弟子と生徒「マトリフ、ちょっと話があるのですが」
普段の優男の雰囲気を捨て去ったアバンが言う。洞窟の入り口に立つアバンは真剣そのものだ。安楽椅子にゆったりと腰掛けていたマトリフは、アバンのいつもと違う様子に僅かに口を歪めた。
「なんだよ」
おおよその予想はついているのでマトリフの溜息は重くなる。面倒なことになるとわかっていたからだ。
「ポップのことなのですが」
「ああ」
アバンの眼鏡が光の加減で反射する。その奥の眼はまるで戦闘中のように厳しかった。
「ポップを岩にくくりつけて川に沈めたって本当ですか」
「ああ、そのことか」
マトリフはカップの茶を音を立てて啜る。初見でメドローアを相殺させた事はまだ知られてないないらしい。知っていたらこんな剣幕では済まないだろう。
1545