魔法を解いて! 何事も挑戦とは言うが、挑まなくてもいい壁はある。
「じゃ、次の時間に牙崎と大河の一騎打ちだな」
黒板に書かれた『牙崎』と『大河』の文字。正の字が示す票の数は同数。
このままでは、俺は比喩でもなんでもなく、シンデレラになってしまうのだ。
*
「牙崎ってまつげ長いよな」
「はぁ?」
弁当を食いながら俺は言う。ここで同意を得られればいいのだが、学友の反応はイマイチだ。
「髪も長い。色も白い」
「でも大河は顔が可愛い」
「かわいくない」
牙崎は髪が長くて色が白いから。不本意だが、俺は童顔だから。そんな理由で俺たち二人のどちらかは、文化祭でお披露目する『男女逆転シンデレラ』のシンデレラになりそうなのだ。
「いいじゃねーか。白雪姫みたいにキスシーンがあるわけじゃないし」
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