高諸02 尊奈門は昔から素直で人懐こい子どもで、年長者には素直に懐いた。その中の一人に、高坂がいた。幼い尊奈門に、後を着いて回られた時期もある。
高坂はさして子ども好きではなかったから、時々しか相手をしていなかった。といって、彼の存在が不快だった訳ではない。高坂の基準で言えば、可愛がっていたと言ってもいい。
それが決定的に反転したのは、雑渡が大きな火傷を負って戻ったその日だった。
仲が悪くなった、という単純なものではない。高坂の内側の感情だけが反転した。尊奈門は、何も変わらなかった。
当時の尊奈門に、雑渡の事以外を気にする余裕はなかったからだ。
その日から彼の世界の中心は雑渡になって、他の者の言葉は耳に入らなくなった。あえて入れないようにしていたのだろう。
4999