バレンタイン ルチ 正月の喧騒が終わり、売れ残りの品が片付けられると、世間はバレンタインの季節を迎える。町には赤やピンクのポップが貼り出され、スーパーにはチョコレートが並ぶのだ。一月も後半を迎える頃には、ショッピングビルやデパートなどを中心に、チョコレートの販売イベントまで始まる。それは色恋へのアプローチという枠を超えて、人々のちょっとした贅沢へと変わりつつあるらしい。
実を言うと、僕はこの季節が苦手だった。神の代行者として産み出された僕にとって、人間の色恋などどうでもいい事だったのだ。愛だの恋だの語ってはいるものの、結局はただの繁殖欲求である。そんな話を永遠と聞かせられたら、無関係な者は嫌にもなるだろう。
しかし、僕がバレンタインを厭んでいるのは、それだけが理由ではなかった。この浮かれに浮かれた人類の催しは、僕にとっても無関係ではなくなったのである。仮にも人間と恋人関係になったからには、相手に贈り物をするべきだろう。特別な日の贈り物になるのだから、神の代行者としての威厳を保ったものにしなければならない。
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