケットを受け取ってはペンライトを渡していく。看板に書かれてたユニットの名前は【chic】と書かれていた。chic、ソロで活動していた世良と真がユニットを組んだのだ。今日はそのchicの初ライブ、という訳だ。初ライブにも関わらず会場は人が、お互いにソロで活動していた頃のファンが主だった。そんな様子をステージ脇からそっと覗く世良と真。思っていたよりも人がいてどこか眺める世良と、少し顔のこわばる真。そんな真を横目でちらりと見る世良。
    「……真もしかして緊張してる?」
    「え?まぁ……1人で歌ってた時と違うし」
    そう言って誤魔化すように笑う真をみて少しため息を吐くと、真の手を取りステージ脇からすこし離れたところに連れていく。突然手を引っ張られた真は為す術もなく世良についていくしかなかった。そして立ち止まると真と向き合う世良。世良の真剣な表情に目が離せなかった。
    「真、俺も緊張してる。今あの会場にいる人たちは、俺がソロ時代の頃のファンもいるだろうし、もちろん真のファンもいる。逆に、俺や真 1181

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    芥くんと世良の話(帽子の話の続き)
    ライブ会場にて、観客席にいる人達の手には推しているイメージカラーのペンライトや会場前で売られていたグッズを買った袋を持ってライブが始まるまで賑やかな様子でいた。周りはほぼ女性だらけだ。そんな中、最前列のいわゆるステージの目の前の席で赤いペンライトと黒いペンライトを手にしてステージが始まるのを心待ちにしている人物が。芥であった、この前お礼として世良から今回のチケットを渡されたのだ。まさかそのチケットが最前列だとは思わなかった。ステージが近い、と芥が緊張した様子でいると照明が落とされる。あぁ、ライブが始まるのか、と思っているとステージ上に現れた【chic】の2人に観客が叫ぶように騒ぐ。いつもの世良と雰囲気の違う世良が歌い出す。
    世良は歌いながらどこかステージで誰か探すように目線を動かしてその人物を見つけた。芥が来てくれた事に思わず口角が上がる、芥が既に泣いている様子に笑いそうになる、まだ1曲目の中盤なのだが、と。ふと、芥と目が合った、最高のパフォーマンスをすると約束していたため、世良は親指と人差し指の指先でハートマークを作り、芥に向けてウィンクをした。分かればいいのだが、と思っていると 961

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    芥くんと世良の話
    放課後、世良は困っていた。ユニット衣装の帽子のバラの飾りが取れそうになったのだ。いつもだったら幼なじみに補修を頼むのだが、その幼なじみが別件で忙しそうにしていたため頼むに頼めなかった。世良は裁縫が出来ないため自分で補修すらも出来ない。どうしようか、と少し考えて脳内に浮んだとある人物を思い出し、その相手を探すために荷物をまとめて帽子を持つと教室を出た。服飾科の教室へと小走りで走る。居たらいいのだが、と思いながら。
    服飾科につき教室の扉をそっと開ける、数人の生徒がいたがその中に目的の人物がいたため世良はそのまま教室に入ると名前を呼んだ。
    「あ!ジャン!いま大丈夫?」
    「………あ、はい?どうしましたわざわざ……?」
    少し反応が遅れてこちらに顔を向けた──芥は針山に針を刺してから世良を見た。彼は認めた相手の事をsoleと呼んでおり、世良のこともまた、その名で呼んでいた。soleの意味を知っていた世良にとっては、太陽かな、と照れたのが少し懐かしい。世良もまた、芥の事をジャンとあだ名をつけて呼んでいる、ここ最近そのあだ名で呼び始めたため、さっき反応が少し遅れていたのだ。世良は持ってきた帽子を芥 1274

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    乙輝くんと律輝くんにテスト勉強教える瑪瑙の話
    乙輝と律輝の双子と共に図書室に移動し、教科書や参考書を開いて勉強を教えていた瑪瑙。図書室にいた生徒の一部はあの瑪瑙が?とチラチラとこちらを向いてくる。瑪瑙は普通にしているのだが、どうも相手を萎縮させてしまうのか分からないが、怖がる相手もいる。それには慣れていたが、目の前の2人は自分に怖がる様子もなく、ノートとにらめっこしていた。出来るだけ丁寧に教えているはずだが回答がどれも間違っている、これはどういう事だろうか。
    「おかしいね?そこはいまさっき丁寧に教えたはずだが……?乙輝、そこはここの古文から読み取るんだよ。それの意味はここに書いてあるだろう?律輝、そこはここの公式を使う。この公式はよく使われる。おかしいね?全部教えたはずだよ?」
    「ん〜〜俺の頭毎秒生まれ変わるんですわぁ多分、鶏さんもビックリやなぁ」
    「次は大丈夫ですよぉめのぉ先輩!イケると思うねん!」
    「ふぅん……?」
    ニコリ、と綺麗な笑顔──どこか背中がゾッとするほどの何かを感じ取った乙輝と律輝は震え上がる。瑪瑙はすぅ、と目を少しだけ細めて口を開いた。
    「この僕が教えてるんだ、僕だって暇じゃないよ?……最低でも80点は取る覚 1215

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    乙輝くんと律輝くん、世良と瑪瑙の話
    朝、世良が教室に入るとなにやら雑誌を開き話している双子──乙輝と律輝がいた。2人に近づきあいさつをする。
    「はよ、何読んでんの?」
    「あ、世良くんおはようやでぇ〜」
    「今雑誌読んでんねん!んで、この人の名前がわからんくてな〜」
    「んー?」
    2人からこの人と指を指したページを見る、見開きに特集されていた人物に見覚えがあった。世良がよく英語を聞きに行っているひとつ上の先輩──安坂瑪瑙だった。
    ”彼が広告塔を務めた商品は必ず売れる”
    その名の通り、彼が広告塔を務めた商品は必ず売れているのだ、今回はアイシャドウの宣伝らしく、ダークレッドで目元を彩っていた彼。この色いいな、と世良が思っていると2人が話し出す。
    「安坂はわかるで、やすさかやろ?」
    「1文字目に馬がはいってるからうまやろ!でも最後のやつなんなん?見たことないで?」
    うーん、と悩み出した2人に少し呆れつつ世良は教えることにした、もし出会った時にめんどくさい事にならないように、と思いつつ。
    「あのな、まずやすさかじゃない。それであさかって読むの。んで、うまでもない。それめのうって読むの。知ってる?宝石の瑪瑙ね。あさかめのう、俺ら 1790

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    榊先生と時雨の話
    時雨が資料室に用事があり、そっと扉を開く。資料室は主に教師が授業で使う資料や昔の記事や録音されたデータなどが残っている。データや資料の数の関係で部屋の広さは中々のものだ。掃除は定期的にされていると言われているが所々にホコリが溜まっており、部屋の空気の悪さに少し顔を顰めつつ目的の探し物を探す為中に入る。
    探し物を探そうとしていたらなにやら誰かいたらしく声のする方へ顔を向けるとよく見知った背中が見えた。その人物は本棚の前で背伸びをしてなにか取ろうとしていたが、身長の関係か、はたまた庇ってる足のせいか、取れる様子はない。少し考えた時雨は音もなく近寄ると後ろからこれだろうか、とすんなり本を取った。突然伸びてきた手に驚いた様子で後ろを向いた人物──榊は時雨を見る。
    「……これですか、榊先生」
    「……な、なんですか!自分が高いアピールでも!?」
    「……はぁ……?」
    誰もそんなつもりで取ったのではないが、と思いつつ、相変わらず素直ではない先輩である榊を見る。時雨からしたら、足が悪いというのにあのまま背伸びして取るのは辛いだろうと思ったからだ。まぁ、それを言ったところで、相手は嫌味を言うのだろうか 732

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    九重先生と時雨の話
    時雨は人気のない校舎裏へと行っていた、手には時雨がお気に入りにしている和菓子屋の包みが。時雨は実は甘いものが好きなのだが、アイドルをしていた頃甘いもの好きなの似合わない、との一言を気にしてしまい、それから今の今まで周りには”甘いものが嫌いだ”と言うようになった。だが時雨が甘いものが好きと知っている相手には口止めをしている。そこまで気にしなくてもいいのにと言われるし自分でもそう思う、と思いつつこうして人気のないところに行ってはこっそりと甘味を食べるのだ。
    校舎裏に着いて箱を開ける、中身は美味しそうな豆大福だ。時雨はこのお店の豆大福がお気に入りだ。なんといっても粒あんの甘さが時雨好みなのだ。少しだけ笑みを零れつつ手に取って食べた時、声をかけられた。
    「あれ、時雨センセ?」
    「……んぐっ……!」
    この声は、と豆大福を吹き出しそうになりつつ何とか飲み込み声をかけられた方へむく。そこには九重が居た。手には煙草と何か小さな紙袋をもって、まさかここに人が来るとは思わず思わず目をそらす。九重は時雨の持っていた箱の中身をみて、自分の持っていた紙袋をちらりとみて話しかけた。
    「時雨センセ、1つお願いあ 1031

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    ピアノの話の続き、燕くんと時雨の話
    あれから何日かたったある日、放課後ほぼ誰も来ない音楽室に入る時雨。ガラリ、と開けた、今日白銀は来るのだろうか、とふと思う。自分がいる時にしか聴かせないと言ったあの日から今日までここには来なかった、普段の授業や休み時間ですれ違ったりはしたが。特に約束もしている訳でもない、流石に来ないだろう、と椅子に座り鍵盤を撫でて弾き始める。今日は歌う気分では無いため伴奏だけだ。いつもよく弾く名前の無い曲を弾いているとふとなんとなく扉の方へ目線を向けるとなにやら人影がみえた。時雨は一瞬驚いたような顔をして演奏をやめ、そのまま扉の方へ行き開けた。
    開けたらそこには白銀がいた、まさか来るとは思わずお互いに少しだけ驚く顔をする。
    「……、よく来たな」
    「すみません、演奏の手を止めてしまいました」
    「……いやいい、中に入りなさい。……何が聴きたい」
    「……先生の好きな曲を」
    白銀は中に入って椅子に座る、それにしても自分の好きな曲か、と時雨は少し悩んでしまった。ストレスか知らないが、あの日アイドルを辞めてから”好きな曲”というものが消えてしまったのだ。好きという気持ちすらも霧のようにモヤモヤと隠れてしまってい 1247

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    ピアノを弾く時雨と聴く燕くんの話
    この広い学院の中にも滅多に使われていない教室はある、時雨のいる音楽室もまた、その教室のひとつだ。ここを通るものなどましてやこの音楽室を使うのも時雨ぐらいだろう。わざわざこんな遠くにある音楽室を使うような生徒もいない、特殊な学院からか音楽室やレッスン室などいくつもあるからだ。時雨はたまにこの音楽室にくる、ここに置いてあるグランドピアノで弾くために。時雨は上着を脱いで椅子にかけると、ピアノの椅子に座る。そっと鍵盤を撫でたあと押す、ポロン、と心地のよい音が耳に入る。この音が好きなのだ、ピアノの音は聴いていて安心する。
    今日もまた、あの曲を弾こうと鍵盤を滑らせるように弾く。この曲に名前はない、時雨が気まぐれで考えて弾いているいわばオリジナルの曲だ。けれど、この曲が好きかと言われるとそうでもない。好きでも嫌いでもない、腕が鈍らないように弾いているだけなのだから。
    茜色の優しい夕焼けの光がそっと窓から入り込み、教室を、ピアノを、そして時雨の色素の薄い髪を染めるのだ。真っ黒で光のない目にも優しい茜色が混じる。少し気分の良かった時雨はそっと歌い出す、歌うと言っても歌詞はないため言葉になっていない歌 2013

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    ズッコケ三人組が絵しりとりする話
    水無瀬と榊が職員室で話していると隣にいた佐々木が絵しりとりしないか、と言ってきた。なぜ今、と水無瀬と榊が怪訝そうな………榊が眼鏡をクイ、と上げいつもの様に小言を言う。
    「佐々木先生、今僕と水無瀬が何してるか見えませんか?」
    「子供じゃあるまいし……しませんよ」
    「いいじゃんいいじゃん、気分転換にさ〜」
    若干佐々木に押されつつ紙とペンを用意してニコニコと笑う佐々木。水無瀬と榊はお互いに顔をちらりと見た、付き合ってあげますか、と水無瀬が視線を送るとため息を吐きペンをとる榊。水無瀬もどこか諦めペンをとった。
    「俺からな」
    そう言って佐々木がさらさらと絵を描いて水無瀬に渡してくる、見てすぐ林檎だなと分かり紙に点を描いていく、手抜きだと思われそうだが胡麻と言いくるめればいい、そう思って榊に渡す。
    「………貴方これ絵なんですか」
    「絵ですけど」
    どこがとイヤミを言われつつ榊は少し唸りつつ絵を描いて佐々木に渡す。すると佐々木がピタリ、と動きを止めて悩み出した。なんだこれ、という声と共に。
    「え、えー……なにこれ……ちょっと水無瀬これなに」
    「いや佐々木先生人に見せたらダメでしょう?」
    榊のご 965

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    バレンタインイベント
    佐々木先生と美男くんと時雨の話
    時雨が廊下を歩いていると前方に佐々木と華王がいた、華王はなにか紙らしきものを手に持っており、隣にいる佐々木はなにやら笑っている。そのまま通り過ぎようとしたが、佐々木に見つかり呼ばれてしまった。
    「あ、水無瀬〜!」
    「……大声で呼ばないで貰えますか……華王、それ佐々木先生のポスターか」
    「あぁ!貰いました!」
    華王が持っていたポスターには少し見覚えがあった、まだ持っていたのかと時雨は思いつつそういえば、と佐々木が思い出すように言った。
    「水無瀬もポスターあったよな〜、確か評判良かったやつ」
    「水無瀬先生にも?」
    「そうそう!確か水無瀬がライブ中言った言葉も当時騒いで……イダダダ!水無瀬抓るな!」
    「いつのこと言ってるんですか?」
    これ以上は言うな、と言わんばかりに時雨は佐々木の背中を強く抓る、あの頃は楽しくアイドルをしていたが、今の自分にとってはもはや黒歴史と言っていい。抓る手を離すと背中を優しくさする佐々木。
    「すまんな華王、騒がしくして」
    「大丈夫だ先生!それにしても少し想像つかないな、どんな風な事言ったんですか、先生」
    「ほら水無瀬〜!華王もそう言ってるしさ〜!」
    「………」
    1078

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    弓道場にきた時雨と佐々木先生の話
    生徒たちは既に帰り、静まった弓道場にそっと入る人物が。水無瀬時雨である、彼は実は学生時代は弓道部に所属していた、大会などにも出場したほどの腕前だ。彼はたまに誰もいない弓道場に来ては、こっそりと弓を引く。
    今日もまた弓を構え、的を真っ直ぐと見る、静かな時間、集中しているからか時雨の耳には何も入らない、それからか誰かが入ってきたのにも気づいてなかった。キリ、キリと引いて狙いを定めて手を離す。矢は見事的の真ん中を射抜く、すると後ろから小さな拍手が聞こえた。
    「さすが水無瀬、真ん中射抜くとは」
    「……盗み見は感心しませんね……」
    露骨に嫌そうな顔をする時雨を横目に笑う佐々木巡。もう1回と言う彼の言葉にため息を吐くともう一本矢を持った。見せてくれるのかと拒絶されると思っていた彼は少しだけ驚いていた。これで終わりにしますから、と一言いってまた構える。時雨が真剣な顔で的を見るのを黙ってみる彼。時雨はこういう時話しかけられるのが嫌なのだ、例え集中していて聞こえていないのだろうと言われるのも嫌いだ。いつもは自分にお構い無しに話しかける彼が、こういう時は話しかけずに黙って自分を見る。そんな彼が見ている 840

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    頭痛起こした世良と心配する美男くんの話
    朝起きた時、頭の重さと頭痛で眉間に皺を寄せる。外の天気を見るとどんよりと雲が空を覆い、雨が降りそうだった。この頭痛の正体がわかり自覚したからか吐き気もしてきた、だが学校を休む訳には行かないとフラフラとベッドから降りて1階へ向かう。1階に降りると頭をおさえつつ朝の挨拶をする母親の姿が、母親も世良と同じ偏頭痛もちだった。世良が体調悪そうに椅子に座ったのをみて声をかける。
    「世良、はい薬。大丈夫?学校休む?」
    「……いや、行く。大丈夫、母さんも無理しないでね」
    母親から貰った薬を飲んで傘を持って家を出る、薬が効けばいいのだが、とため息を吐きながら。人のすれ違った香水の香りやスタイリング剤の匂いでまた頭痛が悪化しそうになる、ふらふらとしつつ学校に何とかついて教室にはいり席に座るともう限界が来たのかぐったりとしてしまう。そろそろ薬が効いてもいいというのに、と目を閉じ用とした時誰かがさらり、と世良の前髪をわける。手しか見えなかったが、ふわりと鼻に入る匂いには覚えがあった。
    「おい、大丈夫か?薬は?」
    「……おーさま……」
    王さま、世良がいつも王さまと呼んでいる華王美男だった、いつも元気な世 1320

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    千琴くんと髪の話
    放課後、夕焼けの光が教室に入り込む。日直である千琴と世良は明日の日付を黒板に書いたり、日誌で今日あった授業のまとめを書いていた、もっぱら、日誌を書いているのは世良であったが。千琴は消しゴムでころころと転ばして遊んだり、外を眺めたりしていた。その時書きながら世良はふと、千琴に聞いた。
    「千琴ってさ、髪梳かしてるの?長いし天パでしょ」
    『偶に忘れるかなぁ、世良くんの髪は綺麗だねぇ』
    そう言って千琴は世良の髪をさらり、と触る。触り心地が良かったからか、指先でくるくると回す。そんな千琴に少し笑ってしまう、千琴に触られるのは嫌ではない。
    「俺の場合美容科の先輩に手入れとか教えてもらったりさ、してもらったりしてるの」
    『へぇ、だからなのね。……あれ、俺が触っても嫌がらないの?』
    「ん?」
    千琴がそう言って少し首を傾げてしまった、なんの事かとおもいかけたがすぐに思い出した。あのことを言っているのかと。それは少し前、クラスのとある人が世良の髪を触ったのだ。少しからかいながら、ここの学園では髪が長い男ぐらいいくらでもいるというのに。その時の世良は受け流したが横で見ていた千琴は見てわかっていた、笑って 914

    ちょこ

    DONEアイドラ小説
    世良の夢小説(?)
    放課後、繁華街で友達と一緒にコスメや服を見ていたが友達と私が見たいところがバラバラになり、時間を決めて集合することにした。友達と別れ目的のフロアへ行こうとすると後ろから声をかけられた、聞き覚えのない歳のとった男性の声でチラリと後ろをむく。50代と言っていい男性が私を呼び止めようとしていた、どこかニタリ、と気持ち悪い笑みをしながら見てくる相手に本能で関わってはいけないと思い足早に去ろうとしたがしつこく相手は追いかけてくる。
    「ねぇ暇でしょ?おじさんと遊ばない?」
    「結構です、約束があるので」
    少し口調を強めて言ったが相手に効果はないように見えた、まず高校生をナンパする父親と同じくらいの男性の時点で気持ちが悪い。そうすると腕を掴まれてしまった、しまった、と慌てて振りほどこうとするが力の差でそれは叶わない。
    「ちょっと!離してください!」
    「少しだけだよ」
    そのまま相手は自分を引っ張って連れて行こうとする、背筋がゾッとするほど冷え込み、なんとか状況を打開しようとした時、相手の手首を掴む手が現れた。え、と顔を上げるとそこには自分と同じくらいの男子高校生が。髪はひとつに結んで顔立ちもかっこい 2235