文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day14 月もなく、星々だけが煌めく中。構内の照明すらも落とされた真夜中のプロムナードを空閑と汐見はそぞろ歩く。常ならば煌々と輝いている筈の学校に隣接する宇宙港も、殆ど照明が落とされ心なしかひっそりとして。
「久々だな、この時間に外歩くの」
「そういえばそうかも」
真夜中の冷え切った空気が肌に心地いい。少し先を行く汐見の姿も闇に紛れてしまいそうで、空閑は彼に追いつくように足を早める。真夜中の散歩は高校生の身分であった頃から、時折汐見に誘われるままに行われていて。こうして歩き回るのは久々の事だった。
「まぁ、理由は分かりきってんだけどな」
少しだけ刺すような調子でそう重ねた汐見に、空閑は苦笑を漏らす。昨年までは夏の熱から逃げるように、この時期は幾度もこうやって外を歩いていた。その恒例行事のような夜の散歩が今年は今日まで行われていなかったのは、ひとえにこの時間に外を出歩ける状態になかったという事で。
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