虎牙ちゃんの学習 違うんだ。ふたりとも、違うんだ。口にできない心の声が自らの脳を埋めてしまい、アスランの話が半分くらい入ってこない。
話半分、だなんてアスランに失礼だとわかっている。それでも背後に感じる視線に意識が割かれてしまう。ちら、と盗み見た視線の主であるタケルと漣。遠慮がちなそれと不躾なそれは、同じように期待を滲ませている。
「それならば氷魔の吐息を防ぐ加護を………………ミチル?」
「あ、ああ。すまんアスラン。ええと、生地の話だったな」
がた、と背後で音。タケルが漣を咎める小さな声が耳を掠めた。ああ、きっと『生地』の意味が勘違いされている。ふたりとも、生地ってのはサタンに着せるケープの生地なんだ。決してたいやきとかお好み焼きとかの、そういう生地じゃない。
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