嘘と煤けたワンダーランド 目の前の男が腕に抱える粘土のような携帯食料と貴重な水が入ったボトルの数を見てわかったことは、「ああ、このバカはまた騙されやがったな」ということだった。
遠征任務ではバカみたいな量の水を持ち歩くわけにはいかない。その点、人類の英知である現金というものは持ち運びがしやすいことこのうえない。水にも酒にもなるしな。つまり現地調達は理にかなっているのだが、このカイという男は、とにかくそれがヘタクソなのである。
任せなければよかった。という判断ミスを悔いる気持ちと、散々買い物の仕方は教えてやっただろう。という恨み節。うまく両立ができない感情ごとオレ様なりの正論をぶつければ、普段から仏頂面を崩さない整った目元がムスッと歪んだ。
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