last_of_QED
DONEXに載せたもの。記録用。あんまりCP要素はないですが暴君様と執事の話です【暗殺者より愛を込めて】リヒがお酒でべろべろになります🥃全年齢🆗
【暗殺者より愛を込めて】 鱗粉が舞う。モスマンが荷を置くや否や逃げるように飛び去っていく。
ヴァルバトーゼ宛に時折届けられる小包み。中身のほとんどは貢ぎ物と銘打った嫌がらせの品──具体的にはニンニクや鏡、ロザリオの類いであるが、中にはごく稀に真なる「貢ぎ物」も紛れている。
「拝啓 ヴァルバトーゼ様」
今回届けられた荷物のひとつには手紙の添えられたワインボトルがあった。フェンリッヒには酒の良さが分からない。アルコール特有の匂いはとかく鼻につくし、何より「気持ち良く酔う」という感覚が理解出来なかった。火照って頭が働かなくなり、じきに気分が悪くなるのが関の山である。
だが、酒の中には極めて価値のあるものがある。この世には酒を好む者がごまんといて、味の良さ、ボトルの装飾、希少性その他次第では目が飛び出るような高値で取引されることもあるのだ。
3477ヴァルバトーゼ宛に時折届けられる小包み。中身のほとんどは貢ぎ物と銘打った嫌がらせの品──具体的にはニンニクや鏡、ロザリオの類いであるが、中にはごく稀に真なる「貢ぎ物」も紛れている。
「拝啓 ヴァルバトーゼ様」
今回届けられた荷物のひとつには手紙の添えられたワインボトルがあった。フェンリッヒには酒の良さが分からない。アルコール特有の匂いはとかく鼻につくし、何より「気持ち良く酔う」という感覚が理解出来なかった。火照って頭が働かなくなり、じきに気分が悪くなるのが関の山である。
だが、酒の中には極めて価値のあるものがある。この世には酒を好む者がごまんといて、味の良さ、ボトルの装飾、希少性その他次第では目が飛び出るような高値で取引されることもあるのだ。
村人A
DONEフェンリッヒが初めて「ヴァル様」と呼ぶ話。普段クールな人の必死な様子は美味しい。
特別なひとり雪が降り積る地面が踏み荒らされ、所々に血痕が飛び散る。
複数の悪魔によっての怒号が飛び交うそこは、最早魔界よりも地獄とも言えた。
「ハハハッ!!そこだ、やっちまえ!!」
「バカ野郎、狗からやれ!!」
「逃がすなー!!」
鋭い爪が相手を切り裂き、僅かに返り血を浴びる。
舌打ちをしながら口元の血を拭い、真鍮の瞳がイラつきで細められた。
数が増えすぎて、さすがに分が悪い。
(このままじゃただ消耗するだけか…仕方ない)
苦虫を噛み潰したような顔をした後、素早く地面を蹴る。
「─閣下、ご無礼を!」
「は─うおっ!?」
勢いを殺さぬまま主を抱えると、そのまま敵から離れていく。
何やら怒号が飛んで来るが、それに返す余裕などない。並の悪魔たちが人狼族の素早さに敵うはずもなく、一目散に走るとすぐに撒き、やがて先程の騒がしさが嘘のように静かな場所へ着いた。
3516複数の悪魔によっての怒号が飛び交うそこは、最早魔界よりも地獄とも言えた。
「ハハハッ!!そこだ、やっちまえ!!」
「バカ野郎、狗からやれ!!」
「逃がすなー!!」
鋭い爪が相手を切り裂き、僅かに返り血を浴びる。
舌打ちをしながら口元の血を拭い、真鍮の瞳がイラつきで細められた。
数が増えすぎて、さすがに分が悪い。
(このままじゃただ消耗するだけか…仕方ない)
苦虫を噛み潰したような顔をした後、素早く地面を蹴る。
「─閣下、ご無礼を!」
「は─うおっ!?」
勢いを殺さぬまま主を抱えると、そのまま敵から離れていく。
何やら怒号が飛んで来るが、それに返す余裕などない。並の悪魔たちが人狼族の素早さに敵うはずもなく、一目散に走るとすぐに撒き、やがて先程の騒がしさが嘘のように静かな場所へ着いた。
村人A
PASTpixivに載せた小説の再掲です。CPという感じの描写はめちゃくちゃ薄め。ほぼ無味レベル。これ執事閣下?閣下執事?よくわからないのでCPタグはなし。個人的には+のイメージ。
リッヒが心を許すのは生涯閣下ひとりなんだろうな、と思いつつ書いたお話しでした。
心を許す証執務の間の休憩。
珍しく出ていった従者を待ちながら、ヴァルバトーゼは本を読んでいた。
今の仲間たちには天然な部分が色濃く見えているだろうが、元々彼は頭もよく、知識欲もある。以前も本を読んでいたら、「ヴァルっちって本とか読むの!?」と言われたのは記憶に新しい。
だが本を読み始めて一刻程。
「…遅い」
出ていったフェンリッヒは、10分ほどで戻ると言っていた。
なのに遅すぎる。そう気付くと本を読んでなどいられなくなり、ヴァルバトーゼはそっと本を閉じた。
「何かあったか…?いや、あいつに限ってそれはないか」
そこらの悪魔に絡まれたとて、そう簡単にやられる男ではない。
信頼があるからこそ思うことだが、一度心に浮かんできたものは消えない。
4258珍しく出ていった従者を待ちながら、ヴァルバトーゼは本を読んでいた。
今の仲間たちには天然な部分が色濃く見えているだろうが、元々彼は頭もよく、知識欲もある。以前も本を読んでいたら、「ヴァルっちって本とか読むの!?」と言われたのは記憶に新しい。
だが本を読み始めて一刻程。
「…遅い」
出ていったフェンリッヒは、10分ほどで戻ると言っていた。
なのに遅すぎる。そう気付くと本を読んでなどいられなくなり、ヴァルバトーゼはそっと本を閉じた。
「何かあったか…?いや、あいつに限ってそれはないか」
そこらの悪魔に絡まれたとて、そう簡単にやられる男ではない。
信頼があるからこそ思うことだが、一度心に浮かんできたものは消えない。
last_of_QED
DONEフェンヴァル🐺🦇【装備品をあなたへ】これは、ただの装備品。【装備品をあなたへ】 命乞いの悲鳴があがる。しかし赦しの言葉が返ることはない。剣で骨肉を貫く鈍い音、続いて断末魔が響くとやがて周辺には静寂が訪れた。
「口ほどにもなかったな」
「さすがは我が主。鮮やかな剣捌きでございました」
誰もいなくなった毒の湿地帯。吸血鬼ヴァルバトーゼとそのシモベである狼男フェンリッヒは目配せをするとようやく警戒をといた。
構えていた剣、或いは拳をおさめた二人の悪魔の元にはご褒美のアイテムがふわり舞い降りて来る。邪神の慈悲、或いは超常現象か。魔界では「そういうものとして在る」ボーナスゲージの報酬にもはや両名が疑問を呈することはない。フェンリッヒは宙へ手を伸ばすといくつかのアイテム、HLをグローブの手中に収めた。日頃、装備品の管理を任されている彼はそれらのアイテムを携行するものと倉庫へ送るものとに手早く仕分けていく。
1944「口ほどにもなかったな」
「さすがは我が主。鮮やかな剣捌きでございました」
誰もいなくなった毒の湿地帯。吸血鬼ヴァルバトーゼとそのシモベである狼男フェンリッヒは目配せをするとようやく警戒をといた。
構えていた剣、或いは拳をおさめた二人の悪魔の元にはご褒美のアイテムがふわり舞い降りて来る。邪神の慈悲、或いは超常現象か。魔界では「そういうものとして在る」ボーナスゲージの報酬にもはや両名が疑問を呈することはない。フェンリッヒは宙へ手を伸ばすといくつかのアイテム、HLをグローブの手中に収めた。日頃、装備品の管理を任されている彼はそれらのアイテムを携行するものと倉庫へ送るものとに手早く仕分けていく。
村人A
PAST過去小説加筆修正。フェンリッヒの包帯の下は、という多分ディス4プレイした人なら皆する妄想を形にしてみました。
もちろん過去捏造100%ですのでご注意を。
呪われた運命だとしても「ねぇねぇ、フェンリっち!!」
姦しい少女の声が、静かな空間に突如飛び込んできた。
呼ばれた当人である、人狼族の青年─フェンリッヒは心底嫌そうな顔で振り向いた。
仕事中でもある故、当然の反応だが。
「……何の用だ、小娘。下らんことなら殺すぞ」
「うっ…挨拶代わりに脅すのやめてくんない?…まぁ、いいや。それはそれとして、聞きたいことがあるのよ〜」
「却下だ」
「ちょ、ちょっとぉ!?まだ何も言ってないじゃない!」
「お前のその話し方は、面倒臭い要求しか来んからな。よって却下だ。帰れ小娘」
「むぅー!じゃあいいもーん!ねぇねぇ、ヴァルっち〜♡」
「おい、キサマ!!」
小娘と呼ばれた少女─風祭フーカは、机に向かっていた青年に声をかける。
6220姦しい少女の声が、静かな空間に突如飛び込んできた。
呼ばれた当人である、人狼族の青年─フェンリッヒは心底嫌そうな顔で振り向いた。
仕事中でもある故、当然の反応だが。
「……何の用だ、小娘。下らんことなら殺すぞ」
「うっ…挨拶代わりに脅すのやめてくんない?…まぁ、いいや。それはそれとして、聞きたいことがあるのよ〜」
「却下だ」
「ちょ、ちょっとぉ!?まだ何も言ってないじゃない!」
「お前のその話し方は、面倒臭い要求しか来んからな。よって却下だ。帰れ小娘」
「むぅー!じゃあいいもーん!ねぇねぇ、ヴァルっち〜♡」
「おい、キサマ!!」
小娘と呼ばれた少女─風祭フーカは、机に向かっていた青年に声をかける。
村人A
DONEキャラ界を舞台にした話。これが彼らなりの信頼。
信頼の形キャラ界。それは地獄にある修行プログラムのひとつで、その人物の中へと入り、基礎の能力を上げるという場所だ。
プリニー教育係であり、政拳奪取を目指すヴァルバトーゼとその一行。
目的を成すために更なる力を求める彼らは、現在キャラ界へと潜っていた。
そこはブロックが積み上げられ、そのブロックを崩しながら進んでいくというものでもあった。進んでいくと、たまに“心の保守派”というものが現れる。
保守派は潜っている人物と同じ見た目の者。
現在潜っているのはヴァルバトーゼのキャラ界。つまりは、保守派の見た目はヴァルバトーゼそのものなのだ。
向かってくる保守派に、フーカが苦戦していた。
(うぅ、やり辛い…!)
何度かキャラ界に潜ってはいるが、フーカは未だに保守派というものが苦手だ。
1640プリニー教育係であり、政拳奪取を目指すヴァルバトーゼとその一行。
目的を成すために更なる力を求める彼らは、現在キャラ界へと潜っていた。
そこはブロックが積み上げられ、そのブロックを崩しながら進んでいくというものでもあった。進んでいくと、たまに“心の保守派”というものが現れる。
保守派は潜っている人物と同じ見た目の者。
現在潜っているのはヴァルバトーゼのキャラ界。つまりは、保守派の見た目はヴァルバトーゼそのものなのだ。
向かってくる保守派に、フーカが苦戦していた。
(うぅ、やり辛い…!)
何度かキャラ界に潜ってはいるが、フーカは未だに保守派というものが苦手だ。
last_of_QED
DOODLEヴァルバトーゼ閣下のお誕生日の妄想。【イワシ一匹に含まれる愛は】 窓の外、ゾンビの咆哮が一日の終わりを告げている。唸るような地響きが聞こえて来たのはそれとほぼ同時だった。
「ん?」
異音に気づいた部屋の主は手を止め、書類の山積みになった執務机からようやく顔を上げる。耳を澄ますとその地響きは振動を伴い徐々に大きくなっていき、あろうことか彼の在籍する執務室の前でぴたり鳴り止んだ。
敵襲という文字が一瞬ヴァルバトーゼの脳裏によぎったが、すぐにその可能性を切り捨てる。もしそうであれば時空ゲートを突破された時点でメーヴェルが緊急に連絡を寄越しているだろう。それに、並大抵のことであればフェンリッヒが報告も無しに事を片付けているはず。この騒ぎを彼があえて放置しているということは。……しているということは?
2038「ん?」
異音に気づいた部屋の主は手を止め、書類の山積みになった執務机からようやく顔を上げる。耳を澄ますとその地響きは振動を伴い徐々に大きくなっていき、あろうことか彼の在籍する執務室の前でぴたり鳴り止んだ。
敵襲という文字が一瞬ヴァルバトーゼの脳裏によぎったが、すぐにその可能性を切り捨てる。もしそうであれば時空ゲートを突破された時点でメーヴェルが緊急に連絡を寄越しているだろう。それに、並大抵のことであればフェンリッヒが報告も無しに事を片付けているはず。この騒ぎを彼があえて放置しているということは。……しているということは?
last_of_QED
DOODLE夏のフェンヴァル🐺🦇※Cuffing season…人肌恋しい季節のこと。
【Cuffing Seasons】「ヴァル様? いかがされましたか」
吸血鬼のマントから複数匹の蝙蝠が飛び出し、キーキーと狼男を威嚇している。主の眷属にやつ当たることが憚られるのか、フェンリッヒは小さな生き物に道を阻まれ、噛み付かれても、ただされるがままだ。
「どうもこうもな」
ヴァルバトーゼの不機嫌そうな赤い瞳にギロリと睨まれ、フェンリッヒはたじろいだ。
朝食のイワシのつみれ汁に血を仕込んだせいだろうか? それとも傷を負った泥棒天使にケムシ団子を食わせようとしたことが原因か? ……ひとつ、ふたつ、フェンリッヒの頭にはよぎるものがあったが、しかしその行いはいずれも仲間を想ってのこと。しかも、今更それしきのことで機嫌を悪くする主ではあるまいと首を傾げる。
1297吸血鬼のマントから複数匹の蝙蝠が飛び出し、キーキーと狼男を威嚇している。主の眷属にやつ当たることが憚られるのか、フェンリッヒは小さな生き物に道を阻まれ、噛み付かれても、ただされるがままだ。
「どうもこうもな」
ヴァルバトーゼの不機嫌そうな赤い瞳にギロリと睨まれ、フェンリッヒはたじろいだ。
朝食のイワシのつみれ汁に血を仕込んだせいだろうか? それとも傷を負った泥棒天使にケムシ団子を食わせようとしたことが原因か? ……ひとつ、ふたつ、フェンリッヒの頭にはよぎるものがあったが、しかしその行いはいずれも仲間を想ってのこと。しかも、今更それしきのことで機嫌を悪くする主ではあるまいと首を傾げる。
村人A
PAST本アカの方で上げた、セリフ付きイラストをポイポイしてみます。本編のセリフからのイラストも描いてますが、セリフは割かしうろ覚えだったりします。今回はノットカプ。ただ、閣下とリッヒばっかりです(笑) 12村人A
DONEディスガイアRPGで水着閣下が実装されると聞いて、描いてしまいました。少しヤンチャっぽい水着でいいですよね。個人的に、腰周りはフェンリッヒ、パーカーの形はエミーゼル、柄はフーカっぽいなと思いました。二枚目は陰影付けただけの同じイラストになります。 2last_of_QED
DOODLE主従関係だけれど、友でもある二人に夢見てる💭【マイファーストフレンド】フェンリッヒがヴァル様の部屋の前で聞き耳を立てる話👂【補足】吸血鬼は"let me in."と許可をとってからでないと他者の領域には立ち入れない習性があるとかないとか聞いて、書きました。
【マイファーストフレンド】 無尽蔵に沸き上がる灼熱が窓ガラス越し、夕焼けのように赤々と焼き付いている。
長い廊下の突き当たり。見慣れた光景。見慣れた扉。フェンリッヒは足を止め、目を閉じる。そして良く見知ったドアの向こう側へと耳を澄ました。
◆
人間との約束を守り、種としての生命線である吸血行為さえも己に禁じた我が主。驚くべきことに血を断ってから既に四百年以上もの月日が流れている。
オレは主のため心を鬼にして皮肉を放つ。イワシにしつこく血を仕込む。意志を曲げられないというのなら、気付かぬうちに血を口にして仕舞えるように。あなた様に本来の力を取り戻していただけるように。わたくしフェンリッヒが誠心誠意お手伝い致します。……ヴァル様は仕込みに気付く度、この狼めを叱責なさいますがどうかお分かりいただきたい。これは従者なりの心配りに他ならないのですから。
3258長い廊下の突き当たり。見慣れた光景。見慣れた扉。フェンリッヒは足を止め、目を閉じる。そして良く見知ったドアの向こう側へと耳を澄ました。
◆
人間との約束を守り、種としての生命線である吸血行為さえも己に禁じた我が主。驚くべきことに血を断ってから既に四百年以上もの月日が流れている。
オレは主のため心を鬼にして皮肉を放つ。イワシにしつこく血を仕込む。意志を曲げられないというのなら、気付かぬうちに血を口にして仕舞えるように。あなた様に本来の力を取り戻していただけるように。わたくしフェンリッヒが誠心誠意お手伝い致します。……ヴァル様は仕込みに気付く度、この狼めを叱責なさいますがどうかお分かりいただきたい。これは従者なりの心配りに他ならないのですから。
last_of_QED
MOURNING私に罰を。【昔のこと】🦇🐺閣下執事以前人様に差し上げたものを書き直しました。
【昔のこと】 褒美をくれと従者は遠回しにそう言った。これまでの四百年、地獄の劣悪な労働環境に文句のひとつも漏らさずに付き従った男が直接的ではないにせよこのようなことを口にするのははじめてだった。突然どうしたのだと問えば狼男は自虐的に笑う。
「元々報酬次第で動く男ですよ、私は」
傭兵時代、高額の報酬で暴君ヴァルバトーゼの殺害を謀ったことを彼は暗に指し示した。
「と、言っても今の俺から渡せる褒美など──」
イワシ、は少なくとも正解ではなさそうだと恭しく傅く男を見て言い淀む。フェンリッヒは頭を下げたまま返事をしない。名を呼び、顔を上げるよう命令すれば何か眩しいものでも目にするようにこちらを仰ぎ見た。かつて月光の牙と呼ばれた男が今望むもの。それは報酬などではない。微かに揺らぐ琥珀色の瞳が求めるのは恐らく、許し。そしてその先に倒錯的な「罰」を期待していることも同時に悟る。
801「元々報酬次第で動く男ですよ、私は」
傭兵時代、高額の報酬で暴君ヴァルバトーゼの殺害を謀ったことを彼は暗に指し示した。
「と、言っても今の俺から渡せる褒美など──」
イワシ、は少なくとも正解ではなさそうだと恭しく傅く男を見て言い淀む。フェンリッヒは頭を下げたまま返事をしない。名を呼び、顔を上げるよう命令すれば何か眩しいものでも目にするようにこちらを仰ぎ見た。かつて月光の牙と呼ばれた男が今望むもの。それは報酬などではない。微かに揺らぐ琥珀色の瞳が求めるのは恐らく、許し。そしてその先に倒錯的な「罰」を期待していることも同時に悟る。
last_of_QED
DOODLE月光→暴君話。月光の暴君暗殺計画には計り知れない苦労がありそう。様子をうかがってるうちにあんまりにも世間知らずで暴君様のことちょっと心配しちゃうとか。暗殺しようとしてるのに。おかしいね。可愛いね。【仮初の仲間】 重厚な蓋を持ち上げれば敷き詰められた黒百合の花びらが舞った。狼男の鼻にはきつく感じられる、甘やかな香り。中を覗き込めば端正な顔立ちの男が瞼を閉じ、寝床に収まっている。その寝床が棺桶であることも相まって男はまるで絵画に描かれた死者のように見えた。彼はノーライフキング、死からはほど遠い存在であるはずなのだが。
狼男は尚も寝息を立て眠る暴君ヴァルバトーゼの姿に眉をひそめた。
間抜けな奴。たった半日行動を共にしただけのオレを信用し切って眠りこけて一体どういう了見だ?
「血染めの恐怖王」として魔界中から畏怖される吸血鬼。噂に名高い暴君ヴァルバトーゼがまさかここまで不用心だとは思っていなかった。
机の上には暗殺用にあからじめ用意しておいた毒入りワインとグラス。反吐が出るが都合は良い。オレたちが「仲間」になった記念だとでも言って差し出せばこいつは喜んでグラスをあおるだろう。そうだ、これまでの言動から推察するに十中八九疑いもせずに。
1676狼男は尚も寝息を立て眠る暴君ヴァルバトーゼの姿に眉をひそめた。
間抜けな奴。たった半日行動を共にしただけのオレを信用し切って眠りこけて一体どういう了見だ?
「血染めの恐怖王」として魔界中から畏怖される吸血鬼。噂に名高い暴君ヴァルバトーゼがまさかここまで不用心だとは思っていなかった。
机の上には暗殺用にあからじめ用意しておいた毒入りワインとグラス。反吐が出るが都合は良い。オレたちが「仲間」になった記念だとでも言って差し出せばこいつは喜んでグラスをあおるだろう。そうだ、これまでの言動から推察するに十中八九疑いもせずに。
last_of_QED
REHABILI全部、風邪のせいにして。【Bless you.】ほんのり(?)フェンヴァル🐺🦇。風邪ひきフェンリッヒは可愛い。リハビリ。
【Bless you.】「……しかしだな、フェンリッヒ」
訝しげな顔がこちらを覗き込む。どんなに胡散臭い話でも大抵のことはそのままに聞き入れるこの人が、よりにもよってこのオレを疑うというのか。
細くなるガーネットの瞳に見入られ、小さく身震いする。この人は時折、何を考えているのか皆目検討がつかなくなるのだった。
「申し訳、ございません」
確かにオレの管理不足ではある。厳しい叱責を覚悟して反射的に謝罪する。頭を下げても主からの返事はなく、体の内側で脈の速くなるのを感じる。恐る恐る顔を上げれば、そこには予期していたものとは全く異なる光景が広がっていた。吸血鬼は好奇心に満ちた幼な子の顔でオレを見、しかし周囲に配慮するかのように楽しげに耳打ちするのだった。
2990訝しげな顔がこちらを覗き込む。どんなに胡散臭い話でも大抵のことはそのままに聞き入れるこの人が、よりにもよってこのオレを疑うというのか。
細くなるガーネットの瞳に見入られ、小さく身震いする。この人は時折、何を考えているのか皆目検討がつかなくなるのだった。
「申し訳、ございません」
確かにオレの管理不足ではある。厳しい叱責を覚悟して反射的に謝罪する。頭を下げても主からの返事はなく、体の内側で脈の速くなるのを感じる。恐る恐る顔を上げれば、そこには予期していたものとは全く異なる光景が広がっていた。吸血鬼は好奇心に満ちた幼な子の顔でオレを見、しかし周囲に配慮するかのように楽しげに耳打ちするのだった。
すずもち
DONEフーカと主従戦闘中にフーカの帽子が燃えて無くなったことに閣下が真っ先に気がつく話
ちょっと設定ねつ造気味
人間から見たら悪魔は大体ツンデレ目の前でキラリと光が瞬いたと思った瞬間、爆音と共に業火が襲いかかってくる。肌に触れる火は熱く、周りの酸素が奪われて息が詰まる。どこまでもリアルな情景と感覚。けれどアタシはこれが夢だと知っているから何も怖くはない。
「もうあっつーい!服を焦がす気!?」
強く握ったバットを大きく振って、炎と煙を追い払う。そして地面を蹴って一直線上にいる魔法使いを目がけてフルスイング。炎の中から敵が現れるとは思わなかったのかドクロ付きフードの魔法使いは慌てた様子のままフーカのバットが頭に当たってその場に倒れた。
「乙女に向かって燃やそうとするとか、悪魔って本当信じらんないんだから」
バットを肩に担いで、さて他に残っているかと周りを一瞥すると遠くで戦っていたヴァルバトーゼの姿が目に入る。どうやらあそこにいるのが最後らしい。ならチョコレートでも食べてのんびり待つかと思っているとすぐにフェンリッヒが加勢してあっという間に片付いてしまった。
2495「もうあっつーい!服を焦がす気!?」
強く握ったバットを大きく振って、炎と煙を追い払う。そして地面を蹴って一直線上にいる魔法使いを目がけてフルスイング。炎の中から敵が現れるとは思わなかったのかドクロ付きフードの魔法使いは慌てた様子のままフーカのバットが頭に当たってその場に倒れた。
「乙女に向かって燃やそうとするとか、悪魔って本当信じらんないんだから」
バットを肩に担いで、さて他に残っているかと周りを一瞥すると遠くで戦っていたヴァルバトーゼの姿が目に入る。どうやらあそこにいるのが最後らしい。ならチョコレートでも食べてのんびり待つかと思っているとすぐにフェンリッヒが加勢してあっという間に片付いてしまった。
last_of_QED
DOODLEフェンヴァル🐺🦇【1031】お菓子が欲しい、悪戯もしたい。それじゃ、ダメ?【1031】 体内の空気を一新させるように、ふう、と息を吐く。ただ深呼吸をするはずが思っていたよりも遥かに大きな溜息となって出て、人知れず苦笑いする。疲労感に苛まれるだけならまだしも、仕事の進みが芳しくなかったのは教育係としていただけない。進捗が今ひとつだった理由は明確で、日中執務室を訪れる者が多く、都度デスクワークに水を差されたためだと分かっていた。
仕事はまだ片付きそうにない。せめて伸びのひとつでもしようかとおもむろにデスクから視線を上げる。そこにはいつの間にか仕事の手を止め、手の平を差し出し、何らかを要求する執事の姿があった。今日幾度も見た光景。その仕草に心当たりはあったが一応とぼけて首を傾げて見せる。
1732仕事はまだ片付きそうにない。せめて伸びのひとつでもしようかとおもむろにデスクから視線を上げる。そこにはいつの間にか仕事の手を止め、手の平を差し出し、何らかを要求する執事の姿があった。今日幾度も見た光景。その仕草に心当たりはあったが一応とぼけて首を傾げて見せる。
すずもち
DONEフーデスと閣下DRPGのイワシカレーが元ネタ
フーデスと閣下がイワシカレーを作る話
イワシカレーチャレンジ!一連の騒動に終止符が打たれ、すっかり平和を取り戻した魔界であってもフーカは大いに不満を抱いていた。それは結局この悪夢が覚めなかったことに対してもだが自分の夢だというのに自分の待遇が大きく変わらなかったことに対してである。
「おねえさま~ヴァルっちさんから日給のイワシを貰ってきたデスよ」
ちょっと姿が変わっているが健気で可愛い妹が目の澄んだ新鮮なイワシを携えてやってくる。別にイワシは良い、嫌いじゃ無いしでも。
「あー!もう!なんで世界を救ったのに私の日給がイワシなのよ!?毎日毎日イワシってせめてチョコレートとかにしなさいよね!」
「チョコレートなら良いんデスか?」
フーカはデスコが持って来た艶々としたイワシの尾を摘まみあげると恨めしげに見つめる。そう、結局フーカの待遇はプリニーと大差無いままここまで来てしまったのである。イワシ自体は食べられるが、こうも毎日同じ魚が続くと飽きが来る。せめて高級和牛並みの味になってくれれば……。
4737「おねえさま~ヴァルっちさんから日給のイワシを貰ってきたデスよ」
ちょっと姿が変わっているが健気で可愛い妹が目の澄んだ新鮮なイワシを携えてやってくる。別にイワシは良い、嫌いじゃ無いしでも。
「あー!もう!なんで世界を救ったのに私の日給がイワシなのよ!?毎日毎日イワシってせめてチョコレートとかにしなさいよね!」
「チョコレートなら良いんデスか?」
フーカはデスコが持って来た艶々としたイワシの尾を摘まみあげると恨めしげに見つめる。そう、結局フーカの待遇はプリニーと大差無いままここまで来てしまったのである。イワシ自体は食べられるが、こうも毎日同じ魚が続くと飽きが来る。せめて高級和牛並みの味になってくれれば……。
すずもち
DONE主従の若干フェンヴァルみ酔った執事と可愛いやつめ的な閣下
酔月夜久々にフェンリッヒとサシで晩酌をした。何かと忙しなくしているシモベの労をねぎらうという意味もあってシモベの好みそうな酒をいくつか見繕って持って行った。何百年も連れ添った気の置けない関係でもある二人であればすっかり日を跨ぐ頃合いまで飲んだのも必然と言えるだろう。ただ明日は休みだしそれは別に構わない、たまには悪魔らしく心ゆくまで酔いに身を任せるというのも悪くない。
ただ一つだけ誤算があったのは確かである。
「酒に弱かったのだな……フェンリッヒは」
下に目線を向けるとそこにはソファにもたれるヴァルバトーゼに抱き付いて穏やかに眠っているフェンリッヒがいた。先程数回名前を呼んだがまったく反応が無かったので寝ているのは確かだ。時折寝言で閣下と呟いているがどんな夢を見ているのやら。
1640ただ一つだけ誤算があったのは確かである。
「酒に弱かったのだな……フェンリッヒは」
下に目線を向けるとそこにはソファにもたれるヴァルバトーゼに抱き付いて穏やかに眠っているフェンリッヒがいた。先程数回名前を呼んだがまったく反応が無かったので寝ているのは確かだ。時折寝言で閣下と呟いているがどんな夢を見ているのやら。
すずもち
DONEフェンリッヒとシーフの潜入ミッションヴァルバトーゼとガンナーの共闘
それぞれのちょっとした絡みの話
党員とはこういう関わり方をしているかもしれないという妄想
党員との日常銀狼と盗賊の夜
月明かりも遮る鬱蒼とした森の暗闇に紛れてフェンリッヒと彼の二匹のクーシーたちは静かに移動していた。そして目的の地点である森の端まで来るとクーシーたちの足を身振りで止めて、木々の隙間からフェンリッヒがそっと様子を覗く。
眼前に広がるのは堅牢な要塞、よほど大事なものをしまい込んでいるのか建物の周りには高い塀が築かれ、おまけに定期的に悪魔の巡回があり、こんな夜更けであろうと隙が無い。おまけに事前の調べから魔法のセキュリティも完備していることが分かっている。何でもどんな侵入者であっても一瞬で見付かり、消し炭にされてしまうそうだった。なるほど手強い、しかしこれを落とさなくてはいずれ主の行く手の障害となってしまうことは明白だった。それなら退くわけにはいかない。
2312月明かりも遮る鬱蒼とした森の暗闇に紛れてフェンリッヒと彼の二匹のクーシーたちは静かに移動していた。そして目的の地点である森の端まで来るとクーシーたちの足を身振りで止めて、木々の隙間からフェンリッヒがそっと様子を覗く。
眼前に広がるのは堅牢な要塞、よほど大事なものをしまい込んでいるのか建物の周りには高い塀が築かれ、おまけに定期的に悪魔の巡回があり、こんな夜更けであろうと隙が無い。おまけに事前の調べから魔法のセキュリティも完備していることが分かっている。何でもどんな侵入者であっても一瞬で見付かり、消し炭にされてしまうそうだった。なるほど手強い、しかしこれを落とさなくてはいずれ主の行く手の障害となってしまうことは明白だった。それなら退くわけにはいかない。
last_of_QED
DONE「好きなもの」のことぐらい、わかるから。【ボーナスゲージ!】ヴァルバトーゼ閣下とフェンリッヒ、それからボーナスの話。全年齢。
※文字書き遊びのためにプロットをユスノキさん(Twitter ID:@arufurato)よりいただき書いたものです。記録用にupしておきます。
【ボーナスゲージ!】 小気味良くノックをすれば聞き馴染んだ声で「入れ」との返答。扉を開けると、そこには複数匹のプリニーが行儀良く列をなして自分の番を今か今かと待っている。一体何がどうなって、我が主のそう広くない部屋にプリニーどもがみっちりと詰まっているのか。
「閣下、これは一体……」
「こやつらを表彰してやろうと思い立ってな。優秀な者は評価されて然るべきだ」
「なるほど、それで『イワシを準備しろ』と仰せでしたか」
フェンリッヒはようやく状況を理解する。それならそうと「プリニーへの褒美としてイワシを準備しろ」ともう一言、付け足してくだされば良いものを。主人の言葉足らずにそんな気持ちを抱いたのも束の間、罪人であるプリニーにさえ褒美を与えんとする精神性に「さすがは我が主」と胸の内で独りごちる。過去に犯した罪が消えることはない。けれど今なされる行いは善きものとして認めてやる。これが出来る者が果たしてこの世にどれだけいるだろうか。
2045「閣下、これは一体……」
「こやつらを表彰してやろうと思い立ってな。優秀な者は評価されて然るべきだ」
「なるほど、それで『イワシを準備しろ』と仰せでしたか」
フェンリッヒはようやく状況を理解する。それならそうと「プリニーへの褒美としてイワシを準備しろ」ともう一言、付け足してくだされば良いものを。主人の言葉足らずにそんな気持ちを抱いたのも束の間、罪人であるプリニーにさえ褒美を与えんとする精神性に「さすがは我が主」と胸の内で独りごちる。過去に犯した罪が消えることはない。けれど今なされる行いは善きものとして認めてやる。これが出来る者が果たしてこの世にどれだけいるだろうか。
すずもち
DONEかつてのレキドナとグスタークがあった土地に建てられた慰霊婢に祈りを捧げに行くアルティナとそれに付いていくヴァルバトーゼヴァルアル風味
アルティナは自分が死んだ後の両国のことや患者にずっと寄り添ってるよねっていう妄想
平和の鐘が鳴る雪の積もる石畳の道を歩く。季節は冬に入る頃で街中は雪に埋め尽くされ、重たい雲に閉ざされた空からは延々と雪が降っていた。
しかしここの住民はそんな気候に慣れているのか歩きづらい道も難なく通っている。人間とは何にでも慣れる生き物と聞いたが事実そうらしい。悪魔のように強靭な四肢も魔力も持たないがどんなことであってもその知能や経験、そして絆の力で乗り越えてしまう。そのくせ脆弱であるという何とも不思議な生き物だとヴァルバトーゼが考えていると隣を歩いていたアルティナが目の前を指差した。
「吸血鬼さんこっちです、あの突き当たりの教会が目的地です」
「思ったより町から外れているところにあるのだな」
「ええ……診療所は国境沿いにありましたから、できるだけ近くに埋葬するとなるとこういうところにならざるを得なかったみたいです」
2447しかしここの住民はそんな気候に慣れているのか歩きづらい道も難なく通っている。人間とは何にでも慣れる生き物と聞いたが事実そうらしい。悪魔のように強靭な四肢も魔力も持たないがどんなことであってもその知能や経験、そして絆の力で乗り越えてしまう。そのくせ脆弱であるという何とも不思議な生き物だとヴァルバトーゼが考えていると隣を歩いていたアルティナが目の前を指差した。
「吸血鬼さんこっちです、あの突き当たりの教会が目的地です」
「思ったより町から外れているところにあるのだな」
「ええ……診療所は国境沿いにありましたから、できるだけ近くに埋葬するとなるとこういうところにならざるを得なかったみたいです」
すずもち
DONEラスボス戦後、閣下が神を殴り飛ばした後拠点に帰還した主従の話執事にとっては目の前で閣下が消えるとか結構キツかったのではみたいな妄想
執事の心労戦いの疲労は予想以上にあったようで帰還して早々、今日は早めに休もうと思っていたときだった。寝支度を手伝う忠実な執事がヴァルバトーゼにそう話を切り出したのは。
「ところで聞きそびれていたのですがあの後閣下の身に何があったのですか?」
「ん、あの後とは?」
「ネモを撃破した後に閣下が連れ去られた時のことでございます」
「あぁ、あれか。あのときも言ったが神のやつが俺をご丁寧にも招待してくれてな、交渉を持ちかけてきたのだが話が合わなかったので殴り飛ばして来たのだ。それだけだな……全く神のくせに悪魔を従わせようなど片腹痛い」
全てが傲慢でまさしく神の視座からの一方的な物言いを思い出してヴァルバトーゼは言葉に呆れを滲ませた。
1712「ところで聞きそびれていたのですがあの後閣下の身に何があったのですか?」
「ん、あの後とは?」
「ネモを撃破した後に閣下が連れ去られた時のことでございます」
「あぁ、あれか。あのときも言ったが神のやつが俺をご丁寧にも招待してくれてな、交渉を持ちかけてきたのだが話が合わなかったので殴り飛ばして来たのだ。それだけだな……全く神のくせに悪魔を従わせようなど片腹痛い」
全てが傲慢でまさしく神の視座からの一方的な物言いを思い出してヴァルバトーゼは言葉に呆れを滲ませた。
すずもち
DONEヴァルバトーゼが血を吸わなくなってから間もない主従魔力が尽きた状態に慣れてなくて眠りがちの閣下と尽くす執事
それでも満月は昇る傍を歩いていたヴァルバトーゼの体が不意にかしいだ。すぐに腕を伸ばしてかつての逞しさの面影もない細い腕を掴まえて体を支える。
「すまない」
その声も常のような張りはなく疲労が滲んでいる。以前の閣下ならば決して聞けない声だった。
「そろそろ休まられてはいかがです」
「だが……」
「魔力を失った貴方様は以前よりも体力が落ちていらっしゃるのです、一度眠りましょう」
「……すまん世話を掛けるな」
「閣下の世話を焼くのが私の務めでございます」
ふっと細い体から力が抜ける。その体を丁寧に抱えると主人を休ませるべくフェンリッヒは近くの空き家に入った。横抱きにした体はひどく軽い体だった、今にも風に吹き飛ばされてしまいそうなそんな感想を抱かせるほど。
1247「すまない」
その声も常のような張りはなく疲労が滲んでいる。以前の閣下ならば決して聞けない声だった。
「そろそろ休まられてはいかがです」
「だが……」
「魔力を失った貴方様は以前よりも体力が落ちていらっしゃるのです、一度眠りましょう」
「……すまん世話を掛けるな」
「閣下の世話を焼くのが私の務めでございます」
ふっと細い体から力が抜ける。その体を丁寧に抱えると主人を休ませるべくフェンリッヒは近くの空き家に入った。横抱きにした体はひどく軽い体だった、今にも風に吹き飛ばされてしまいそうなそんな感想を抱かせるほど。
last_of_QED
TRAININGヴァル様とリッヒの昔と今の話。「あと一発食らったらHP0になるヴァル様を前にしてもフェンリッヒは回復アイテムに血を仕込めるか」悪魔の絆ってこんな感じだったらいいな。【悪魔のキズナ】 いつかは忘れてしまうのでしょうか。いや、こんな痛み、こんなもどかしさを忘れられるわけ、あるものか。
不要な情報、古い記憶は知らずのうちに淘汰され己の中から出て行ってしまう。到底耐えられない負荷が掛かった時もまた、生き物はあえて記憶を手放すという。心が、感情がある以上、ありとあらゆるすべてを抱えて生きてはいけない。忘却とは即ち生存のための防衛本能なのだろう。しかし、そうであるのならば。いっそその苦渋を抱き苦しみ抜いた先で、そのまま死んだ方がいくらかマシなのではないかと思えるほどに、この痛みは忘れてはならない重要なものであると、そう思った。
「痩せ我慢はおやめください。お願いです。このままではあなた様は」
2941不要な情報、古い記憶は知らずのうちに淘汰され己の中から出て行ってしまう。到底耐えられない負荷が掛かった時もまた、生き物はあえて記憶を手放すという。心が、感情がある以上、ありとあらゆるすべてを抱えて生きてはいけない。忘却とは即ち生存のための防衛本能なのだろう。しかし、そうであるのならば。いっそその苦渋を抱き苦しみ抜いた先で、そのまま死んだ方がいくらかマシなのではないかと思えるほどに、この痛みは忘れてはならない重要なものであると、そう思った。
「痩せ我慢はおやめください。お願いです。このままではあなた様は」
last_of_QED
DONE7/29新月🌑【届け】新月創作最終回。やっぱりどうしたってディスガイア4が好きだ!
届け【届け】
その日、月が落ちた。
星としての寿命か。はたまた、先の断罪者のように何者かが裏で手引きしているのではあるまいか。魔界中の悪魔たちは憶測の果てにまことしやかに囁くのだった。「月が落ちた」と。
しかし、いずれの説も推測の域を出ることはない。月が忽然と姿を消した理由、その真相は政腐の総力を上げても未だ解明されていない。仕舞いには神の裁きだなどという、オカルトめいた噂までもが魔界に少しずつ拡がりを見せていった。
ニュース番組が取り上げるのは連日月のことばかり。変わり映えしない報道に嫌気が差してフェンリッヒはテレビの電源を落とした。リモコンを放り投げ、不機嫌を誰にともなく表出させる。
馬鹿馬鹿しい。
7534その日、月が落ちた。
星としての寿命か。はたまた、先の断罪者のように何者かが裏で手引きしているのではあるまいか。魔界中の悪魔たちは憶測の果てにまことしやかに囁くのだった。「月が落ちた」と。
しかし、いずれの説も推測の域を出ることはない。月が忽然と姿を消した理由、その真相は政腐の総力を上げても未だ解明されていない。仕舞いには神の裁きだなどという、オカルトめいた噂までもが魔界に少しずつ拡がりを見せていった。
ニュース番組が取り上げるのは連日月のことばかり。変わり映えしない報道に嫌気が差してフェンリッヒはテレビの電源を落とした。リモコンを放り投げ、不機嫌を誰にともなく表出させる。
馬鹿馬鹿しい。
last_of_QED
DONE6/29新月🌑【満ち 欠ける】月の見えない夜、絆は一層深くなる。次の更新で私のお月さま創作は最後です。拙い文を、それでも読んでくださって嬉しかった。あと一回、宜しくお願いします。
※人を選びそうと思いワンクッションにしました。BAD ENDと表現したくはないのですが、多分これは世に言うBAD ENDです。 4066
last_of_QED
TRAININGヴァルアルの恋のようなそうでないようなお話。リヒ+ティナ要素もあります。フーデス姉妹も好きだ。恋せよ者ども!乙女はもう恋の行方を知っている【乙女はもう恋の行方を知っている】
「すき、きらい、すき、きらい」
少女は熱心に手元を見つめていた。どれだけの時間恋占いに勤しんでいたのか、大量の花びらが彼女の周りを取り囲んでいる。そんな光景に、魔界にも花は咲くのだと当たり前のことを彼女は知った。ユイエの花こそ見当たらなかったが、色鮮やかな花々はアルティナの目を大いに楽しませた。
「デスコさん、これは?」
聞き覚えのある澄んだ声にデスコは顔を上げる。良く見知った天使の姿を無数の眼に捉え、少女は無邪気に微笑んだ。
「おねえさまがデスコをどう思ってるか占ってたデス!」
「恋占いですね? 素敵ですわ。でもこれは……ちょっとやりすぎじゃなくって?」
アルティナは苦笑いして足元を見下ろした。柔らかな日差しは積み重なる花々の死骸を照らす。幼さとは時に残酷ですらある。
3402「すき、きらい、すき、きらい」
少女は熱心に手元を見つめていた。どれだけの時間恋占いに勤しんでいたのか、大量の花びらが彼女の周りを取り囲んでいる。そんな光景に、魔界にも花は咲くのだと当たり前のことを彼女は知った。ユイエの花こそ見当たらなかったが、色鮮やかな花々はアルティナの目を大いに楽しませた。
「デスコさん、これは?」
聞き覚えのある澄んだ声にデスコは顔を上げる。良く見知った天使の姿を無数の眼に捉え、少女は無邪気に微笑んだ。
「おねえさまがデスコをどう思ってるか占ってたデス!」
「恋占いですね? 素敵ですわ。でもこれは……ちょっとやりすぎじゃなくって?」
アルティナは苦笑いして足元を見下ろした。柔らかな日差しは積み重なる花々の死骸を照らす。幼さとは時に残酷ですらある。
last_of_QED
MOURNING執事と暴君、付き合ってない二人のエロ本をめぐるどたばた話。(R15)暴君様の世間知らずっぷりに振り回され頭を抱えつつも健気に応えようとするフェンリッヒは可哀想可愛い。こちらの診断メーカーの結果を元に執筆しました。
https://shindanmaker.com/a/727023
暴君様はなぜなぜ期!【暴君様はなぜなぜ期!】
悪魔というと粗暴で気性の荒い者がイメージされ易いのは想像に難くない。事実そういう輩は多い。だが、この人はどうだ。
一人、読み物に耽る姿が美しい。不健康な白い肌に艶やかな黒髪が垂れる。まるで絵画のようにも思える彼も、剣を振るえば剛健そのもの。惜しみなく暴を振りかざす猛々しさは実に悪魔らしく、戦闘の際はしばしばその姿に見惚れてしまう。──この人はオレが忠誠を誓った唯一のお方、暴君ヴァルバトーゼ様。誇り高き我が主。
こちらからの熱い眼差しに気付いていないらしい主が手元から視線を外すことはない。白手袋の指によってページがまためくられる。何に熱心に目を通しておられるのだろう。ふつと湧き上がる興味。
3727悪魔というと粗暴で気性の荒い者がイメージされ易いのは想像に難くない。事実そういう輩は多い。だが、この人はどうだ。
一人、読み物に耽る姿が美しい。不健康な白い肌に艶やかな黒髪が垂れる。まるで絵画のようにも思える彼も、剣を振るえば剛健そのもの。惜しみなく暴を振りかざす猛々しさは実に悪魔らしく、戦闘の際はしばしばその姿に見惚れてしまう。──この人はオレが忠誠を誓った唯一のお方、暴君ヴァルバトーゼ様。誇り高き我が主。
こちらからの熱い眼差しに気付いていないらしい主が手元から視線を外すことはない。白手袋の指によってページがまためくられる。何に熱心に目を通しておられるのだろう。ふつと湧き上がる興味。
last_of_QED
CAN’T MAKE5/30新月🌑【偉大な悪魔のその終わり】人の終わりは悪魔の終わり。デ4地獄組と赤い月の話を書きました。粛々と為される輪廻の厳かさ。筆舌に尽くし難いあの光景(見てきたかのように言うな)をどうしても一度文字にしておきたかった。それから、偉大な悪魔とその終わりについてを。
偉大な悪魔のその終わり【偉大な悪魔のその終わり】
死神が鎌を振りかざす。高く掲げられたそれは一切の迷いなく、振り落とされる。腐った牛の皮は鋭利な刃に引き裂かれ、破れ萎んだ風船のようになる。ペンギンさながらのガワだけが地上に取り遺され、裂け目からは魂がゆっくりと起き上がる。魂は朧げな光をたたえ、ゆらり、あの赤い月まで昇っていく。その光景は此処が地獄であることを勘案してなお、ある種の神々しさすら携えている。
誰も止める者はいない。止められる者はいない。何処からか、赤い月を歌う少女たちの囁くような声だけがこだまし続ける。
赤い月に導かれ次々に抜け殻になっていくプリニーたち。それをツインテールの少女は頬杖をつき、ぼんやりと見つめている。
3323死神が鎌を振りかざす。高く掲げられたそれは一切の迷いなく、振り落とされる。腐った牛の皮は鋭利な刃に引き裂かれ、破れ萎んだ風船のようになる。ペンギンさながらのガワだけが地上に取り遺され、裂け目からは魂がゆっくりと起き上がる。魂は朧げな光をたたえ、ゆらり、あの赤い月まで昇っていく。その光景は此処が地獄であることを勘案してなお、ある種の神々しさすら携えている。
誰も止める者はいない。止められる者はいない。何処からか、赤い月を歌う少女たちの囁くような声だけがこだまし続ける。
赤い月に導かれ次々に抜け殻になっていくプリニーたち。それをツインテールの少女は頬杖をつき、ぼんやりと見つめている。
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DOODLE5/23 🐺🦇キスの日らくがき。「キスしたい/してほしい」の一言が言えない悪魔たち、たまらなく可愛いですね。
噛み付くようにキスをして【噛み付くようにキスをして】
戦闘の終わり。くすぶっているのは鈍色に光る天羽々斬だけではない。込み上げる高揚感はこれでは到底おさまらない、物足りない。けれど迎え撃つべき相手はもう此処にはいない。奇襲をかけて来た悪魔たちは今しがた倒し切ってしまった。手持ち無沙汰に剣で空(くう)を裂けば赤い魔力が稲妻のように走り、尾を引いて消えた。息を吸い、鋭く吐く。
最近はといえば、どうにも張り合いのない者ばかり。断罪者ネモの一件以来、やはり魔界全土の悪魔たちの質が落ちてしまったのではないか、そんな不安とも不満とも表現される気持ちが込み上げたが、それは魔力を失い弱体化した自身にも当てはまることで、あえて口にすることはしなかった。
1845戦闘の終わり。くすぶっているのは鈍色に光る天羽々斬だけではない。込み上げる高揚感はこれでは到底おさまらない、物足りない。けれど迎え撃つべき相手はもう此処にはいない。奇襲をかけて来た悪魔たちは今しがた倒し切ってしまった。手持ち無沙汰に剣で空(くう)を裂けば赤い魔力が稲妻のように走り、尾を引いて消えた。息を吸い、鋭く吐く。
最近はといえば、どうにも張り合いのない者ばかり。断罪者ネモの一件以来、やはり魔界全土の悪魔たちの質が落ちてしまったのではないか、そんな不安とも不満とも表現される気持ちが込み上げたが、それは魔力を失い弱体化した自身にも当てはまることで、あえて口にすることはしなかった。
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DOODLE途中まで執事閣下のつもりで書いていましたが結局閣下執事になりました🐺🦇🐺左右があやしいので大丈夫そうな方だけどうぞ。※お酒を飲んだ後の二人の話。えっちな雰囲気ですがギリギリえっちはありません。理性で踏みとどまるリッヒは可愛いし、理性で攻め入るヴァル様もあざといよ。タスケテ…… 1206
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DONE5/1新月🌑執事閣下🐺🦇「本編第1話で閣下がプリニーたちを取り戻せなかったら…」という暗い妄想に取り憑かれて書きました。バッドエンドのお好きな方だけどうぞ。タイトルは「きぼうのつき」と読みます。きぼうなんかない。 3786
last_of_QED
DOODLE閣下とリッヒが二言、三言、交わすだけ。※診断メーカーより、「あなたさえいなければ」で始まり、「きっとそれを幸せって呼ぶんだね」で終わる物語を書きました。
今はまだ、ベターエンド【今はまだ、ベターエンド】
あなたさえいなければ、プリニーどもの教育をすることなど生涯有り得なかったでしょう。部屋の外でまた、連鎖的な爆発音が響いている。物覚えの悪い魂を相手に教鞭を執るなんて、私の性に合わない仕事です。あなた様にだって似合っていない。安月給で割にも合わない。何より、プリニーは幾度注意してもヴァル様に馴れ馴れしい。
そう、あなたさえいなければ。私は今も傭兵として自由気ままに魔界を彷徨い歩いていたに違いありません。少なくともじめじめと薄暗いこの地よりはいくらかマシな環境で、一人根無草をやっていたのだと思います。……誤解しないでください、これは恨み節などではないのですから。
「ヴァル様、そろそろお時間です」
1429あなたさえいなければ、プリニーどもの教育をすることなど生涯有り得なかったでしょう。部屋の外でまた、連鎖的な爆発音が響いている。物覚えの悪い魂を相手に教鞭を執るなんて、私の性に合わない仕事です。あなた様にだって似合っていない。安月給で割にも合わない。何より、プリニーは幾度注意してもヴァル様に馴れ馴れしい。
そう、あなたさえいなければ。私は今も傭兵として自由気ままに魔界を彷徨い歩いていたに違いありません。少なくともじめじめと薄暗いこの地よりはいくらかマシな環境で、一人根無草をやっていたのだと思います。……誤解しないでください、これは恨み節などではないのですから。
「ヴァル様、そろそろお時間です」
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Valentine地獄のハッピーバレンタイン🍫【呪いは甘く、甘く】ディスガイア4 地獄大人組のお話です。❤️フェン→ヴァル←ティナ❤️
呪いは甘く、甘く【呪いは甘く、甘く】
「おい、何をこそこそやっている」
「……あら。こんなところでお会いするなんて奇遇ですわね」
私たち、案外合うんじゃないかしら? そう言って悪戯に笑う天使を前にフェンリッヒはにこりともしない。天使も、向けられる鋭い眼光に怖気付くことはない。
魔界、暗黒議会前。議事堂に入ろうとしていたアルティナを呼び止めたのは彼女を良く思わない、一人の狼男だった。
「天使さまが物騒な議会になんの御用で? どんな議題を提案するつもりか知らんが……妙な気を起こすなら容赦はせんぞ」
これ見よがしに鳴らされた指の音にアルティナは言い淀む。吸血鬼ヴァルバトーゼを党首とする、地獄新党。政拳奪取に向け大統領府を目指す道すがら、いつの間にか天使が着いて来ていることをフェンリッヒは良く思っていなかった。
2764「おい、何をこそこそやっている」
「……あら。こんなところでお会いするなんて奇遇ですわね」
私たち、案外合うんじゃないかしら? そう言って悪戯に笑う天使を前にフェンリッヒはにこりともしない。天使も、向けられる鋭い眼光に怖気付くことはない。
魔界、暗黒議会前。議事堂に入ろうとしていたアルティナを呼び止めたのは彼女を良く思わない、一人の狼男だった。
「天使さまが物騒な議会になんの御用で? どんな議題を提案するつもりか知らんが……妙な気を起こすなら容赦はせんぞ」
これ見よがしに鳴らされた指の音にアルティナは言い淀む。吸血鬼ヴァルバトーゼを党首とする、地獄新党。政拳奪取に向け大統領府を目指す道すがら、いつの間にか天使が着いて来ていることをフェンリッヒは良く思っていなかった。
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DONE2/1新月🌑執事閣下🐺🦇【マボロシコレクター】さようなら、マボロシ。※モブ悪魔が登場します。また、本作は1/3にupしたものの全編となります。既に前編をお読みの方は中盤◆◆◆以降からご覧ください。
マボロシコレクター【マボロシコレクター】
足元のジオパネルは「一撃死」を示している。いかに強大な力があれど、ジオエフェクトは何者にも等しく、絶対だ。アイテム界では最悪「詰み」も有り得る、この地に宿る魔法の力。その力を味方につけた敵は一枚も二枚も上手だったのだろう。俺たちは然るべくしてパネル上に誘い込まれたのだと思い知る。
ハメられた。小賢しい。それでも、どうしようもなく腹立たしいのは──弓を構え、あろうことか主人へと矢の先を向けている、自分自身。
「閣下! お逃げください!」
まさに絶叫と言って良いだろう。喉が枯れるのも厭わずに、叫ぶ。それでも、視線の先にいるその人は微動たりともしない。
「お願いです! このままでは私は、貴方を」
9960足元のジオパネルは「一撃死」を示している。いかに強大な力があれど、ジオエフェクトは何者にも等しく、絶対だ。アイテム界では最悪「詰み」も有り得る、この地に宿る魔法の力。その力を味方につけた敵は一枚も二枚も上手だったのだろう。俺たちは然るべくしてパネル上に誘い込まれたのだと思い知る。
ハメられた。小賢しい。それでも、どうしようもなく腹立たしいのは──弓を構え、あろうことか主人へと矢の先を向けている、自分自身。
「閣下! お逃げください!」
まさに絶叫と言って良いだろう。喉が枯れるのも厭わずに、叫ぶ。それでも、視線の先にいるその人は微動たりともしない。
「お願いです! このままでは私は、貴方を」
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DONER18 執事閣下🐺🦇【愛なんかなくていい】貴方が身体を繋げる理由。きっと私はそれを知って、諦めてしまいたいのです。⚠︎閣下執事も好きな人間が書いているのでかなりアヤシイ表現があります。癖(へき)には抗えなかった。 2776
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MOURNING1/3新月🌑執事閣下🐺🦇【マボロシコレクター(前編)】貴方が望んだIFを見せて。※後編に続きます。
マボロシコレクター【マボロシコレクター】
足元のジオパネルは「一撃死」を示している。いかに強大な力があれど、ジオエフェクトは何者にも等しく、絶対だ。アイテム界では最悪「詰み」も有り得る、この地に宿る魔法の力。その力を味方につけた敵は一枚も二枚も上手だったのだろう。俺たちは然るべくしてパネル上に誘い込まれたのだと思い知る。
ハメられた。小賢しい。それでも、どうしようもなく腹立たしいのは──弓を構え、あろうことか主人へと矢の先を向けている、自分自身。
「閣下! お逃げください!」
まさに絶叫と言って良いだろう。喉が枯れるのも厭わずに、叫ぶ。それでも、視線の先にいるその人は微動たりともしない。
「お願いです! このままでは私は、貴方を」
4655足元のジオパネルは「一撃死」を示している。いかに強大な力があれど、ジオエフェクトは何者にも等しく、絶対だ。アイテム界では最悪「詰み」も有り得る、この地に宿る魔法の力。その力を味方につけた敵は一枚も二枚も上手だったのだろう。俺たちは然るべくしてパネル上に誘い込まれたのだと思い知る。
ハメられた。小賢しい。それでも、どうしようもなく腹立たしいのは──弓を構え、あろうことか主人へと矢の先を向けている、自分自身。
「閣下! お逃げください!」
まさに絶叫と言って良いだろう。喉が枯れるのも厭わずに、叫ぶ。それでも、視線の先にいるその人は微動たりともしない。
「お願いです! このままでは私は、貴方を」
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DOODLE微エロ🔞執事閣下🐺🦇【君と微睡む】寝正月も致し方ない。君と微睡む【君と微睡む】
魔界の果て。そこは罪を犯した魂、或いは帰る場所の無い流れ悪魔(もの)たちが最後に行き着くところ。そんな地の底、地獄にも新たなる年は訪れる。そして意外にも「新年らしい」様相を見せるのだから珍妙だ。
しかしそれは年の始まりを厳かに祝う……という趣きでは決してなく、何かにかこつけてお祭り騒ぎをしたい適当な悪魔が多く居るだけのこと。
そしてそれを知って、優れた地獄の統率者はささやかに今日という日の準備を進めていた。年に一度ぐらいは、罪人も、ろくでなしも、多少呆けても良かろうと。
◆
飾られた鏡餅の丸いシルエットを見つめ首を傾げている少女。デスコ、という呼び声に振り向けばその姉が少女に向けて手を差し伸べた。
4602魔界の果て。そこは罪を犯した魂、或いは帰る場所の無い流れ悪魔(もの)たちが最後に行き着くところ。そんな地の底、地獄にも新たなる年は訪れる。そして意外にも「新年らしい」様相を見せるのだから珍妙だ。
しかしそれは年の始まりを厳かに祝う……という趣きでは決してなく、何かにかこつけてお祭り騒ぎをしたい適当な悪魔が多く居るだけのこと。
そしてそれを知って、優れた地獄の統率者はささやかに今日という日の準備を進めていた。年に一度ぐらいは、罪人も、ろくでなしも、多少呆けても良かろうと。
◆
飾られた鏡餅の丸いシルエットを見つめ首を傾げている少女。デスコ、という呼び声に振り向けばその姉が少女に向けて手を差し伸べた。
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DOODLE執事閣下🐺🦇【1225】クリスマス、悪魔が街にやってくる!クリスマスと畏れの話。全年齢です。1225【1225】
「クックック……浮かれているな」
人間界。イルミネーションが街中を煌びやかに彩り、年末特有の浮き足だった気配に満ちている。人々の様子は常以上に忙しない。ただその足取りは軽く、どこか希望に溢れている。
今日は12月25日。人間の言うところのクリスマス。日暮れ時ではあるが、街並みのそこかしこから光が溢れ、夜の気配を感じさせない。電飾の施された街路樹の中には一等目立つものがある。背の高いもみの木が今日という日のアイコンとして飾られており、天辺にはベツレヘムの星。そして木の元には黒いコートに身を包んだ男が一人佇んでいる。その足元を良く見れば、人々の映す影よりも昏い何かを纏っていたが、行き交う人々の誰一人、そのことには気付かない。
2353「クックック……浮かれているな」
人間界。イルミネーションが街中を煌びやかに彩り、年末特有の浮き足だった気配に満ちている。人々の様子は常以上に忙しない。ただその足取りは軽く、どこか希望に溢れている。
今日は12月25日。人間の言うところのクリスマス。日暮れ時ではあるが、街並みのそこかしこから光が溢れ、夜の気配を感じさせない。電飾の施された街路樹の中には一等目立つものがある。背の高いもみの木が今日という日のアイコンとして飾られており、天辺にはベツレヘムの星。そして木の元には黒いコートに身を包んだ男が一人佇んでいる。その足元を良く見れば、人々の映す影よりも昏い何かを纏っていたが、行き交う人々の誰一人、そのことには気付かない。
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DONE12/4新月🌑【恋せよ者ども!】青い空に浮かぶのは、太陽だけじゃないでしょう。全年齢、CPなし。地獄の恋のお話です。
恋せよ者ども!【恋せよ者ども!】
魔界において月は特別な意味を持つ。罪を犯した人間の魂、その成れの果て、プリニーは穢れを清める赤い月が自分のために昇るその日を今か今かと待ち望む。贖罪を果たした者だけが満月のもとで転生を果たし、また何者かに生まれ変わる。
そのように待ち望まれる輪廻の象徴ではあるが、月の浮かばぬ昏い夜が一月に幾度か存在することに君は気付いていただろうか。そして、そんな時は決まって次の朝、ほの明るくなった空にようやく月が顔を見せることを。もし気付いていないと言うのなら、君はこれまで、孤独な夜を過ごしたことなどなかったのだろう。或いは、早寝の習慣があるのか、いずれかだ。
今日は丁度、そんな夜だった。
4766魔界において月は特別な意味を持つ。罪を犯した人間の魂、その成れの果て、プリニーは穢れを清める赤い月が自分のために昇るその日を今か今かと待ち望む。贖罪を果たした者だけが満月のもとで転生を果たし、また何者かに生まれ変わる。
そのように待ち望まれる輪廻の象徴ではあるが、月の浮かばぬ昏い夜が一月に幾度か存在することに君は気付いていただろうか。そして、そんな時は決まって次の朝、ほの明るくなった空にようやく月が顔を見せることを。もし気付いていないと言うのなら、君はこれまで、孤独な夜を過ごしたことなどなかったのだろう。或いは、早寝の習慣があるのか、いずれかだ。
今日は丁度、そんな夜だった。
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CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】
教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。
静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
6012教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。
静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】
抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。
棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
2926抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。
棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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DONER18 執事閣下🐺🦇いけないことだ。ずるいことだ。でも、悪魔なのだから、良いのだろうか。二次創作のド定番、媚薬ネタを書きました。R指定するほどではないですが、まだお縄につきたくないので念のため。
悪いこと、いけないこと、その全部【悪いこと、いけないこと、その全部】
手を、離す。風を纏い宙を駆ける。剣を振りかぶり、弓使いを上空から穿てば刃がその存在を魂ごと切り裂いて、悪魔は何事もなかったかのよう時空ゲート上へと着地する。彼を持ち上げ、宙へと投げた狼男が「お見事です」と後方から恭しく頭を下げた。
「アイテム界は癖になっていかんな」
「少々深入りし過ぎたかもしれませんね」
魔界政腐の堕落を憂い、再教育を企む二人は既に魔界下層区、中層区を制圧し終えていた。支持者を得、仲間も増えたことで大所帯になった地獄だが、今アイテム界を行くのは吸血鬼と人狼の二人だけである。志を同じくする仲間たちと言えど所詮は悪魔。何処に行くにも仲良く一緒、などということはない。アイテム界は趣味の世界ではある。攻略については各々が打倒政腐の戦略に差し支えない範囲で行うことが暗黙の了解となっていた。
5624手を、離す。風を纏い宙を駆ける。剣を振りかぶり、弓使いを上空から穿てば刃がその存在を魂ごと切り裂いて、悪魔は何事もなかったかのよう時空ゲート上へと着地する。彼を持ち上げ、宙へと投げた狼男が「お見事です」と後方から恭しく頭を下げた。
「アイテム界は癖になっていかんな」
「少々深入りし過ぎたかもしれませんね」
魔界政腐の堕落を憂い、再教育を企む二人は既に魔界下層区、中層区を制圧し終えていた。支持者を得、仲間も増えたことで大所帯になった地獄だが、今アイテム界を行くのは吸血鬼と人狼の二人だけである。志を同じくする仲間たちと言えど所詮は悪魔。何処に行くにも仲良く一緒、などということはない。アイテム界は趣味の世界ではある。攻略については各々が打倒政腐の戦略に差し支えない範囲で行うことが暗黙の了解となっていた。
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DONE10/6新月🌑執事閣下🐺🦇【つきよみのきみと】月の出を、知らない君と待つ。つきよみのきみと【つきよみのきみと】
忘れてはならなかったはずの記憶は、泡(あぶく)のように弾け消えた。オレは風に魔力を編み込む術(すべ)は愚か、此処に立っている理由を、頭の中にあったはずの悉くを何処かに置き忘れて来てしまったらしい。在るのは記憶の抜け殻としてのこの身体だけ。……「忘れてはならなかった」? はて、オレのような根無し草が何をそのように想うだろう。
ところで、オレに降り注ぐ妖霊族の呪文の嵐を弾き返し、しなやかに槍を振るうこの男は、一体何者であったか。
「おい、大丈夫かフェンリッヒ!?」
フェンリッヒ? ああ、オレのことか。目の先で振るわれた槍が防いで散らした青い魔力。それが頬ギリギリを掠めていく。堆(うずたか)く積み上がったジオブロックの上から、魔物が此方を見下ろし、笑う。
3622忘れてはならなかったはずの記憶は、泡(あぶく)のように弾け消えた。オレは風に魔力を編み込む術(すべ)は愚か、此処に立っている理由を、頭の中にあったはずの悉くを何処かに置き忘れて来てしまったらしい。在るのは記憶の抜け殻としてのこの身体だけ。……「忘れてはならなかった」? はて、オレのような根無し草が何をそのように想うだろう。
ところで、オレに降り注ぐ妖霊族の呪文の嵐を弾き返し、しなやかに槍を振るうこの男は、一体何者であったか。
「おい、大丈夫かフェンリッヒ!?」
フェンリッヒ? ああ、オレのことか。目の先で振るわれた槍が防いで散らした青い魔力。それが頬ギリギリを掠めていく。堆(うずたか)く積み上がったジオブロックの上から、魔物が此方を見下ろし、笑う。
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DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。104【104】
人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。
それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
3272人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。
それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
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DONEギャグ地獄主従話🐺🦇(BLではない)見えないところまで完璧に。男二人がセクスィー下着を前にすったもんだする酷い話。ネタバレ、年齢制限ありません。
淡雪に咲け【淡雪に咲け】
「フェンリッヒ様〜! ご要望の品、お届けにあがりましたッス」
「……ご苦労、下がれ」
手渡したイワシ10匹は報酬というよりも、むしろ口止め料の意味合いが大きい。規律正しく敬礼するプリニーに今一度、念を押す。
「改めて言うまでもないが……今回のことは綺麗さっぱり忘れる、そういう話だったな?」
「アイアイサーっス! もう何が何だか、すっかり忘れましたッス!」
足早に去っていくプリニーが完全に姿を消したのを確認すると、俺はドアの内側から鍵を掛ける。手塩に掛けて教育を施したプリニーであるとはいえ、所詮はプリニー。情報が漏れるかもしれぬという不安は拭い切れなかったが、いざとなれば片っ端から投げ付けて爆発させてしまえばいい、そんな目論見で、俺はとある品を秘密裏に手配させていた。
2826「フェンリッヒ様〜! ご要望の品、お届けにあがりましたッス」
「……ご苦労、下がれ」
手渡したイワシ10匹は報酬というよりも、むしろ口止め料の意味合いが大きい。規律正しく敬礼するプリニーに今一度、念を押す。
「改めて言うまでもないが……今回のことは綺麗さっぱり忘れる、そういう話だったな?」
「アイアイサーっス! もう何が何だか、すっかり忘れましたッス!」
足早に去っていくプリニーが完全に姿を消したのを確認すると、俺はドアの内側から鍵を掛ける。手塩に掛けて教育を施したプリニーであるとはいえ、所詮はプリニー。情報が漏れるかもしれぬという不安は拭い切れなかったが、いざとなれば片っ端から投げ付けて爆発させてしまえばいい、そんな目論見で、俺はとある品を秘密裏に手配させていた。