高諸05「おまえの素直さは、長所だと思っているのだがね」
雑渡が突然そう言い出したのは、とある晴れた日。雑渡が書類仕事を始めて、それなりの時間が経った頃だった。
仕事に飽きたんだな、と側で手伝っていた尊奈門は正確に理解する。雑渡は仕事に飽きると、いつも尊奈門にあれこれ話しかけてくるのだ。
「ありがとうございます。こちらが次の書類です」
たいした意味はないだろうと受け流し、次の書面を差し出す。雑渡はそれを受け取って、もう一度、尊奈門を見た。
「だが、陣左には発揮されないな」
ぎくりと、一瞬、動きが止まる。
雑渡に隠し事をしても無駄だ。わかってはいるが、
「な……何の事ですか」
悪あがきをしてしまう。
「こう見えても、心配しているのだがね」
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