ドーナツホール 熱を分け合って、眠るにはまだ余韻が残っている夜だった。隣に身を横たえているマトリフも同じなのか、先ほどからその細い指が戯れるように私の体に触れていた。
その指の感触がくすぐったい。まるで筋肉の境目を探すように動いていて、それが肩のあたりまで上がってきた。
「眠れないのかね」
マトリフはそれには答えずに指を私の首筋まで進めた。骨の存在を確かめるように撫でてから、次は血管に触れる。指はさらに上へと辿り、耳に触れた。行為の前にピアスを外していたから、今は穴が露わになっている。
「これって痛くねえの?」
そこにある穴を指先で確かめる様に触れられる。やはりくすぐったかった。
「痛いというほどではなかったよ」
マトリフは気のないように頷いてから、そのまま私の耳を触り続けた。それがくすぐったいようで、ほんのりとした心地良さもある。
1948