グッズ リビングのソファに腰を下ろすと、時空の狭間から端末を取り出した。簡単にホーム画面を操作して、取引相手からのメッセージを確認する。たったの一晩しか経っていないというのに、未読通知は数十件にも及んでいた。人々の寝静まった夜中でも、お偉いさんは忙しく働いているようだ。
上から順に詳細を開くと、折り返しのメッセージを送る。慣れないボタン操作での文字入力は、なかなかに骨が折れる仕事だった。こんな遠回しな手段など使わずに、直接メッセージを送ってくれたら助かるのだが、そこまで高望みをすることはできない。機械である僕たちと違って、人間は電波を送れないのだ。
一通りメッセージを確認すると、僕は大きく息をついた。面倒な朝のルーティーンが、ようやく終わりを告げたのである。できることなら後回しにしてしまいたいが、どうしてもこの時間に済ませなければならなかった。寝坊助なあの青年は、絶対にこの時刻には起きて来ないからだ。
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