夜 寝間着の紐を結び直すと、僕は布団の中に潜り込んだ。ビジネスホテルの少し硬い布団が、ぎこちなく身体を包み込む。布団を持ち上げてスペースを作っていると、少し遅れて青年が入り込んできた。彼の家よりも少し広いベッドの上で、僕たちはぴったりと密着する。
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
布団の中でうつ伏せになると、彼は枕元に手を伸ばした。彼の眠る右側の壁際には、室内のスイッチが集結している。指先でボタンを押し込むと、室内は一気に真っ暗になった。窓から入り込む看板の灯りが、微かに部屋の中を照らしている。
静寂に満たされた室内で、僕は黙って背中を向けた。今、この部屋の中に聞こえているのは、鈍く響く空調の音だけだ。いつの間にか、こうしてホテルで眠ることも、僕たちの間では日常茶飯事になってしまった。大会への参加を口実にした時しか、僕たちは外泊などできないのだ。
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