甘美な拷問 寝苦しさを感じて目が覚めた。身体に妙な重みがかかっていて、腕を動かすことができない。金縛りじゃないかと思いながら、なんとか首を動かしてみる。頭から上だけを駆動して、部家の中を見渡した。
深夜らしく、部屋の中は真っ暗だ。壁掛け時計の文字盤は影になっていて、時刻を確認することはできない。月明かりが僅かに差している以外は、部家の中を照らす光源はないのだ。この暗さから察するに、丑三つ時と呼ばれる頃合いだろう。
身体に力を入れて、起きている症状を確かめる。下半身に力を加えると、両足は問題なく動いた。左半身も、腕はちゃんと動いている。右の肩から下だけが、金縛りにあったように固まっていた。
不思議に思いながら、僕は目の前の人影を見る。隣では、ルチアーノがすやすやと寝息を立てていた。布団の中に潜りんでいるから、どのような体勢をしているのかは分からない。ゆっくりと布団を捲り上げて、違和感の正体を理解した。
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