浬-かいり-
DOODLEkoms。後輩に問い詰められてめんどくさく悶々するokswの話。隠伏の日陰「瀬田先輩と付き合ってるって、本当なんですか」
ひゅ、と。心臓を掴まれて、息が止まって、行き場を失くした酸素が喉の間から漏れ出たような。そんな音が自分から発せられた。
まだ慣れないRiNGでの練習を終えて、ひと足先にスタジオから出たら声を掛けられて人気のない所まで連れてこられて。そしてこの台詞だ。
見たことある子だ。花女の、学年がひとつ下の子だ。ハロハピのライブにも度々来て、差し入れも何度か貰ったことがある。学校で話したこともある。ただそんな彼女の目的は、あたしじゃなくて薫さんであることをよく知っている。
「え、あ、どうして、」
そんなことをぐるぐる考えていたら、声が喉に張り付いて上手く喋れなかった。
3485ひゅ、と。心臓を掴まれて、息が止まって、行き場を失くした酸素が喉の間から漏れ出たような。そんな音が自分から発せられた。
まだ慣れないRiNGでの練習を終えて、ひと足先にスタジオから出たら声を掛けられて人気のない所まで連れてこられて。そしてこの台詞だ。
見たことある子だ。花女の、学年がひとつ下の子だ。ハロハピのライブにも度々来て、差し入れも何度か貰ったことがある。学校で話したこともある。ただそんな彼女の目的は、あたしじゃなくて薫さんであることをよく知っている。
「え、あ、どうして、」
そんなことをぐるぐる考えていたら、声が喉に張り付いて上手く喋れなかった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ。🌸世界線桜色に染まれ 白馬に跨り道を行けば、此方に振り向いた子猫ちゃんたちが桜色に頬を染める。
新年度になり、桜並木には新しい風と共に花弁が舞う。私と同じ制服を着た学生たちは、皆浮き足立っているように見えた。それは、今日から進級し新しい生活が始まるから……というだけではないのだろう。
耳を傾ければ、聞こえてくる弾んだ声。近頃の学校内の話題は、とある噂で持ちきりだ。
伝説の桜の樹。
10年に一度だけ満開に咲き誇る、中庭の桜の樹。その樹の下で大切な人と一緒に幸せを願うと、その願いは必ず叶うという。
素晴らしく儚い話だと思う。ロマンがあり、夢がある。その話に花を咲かせ盛り上がる子猫ちゃんたちも可愛らしい。大切な人と共に桜を見れることだけでも素敵な時間だ。きっと、願いも叶うことだろう。
3276新年度になり、桜並木には新しい風と共に花弁が舞う。私と同じ制服を着た学生たちは、皆浮き足立っているように見えた。それは、今日から進級し新しい生活が始まるから……というだけではないのだろう。
耳を傾ければ、聞こえてくる弾んだ声。近頃の学校内の話題は、とある噂で持ちきりだ。
伝説の桜の樹。
10年に一度だけ満開に咲き誇る、中庭の桜の樹。その樹の下で大切な人と一緒に幸せを願うと、その願いは必ず叶うという。
素晴らしく儚い話だと思う。ロマンがあり、夢がある。その話に花を咲かせ盛り上がる子猫ちゃんたちも可愛らしい。大切な人と共に桜を見れることだけでも素敵な時間だ。きっと、願いも叶うことだろう。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ※怪盗パロ
これから共犯者なる君へ その日は満月だった。深夜だというのに夜の静けさは全く無く、サイレンが鳴り響き慌ただしい足音が幾重にも重なっていた。無線を行き交うのは怒号と、焦った声と、動揺する声と、そして笑い声。
「こちら宝石展示場、怪盗ハロハッピーはダイヤを盗み、尚逃走中……!」
世間を騒がす怪盗ハロハッピーは、予告状の時刻ぴったりに現れて予告していたダイヤを回収した。美術館内を逃走する怪盗を、警備員たちが必死に追いかける。
しかし追われている筈の怪盗は、楽しそうに笑うのだった。
「さあ、今宵も共に楽しもうじゃないか!」
そんな煽りとも取れる台詞を怪盗が口にして、壁に飾られた絵画へと手を伸ばす。それも盗むつもりかと警備員たちが声を荒げようとしたその瞬間、絵画の裏から大量の白い鳩が飛び出した。
2844「こちら宝石展示場、怪盗ハロハッピーはダイヤを盗み、尚逃走中……!」
世間を騒がす怪盗ハロハッピーは、予告状の時刻ぴったりに現れて予告していたダイヤを回収した。美術館内を逃走する怪盗を、警備員たちが必死に追いかける。
しかし追われている筈の怪盗は、楽しそうに笑うのだった。
「さあ、今宵も共に楽しもうじゃないか!」
そんな煽りとも取れる台詞を怪盗が口にして、壁に飾られた絵画へと手を伸ばす。それも盗むつもりかと警備員たちが声を荒げようとしたその瞬間、絵画の裏から大量の白い鳩が飛び出した。
浬-かいり-
DOODLEかおみさその我儘、今日限定につき 寒いな、と身震いする感覚で目を開ける。薄いタオルケットだけでは暖を取るには心許なくて、でも手元にはそれしか無いから仕方なく引き寄せて身体を丸める。今は何時なんだろう。頭が重い。身体の節々が痛む。吐き気がして気持ち悪い。……昨日、何時に寝たっけな。
そんなことをぐるぐる考えていたら、頭に何かが乗せられた。ゆっくりとそちらに視線を移す。
「おはよう。今日はよく眠っていたね、お姫様」
声を掛けてきたのが薫さんだと気付いて、頭に乗せられたのは彼女の手だったと理解する。撫でる感触が心地よくて、それでも頭の痛みは和らいではくれなくて顔を顰める。
あたしと同じで朝には弱い薫さんだけど、今日はとっくに起きていたようで身なりが整っていた。
2693そんなことをぐるぐる考えていたら、頭に何かが乗せられた。ゆっくりとそちらに視線を移す。
「おはよう。今日はよく眠っていたね、お姫様」
声を掛けてきたのが薫さんだと気付いて、頭に乗せられたのは彼女の手だったと理解する。撫でる感触が心地よくて、それでも頭の痛みは和らいではくれなくて顔を顰める。
あたしと同じで朝には弱い薫さんだけど、今日はとっくに起きていたようで身なりが整っていた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ臆病者と梅雨の空 静かな部屋の中では、雨が窓を叩く音がやけにはっきりと聞こえてくる。
朝の天気予報では、東京は先日から梅雨入りしたと告げていた。雨が続くここ最近は6月というのに気温が低く、衣替えを終えて暫く経つ半袖の制服では肌寒い。
雨音に混じって、薫さんが台本のページを捲る音。寒いからと温かい飲み物を淹れてきたのは自分のくせに、台本を読むのに夢中で殆ど手に取られることの無かったマグカップからは、もう湯気が立つことはない。
あたしはパソコンに繋がれたヘッドホンを一度外すと、自分のマグカップを手に取って……もう自分の分は飲み切ってしまっていることを思い出した。仕方ないので、代わりに薫さんのマグカップに口を付ける。すっかり冷めてしまっているコーヒーは当然だけど身体を温めてくれる訳はなく、喉は潤ったけれど寧ろ肌寒さが増した。身震いをすれば、薫さんがすぐに気付いて顔を上げた。
2566朝の天気予報では、東京は先日から梅雨入りしたと告げていた。雨が続くここ最近は6月というのに気温が低く、衣替えを終えて暫く経つ半袖の制服では肌寒い。
雨音に混じって、薫さんが台本のページを捲る音。寒いからと温かい飲み物を淹れてきたのは自分のくせに、台本を読むのに夢中で殆ど手に取られることの無かったマグカップからは、もう湯気が立つことはない。
あたしはパソコンに繋がれたヘッドホンを一度外すと、自分のマグカップを手に取って……もう自分の分は飲み切ってしまっていることを思い出した。仕方ないので、代わりに薫さんのマグカップに口を付ける。すっかり冷めてしまっているコーヒーは当然だけど身体を温めてくれる訳はなく、喉は潤ったけれど寧ろ肌寒さが増した。身震いをすれば、薫さんがすぐに気付いて顔を上げた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(大学一年生×高校三年生)微睡みに委ねるまま けたたましく鳴るアラームの音で、徐々に意識がはっきりする。目を閉じたまま手探りでスマホを探して、やっとの思いでアラームを止めた。時刻は午前六時半。
スマホを探す為に布団から出した手が寒くて、アラームを止めた後に思わず布団の中へまた手を引っ込めた。まずいな、布団の外に出たくない。これだから冬の朝というものは厄介だ。
なんとか起きなくてはと、布団の中で目をしぱしぱ瞬かせながら頭の中で今日の予定を確認する。
あれ、そもそも今日は何曜日だったっけ。ここのところ、大学の課題やライブ、演劇サークルの活動が重なって続いていて、すっかり曜日感覚が抜け落ちてしまった。
もう一度曜日を確認しようと、布団の外へ手を伸ばそうとする。その時、指先が何か温かいものに触れて思わず固まった。
1999スマホを探す為に布団から出した手が寒くて、アラームを止めた後に思わず布団の中へまた手を引っ込めた。まずいな、布団の外に出たくない。これだから冬の朝というものは厄介だ。
なんとか起きなくてはと、布団の中で目をしぱしぱ瞬かせながら頭の中で今日の予定を確認する。
あれ、そもそも今日は何曜日だったっけ。ここのところ、大学の課題やライブ、演劇サークルの活動が重なって続いていて、すっかり曜日感覚が抜け落ちてしまった。
もう一度曜日を確認しようと、布団の外へ手を伸ばそうとする。その時、指先が何か温かいものに触れて思わず固まった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ+はぐみ内緒の時間は二人の時間「みーーーさきーーーー!!」
「みーくんみーくん〜〜! ねえねえ、今日こころんと三人でかき氷食べに行こうよー!」
放課後、こころんと二人でみーくんの教室へ飛び込む。この間おたえとイヴちんと行った、駅の近くの新しいかき氷屋さん。すっごく美味しかったから、こころんとみーくんにも食べて欲しいって思ったんだ。
けれどみーくんは、ちょっと眉を下げて困った顔をした。
「あー……ごめん、あたし予定があるんだ。二人で行っておいでよ」
「そうなんだ……。わかった! 今度一緒に行こうね!」
みーくんが一緒に行けないのは残念だけど。その代わり次は一緒に行く約束をして、手を振った。
こころんと校門を出る時に、少しだけ急いでるみたいに歩くみーくんの背中を見つけた。だからきっと、とっても大事な用事だったんだと思う。
2598「みーくんみーくん〜〜! ねえねえ、今日こころんと三人でかき氷食べに行こうよー!」
放課後、こころんと二人でみーくんの教室へ飛び込む。この間おたえとイヴちんと行った、駅の近くの新しいかき氷屋さん。すっごく美味しかったから、こころんとみーくんにも食べて欲しいって思ったんだ。
けれどみーくんは、ちょっと眉を下げて困った顔をした。
「あー……ごめん、あたし予定があるんだ。二人で行っておいでよ」
「そうなんだ……。わかった! 今度一緒に行こうね!」
みーくんが一緒に行けないのは残念だけど。その代わり次は一緒に行く約束をして、手を振った。
こころんと校門を出る時に、少しだけ急いでるみたいに歩くみーくんの背中を見つけた。だからきっと、とっても大事な用事だったんだと思う。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(※ブルーシープ衣装パロ)「おやすみ、ストレイシープ」の続き
ストレイシープは眠らない「おやすみ、仔羊ちゃん」
お月様とお星様が煌めく紺碧の空の下。今夜も眠れずにいた迷える仔羊が、ぐっすりと眠りの海へ落ちていきました。
モノクルの奥にルビーの瞳を輝かせる、ブルーシープと名乗る魔法使いが仔羊の頭を撫でて微笑みます。シルクハットの下に見える羊の角が、月明かりに照らされました。
その隣で、黒髪の間から同じような羊の角を覗かせた使い魔の女の子が、じっとブルーグレーの瞳を魔法使いへ向けました。
「美咲もありがとう、お疲れ様」
魔法使いが使い魔の女の子の頭を撫でてあげれば、恥ずかしがりやの彼女は窓の外へと目を逸らします。
まだ夜は始まったばかり。眠れぬ仔羊が眠った後は、魔法使いと使い魔の女の子の、二人だけの時間です。
1728お月様とお星様が煌めく紺碧の空の下。今夜も眠れずにいた迷える仔羊が、ぐっすりと眠りの海へ落ちていきました。
モノクルの奥にルビーの瞳を輝かせる、ブルーシープと名乗る魔法使いが仔羊の頭を撫でて微笑みます。シルクハットの下に見える羊の角が、月明かりに照らされました。
その隣で、黒髪の間から同じような羊の角を覗かせた使い魔の女の子が、じっとブルーグレーの瞳を魔法使いへ向けました。
「美咲もありがとう、お疲れ様」
魔法使いが使い魔の女の子の頭を撫でてあげれば、恥ずかしがりやの彼女は窓の外へと目を逸らします。
まだ夜は始まったばかり。眠れぬ仔羊が眠った後は、魔法使いと使い魔の女の子の、二人だけの時間です。
浬-かいり-
DOODLEかおみさGood-by, sweet Whiteday. 「お客さん、みんな喜んでくれて良かったですね」
ホワイトデー公演の帰り道。薄暗くなり始めた道の中で美咲がぽつりと零した。公演は大成功に終わり、バレンタインに愛を向けてくれた子猫ちゃん達もとても喜んでくれた。
美咲も公演で披露する曲を作ってくれたり、裏方の仕事を手伝ってくれたりと、去年に引き続き世話になってしまった。本当に感謝が尽きない。
「美咲、まだ時間はあるかい?」
ホワイトデー終了まで残り六時間。美咲を家に送り届けている途中だが、まだやらなければいけないことがある。私は尋ねながら、いつもの公園を指差した。首を傾げてから頷く美咲の手を引いて公園のベンチへ。
既に時報のチャイムが鳴った後の公園に人の姿は殆どなく、春特有の強めで生暖かい風が髪を撫でていくだけだ。
1464ホワイトデー公演の帰り道。薄暗くなり始めた道の中で美咲がぽつりと零した。公演は大成功に終わり、バレンタインに愛を向けてくれた子猫ちゃん達もとても喜んでくれた。
美咲も公演で披露する曲を作ってくれたり、裏方の仕事を手伝ってくれたりと、去年に引き続き世話になってしまった。本当に感謝が尽きない。
「美咲、まだ時間はあるかい?」
ホワイトデー終了まで残り六時間。美咲を家に送り届けている途中だが、まだやらなければいけないことがある。私は尋ねながら、いつもの公園を指差した。首を傾げてから頷く美咲の手を引いて公園のベンチへ。
既に時報のチャイムが鳴った後の公園に人の姿は殆どなく、春特有の強めで生暖かい風が髪を撫でていくだけだ。
浬-かいり-
DOODLEかおみさHello, melty Valentine. 「おや、美咲?」
「お、おはようございます……」
二月十四日の朝。ギターケースを提げる薫さんは、家の前で佇んでいたあたしを見て不思議そうに首を傾げた。あたしはぎこちなく挨拶をする。
それもそうだ。今日はハロハピのバレンタインライブがあるので、スタジオに直接集合の筈だ。わざわざ薫さんの家の前で待つ必要なんてない。驚いた顔をされるのも尤もなのである。
「もしかして、迎えに来てくれたのかい?」
「あー……、うん、まあ」
嬉しそうな声音になった薫さんに対して、曖昧な返事。よくよく考えたら、家の前で出待ちって重たくなかったかな。迷惑だったかな。大丈夫だよね。だって一応、付き合ってるわけだし。
そんなことをぐるぐる考えていたら、薫さんがあたしの手を握って歩き出した。咄嗟に、慌ててその手を反対側に引っ張る。
1557「お、おはようございます……」
二月十四日の朝。ギターケースを提げる薫さんは、家の前で佇んでいたあたしを見て不思議そうに首を傾げた。あたしはぎこちなく挨拶をする。
それもそうだ。今日はハロハピのバレンタインライブがあるので、スタジオに直接集合の筈だ。わざわざ薫さんの家の前で待つ必要なんてない。驚いた顔をされるのも尤もなのである。
「もしかして、迎えに来てくれたのかい?」
「あー……、うん、まあ」
嬉しそうな声音になった薫さんに対して、曖昧な返事。よくよく考えたら、家の前で出待ちって重たくなかったかな。迷惑だったかな。大丈夫だよね。だって一応、付き合ってるわけだし。
そんなことをぐるぐる考えていたら、薫さんがあたしの手を握って歩き出した。咄嗟に、慌ててその手を反対側に引っ張る。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(大学一年×高校三年)カウントダウン バンド練習の無い金曜日の放課後。こころとはぐみの三人でちょっとだけファストフード店に寄り道をしてお喋りをして、先に帰ると店を出て行く二人に手を振って見送った。店内のテーブル席に一人残ったあたしは、スマホを弄る。今日は空いてるから、ゆっくりしていっていいとバイト中の花音さんに声を掛けてもらって。
「美咲」
そうして暫くしてから、優しく名前を呼ばれたので顔をあげた。あたしの目に映るのは、コートにマフラー姿で微笑む薫さん。
「すまないね、待っただろう」
「ううん、大丈夫。さっきまでこころとはぐみと一緒だったし」
頭を撫でてくる薫さんに首を振る。あたしがコートを羽織ってマフラーを巻いている間、薫さんは空になったあたしのドリンクカップを捨てに行ってくれていた。支度を終えると、戻ってきた薫さんが行こうかって手を差し出す。やりたいことを即座に察したあたしは、眉を下げた。
2492「美咲」
そうして暫くしてから、優しく名前を呼ばれたので顔をあげた。あたしの目に映るのは、コートにマフラー姿で微笑む薫さん。
「すまないね、待っただろう」
「ううん、大丈夫。さっきまでこころとはぐみと一緒だったし」
頭を撫でてくる薫さんに首を振る。あたしがコートを羽織ってマフラーを巻いている間、薫さんは空になったあたしのドリンクカップを捨てに行ってくれていた。支度を終えると、戻ってきた薫さんが行こうかって手を差し出す。やりたいことを即座に察したあたしは、眉を下げた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(※オメガバース)それを運命と呼ぶ 嫌な予感がする。瀬田薫がそう思ったのは、恋人であり番である奥沢美咲のヒートが近いことだけが原因ではなかった。
この日の放課後、二人はCiRCLEで待ち合わせていた。新曲にあるギターソロの練習を、美咲が付き合ってくれる予定だった。
放課後に担任から雑用を引き受けてしまったので、少し遅れると連絡したのが数十分前。それにはすぐに了解の返事が来たものの、雑用を終え今から向かうと送ったメッセージには既読すら付いていない。たったそれだけのことであるのだが、どうにも嫌な予感が頭を過ぎって仕方ない。重いギターケースを背負って、CiRCLEまでの道を急いでいた。
気のせいであって欲しかった。辿り着けば美咲はなんでもない様子で、そんなに急いで来なくても良かったのに、心配し過ぎ。なんて憎まれ口を叩いて笑ってくれるのだと。そう思いたかった。
2543この日の放課後、二人はCiRCLEで待ち合わせていた。新曲にあるギターソロの練習を、美咲が付き合ってくれる予定だった。
放課後に担任から雑用を引き受けてしまったので、少し遅れると連絡したのが数十分前。それにはすぐに了解の返事が来たものの、雑用を終え今から向かうと送ったメッセージには既読すら付いていない。たったそれだけのことであるのだが、どうにも嫌な予感が頭を過ぎって仕方ない。重いギターケースを背負って、CiRCLEまでの道を急いでいた。
気のせいであって欲しかった。辿り着けば美咲はなんでもない様子で、そんなに急いで来なくても良かったのに、心配し過ぎ。なんて憎まれ口を叩いて笑ってくれるのだと。そう思いたかった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(社会人パロ)38℃に融ける 部屋に鳴り響くアラームの音で目を覚ます。重い瞼をなんとか開けながら隣を見るが、美咲の姿は無かった。同棲を始める時に二人で買った少し大きめのベッドが、今は途方もなく広く感じる。寝る前に根を詰め過ぎないよう声は掛けたのだが、結局彼女は徹夜したようだ。
フリーで作曲の仕事をしている美咲は、昨日はろくに食事も摂らず作業部屋に閉じ籠もっていた。締切が迫っている訳では無いのだが、本人曰く調子が出て来たので今手を止めたくは無い。とのことらしい。
ベッドから降りて着替えてから、美咲の作業部屋のドアをノックする。返事は無い。
「美咲、おはよう。調子はどうだい? 今から朝食を作るから、そしたら一緒に食べよう」
数秒後、呻き声に近い返事のようなものが聞こえて来た。一応の返事があったことに少しだけ安堵して、また呼びに来るよ、と一言だけ添えてキッチンへと向かう。
2588フリーで作曲の仕事をしている美咲は、昨日はろくに食事も摂らず作業部屋に閉じ籠もっていた。締切が迫っている訳では無いのだが、本人曰く調子が出て来たので今手を止めたくは無い。とのことらしい。
ベッドから降りて着替えてから、美咲の作業部屋のドアをノックする。返事は無い。
「美咲、おはよう。調子はどうだい? 今から朝食を作るから、そしたら一緒に食べよう」
数秒後、呻き声に近い返事のようなものが聞こえて来た。一応の返事があったことに少しだけ安堵して、また呼びに来るよ、と一言だけ添えてキッチンへと向かう。
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DOODLEかおみさアップルミントのゆめをみて 時刻は21時を少し過ぎたところ。外は寒いが、家の中は暖房が効いている為暖かい。風呂上りの瀬田薫は自室のベッドに腰掛け台本を読みながら、一人そわそわと落ち着かない様子でいた。それは、今日が金曜の夜だからということだけが理由では無かった。
視線は手元の文章を追うものの、目は滑って内容は頭に入ってこない。それでも平静を装ってぺらぺらとページを捲る振りをしていれば、やがて扉の向こうから階段を上がる音が聞こえた。軽い足音は段々此方へと近付き、扉が開けられる。
「薫さん、お風呂ありがと」
「ああ。よく温まったかい?」
部屋に入ってきた恋人――奥沢美咲の姿に、薫は激しく動悸する心臓を誤魔化しながら微笑んだ。頷く美咲の頰はほんのりと赤く、しっかり身体を温めてきたであろうことが窺える。
2453視線は手元の文章を追うものの、目は滑って内容は頭に入ってこない。それでも平静を装ってぺらぺらとページを捲る振りをしていれば、やがて扉の向こうから階段を上がる音が聞こえた。軽い足音は段々此方へと近付き、扉が開けられる。
「薫さん、お風呂ありがと」
「ああ。よく温まったかい?」
部屋に入ってきた恋人――奥沢美咲の姿に、薫は激しく動悸する心臓を誤魔化しながら微笑んだ。頷く美咲の頰はほんのりと赤く、しっかり身体を温めてきたであろうことが窺える。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(※モブ男子視点)こちら温めますか 今日も厳しい部活を終えて、学校を出る。日課となっている買い食いの為に、コンビニへ立ち寄ることにしよう。夕飯前だけれど、運動部の男子高校生の空腹は家までもってはくれない。
いつもだったら通学路の途中にあるコンビニに立ち寄るのだけど。最近は少しだけ遠回りして、別のコンビニへ行っていた。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くと、レジに居たツインテールの女の子が挨拶してくれたので軽く会釈する。今の気分はホットスナックってもう決まっていたけれど、俺は店内を物色する振りをして辺りを見渡す。
(……いた)
“彼女”は品出しの最中だった。ケースの乗ったカートを引きながら、棚に弁当を並べている。俺は棚に隠れながら、こっそりとその様子を窺った。
2371いつもだったら通学路の途中にあるコンビニに立ち寄るのだけど。最近は少しだけ遠回りして、別のコンビニへ行っていた。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くと、レジに居たツインテールの女の子が挨拶してくれたので軽く会釈する。今の気分はホットスナックってもう決まっていたけれど、俺は店内を物色する振りをして辺りを見渡す。
(……いた)
“彼女”は品出しの最中だった。ケースの乗ったカートを引きながら、棚に弁当を並べている。俺は棚に隠れながら、こっそりとその様子を窺った。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ赤い糸辿って 朝起きたら、見慣れないものが視界に入った。
右手の小指に結ばれたそれは、赤い糸のようなものだった。ものだった、と確信が持てない言い方をしているのは、取ろうと思ったらすり抜けて触れなかったからだ。
(なにこれ、幻覚?)
でも、幻覚にしては随分はっきり見え過ぎているように思う。透けてる訳でもなく、はっきりと見える赤。小指の根本にしっかりと結ばれているそれは、部屋の外へと伸びていた。辿って自室のドアを開けると、階段の更に下へと続いている。
「……まあ、いっか」
きっと疲れているんだ。だからこんな幻覚見ちゃうんだって。実際下の階に降りてみても、家族からなんの反応もない。本当に見えていないみたいだ。
赤い糸は玄関の先、ドアの向こうへと続いている。
2635右手の小指に結ばれたそれは、赤い糸のようなものだった。ものだった、と確信が持てない言い方をしているのは、取ろうと思ったらすり抜けて触れなかったからだ。
(なにこれ、幻覚?)
でも、幻覚にしては随分はっきり見え過ぎているように思う。透けてる訳でもなく、はっきりと見える赤。小指の根本にしっかりと結ばれているそれは、部屋の外へと伸びていた。辿って自室のドアを開けると、階段の更に下へと続いている。
「……まあ、いっか」
きっと疲れているんだ。だからこんな幻覚見ちゃうんだって。実際下の階に降りてみても、家族からなんの反応もない。本当に見えていないみたいだ。
赤い糸は玄関の先、ドアの向こうへと続いている。
浬-かいり-
DOODLEかおみさビターチョコレート 事の発端は、はぐみだった。夏休みも残り一週間を切ろうとしていた日のハロハピ会議、顔色の悪いはぐみが「宿題がまだ終わってない」と切り出した。夏休み明けはすぐにテストがある。テストを心配する美咲と花音、いつの間にか宿題を終わらせていたこころ、それに何故か薫まで加わって。
弦巻家のいつものハロハピ会議室。大きなテーブルの上にお菓子を広げて、今日はハロハピ会議じゃなくて勉強会だ。このハロー、ハッピーワールド! というバンドでは、この光景はとっても珍しいかもしれない。
「花音さん、ここの解き方分かる?」
「ん? えーっとね……これは、この公式を使えばいいと思うよ」
「……あ。本当だ、ありがとうございます」
真面目に勉強するのは美咲と花音。美咲の質問に答えながら、花音はテーブルの向かいに座る三人をちらりと見やる。
2675弦巻家のいつものハロハピ会議室。大きなテーブルの上にお菓子を広げて、今日はハロハピ会議じゃなくて勉強会だ。このハロー、ハッピーワールド! というバンドでは、この光景はとっても珍しいかもしれない。
「花音さん、ここの解き方分かる?」
「ん? えーっとね……これは、この公式を使えばいいと思うよ」
「……あ。本当だ、ありがとうございます」
真面目に勉強するのは美咲と花音。美咲の質問に答えながら、花音はテーブルの向かいに座る三人をちらりと見やる。
浬-かいり-
DOODLEかおみさクレジットまで離さないで「ふふ……。じゃあ美咲、ほら」
ソファに座った薫が、足を開いてその間をぽんぽんと叩く。座れ、ということらしい。それは美咲を安心させたいが故なのか、それとも薫自身が怖くて一人では耐えられそうにないからなのか。まあきっと両方なんだろうな、と思いながら美咲は素直にそこへと座った。きゅ、と腰に腕が回り抱き留められる。
事の発端は一本のDVD。りみから借りてきたというそれは、彼女のセレクトにしては珍しい邦画ホラーだった。一人で観るのはちょっと怖い。でも薫が観るのは無理だろう。それでも、薫は美咲の為ならと顔色を悪くしながらソファに腰掛けたのだった。そうだ、彼女はそういう人だった。
「……っ、」
不協和音のBGMと共に、徐々に物語は佳境に入っていく。何故邦画ホラーってこんなにじわじわと展開を勿体振らせるんだと、美咲は息を呑む。手頃にあったクッションを掴み寄せるとぎゅっと両腕で抱き締めた。ぎゅ、と薫も倣うように美咲をより強く抱き締める。
1115ソファに座った薫が、足を開いてその間をぽんぽんと叩く。座れ、ということらしい。それは美咲を安心させたいが故なのか、それとも薫自身が怖くて一人では耐えられそうにないからなのか。まあきっと両方なんだろうな、と思いながら美咲は素直にそこへと座った。きゅ、と腰に腕が回り抱き留められる。
事の発端は一本のDVD。りみから借りてきたというそれは、彼女のセレクトにしては珍しい邦画ホラーだった。一人で観るのはちょっと怖い。でも薫が観るのは無理だろう。それでも、薫は美咲の為ならと顔色を悪くしながらソファに腰掛けたのだった。そうだ、彼女はそういう人だった。
「……っ、」
不協和音のBGMと共に、徐々に物語は佳境に入っていく。何故邦画ホラーってこんなにじわじわと展開を勿体振らせるんだと、美咲は息を呑む。手頃にあったクッションを掴み寄せるとぎゅっと両腕で抱き締めた。ぎゅ、と薫も倣うように美咲をより強く抱き締める。
浬-かいり-
DOODLEかおみささて合計いくつでしょう 夏休み中真っ只中のこの日はバンド練習日であり、ハロー、ハッピーワールド! はCiRCLEにて集合していた。
前日、美咲が薫の家に泊まっていた為、そのまま二人は一緒にやって来た。ハロハピ内では二人が付き合っているのは周知の事実の為、特に他のメンバーが疑問に思うこともない。
ただ全員がCiRCLEのカウンター前に集合した時、薫がソワソワと落ち着かないことに美咲が気付く。
「薫さん? どうしたの?」
「えっ!?」
薫の視線の先は、美咲の首筋にある赤い痣のようなものだった。黒髪の間から辛うじて覗くそれは、見る人が見れば分かるであろうキスマークと呼ばれるものであった。
美咲は気付いていない。当然だ。これは、美咲が寝ている間に付けられたものだった。
2989前日、美咲が薫の家に泊まっていた為、そのまま二人は一緒にやって来た。ハロハピ内では二人が付き合っているのは周知の事実の為、特に他のメンバーが疑問に思うこともない。
ただ全員がCiRCLEのカウンター前に集合した時、薫がソワソワと落ち着かないことに美咲が気付く。
「薫さん? どうしたの?」
「えっ!?」
薫の視線の先は、美咲の首筋にある赤い痣のようなものだった。黒髪の間から辛うじて覗くそれは、見る人が見れば分かるであろうキスマークと呼ばれるものであった。
美咲は気付いていない。当然だ。これは、美咲が寝ている間に付けられたものだった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ「焼くは嫉妬、焦がすは想い」の瀬田視点
身を焼き、胸を焦がす 気象予報士が暫く猛暑続きだと、今日も熱中症には注意してください、と確か言っていた。そんな炎天下の中を歩いていれば、隣の美咲が溜息を零した。額には汗が滲み、顔も少し赤くなっている。
「……あっついね」
「今日は猛暑日だと言っていたね」
「その割には薫さん、涼しい顔してるけど」
「そう見えるだけさ。こんな日に付き合わせてすまなかったね」
美咲は首を振る。今日は夕方からバンド練習の予定だ。ところが午前の自主練中に弦が切れてしまい、不幸なことに予備も無い。その為、楽器店に向かっていた。
一人で行っても何ら問題もないのに美咲を誘ったのは、彼女と少しでも多く居たかった……という理由が一番大きい。バンドしか接点が無い中、一緒に居るには積極的に誘うしかない。そんな邪な気持ちを正直に美咲に白状したら、彼女はなんて言うだろうか。
2702「……あっついね」
「今日は猛暑日だと言っていたね」
「その割には薫さん、涼しい顔してるけど」
「そう見えるだけさ。こんな日に付き合わせてすまなかったね」
美咲は首を振る。今日は夕方からバンド練習の予定だ。ところが午前の自主練中に弦が切れてしまい、不幸なことに予備も無い。その為、楽器店に向かっていた。
一人で行っても何ら問題もないのに美咲を誘ったのは、彼女と少しでも多く居たかった……という理由が一番大きい。バンドしか接点が無い中、一緒に居るには積極的に誘うしかない。そんな邪な気持ちを正直に美咲に白状したら、彼女はなんて言うだろうか。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ※擬獣化注意弦巻さんちのふわゆめサンドイッチ「はぐみ、花音! いらっしゃい!」
久々にこころちゃんの家を訪れる。笑顔で迎えてくれるこころちゃんと一緒に出迎えてくれたのは、この家で飼われている大型犬のカオルさんだ。身体は大きいけれどとても優しくて賢くて、犬がちょっと苦手な私にも懐いてくれている。
「わーい! カオルくん久しぶりー!」
はぐみちゃんがわしゃわしゃと撫でてから、家のエントランスへと通される。すると、ちりん、と鈴の音がした。
「あらミサキ、おかえりなさい。お散歩楽しかった?」
こころちゃんが嬉しそうに鈴の音の方へと駆け寄る。部屋に現れたのは真っ黒な猫さんだった。鈴の付いた青い首輪を着けたその子は、こころちゃんの顔を見上げるとにゃあって鳴いた。
1930久々にこころちゃんの家を訪れる。笑顔で迎えてくれるこころちゃんと一緒に出迎えてくれたのは、この家で飼われている大型犬のカオルさんだ。身体は大きいけれどとても優しくて賢くて、犬がちょっと苦手な私にも懐いてくれている。
「わーい! カオルくん久しぶりー!」
はぐみちゃんがわしゃわしゃと撫でてから、家のエントランスへと通される。すると、ちりん、と鈴の音がした。
「あらミサキ、おかえりなさい。お散歩楽しかった?」
こころちゃんが嬉しそうに鈴の音の方へと駆け寄る。部屋に現れたのは真っ黒な猫さんだった。鈴の付いた青い首輪を着けたその子は、こころちゃんの顔を見上げるとにゃあって鳴いた。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ焼くは嫉妬、焦がすは想い 蝉の声が煩くて、日差しが痛い。炎天下の中を薫さんと二人で歩きながら、あたしは溜息を吐いた。その溜息すらも熱い気がして嫌になる。暑いっていうか熱い、もう。
「……あっついね」
「今日は猛暑日だと言っていたね」
「その割には薫さん、涼しい顔してるけど」
「そう見えるだけさ。こんな日に付き合わせてすまなかったね」
大丈夫ですよ、とあたしは首を振る。夏休みの真っ只中、弦を買いたいと言う薫さんに誘われて一緒に楽器店へ向かっている途中だった。夕方からはバンド練習があるので、その前に行っておきたいらしい。
「薫さんに結構難しいパート当てちゃったからね……。昨日の時点で結構形になってたから、沢山練習したでしょ」
「ふふ、美咲が私のことを信用してあのパートを任せてくれたのだと思うと、嬉しいよ」
2604「……あっついね」
「今日は猛暑日だと言っていたね」
「その割には薫さん、涼しい顔してるけど」
「そう見えるだけさ。こんな日に付き合わせてすまなかったね」
大丈夫ですよ、とあたしは首を振る。夏休みの真っ只中、弦を買いたいと言う薫さんに誘われて一緒に楽器店へ向かっている途中だった。夕方からはバンド練習があるので、その前に行っておきたいらしい。
「薫さんに結構難しいパート当てちゃったからね……。昨日の時点で結構形になってたから、沢山練習したでしょ」
「ふふ、美咲が私のことを信用してあのパートを任せてくれたのだと思うと、嬉しいよ」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ温泉旅行に行くはなし「薫さんって、何着ても様になるよね」
旅館の廊下をタオル抱えて二人で並んで歩きながら、薫さんを見上げた。旅館のメインである温泉へと向かうあたしたちは、今は備え付けの浴衣を着ている。派手な模様がある訳でもない、単色のシンプルな浴衣だ。それでも似合ってしまっているのは、流石というかなんというか。この人ほんとになんでも似合うな。
「ふふ、やはり私は何を着ても似合ってしまうからね……。美咲もよく似合っているよ」
お揃いの浴衣なんて、なんて儚いのだろう。部屋でこれを着た時に、薫さんがそんなようなことを言っていた。旅館の備え付けである以上、他の宿泊客も当然同じものを着ている訳なんだけど、薫さん的には嬉しいらしい。というか、旅館に着いてからめちゃくちゃテンションが上がっている。はしゃいでるとも言うのかな。
1392旅館の廊下をタオル抱えて二人で並んで歩きながら、薫さんを見上げた。旅館のメインである温泉へと向かうあたしたちは、今は備え付けの浴衣を着ている。派手な模様がある訳でもない、単色のシンプルな浴衣だ。それでも似合ってしまっているのは、流石というかなんというか。この人ほんとになんでも似合うな。
「ふふ、やはり私は何を着ても似合ってしまうからね……。美咲もよく似合っているよ」
お揃いの浴衣なんて、なんて儚いのだろう。部屋でこれを着た時に、薫さんがそんなようなことを言っていた。旅館の備え付けである以上、他の宿泊客も当然同じものを着ている訳なんだけど、薫さん的には嬉しいらしい。というか、旅館に着いてからめちゃくちゃテンションが上がっている。はしゃいでるとも言うのかな。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ⇒写真をアルバムに追加「あ、美咲ちゃん発見!ちょっとこっち来て!」
バンド練習の為CiRCLEへ来ると、ラウンジに居た上原さんに手招きされて名前を呼ばれた。早く着きすぎちゃって別に急いでる訳じゃないし、挨拶もそこそこに近付く。上原さんの方も、周りに他のAfterglowのメンバーは居ないみたいだった。
「なに? どうしたの?」
「ふっふっふっ、これ見て見てー!」
「ん?」
じゃーん、と効果音付きでスマホの画面を見せられる。
興奮気味の上原さんに乗せられるまま画面を見れば、映っていたのは恐らく羽丘の中に貼ってあるのだろう演劇部のポスター。公演の日時が大々的に記されているそのポスターは、日時と同じくらい薫さんの写真がデカデカと載っている。衣装を着た薫さんの写真。それはいつもの演劇部のポスターとなんら変わらないのだけど、いつもと決定的に違う部分がある。
2340バンド練習の為CiRCLEへ来ると、ラウンジに居た上原さんに手招きされて名前を呼ばれた。早く着きすぎちゃって別に急いでる訳じゃないし、挨拶もそこそこに近付く。上原さんの方も、周りに他のAfterglowのメンバーは居ないみたいだった。
「なに? どうしたの?」
「ふっふっふっ、これ見て見てー!」
「ん?」
じゃーん、と効果音付きでスマホの画面を見せられる。
興奮気味の上原さんに乗せられるまま画面を見れば、映っていたのは恐らく羽丘の中に貼ってあるのだろう演劇部のポスター。公演の日時が大々的に記されているそのポスターは、日時と同じくらい薫さんの写真がデカデカと載っている。衣装を着た薫さんの写真。それはいつもの演劇部のポスターとなんら変わらないのだけど、いつもと決定的に違う部分がある。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ嫉妬色の視線 熱気が冷めきらないライブ会場から外へ出て、カフェテラスで一息吐く。冷たい飲み物片手に火照った身体を冷やしながら、話題は先程まで観ていたライブのことだ。
曲が最高にテンションが上がった。パフォーマンスが派手だった。ギターの人がカッコ良かった。クマが可愛かった。
部活の先輩である奥沢先輩に誘われて初めて“ハロー、ハッピーワールド!”のライブに来た同級生達は、部活での奥沢先輩からは想像できないようなはちゃめちゃなバンドに、驚きつつも興奮を抑えられないようだった。
(当然、でしょ)
私はそんな中、一人優越感にも似た感情を抱く。奥沢先輩はこの日のライブの為に、寝る時間も部活の時間も削って頑張っていた。ライブの質が良いのは当然だ。
2245曲が最高にテンションが上がった。パフォーマンスが派手だった。ギターの人がカッコ良かった。クマが可愛かった。
部活の先輩である奥沢先輩に誘われて初めて“ハロー、ハッピーワールド!”のライブに来た同級生達は、部活での奥沢先輩からは想像できないようなはちゃめちゃなバンドに、驚きつつも興奮を抑えられないようだった。
(当然、でしょ)
私はそんな中、一人優越感にも似た感情を抱く。奥沢先輩はこの日のライブの為に、寝る時間も部活の時間も削って頑張っていた。ライブの質が良いのは当然だ。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ遊び過ぎは程々にしましょう CiRCLEのラウンジにて。ソファに座る奥沢美咲は一人ノートを開いて、新曲の歌詞について頭を悩ませていた。その姿を見つけたのは氷川日菜だ。美咲の姿を見つけるやいなや、床を蹴って走り出す。
「あっ、いたいた!! 美咲ちゃーーーーん!!」
「え? わあっっ!?」
そのダッシュのまま、美咲に横から飛び付く。集中していた為走ってくる日菜に気付けず、そのまま素っ頓狂な悲鳴を上げて二人でソファへと沈んだ。
「……なんですか日菜さん」
押し倒された体勢のまま、静かに問い掛ける。この手の人の場合はあんまり過剰にリアクションをすると更に来るんだ。あくまで冷静に。あくまでなんでもない風を装って。
案の定、美咲がなんにもリアクションを取らなければ、日菜も大して気にしていないように話し出す。その体勢のままで。
2629「あっ、いたいた!! 美咲ちゃーーーーん!!」
「え? わあっっ!?」
そのダッシュのまま、美咲に横から飛び付く。集中していた為走ってくる日菜に気付けず、そのまま素っ頓狂な悲鳴を上げて二人でソファへと沈んだ。
「……なんですか日菜さん」
押し倒された体勢のまま、静かに問い掛ける。この手の人の場合はあんまり過剰にリアクションをすると更に来るんだ。あくまで冷静に。あくまでなんでもない風を装って。
案の定、美咲がなんにもリアクションを取らなければ、日菜も大して気にしていないように話し出す。その体勢のままで。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ炎天の下、遠回り 公園のベンチに腰掛ける。日は傾き始めたけれどやっぱりまだ暑くて、セミの声がけたたましくて、座っているだけなのにタオルでいくら拭っても汗は流れるばかり。
セミの声に混じって、元気に遊びまわる子供の声やお喋りする女子高生の声が聞こえて来る。楽しそうなそれらに耳を傾けながら、フェイスタオルを開いて頭に乗せる。夕方なんだからもう少しだけ手加減してくれたっていいのに、真夏の日差しは強過ぎてタオル如きじゃ日除けにもなりゃしない。
「美咲」
知った声が名前を呼んだので、視界の端を隠していたタオルを手で暖簾のように退けてみる。見上げれば、缶ジュース片手に立つ薫さんがあたしへと微笑んでいた。
暑さで溶け切った顔をしているであろうあたしとは対照的に、薫さんは涼しい顔をしている。ただ、どうやらそう見えるだけで、額や首筋に汗が伝っているのが見えた。真夏の太陽は、美人に対してだろうが容赦ない。
2766セミの声に混じって、元気に遊びまわる子供の声やお喋りする女子高生の声が聞こえて来る。楽しそうなそれらに耳を傾けながら、フェイスタオルを開いて頭に乗せる。夕方なんだからもう少しだけ手加減してくれたっていいのに、真夏の日差しは強過ぎてタオル如きじゃ日除けにもなりゃしない。
「美咲」
知った声が名前を呼んだので、視界の端を隠していたタオルを手で暖簾のように退けてみる。見上げれば、缶ジュース片手に立つ薫さんがあたしへと微笑んでいた。
暑さで溶け切った顔をしているであろうあたしとは対照的に、薫さんは涼しい顔をしている。ただ、どうやらそう見えるだけで、額や首筋に汗が伝っているのが見えた。真夏の太陽は、美人に対してだろうが容赦ない。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ君を誘う百鬼夜行 からんころん。下駄の音を鳴らせながら、藍色の浴衣を着た少女は歩く。太鼓の音と人の喧騒の声に、下駄の音を止めた。石段の上の鳥居を見上げる。いつもは静まり返っている真っ暗な神社の中から、今夜は祭囃子が聞こえた。提灯の暖かな光は、少女を誘うようにゆらゆらと揺れる。
からんころん。石段を登った少女が、下駄を鳴らして鳥居をくぐる。少女の空色の瞳に飛び込んできたのは、色とりどりの縁日の屋台。金魚が泳ぐ水面が揺れ、色とりどりの水風船がひしめき、真っ赤なりんご飴が煌めく。
「ようこそ。可愛らしい浴衣だね、美咲」
からんころん。同じような下駄の音に振り返れば、椿が咲く浴衣を着た女性が少女へと微笑んでいた。頭に着けられた狐面と目が合ったような気がして、少女は息を呑む。今しがた鳥居を潜ってきた自分の真後ろに、この狐面は居ただろうか。
2149からんころん。石段を登った少女が、下駄を鳴らして鳥居をくぐる。少女の空色の瞳に飛び込んできたのは、色とりどりの縁日の屋台。金魚が泳ぐ水面が揺れ、色とりどりの水風船がひしめき、真っ赤なりんご飴が煌めく。
「ようこそ。可愛らしい浴衣だね、美咲」
からんころん。同じような下駄の音に振り返れば、椿が咲く浴衣を着た女性が少女へと微笑んでいた。頭に着けられた狐面と目が合ったような気がして、少女は息を呑む。今しがた鳥居を潜ってきた自分の真後ろに、この狐面は居ただろうか。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ甘くて甘い「おはよう、美咲。よく眠れたかい?」
目を覚ますと、目の前の薫さんが微笑んで頭を撫でてきた。大きな手の感触が心地良くて、また目を閉じてしまいそうになる。
「ああ、いけないよ。お風呂に入るんだろう?」
「うん……、」
そんな風に嗜めるみたいに言う薫さんも、駄々を捏ねるみたいにまだ半分夢の世界のあたしも、今は何も服を着ていない。
そもそもあたしが今こんなに疲れてて眠いのだって、元はと言えば薫さんが昨晩頑張り過ぎたせいだ。腰が痛いし瞼が重い。
薫さんは仕方ないと言うように笑うと、あたしに上着を掛けてそのまま抱き上げた。目を閉じながら、階段を降りる音を聞く。
◆
いや、いくらなんでも甘え過ぎじゃないかな。
お風呂に入ってやっと目の冴えたあたしは、薫さんに髪を乾かしてもらいながらやっとそんなことを自覚した。
2509目を覚ますと、目の前の薫さんが微笑んで頭を撫でてきた。大きな手の感触が心地良くて、また目を閉じてしまいそうになる。
「ああ、いけないよ。お風呂に入るんだろう?」
「うん……、」
そんな風に嗜めるみたいに言う薫さんも、駄々を捏ねるみたいにまだ半分夢の世界のあたしも、今は何も服を着ていない。
そもそもあたしが今こんなに疲れてて眠いのだって、元はと言えば薫さんが昨晩頑張り過ぎたせいだ。腰が痛いし瞼が重い。
薫さんは仕方ないと言うように笑うと、あたしに上着を掛けてそのまま抱き上げた。目を閉じながら、階段を降りる音を聞く。
◆
いや、いくらなんでも甘え過ぎじゃないかな。
お風呂に入ってやっと目の冴えたあたしは、薫さんに髪を乾かしてもらいながらやっとそんなことを自覚した。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(オメガバース)例えば、番から始まる恋があったとして まずった。バッグの中を漁りながら、あたしは大いに焦っていた。
その日はバンドの練習日だったが、ヒートと被ってしまった。予定日よりも随分早く来たヒートにただでさえ動揺していたのに、そんな日に限って薬を家に置いてきてしまったらしい。パニックになりながらバッグをひっくり返して中身をぶちまける。薬のケースが見当たらない。身体も吐く息もみんな熱い。思考が茹る。
「……美咲ちゃん?」
控え室のドアをノックする音がして、次いで控えめにドアが開けられる音がした。心配の色を含んだ花音さんの声。きっとなかなか練習に来ないあたしを心配して来たんだ。
床に蹲ったままの姿勢から動けないあたしに駆け寄って、背中に手が添えられる。
2909その日はバンドの練習日だったが、ヒートと被ってしまった。予定日よりも随分早く来たヒートにただでさえ動揺していたのに、そんな日に限って薬を家に置いてきてしまったらしい。パニックになりながらバッグをひっくり返して中身をぶちまける。薬のケースが見当たらない。身体も吐く息もみんな熱い。思考が茹る。
「……美咲ちゃん?」
控え室のドアをノックする音がして、次いで控えめにドアが開けられる音がした。心配の色を含んだ花音さんの声。きっとなかなか練習に来ないあたしを心配して来たんだ。
床に蹲ったままの姿勢から動けないあたしに駆け寄って、背中に手が添えられる。
浬-かいり-
DOODLEかおみさおやすみ、ストレイシープ お日さまが沈んで夜が更けてくると、お月様とお星様がきらきら輝き出します。
こんなに月と星が綺麗な夜は、きっとよく眠れるはず。けれど今夜は、寝たいはずなのになかなか眠れない子が居たのでした。
次の日は大事な大事な用事がありました。自分が入っているバンドのライブがあるのです。けれどそのことを考えれば考えるほど頭の中はぐるぐるして、なかなか眠気が来ません。眠れぬ子は、ますます焦ってしまいます。
「やあ、こんばんは。眠れないのかい?」
しっかり閉めていた筈の窓から声がして、眠れぬ子はびっくりして窓を見ました。風でなびくカーテンに、人影が写っています。
「警戒しないでおくれ、子猫ちゃん。……いや、今は眠れない迷える“仔羊ちゃん”とでも言うべきかな?」
2482こんなに月と星が綺麗な夜は、きっとよく眠れるはず。けれど今夜は、寝たいはずなのになかなか眠れない子が居たのでした。
次の日は大事な大事な用事がありました。自分が入っているバンドのライブがあるのです。けれどそのことを考えれば考えるほど頭の中はぐるぐるして、なかなか眠気が来ません。眠れぬ子は、ますます焦ってしまいます。
「やあ、こんばんは。眠れないのかい?」
しっかり閉めていた筈の窓から声がして、眠れぬ子はびっくりして窓を見ました。風でなびくカーテンに、人影が写っています。
「警戒しないでおくれ、子猫ちゃん。……いや、今は眠れない迷える“仔羊ちゃん”とでも言うべきかな?」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(怪盗ハロハッピー×大学生美咲)月夜にまた会おう 疲れた。
今日のバイトはなかなかハードで、人手不足なのもあって全然作業が進まず、終わるのが遅くなってしまった。
徒歩で帰れる距離なものの、一人で深夜の道を歩くのはなかなか怖い。重たい足を引きずって早歩きで帰路につく。今日はやけに月明かりが眩しくて、パトカーのサイレンが煩い。
「うわっ!?」
「おっと、すまないね」
角を曲がるところで急に現れた人影にぶつかり、バランスを崩す。素っ頓狂な声を上げながらそのまま後ろへ倒れそうだったのを、腕一本で止められた。
肩を抱くように引き寄せられ、驚愕で一瞬息が止まる。
「いや、こちらこそすみませ、……?」
謝りながら見上げてみれば、そこに居たのは仮面にシルクハット、マントを着けた背の高い女性だった。ルビーに似た深紅の瞳があたしを見下ろす。
2407今日のバイトはなかなかハードで、人手不足なのもあって全然作業が進まず、終わるのが遅くなってしまった。
徒歩で帰れる距離なものの、一人で深夜の道を歩くのはなかなか怖い。重たい足を引きずって早歩きで帰路につく。今日はやけに月明かりが眩しくて、パトカーのサイレンが煩い。
「うわっ!?」
「おっと、すまないね」
角を曲がるところで急に現れた人影にぶつかり、バランスを崩す。素っ頓狂な声を上げながらそのまま後ろへ倒れそうだったのを、腕一本で止められた。
肩を抱くように引き寄せられ、驚愕で一瞬息が止まる。
「いや、こちらこそすみませ、……?」
謝りながら見上げてみれば、そこに居たのは仮面にシルクハット、マントを着けた背の高い女性だった。ルビーに似た深紅の瞳があたしを見下ろす。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ口下手な彼女の愛情表現「今作、め〜っちゃ良かったね〜!」
映画館のすぐ傍に建つ飲食店で夕食を食べながら、りみは先程観た映画の感想を楽しげに語り出した。
りみとの交流は大学に上がった今でも続いていて、こうしてホラー映画を観たり食事に行ったりしている。大学は別だからなかなか会える訳じゃないけれど、やっぱり気の知れた友達だから会うのは嬉しい。
「迫力あったねー……。戸山さん連れて来なくて良かったかもね」
「そうかもね……。ショッピングモールのシーンなんか、ドキドキしちゃったよ〜」
あたしでも思わず悲鳴を上げそうになったくらいの迫力満点の演出だ。戸山さんが居たら気絶していたに違いない。
「あたしはショッピングモールでのゾンビは、どうしても高校の頃を思い出しちゃうな……」
2417映画館のすぐ傍に建つ飲食店で夕食を食べながら、りみは先程観た映画の感想を楽しげに語り出した。
りみとの交流は大学に上がった今でも続いていて、こうしてホラー映画を観たり食事に行ったりしている。大学は別だからなかなか会える訳じゃないけれど、やっぱり気の知れた友達だから会うのは嬉しい。
「迫力あったねー……。戸山さん連れて来なくて良かったかもね」
「そうかもね……。ショッピングモールのシーンなんか、ドキドキしちゃったよ〜」
あたしでも思わず悲鳴を上げそうになったくらいの迫力満点の演出だ。戸山さんが居たら気絶していたに違いない。
「あたしはショッピングモールでのゾンビは、どうしても高校の頃を思い出しちゃうな……」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(騎士×姫)その二人、主従関係につき。 大陸の首都で年に一度行われる舞踏会は、各王国の国王一族や貴族達が集う大規模なものだ。各国の交流を目的とする、平和と親睦の催しだった。
例に漏れず、一国の姫君である美咲も参加しているが、今は挨拶回りを終えて隅でぐったりとしていた。
「もう……今日は誰とも話したくない……」
「お疲れ様、美咲! 大変そうね!」
「いや、あんたの方が忙しいのに元気だね……」
隅で目立たないようにしていたのに、目敏く見つけたこころが飛んでくる。こころは首都王国の姫であり、この舞踏会の主催側だ。客人の美咲と違って、色々気を回さなければいけないことも多いだろう。
「美咲様、水を」
「ん、ありがと。……薫さん、今ここ隅っこで誰も聞いてないし、居るのもこころだけだから口調崩していいよ」
3040例に漏れず、一国の姫君である美咲も参加しているが、今は挨拶回りを終えて隅でぐったりとしていた。
「もう……今日は誰とも話したくない……」
「お疲れ様、美咲! 大変そうね!」
「いや、あんたの方が忙しいのに元気だね……」
隅で目立たないようにしていたのに、目敏く見つけたこころが飛んでくる。こころは首都王国の姫であり、この舞踏会の主催側だ。客人の美咲と違って、色々気を回さなければいけないことも多いだろう。
「美咲様、水を」
「ん、ありがと。……薫さん、今ここ隅っこで誰も聞いてないし、居るのもこころだけだから口調崩していいよ」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(怪盗×スマイルポリス)逃走劇、共闘にて なんでこんなことになってるんだっけな。
スマイルポリスの制服に身を包む美咲は、鉄格子の中で頭を抱える。
「フフ……この状況、実に」
「儚くないから! ああもうどうすりゃいいのさ……」
笑みを浮かべる怪盗ハロハッピーに、美咲はぴしゃりと言葉を遮った。
ビルの一画に何故かあるこの鉄格子の中に、宿敵である筈の二人が仲良く一緒に閉じ込められていた。
このビルに訪れていたのは、それぞれ違う目的の筈だった。美咲はこのビルを拠点としている悪の組織の調査、怪盗はその組織が不当に所持する宝を盗む為だった。
けれど組織の方が二人が思うよりも上手だったようで。こうして二人捕まり、狭い牢獄へと押し込められている現状である。
3017スマイルポリスの制服に身を包む美咲は、鉄格子の中で頭を抱える。
「フフ……この状況、実に」
「儚くないから! ああもうどうすりゃいいのさ……」
笑みを浮かべる怪盗ハロハッピーに、美咲はぴしゃりと言葉を遮った。
ビルの一画に何故かあるこの鉄格子の中に、宿敵である筈の二人が仲良く一緒に閉じ込められていた。
このビルに訪れていたのは、それぞれ違う目的の筈だった。美咲はこのビルを拠点としている悪の組織の調査、怪盗はその組織が不当に所持する宝を盗む為だった。
けれど組織の方が二人が思うよりも上手だったようで。こうして二人捕まり、狭い牢獄へと押し込められている現状である。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ美味しいのはケーキと紅茶と、人の恋路「花音、最近薫はどうかしら?」
「どうって?」
先週オープンしたばかりのカフェの一画、一番端のテーブル。ティーカップ片手に千聖が尋ねたので、向かいに座る花音がフォーク片手に首を傾げた。
一瞬だけ考えて、すぐに合点がいったようで頷く。今千聖が名前を出したバンド仲間の同級生の顔と共に頭に浮かんだのは、同じバンド仲間の後輩だ。
「順調みたいだよ。練習後は薫さんが美咲ちゃんを家まで送ってあげてるみたい。よく一緒に帰ってるよ」
千聖と花音の話題に挙がったのは、数ヶ月前に付き合いを始めた二人についてだった。
付き合いに行くまでお互いそれぞれ相談を受けたり、紆余曲折を見たりしてきたので、話題に上がるのは自然のことであった。
2727「どうって?」
先週オープンしたばかりのカフェの一画、一番端のテーブル。ティーカップ片手に千聖が尋ねたので、向かいに座る花音がフォーク片手に首を傾げた。
一瞬だけ考えて、すぐに合点がいったようで頷く。今千聖が名前を出したバンド仲間の同級生の顔と共に頭に浮かんだのは、同じバンド仲間の後輩だ。
「順調みたいだよ。練習後は薫さんが美咲ちゃんを家まで送ってあげてるみたい。よく一緒に帰ってるよ」
千聖と花音の話題に挙がったのは、数ヶ月前に付き合いを始めた二人についてだった。
付き合いに行くまでお互いそれぞれ相談を受けたり、紆余曲折を見たりしてきたので、話題に上がるのは自然のことであった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(ケモ化パロ)にゃんことの楽しい共同生活〜かみなりの日編〜 ざあざあ、と雨が激しく窓を叩く。何気なくずぶ濡れの窓に視線をやったら、外が激しく光って一瞬明るくなる。遅れて、ごろごろと低い音が響いた。
「…………、」
ベッドの隅に座っていた美咲が猫の耳をぴくぴくと動かした。落ち着かない様子で、ちらちらと窓の外を見ている。
また空が光る。数拍後、今度はがしゃんと大きな音。どこかに落ちたかもしれない。
「!」
美咲に目をやれば、驚いたようにしっぽの毛を太く逆立たせていた。耳がしょぼんと垂れているのが、可哀想なのだが可愛らしい。
「美咲」
声を掛ければ、またぴくりと耳が立つ。
此方を向いた顔が引きつっている。
「……なに」
「夕立だから、すぐに収まるそうだよ」
「あたし、何も言ってませんけど」
1088「…………、」
ベッドの隅に座っていた美咲が猫の耳をぴくぴくと動かした。落ち着かない様子で、ちらちらと窓の外を見ている。
また空が光る。数拍後、今度はがしゃんと大きな音。どこかに落ちたかもしれない。
「!」
美咲に目をやれば、驚いたようにしっぽの毛を太く逆立たせていた。耳がしょぼんと垂れているのが、可哀想なのだが可愛らしい。
「美咲」
声を掛ければ、またぴくりと耳が立つ。
此方を向いた顔が引きつっている。
「……なに」
「夕立だから、すぐに収まるそうだよ」
「あたし、何も言ってませんけど」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(怪盗×スマイルポリス)今宵、照らすのは、「怪盗ハロハッピー?」
スマイルポリス本部、ハッピー課。先輩ポリスである花音から新しい仕事について聞いた美咲は、首を傾げた。
「うん、近頃この辺で有名になってるみたい」
「……名前、ダサくないですか?」
怪盗ハロハッピー。最近世間を賑わせている怪盗もどきだ。
宝物を盗むという予告状を送りつけて警備に当たった者たちを弄ぶように翻弄した挙句に盗みを働き、しかし数日後には盗んだものを元の場所に戻していく、というなんとも人騒がせで意味不明な怪盗だった。
「また予告状が届いたんだって。この近くに出るみたい」
「なるほど、それであたし達に出動命令が来たんだ」
「こころちゃんもはぐみちゃんも、すっごく気合い入ってたよ。嬉しそうにしてたよ」
2909スマイルポリス本部、ハッピー課。先輩ポリスである花音から新しい仕事について聞いた美咲は、首を傾げた。
「うん、近頃この辺で有名になってるみたい」
「……名前、ダサくないですか?」
怪盗ハロハッピー。最近世間を賑わせている怪盗もどきだ。
宝物を盗むという予告状を送りつけて警備に当たった者たちを弄ぶように翻弄した挙句に盗みを働き、しかし数日後には盗んだものを元の場所に戻していく、というなんとも人騒がせで意味不明な怪盗だった。
「また予告状が届いたんだって。この近くに出るみたい」
「なるほど、それであたし達に出動命令が来たんだ」
「こころちゃんもはぐみちゃんも、すっごく気合い入ってたよ。嬉しそうにしてたよ」
浬-かいり-
DOODLEここみさ・かおみさ世界一のお姫様になれるキミへ「ライブお疲れ様、みんな! とっても楽しかったわね!」
ライブ後の控え室で、満足げにこころは笑った。今回大成功に終わったスマイル号での船上ライブは、いつもと趣旨を変えてそれぞれがドレスアップしてのライブとなった。
正装し華やかで上品な雰囲気となったものの、結局曲が始まってしまえばいつもと変わらぬド派手なパフォーマンスで、いつものハロハピのライブと変わらなかったが。
「じゃあ、この後のパーティーも楽しみましょう!」
この後は、ライブの観客を交えて船内でパーティーが行われる。こころ達は、このドレスのまま参加予定だった。彼女自身も今は、真っ赤なドレスに身を包んでいる。いつものものよりも装飾が施された派手なものだ。
2355ライブ後の控え室で、満足げにこころは笑った。今回大成功に終わったスマイル号での船上ライブは、いつもと趣旨を変えてそれぞれがドレスアップしてのライブとなった。
正装し華やかで上品な雰囲気となったものの、結局曲が始まってしまえばいつもと変わらぬド派手なパフォーマンスで、いつものハロハピのライブと変わらなかったが。
「じゃあ、この後のパーティーも楽しみましょう!」
この後は、ライブの観客を交えて船内でパーティーが行われる。こころ達は、このドレスのまま参加予定だった。彼女自身も今は、真っ赤なドレスに身を包んでいる。いつものものよりも装飾が施された派手なものだ。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ早く来て、エンドロール「映画?」
金曜の夜、DVD片手に映画観賞を提案したのは美咲の方だった。レンタル店の店名が記されたケースに入れられたDVDのタイトルを見る。薫の記憶では、半年前に話題を呼んだ映画だったと思う。
「美咲が映画を観たいだなんて珍しいね。どうしたんだい?」
「あ、いや……、なんていうか、花音さんと白鷺先輩に勧められて」
「花音と千聖?」
舞台女優と作曲家。曜日に関係なく忙しい二人だが、金曜の夜は二人でゆっくり過ごすのが習慣となっていた。それは決めた訳ではなく、学生時代からの名残であった。
映画を観て過ごすこともあるが、いつもそれを提案してくるのは薫の方だ。美咲の方から提案してくるのは珍しい。
「あたし、今映画のBGMを作曲してるって言ったじゃないですか」
2869金曜の夜、DVD片手に映画観賞を提案したのは美咲の方だった。レンタル店の店名が記されたケースに入れられたDVDのタイトルを見る。薫の記憶では、半年前に話題を呼んだ映画だったと思う。
「美咲が映画を観たいだなんて珍しいね。どうしたんだい?」
「あ、いや……、なんていうか、花音さんと白鷺先輩に勧められて」
「花音と千聖?」
舞台女優と作曲家。曜日に関係なく忙しい二人だが、金曜の夜は二人でゆっくり過ごすのが習慣となっていた。それは決めた訳ではなく、学生時代からの名残であった。
映画を観て過ごすこともあるが、いつもそれを提案してくるのは薫の方だ。美咲の方から提案してくるのは珍しい。
「あたし、今映画のBGMを作曲してるって言ったじゃないですか」
浬-かいり-
DOODLEかおみさEPILOGU「やあ美咲、おかえり。向こうは楽しめたかい?」
10年前の薫の実家でシャワーを浴びて、その後同じくシャワーへ向かった高校生の薫を見送って。そして気付けば美咲は自分の家に帰ってきていた。薫と同棲している、自分の時代へ。
10年前の世界へ行った時、自分は弦巻家に居たはずだが。……また高校生の美咲と入れ替わったということは、高校生の美咲を自宅まで連れて帰ったのだろう。
いくら10年前の姿の恋人とはいえ、どうして弦巻家にそのまま泊めさせなかったのか。何故か不満のような感情が渦巻く。が、それは押さえ込んで。
「いや、ほんとどうなることかと思ったけど……。まあ、でも、悪くはなかったかな。高校生の薫さんにも会えたし。そっちは? 高校生のあたしが来たんでしょ?」
213210年前の薫の実家でシャワーを浴びて、その後同じくシャワーへ向かった高校生の薫を見送って。そして気付けば美咲は自分の家に帰ってきていた。薫と同棲している、自分の時代へ。
10年前の世界へ行った時、自分は弦巻家に居たはずだが。……また高校生の美咲と入れ替わったということは、高校生の美咲を自宅まで連れて帰ったのだろう。
いくら10年前の姿の恋人とはいえ、どうして弦巻家にそのまま泊めさせなかったのか。何故か不満のような感情が渦巻く。が、それは押さえ込んで。
「いや、ほんとどうなることかと思ったけど……。まあ、でも、悪くはなかったかな。高校生の薫さんにも会えたし。そっちは? 高校生のあたしが来たんでしょ?」
浬-かいり-
DOODLEかおみさまだコップ一杯にも満たない 人集りを遠くから眺めながら、美咲はベンチの上で重い溜息を吐いた。これで何度目になるだろうか。
視線の先には薫が居た。久々に二人で出掛けたいと、誘ってきてくれたのは薫の方だった。
だから今日は一緒にお茶をして、買い物して……。そんな細やかな計画を脳内に立てて、柄にもなく楽しみに思っていたりしたのだが。
(……まあ、こうなるとは分かってたけどね……)
薫の周りは現在、所謂“子猫ちゃん”達が取り囲んでいた。その勢いに押し退けられるような形で、こうしてベンチで一人待ちぼうけを食らっていた。
恨めしげに視線を向けても、薫と視線が交わることは無い。そのことが、今の美咲にはひどく心細かった。無意識に手の甲へと爪を立てる。
2746視線の先には薫が居た。久々に二人で出掛けたいと、誘ってきてくれたのは薫の方だった。
だから今日は一緒にお茶をして、買い物して……。そんな細やかな計画を脳内に立てて、柄にもなく楽しみに思っていたりしたのだが。
(……まあ、こうなるとは分かってたけどね……)
薫の周りは現在、所謂“子猫ちゃん”達が取り囲んでいた。その勢いに押し退けられるような形で、こうしてベンチで一人待ちぼうけを食らっていた。
恨めしげに視線を向けても、薫と視線が交わることは無い。そのことが、今の美咲にはひどく心細かった。無意識に手の甲へと爪を立てる。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ儚き幸せ家族計画 とある土曜日。その日はこころの家でハロハピ会議の予定だった。
ところが当日の朝になって、美咲から『家から離れられなくなったので行けなくなった』という旨の連絡が来て。心配したものの、家から離れなければOKとのことだったので、本日のハロハピ会議は美咲の家で行うことになった。四人で彼女の家を訪れ、インターホンを鳴らす。
「はいはーい。ごめんね急に」
聞き慣れた声と共にドアが開かれる。その瞬間、思考が停止した。
「えっ、美咲ちゃん、その子は……?」
花音が驚いた声で尋ねた。
美咲の腕の中で、小さな赤ん坊が抱かれていた。真っ白でぷくっとした小さな手が、彼女の服をぎゅっと握っている。美咲には確かに妹と弟が居るが、こんなに小さくはない。
2463ところが当日の朝になって、美咲から『家から離れられなくなったので行けなくなった』という旨の連絡が来て。心配したものの、家から離れなければOKとのことだったので、本日のハロハピ会議は美咲の家で行うことになった。四人で彼女の家を訪れ、インターホンを鳴らす。
「はいはーい。ごめんね急に」
聞き慣れた声と共にドアが開かれる。その瞬間、思考が停止した。
「えっ、美咲ちゃん、その子は……?」
花音が驚いた声で尋ねた。
美咲の腕の中で、小さな赤ん坊が抱かれていた。真っ白でぷくっとした小さな手が、彼女の服をぎゅっと握っている。美咲には確かに妹と弟が居るが、こんなに小さくはない。
浬-かいり-
DOODLEかおみさ特効薬 頭が痛い。
これは今現在弦巻邸で行われてるハロハピ会議にて飛び出してくる、突拍子ない意見達が原因ではない気がした。
ライブを控え、毎日曲作りや演出の組み立て等に追われていて寝不足だったかな。最低限の睡眠は確保しているつもりだったけど。ノートと睨めっこしながら、眉間に皺を寄せた。
「……っていう感じはどうかしら、美咲!」
「うん……」
「? みーくんさっきから返事おかしくない? 大丈夫?」
「えっ、」
頭痛を堪えるあまり空返事になってしまっていたらしい。
取り繕おうと慌てて顔を上げると、目が合った薫さんと花音さんがぎょっと驚いたような顔をした。
「み、美咲!? 大丈夫かい!?」
「え、何が……?」
「美咲ちゃん、顔真っ青だよ……?」
2210これは今現在弦巻邸で行われてるハロハピ会議にて飛び出してくる、突拍子ない意見達が原因ではない気がした。
ライブを控え、毎日曲作りや演出の組み立て等に追われていて寝不足だったかな。最低限の睡眠は確保しているつもりだったけど。ノートと睨めっこしながら、眉間に皺を寄せた。
「……っていう感じはどうかしら、美咲!」
「うん……」
「? みーくんさっきから返事おかしくない? 大丈夫?」
「えっ、」
頭痛を堪えるあまり空返事になってしまっていたらしい。
取り繕おうと慌てて顔を上げると、目が合った薫さんと花音さんがぎょっと驚いたような顔をした。
「み、美咲!? 大丈夫かい!?」
「え、何が……?」
「美咲ちゃん、顔真っ青だよ……?」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(大学1年×高校3年)そして一緒に寝坊する 意識が浮上する。開けた視界は、家具の位置が視認出来るくらいには明るいけれど、まだ日は昇ってはいないようで、薫はまだ自分が起きるべき時間ではないということを理解する。
それでも今は何時だろう、あとどれくらい寝れるだろう。そう思って枕元で充電中のスマートフォンに手を伸ばした。表示されたロック画面が眩しくて目を細めながら確認する。
AM5:00。今日は土曜日。予定は午後のバンド練習のみなので、まだ十分眠れる時間帯だ。
水でも飲んでもう一度寝ようと上体を起こしたところで、スマホの明るい光が隣で眠る恋人を起こしはしなかったかと気付いて、隣に目をやった。けれど、その心配は杞憂であった。そこに美咲は居なかった。
2669それでも今は何時だろう、あとどれくらい寝れるだろう。そう思って枕元で充電中のスマートフォンに手を伸ばした。表示されたロック画面が眩しくて目を細めながら確認する。
AM5:00。今日は土曜日。予定は午後のバンド練習のみなので、まだ十分眠れる時間帯だ。
水でも飲んでもう一度寝ようと上体を起こしたところで、スマホの明るい光が隣で眠る恋人を起こしはしなかったかと気付いて、隣に目をやった。けれど、その心配は杞憂であった。そこに美咲は居なかった。
浬-かいり-
DOODLEかおみさよく分からないけど一応薫くんお誕生日おめでとうに部類される小説はぐみ「さあ始まりました第一回、“薫くんにお誕生日プレゼントを渡そう選手権”〜!! 実況の北沢はぐみだよ!」
花音「解説の松原花音です。……あの、はぐみちゃん?」
はぐみ「なぁに、かのちゃん先輩?」
花音「これ、どういう状況なのかな?」
はぐみ「わかんない!!」
花音「だよね……?」
はぐみ「これはね、みーくん選手が本日お誕生日の薫くんに、ちゃんとプレゼントをあげられるかを実況中継するんだよ!」
花音「それでCiRCLEのラウンジの映像を観せられてるんだね……」
はぐみ「そのプレゼントのあげ方を“ハッピー”、“スマイル”、“儚さ”の三つの分野で得点を出すよ!」
花音「その三つ、意味ほぼ同じじゃないかな……?」
◆
はぐみ「今ラウンジには薫くんがいるね!」
2293花音「解説の松原花音です。……あの、はぐみちゃん?」
はぐみ「なぁに、かのちゃん先輩?」
花音「これ、どういう状況なのかな?」
はぐみ「わかんない!!」
花音「だよね……?」
はぐみ「これはね、みーくん選手が本日お誕生日の薫くんに、ちゃんとプレゼントをあげられるかを実況中継するんだよ!」
花音「それでCiRCLEのラウンジの映像を観せられてるんだね……」
はぐみ「そのプレゼントのあげ方を“ハッピー”、“スマイル”、“儚さ”の三つの分野で得点を出すよ!」
花音「その三つ、意味ほぼ同じじゃないかな……?」
◆
はぐみ「今ラウンジには薫くんがいるね!」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ(大学1年×高校3年)においから分かる二人の関係性について 私と花音が大学へ進学してしまってから、頻度は減ったもののまだハロハピとしての活動は続けている。
大学の講義が終わった後、そのままこころの家へと直行すれば、既にこころと花音が待っていた。他の二人はどうしたかと問えば、はぐみは忘れていた宿題を居残りでやっていて、同じクラスの美咲はそれに付き合ってやっているらしい。こころも同じクラスではあるが、大学へ花音を迎えに行く為に別行動だったようだ。
「あはは……。はぐみちゃん大丈夫かな」
「受験生の自覚がーって、美咲が怒ってたわ」
苦笑いの花音に、こころが楽しそうに答える。
「そう言えば、はぐみと美咲は今日うちで一緒に夕食を摂るの。花音と薫もどうかしら?」
「わぁ、嬉しいな。じゃあご馳走になろうかな。薫さんは?」
2166大学の講義が終わった後、そのままこころの家へと直行すれば、既にこころと花音が待っていた。他の二人はどうしたかと問えば、はぐみは忘れていた宿題を居残りでやっていて、同じクラスの美咲はそれに付き合ってやっているらしい。こころも同じクラスではあるが、大学へ花音を迎えに行く為に別行動だったようだ。
「あはは……。はぐみちゃん大丈夫かな」
「受験生の自覚がーって、美咲が怒ってたわ」
苦笑いの花音に、こころが楽しそうに答える。
「そう言えば、はぐみと美咲は今日うちで一緒に夕食を摂るの。花音と薫もどうかしら?」
「わぁ、嬉しいな。じゃあご馳走になろうかな。薫さんは?」
浬-かいり-
DOODLEかおみさ雨の日に微睡んで「ん……」
意識が浮上する。真っ白いベッドの中にあたしは居た。仄かな消毒液のにおい。窓を叩く雨の音。未だに治まる気配の無い、ズキズキと痛む頭。
雨のせいで頭が痛くて、午前の授業は頑張ったけど午後はどうしようもなくなって、市ヶ谷さんに連れられてフラフラと保健室のベッドに倒れ込んだのを思い出す。
「……いっ……た、」
頭が痛い。今は何時なんだろう。結構寝たような気はするけれど、止まない雨の中では勿論太陽なんて見えない。
スマホを探すのすら億劫で、寝たのに寧ろ酷くなっている頭痛に固く目を瞑って蹲った。薬も飲んだと思うんだけど、効いてないなこれ。雨の音がやけに煩く聞こえて鬱陶しい。
下校時間になったらきっと保健室の先生が起こしてくれるだろうから、今はまだ寝ていて大丈夫なはず。そう結論付けて、楽な体勢を探して布団の中をもぞもぞと動いて、
1337意識が浮上する。真っ白いベッドの中にあたしは居た。仄かな消毒液のにおい。窓を叩く雨の音。未だに治まる気配の無い、ズキズキと痛む頭。
雨のせいで頭が痛くて、午前の授業は頑張ったけど午後はどうしようもなくなって、市ヶ谷さんに連れられてフラフラと保健室のベッドに倒れ込んだのを思い出す。
「……いっ……た、」
頭が痛い。今は何時なんだろう。結構寝たような気はするけれど、止まない雨の中では勿論太陽なんて見えない。
スマホを探すのすら億劫で、寝たのに寧ろ酷くなっている頭痛に固く目を瞑って蹲った。薬も飲んだと思うんだけど、効いてないなこれ。雨の音がやけに煩く聞こえて鬱陶しい。
下校時間になったらきっと保健室の先生が起こしてくれるだろうから、今はまだ寝ていて大丈夫なはず。そう結論付けて、楽な体勢を探して布団の中をもぞもぞと動いて、