なあブラッド、と酔っ払いらしい丸い声がブラッドリーを呼んだ。隣に座る黄色い瞳が、テレビから外れてぱっとこちらに向く。カインが何を言いたいのかは考えずとも予想が付いた。テレビ画面には肉汁が溢れるステーキが映し出されている。
「あれ食いたい」
ぐいぐいとブラッドリーの服を引っ張り、見てみろよとカインがテレビの方を指さす。画面上には、ステーキの他にも店の情報が表示されていた。日付が変わってからしばらく経つが、店の営業時間の方は問題ないようだ。今のカインがそこまで見ているかは不明だが。
おいしそうだと言うのにそうだなと相槌を打ってやると、カインが途端に不満げに頬を膨らませた。ちゃんと見ろと訴える声に答えるように膨らんだ頬をくすぐってやると、ますます眉を吊り上げている。俺じゃなくて、と当たり前のように口にさせるのにはそれなりに長くかかったのを思い出す。
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