原作雑土で連載してみる06 下手に距離を詰めてしまったものだ。
こんなにもわかりやすい失態を晒すのは、一体どれくらいぶりだろうか。
元はと言えば、忍務で訪れた場所に土井がいたのが始まりだ。
その忍務は、黄昏甚兵衛から命じられたものであった。
タソガレドキの将に、若い妻を迎えた壮年の男がいた。彼は真面目な忠義者で、甚兵衛も気に入っている男だ。彼自身に、特別な問題はない。
「あれの奥方に問題があっての」
甚兵衛は雑渡に向かって、そう言った。
彼が娶ったばかりの新妻は美しい娘として有名だった。その反面、自由で奔放な気質であり、実家も苦労していた、という程度の噂は雑渡も知っていた。
当然、家同士の結びつきの婚姻であり、当人たちの意思はない。それでも男は妻との距離を縮めようと、努力はしていたらしい。ただ、相性が致命的に悪かった。
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