85_yako_p カプ入り乱れの雑多です。昔の話は解釈違いも記念にあげてます。作品全部に捏造があると思ってください。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 434
ALL タケ漣 鋭百 カプなし 天峰秀 大河タケル 100本チャレンジ モブ 牙崎漣 花園百々人 想雨 カイレ クロファン C.FIRST 眉見鋭心 天道輝 ミハレナ ダニレナ 既刊 伊瀬谷四季 蒼井享介 蒼井悠介 W 若里春名 華村翔真 Altessimo 神楽麗 都築圭 古論クリス 葛之葉雨彦 レジェンダーズ 北村想楽 百鋭 秀百 薫輝 THE虎牙道 タケ漣ワンドロ web再録 誕生日 くろそら 途中 秀鋭 卒業 ケタザザ 短歌 プロデューサー 円城寺道流 叶納望海 御田真練 超常事変 渡辺みのり 癒残 堅真 ウォリアサ R18 街角探偵 わからん 九十九一希 四季漣 親友 輝薫 書きかけ 黒紅 道漣 DoS幻覚 ドラスタ 桜庭薫 BoH 春隼 サイバネ 山下次郎 寸劇 左右わからん しのかみしの 東雲壮一郎 ハイジョ レナート ミハイル S.E.M じろてる 旬四季 北冬 東雲荘一郎 秋山隼人 悠信 神谷幸広 アスラン そらつくそら 四季隼 140SS 黒野玄武 冬美旬 冬春 ゲーム部 ジュピター 卯月巻緒 四季秋四季 85_yako_pDONE鋭心先輩とケーキの話です。SF(少し不思議)です。クラファがめちゃくちゃ仲良し。なんかもう鋭心先輩好きすぎて何書いても胡乱なんですけど与太話だと思って読んでください。(2024/5/23)祝福 味覚がなくなった。ポップコーンの味がしない。 大事件といえば大事件だが、シアタールームのスクリーンにはずっと観たかった映画が流れ始めてしまっている。口の中でモサモサとした食感だけを主張しているポップコーンのことはしばらく忘れて映画を観て、この異常事態については後で考えようだなんて悠長なことを思っていた。 観終わった頃にはポップコーンのことは頭の片隅にポツンとある程度で、カラカラの喉を潤すために飲み干したコーラが甘いことに安心してその日は眠りについた。 そこで、変な夢を見た。 どこまでも広くどこまでも白い空間で、向こう側に手が届かないほど細長いテーブルに腰掛けている。クロスは潔癖なまでに白く、生活を否定しているようだ。 13056 85_yako_pDOODLEドーナツを巡るショートショートです。100本チャレンジその53(2024/4/21)ドーナツを巡るショートショート 映画を見たが内容をさっぱり覚えていない。オレの120分と学割パワーの1000円がムダになったのを嘆きつつ、映画の前に買っておいたドーナツを食べるために事務所に寄った。 「おはようございまーす。お、鋭心じゃん」 「若里か。仕事の用事か?」 「いや、映画見た帰りに寄っただけ」 鋭心も食べるか? とドーナツの箱を開けたら一つだけ妙なドーナツがある。なんだかファンタジーな光景が穴の部分にハマっていて、それはゆっくりと変化していた。 「なんだこれ」 「……っ! 若里! それをしまってくれ!」 鋭心が悲鳴みたいな声を出すからオレはビックリしつつドーナツを箱にしまう。なんだったんだと言う前に鋭心が言った。 「……あれは今公開されている映画のシーンだ。CMで見た」 583 85_yako_pDONEミメイさんのこちら(https://twitter.com/mimei_m_m/status/1751960314382569666?t=OBws6ozuoK7iAiCCW_dRog&s=19)にオチを進呈した責任をとりました(?)タイトルはミメイさんに決めてもらいました。わちゃわちゃクラファです。映画に詳しい鋭心先輩。(2024/1/29)君は『殺しの番号』を知ってるか 眉見鋭心は困っていた。今にきっとガッカリするであろう後輩が如何にダメージを受けないで済むか、その方法を模索していた。 事の発端はC.FIRSTに舞い込んできた仕事にあった。SFを元にした海外産RPGゲームの日本語版発売を記念して、その実況の仕事をすることになったのだ。 秀の提案で、最初の操作は鋭心がすることになった。ゲームが得意なのは秀だが、バラエティ的に操作が覚束無いであろう鋭心のほうが撮れ高が高いと踏んだのだ。 予想に反して鋭心のプレイはスムーズで、彼らは所々でグラフィックの美しさや内容に感心しながらゲームを進めていく。そろそろ操作を百々人に代わろうか、というタイミングで鋭心がぽつりと呟いた。 1617 85_yako_pDONEC.FIRSTのSF(少し不思議)です。三題噺『黄色、ブラシ、道路標識』100本チャレンジその47(2024/1/22)飛び出し注意。 黄色い看板に鹿のシルエットが描かれていた。鹿に注意ってことかなぁ、って呟いたら、ぴぃちゃんがそういう道路標識だと教えてくれる。それが一昨日の、仕事帰りの話。 で、今持っているのは魔法のブラシだ。事務所で暇を持て余している僕はそれをぼやっと見つめる。ブラシには黄色のペンキがべったりとついているけれど、ぽたぽたと垂れる気配はない。 このブラシは、曰く、何か一つの標識を描くことができるらしい。そして、その標識は不思議な力で描かれたことを強制的に実現させると、さっき道端で筆を押し付けてきた金色の髪をした少年が言っていた。 彼は「赤色だったら通行止めとか、強力なものが描けたんだけど……ごめんね」と言っていた。確かに赤色のペンキの方が使い勝手が良さそうだ。一人きりに、一人ぼっちになってしまいたい時、とか。 1000 85_yako_pDONEお題『電球、流れ星、隣』で書きました。SF(少し不思議)な百々人くんです。仲良くなりたいという感情はある三人。(2023/11/10)ガラスの欠片が落ちる夜「僕が電球を壊すと夜に流れ星がひとつ降る」 唐突に百々人が言った。俺と百々人と秀は事務所が契約している貸し倉庫で今度撮影するオフショットのネタになりそうなものを探している最中だった。 「試してみる?」 百々人は『こんなものを見つけたので思い出しました』とでも言うように、倉庫に眠っていたであろう金属製のバットを片手に首を傾げてみせる。 「流れ星。願いが叶うかもよ」 甘くざらついた、いつも通りの百々人の声だ。俺はその言葉に、自分の願いなど叶える必要はないのだと告げるかを少しだけ迷う。きっと言うべきではない。そう結論づけて、ではなんと返そうかと考える俺を横目に秀が口を開く。 「倉庫の電球を壊したら怒られますよ」 1837 85_yako_pDONE百々人くんと鋭心先輩。マユミくんと仲良くなりたい百々人くんです。カプではないと思うけど、そう見えたらごめん。(2023/11/7)ジョーカーはいらない マユミくんがたったひとりで事務所のテーブルにトランプを並べて難しい顔をしていた。どう見ても新品のカードは作りが安っぽくて、丁寧に置かれた箱には100円ショップのピンク色をしたシールがべったりと貼られている。 卓上のトランプを動かさずに手元のトランプとスマホを交互に見るマユミくん。占いでもしてるのかなって思って、そのうなじに声をかけた。 「おはよ。マユミくん、何してるの?」 「え、ああ。百々人か。おはよう」 はぐらかすつもりなのか、そんな気はないのか。返ってきたのは答えではなく挨拶ひとつだ。 聞かれたくないことならさっさとトランプを片付けて明日のレッスンの話でもしたらいい。それなのに動く気配のないマユミくんに、あと一度と決めて問いかける。 2962 85_yako_pDONE鋭心先輩が本を出す話。仲良しクラファ。100本チャレンジその43(2023/9/18)例えば笑うと幼く見えたり マユミくんが本を出すことになった。なんでも、雑誌で連載していたコラムをまとめて出版するらしい。 そのコラムは僕も読んだことがある。マユミくんの好きな映画を中心として、マユミくんの好きなものが理路整然としたマユミくんらしい言葉で語られるとても好ましいものだった。アマミネくんと一緒に読んで、マユミくんってこういうのが好きなんだね、って話をしたりもしたっけ。 さぞかし素敵なものができるに違いないと他人事として楽しみにしていた僕は、マユミくんのお願いで一瞬にして当事者となってしまった。マユミくんは僕に著者近影を描いてくれるないかと頼んできたのだ。 なんで、僕に? その問いを受けたマユミくんは毅然とした男らしいカッコ良さでずいぶんと可愛らしい答えを返してきた。曰く、 1001 85_yako_pDONEわちゃわちゃクラファちゃん。コンプ欲のある秀くんです。(2023/03/16)おモチウォーズ「あまみねくん……おなかすいたよぉ……たすけてよぉ……」 「……ダメです」 「おなかすいたよぉ……しんじゃうよぉ……」 「……あの、そのアテレコやめてもらっていいですか?」 秀はため息と共に吐き出した。その口元には罪悪感が滲んでいる。 秀と百々人と鋭心が先程まで勉強していたスペースをHigh×Jokerに譲り、誰も座っていなかった事務所のソファに腰掛けたのが数分前の話だ。同じソファに座っていた秀に向けて百々人が声を出したのを見て、対面に座る鋭心が声をかける。 「百々人、腹が減っているのか? それなら確か給湯室にクッキーが……」 「ああ、違うんだマユミくん。ごめんね、ありがとう」 百々人がやんわりと否定する。ハテナを浮かべたような顔をする鋭心に言葉を返したのは、百々人ではなく秀だった。 3331 85_yako_pDONE眉見鋭心の勘違いです。物悲しい。100本チャレンジその41(2023-02-26)おいてかないで 勘違いをしていた。 どうしようもないほどロマンチックで、笑えるほどに愚かな間違いを。 「それじゃあ鋭心、お留守番お願いね」 お手伝いさんにも俺を頼むと言ってどこかに出かける母とそのあとを歩く父。そうやって物心ついたときから両親が揃って出かける日があった。それが毎年同じ日だということに気がついたのは、小学校で画数の多い漢字を習い始めたあたりからだ。 いったい何の日なんだろう。カレンダーを見ても何も書いていない。平日か、休日か、祝日か、雨か、晴れか。そのどれにも規則性はなく、ただ同じ日に両親は揃って出かける。あんなに忙しい、めったに休みが揃わない両親が、だ。 ふたりしてどこに行くのかと、珍しく食い下がって問い詰めた時があった。それは興味と呼ぶにはあまりにも幼い、たんなる子供の癇癪だ。両親が一緒に休む日など、俺の誕生日を含めて年に数日しかない。俺はただ、両親と一緒にいたかった。 1365 85_yako_pDONE眉見鋭心とモブの過去話。全部が酷い捏造です。暗いし、書いてて悲しかったです。(2023-02-19)ただこのモブは殴った相手にくっついてた下っ端で、実際は殴ってない(その場にいた素行の悪い人間だったので当事者になった)といいなぁと思ってます。繭の中 夢を見た。悪夢と言って差し支えないだろう。もう幾度となく見ている夢なので、いつもの夢と言っていい。 内容はシンプルで、意味の聞き取れない罵詈雑言を浴びせられるというものだった。「眉見」も「鋭心」も「会長」も、一言も自分を表す言葉など読み取れないくせに悪意は俺に向けられているとわかる。日本語なのかも怪しい怒声はひどいノイズに覆われているが、おそらくは同世代の男のものだ。ただ目の前で俺に敵意を剥き出しにしている男の顔は黒のマジックで塗りつぶしたような影がこびりついていて表情がわからない。いや、誰のものかもわからなかった。 夢というのは眠りが浅いときに見ると聞いている。大抵は真夜中に、酷いときには真夜中と明け方に目が覚めた。台所に行って水を一杯飲むまで生きた心地がせず、再度眠るのには労力がいる。俺はあっという間に寝不足になった。 3046 85_yako_pDONEクラファ。すれ違いギャグ。(22/9/7)月より団子 もうすぐ月見の季節だと、秀が嬉しそうに言っていた。たしかに紅葉には遠いが夜には暑さも和らぐ頃合いだ。月も見頃になるだろう。 意外と言っては失礼だが、秀くらいの年頃で月見を楽しみにしているのは珍しいほうではないだろうか。感心しつつ話を聞いていたら、どうやら百々人も月見を楽しみにしているようだ。最近の秀と百々人はしきりに「そろそろ月見の時期だ」と楽しそうに笑い、嬉しそうに声を弾ませている。 秀に聞けば月見は毎年の楽しみだと言うから驚いた。それと同時に、美しいものを愛でる感性と余裕は見習うべきだと身を引き締める。美しさと歴史には礼儀を払いたい。 俺も参加してよいだろうか。そう問いかける前に秀がこちらを見て、パッと顔をほころばせて言った。 2096 85_yako_pDONE眉見鋭心が誰かの人生をトレースしているという妄言の元に書きました。(22/8/3)もしもの話。眉見鋭心が他人の人生を生きてるという妄言前提 ぴぃちゃんが持ってきた雑誌には僕が載っていた。僕が出演した舞台の特集記事が乗っている雑誌だ。僕が演じたのは主役じゃないけど結構見せ場のある役で──それでも分不相応なほどに長い文章で取り上げられているのは少し緊張する。なんとなしに雑誌を読んでいたら『鬼気迫る演技』だなんて紹介されていて、花園百々人の面影もなかったと評されていた。 「舞台って、こわいね」 一言、口にしたらようやく落ち着いた。それを聞いていたのはマユミくんだけだった。アマミネくんとぴぃちゃんはお仕事に行っていなかったけど、マユミくんは僕の隣に座って一緒に雑誌を読んでいた。マユミくんはこうやって、理由もなく僕のそばにいることがある。 2241 85_yako_pDONE遊園地行くクラファ。ムカつくモブがでる。鋭心先輩がらしくない。(22/6/26)あの日のあなたへ「おはようございます……あれ? 鋭心先輩、めずらしいもの見てますね」 事務所のドアを開ければ鋭心先輩がいた。俺の言葉を聞いて、さっき下でバッタリとあった百々人先輩が俺の後ろから顔を覗かせる。 「めずらしい? マユミくん何を見て……」 ああ、と百々人先輩は小さく吐息を漏らした。そうしてあっさりと、自然に鋭心先輩の横に座る。鋭心先輩は持っていた雑誌をテーブルに置いた。 「遊園地特集ですか。確か、彩のみんながこのまえ仕事してましたよね」 鋭心先輩が読んでいたのはレジャースポットの雑誌だった。彩のみんなが遊園地を一日中遊び尽くした特集が乗っている。 「ここにあったからな。他ユニットの仕事は参考になる」 俺はふたりの向かいに座って雑誌を開いた。百々人先輩はそれを覗き込んだけれど、鋭心先輩は目線だけを雑誌に向ける。 7796 85_yako_pDONEクラファのわちゃわちゃギャグ。100本チャレンジその30(22/6/18)足5mあるわけないじゃん! SNSで自分たちのことは検索しないようにプロデューサーからは言われている。個人的にはSNSに疎そうな鋭心先輩はインターネットから遠ざけるのが正解だと思うし、百々人先輩みたいな繊細な人が極端で軽率な悪意に晒されるのも耐え難い。だからそれには賛成しつつ俺だけがSNSを見ていたんだけど、普通にバレた。そしてシンプルに怒られてしまった。身内以外の大人に怒られるのって結構効く。 それでも俺にだって言い分はある。反応は見たくて当然。そう言えばプロデューサーは翌日には自らが精査したコメントだけを印刷した紙の束を俺たちに渡してきた。プロデューサー、過保護っていうか俺たちのこと好きすぎでしょ。 「これが俺たちに対する意見か」 1541 85_yako_pDONE眉見がかわいそうです。(22/6/14)彼の好きなもの、りんご。 マユミくんの脳天にカラスのくちばしが突き刺さってしまった。どうやら、カラスの自殺に巻き込まれたらしい。 世を儚み地面へと真っ逆さまに墜落したカラスの真下にマユミくんがいた。冗談のような、漫画のような巻き込まれかたをしたマユミくんは病院で精密検査を受けたが大事には至らなかった。事実、数日間の休養の後、マユミくんは元気に学校に通っている。 では何も起こらなかったかというとそんなことはない。マユミくんの脳に何が起きたのかは定かではないが、マユミくんの味覚は壊れてしまった。かと言って全ての味覚があべこべになったわけではない。マユミくんが理解できなくなったのは、リンゴの味だけだ。 マユミくんはもうリンゴの味がわからない。マユミくんがリンゴを口にするたびに彼が知覚する味は変わる。今日食べたリンゴは麻婆豆腐の味がしたらしい。昨日食べたリンゴは生ハムの味。もう少し前に食べたリンゴは生クリームで、病院のお見舞いで食べたリンゴはカレーの味がしたとマユミくんは言っていた。 2081 85_yako_pDONE秀と鋭。カプなしですが秀鋭に見えます。100本チャレンジその26(22/5/18)艶めく指先 よろしくないと思った。もちろんそれは目の前にいる男ではなく、俺のこの感情が、だ。 ユニットメンバー最年長。頼れる先輩。最強の生徒会長。尊敬というラベリングをされて棚に納められた感情という名の瓶が、突然の嵐で割られてしまったような感覚だ。そこにはたまに感じる親しみやすさとか、ちょっとかわいいと思う気持ちなんかが入り込む余地はなくて、代わりに俺の不埒な感情が棚の一番取り出しやすいところに収まっている。こんなのは鋭心先輩に抱いていい感情ではない。誰に抱いたとしても、それはたとえば恋人というカテゴリに入り込めない限り、隠し通さねばならない薄暗い熱だった。 ふ、と見ただけだ。プロデューサーも百々人先輩もいて、俺と鋭心先輩もいる。そういう、当たり前の風景にそれはそっと紛れ込んでいた。 1269 85_yako_pDONE死体を埋めるクラファの概念です。ファンタジーなのでこわくないよ。(22/2/13)夢のあと『助けて』 日付の変わる少しだけ前、百々人先輩がグループトークにたった三文字を投げかけた。それ以上の言葉はなく、いつものように可愛らしいひよこのスタンプが押されることもない。 『どうかしましたか? 大丈夫ですか?』 慌ててメッセージを打てば既読が一件だけついた。先ほどの百々人先輩の発言にも既読はひとつしかついていないから、きっとまだ鋭心先輩は気づいていないんだろう。百々人先輩は俺のメッセージを見たはずなのに返事はない。ただ返事がないだけのたかだか数分間が、薄く引き延ばされて濁った膜を張る。 助けて、だなんて不穏な言葉だ。それに百々人先輩はこういうことを、あんまり言い出せない人だと俺は思う。そんな言葉を、こんな遅い時間に、たった一言だけ送ってきたんだ。きっと百々人先輩はとても困っているに違いない。 17104 85_yako_pDONEクラファの三人が花火を見る話。(2022/02/02)秘め事花火 去年見た花火はきれいだった。 僕の力ではその美しさをキャンバス上に表現することはできず、結果は佳作。今年は見る理由もないから花火大会があること自体を忘れていた。 「花火大会?」 アマミネくんのお誘いはそれなりに急だった。週末に花火大会があるから時間を取れないかと問い掛ける彼の言葉に僕が真っ先に引きずり出された記憶は、どっかにやっちゃった佳作を証明する賞状のことだ。あのつるつるとした紙の質感、あるいはざらざらと喉を削るイメージに僕の気分は少しだけ下がったが、それでも素敵なものを一緒に見るというのはとてもよいコミュニケーション手段だということはわかる。 「花火かぁ」 それに、花火はきれい。去年は掴めもしない光に手を伸ばした僕が悪いのであって、あの美しさを手の内に収めようとさえしなければ、僕は充分にあの輝きとうまくつきあえるのではないか。それなりに前向きになった気持ちに、マユミくんの硬質な声がひんやりと寄り添った。 6323 85_yako_pDONE後輩をからかう先輩二人です。100本チャレンジその13(2021/12/28)放課後アフタートーク 悪戯心にも満たない出来心だった。のんびりとただ三人で同じ空間にいるだけ時間に、僕は言葉を落とす。 「アマミネくんって天才なんだよね?」 改めて口にすると、なんだかすごい問いかけだと思う。そんな質問にアマミネくんは平然と答えた。 「ですね」 アマミネくんのこういうところ、すごいよなぁっていつも思う。アマミネくんが自信満々に返した言葉は、僕の望んだものだった。 「じゃあ、聞いたら何でも教えてくれる?」 「そうですね。俺が今わからないことでも調べればわかりますし、大抵のことは教えられますよ」 情報収集は得意なんです。そう誇らしげに胸を張るアマミネくんに笑いかける。 「じゃあ、教えてほしいことがあるんだ」 「はい、なんですか?」 870 85_yako_pDONE○○しないと出られない部屋に閉じ込められたクラファです。嘔吐表現があります。(2021/12/27)羊の不在「状況を整理しましょう」 異常事態において、状況の把握は重要だ。俺の提案に百々人先輩も鋭心先輩も頷いた。幸い身の危険はなさそうなので、じっくりと腰を据えて考えよう。 「認識を共有しましょう。まず、俺たちは事務所の扉を開けた。ここまではいいですね?」 「ああ」 「そうだね。変なところもなかったよ」 よかった。ここから違っていたとしたら話にならない。いや、話をするまえに言うべきことが、まずあった。 「話の腰を折りますけど……先輩たち、俺の見てる夢ですか?」 「さっきビンタしあったじゃない。ちゃんと痛かったでしょ?」 「痛かったな。これは現実で……現実ではなくても、現実だと仮定して進めた方がいざという時に動けるだろう」 15458 85_yako_pDONE仲良くなったクラファ三人の仁義無きクソ土産バトルです。100本チャレンジその8(2021/12/14)仁義無きクソ土産バトル 突然だが、話は半年前へと遡る。 半年前と言えば、俺たちの仕事も軌道に乗って個別の仕事や地方ロケも増えてきた頃だ。仕事に慣れるのと同時に俺と先輩たちの距離も近づいて、俺たちはそれなりに気の置けない仲になっていた。そう、俺たちは出会った頃に比べてかなり仲良しなのだ。これは俺が今からする話において重要な点なので念頭に置いてほしい。 そう、俺たちは冗談を言い合える仲になっていた。けしかけて、じゃれあって、みたいな。そうしたいわゆる悪ふざけの延長で、俺と百々人先輩の抗争は勃発したのであった。 「はい、アマミネくんのぶん」 そう言って手渡された地方ロケのお土産は鋭心先輩に渡されたお土産とはサイズ感がだいぶ違っていた。鋭心先輩へのお土産はおいしそうなフルーツゼリーで、なんでも百々人先輩が試食したなかで一番おいしかったのだとか。 1614 85_yako_pDONEクラファ。桜に攫われる鋭心先輩です。100本チャレンジその3(2021/11/26)桜リタルダンド 鋭心先輩が桜に攫われてしまった。何を日科学的でバカなことをって思うでしょ? 俺もそう思う。 鋭心先輩と、俺と、百々人先輩。桜並木を名乗るには少しばかり力不足と言えるような、まばらな桜の中を俺たちはのんびりと歩いていた。丁寧で暖かい時間だったと思う。俺たちは仕事帰りで、次の仕事の話なんかをしながら、たまに視界を横切る桜の花びらに目を細めていた。 あっ、という間だった。眼前を完璧な形で通り過ぎた桜の薄桃色に視界を奪われた刹那、その向こう側に鋭心先輩の姿はなく、呆気に取られたような百々人先輩が頼りなく眉を下げていた。 「……消えた?」 「……どこにもいない……よね?」 消失マジック。ドッキリ企画にしては非現実的で撮れ高もない。こういうとき俺の取る行動は天才に相応しくない凡庸なもので、咄嗟にできたのはスマホを取り出して鋭心先輩に電話をかけることくらい。 1478 1