85_yako_p カプ入り乱れの雑多です。昔の話は解釈違いも記念にあげてます。作品全部に捏造があると思ってください。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 434
ALL タケ漣 鋭百 カプなし 天峰秀 大河タケル 100本チャレンジ モブ 牙崎漣 花園百々人 想雨 カイレ クロファン C.FIRST 眉見鋭心 天道輝 ミハレナ ダニレナ 既刊 伊瀬谷四季 蒼井享介 蒼井悠介 W 若里春名 華村翔真 Altessimo 神楽麗 都築圭 古論クリス 葛之葉雨彦 レジェンダーズ 北村想楽 百鋭 秀百 薫輝 THE虎牙道 タケ漣ワンドロ web再録 誕生日 くろそら 途中 秀鋭 卒業 ケタザザ 短歌 プロデューサー 円城寺道流 叶納望海 御田真練 超常事変 渡辺みのり 癒残 堅真 ウォリアサ R18 街角探偵 わからん 九十九一希 四季漣 親友 輝薫 書きかけ 黒紅 道漣 DoS幻覚 ドラスタ 桜庭薫 BoH 春隼 サイバネ 山下次郎 寸劇 左右わからん しのかみしの 東雲壮一郎 ハイジョ レナート ミハイル S.E.M じろてる 旬四季 北冬 東雲荘一郎 秋山隼人 悠信 神谷幸広 アスラン そらつくそら 四季隼 140SS 黒野玄武 冬美旬 冬春 ゲーム部 ジュピター 卯月巻緒 四季秋四季 85_yako_pDONEつきあってる想雨がじゃれてます。『タイムマシン・コーヒー・寒さ』というお題で書きました。100本チャレンジその46(2023/12/31)コタツで寝るな コーヒーが冷めてしまった。 僕としてはそれくらい長い時間を雨彦さんと一緒にゆっくり過ごせたことが嬉しいけれど、真冬の夜がもたらす寒さは僕らの体温を容赦なく奪う。いや、部屋もコタツもあったかいからポカポカしているんだけど、きっとこの冷たくなったコーヒーを飲んだらからだの芯が冷えてしまうだろう。 コーヒーを温めましょうかー? と言いたかったがあいにく電子レンジが故障している。それを雨彦さんに伝えて謝れば、雨彦さんは「お前さんは悪く無いさ」と言って、少し悩む素振りを見せたあとにポケットから銀色の懐中時計を取り出した。 「それはー?」 「このあいだ手に入れたんだ」 「きれいだねー。でも、これがどうかしたんですかー?」 1626 85_yako_pDONE想雨と心霊現象です。想楽くんの片思い。(2023/8/10)お呼びでない 人を好きになった。 初恋だなんて言わないけれど『これが最後の恋ならば』だなんて青春じみたことを思ってしまう程度には、僕は雨彦さんに惚れている。 好きになったきっかけなんて覚えてないけど、いまの僕が雨彦さんのどういうところを好んでいるのかはわかっているつもりだ。 どこが好きかと聞かれたら答えるけれど、雨彦さんは何も聞いてくれない。片手の指で足りるほどだけど、何度も告白してるのに。 好きなんですー、と伝えると「ありがとうな」だなんて返してくる、ひどい男。そんな男が珍しく、僕に質問を返してきた。 「北村は、俺のどういうところが好きなんだ?」 自分の気持ちは言わないくせに僕の気持ちの深くまでを求めてくるなんて、本当にひどい男だ。それでも僕はこの恋が進展することを願って、自分の気持ちをどう口にするべきか考える。 1697 85_yako_pDONE想雨とジンクスと怪異です。100本チャレンジその42(2023/6/30)夜のまじない『夜に爪を切ると親の死に目に会えない』と聞いたことがある。聞かされた、というのが正しいか。 もっともこの言い伝えは『灯りの乏しい時代は夜が暗かったから爪を切ると怪我をしやすいかった』から、それをしないようにと言い聞かせるための作られた俗信だろう。昔の人は『してはいけないこと』をジンクスに絡めて禁じていた。夜に口笛を吹かないように、だとか、そういう類だ。 だからその言葉がなんのために生まれたのかの意味さえ理解していれば、こんなジンクスはくだらないとさえ思っている。もともと怪異や幽霊なんかは──軽んじているわけではないが、さほど自分には縁のない話だ。目の前で、今まさに爪を切ろうとしている僕を見つめている狐のような男は時折あやかしのように見えるが、彼だってしょせんは、人だ。 1571 85_yako_pDONE想雨。100本チャレンジその40(2023/2/15)桜と取り決め まんまるい頭と見やすい位置にあるつむじを見つめる。半歩先を歩く北村を視線で追うと、背中よりはつむじのほうが何倍も見やすくて愛らしい。北村が先に階段でも上れば視線は反転するか同じくらいになるのだろうが、北村の家にお邪魔するために使うのはエレベーターだ。結局、玄関の扉をくぐるまで俺は北村のつむじを見ながら歩いていた。 玄関の扉が閉まる。くる、と北村が振り向いたときも俺が意識して視線を下げなくては目線はあわない。そんな身長も年齢も離れた恋人を、俺は酷く好いていた。 「雨彦さんー」 名前を呼ばれるだけではわからない。声色はどうにもらしくない。 「……屈んでくださいー」 俺が言われたとおりに屈めば北村は近づいた唇に自らのそれを重ね合わせた。俺は北村のことを対等な存在だと思っているが、この瞬間だけは、俺にねだってみせないとキスのひとつもできない男が無性に愛おしい。それに俺は口づけを交わすためだけにあるような、この言葉が好きだった。 1203 85_yako_pDONE想雨。愛してるゲームをするふたりです。100本チャレンジその37(2023-01-18)殺し文句は明るい部屋で 愛してるゲームを考えた人って賢いか賢くないかで言ったら相当賢いんだと思うけど、そのヒラメキをもう少し他のことに使えなかったのかと思わなくもない。いつもは意識に浮かぶことすらない思考は、愛してるゲームの当事者となった僕の脳内にぷかりと浮かんですぐ消えた。 僕の目の前には雨彦さん。周りにいたギャラリーは半分くらいに減っていて、もちろんカメラが回っているでもなし。パーティの余興で始まった愛してるゲームは決着がつかず、言い出しっぺのプロデューサーは社長に引っ張られて向こうでビールを飲んでいる。文句はあとで言うとして、いまは目の前の男に意識を向ける。僕は雨彦さんと対決中なのだ。 勝負内容は驚くほど簡単で、愛してると交互に言い合って照れた方の負け。この男はやたらといい声で「愛してるぜ」だのとほざいているが、僕はそんなことで照れやしない。驚くほどときめかない自分は薄情者だろうか。僕はこの男と恋仲だというのに。 1575 85_yako_pDONE想雨。「ハート」「ココア」「ダンボール」のお題をもらって書きました。(2022-12-18)心臓が止まるとき ハートと言えば聞こえはいいが、ようは心臓。臓器のひとつだ。 心臓ひとつにつき生き物は一人、あるいは一匹で、人の心臓が九つ必要なら人間が九人いるのが当然で、ましてや心臓がほしいと言われれば、それは九人の死を意味する。心臓がなくなったら、死ぬしかないんだから。 ハートを奪うって酷いことだ。だって、恋を知る前のその人は死んじゃうんだから。恋をするなら自分の意思がいい。自殺なんて言葉を使う人はいないけれど、心臓を捧げて、それまでの自分を殺しちゃうなら自分の手でトドメを刺したいっていうのが僕の考えだ。それなのに、僕はあの人のハートが欲しい。僕の心臓をあげたっていいくらい、あの人の心臓はどうしても欲しかった。 2173 85_yako_pDONE想雨と花言葉。※諸説あり (22/9/8)まだ花束は作れない 事務所までの道に、生き急ぐように咲いた紫陽花を見た。仲間はまだ雨を待っているというのに、たったひとりで咲いていた。 花に疎いわけではないが、特段詳しいわけでもない。健忘症のように咲いた紫陽花の理由もわからぬまま、事務所の扉を開けて挨拶を投げかける。プロデューサーは外出だとホワイトボードにあったはずだが、この時間なら北村がいるはずだ。 「あ、雨彦さん。おはようございますー」 「よう北村。なんだ、具合でも悪いのか?」 北村はテーブルに突っ伏して手元を見ていた。視線の先を眺めてみれば、お世辞にも華やかとは言えない一輪の花がある。 「それは……貧乏草か」 「そうだよー。摘んだら貧乏になっちゃうっていうやつー」 2244 85_yako_pDONE想雨。雨彦さんがちょっとブレてる。(22/6/17)おかしな話 目の前の狐が似合わない雑誌を持っている。ホワイトデー特集と大きく書かれた雑誌はおそらく女性誌で、そういう一種のちぐはぐさは骨ばった長い指に支えられて奇妙なバランスを保っていた。 「雨彦さん、珍しいものを見ているねー」 似合わない、と言外に告げたつもりはないが、まるで避難されたかのように肩をすくめて雨彦さんは返す。 「よう北村。なに、面白いと思ってな」 「おもしろいー?」 「見てみるかい?」 そう言って雨彦さんが広げたページにはホワイトデーと聞いて連想できる限りの──あるいは想像の外にあるような様々なお菓子が散らばっていた。そこに、何かが書いてある。 「えっと……お返しに込められた意味ー?」 「ああ、奇妙なもんだ。どんな菓子をやるかによって、伝えたいメッセージが決まるんだと」 2019 85_yako_pDONE想雨。年の差。『海、ラムネ、金属』というお題で書きました。(22/6/7)海とナイフ「牙崎くんはさー、ラムネを知らなかったよねー」 夏の夜、ベランダから見た夜空には一輪の華も咲いていなかったけれど、僕はふと花火大会の日を思い出して口にした。夏休みの僕は家にいる時間が増えて、夏とは無関係に会社に縛り付けられた兄さんの代わりとでも言うように雨彦さんが恋人の距離で僕とベランダに並んでいる。ここにクリスさんがいない理由は確かに存在していて、色恋には明確なえこひいきがつきものだった。 「なんていうか、牙崎くんってちょっと浮き世離れしてるよねー。浮き世離れっていうか、人間離れっていうかー」 夏の大三角を見ながら、星見を得意だという男の顔を見上げる。雨彦さんは星を見ずにただ僕の目を眺めていた。 3934 85_yako_pDONE想雨。練り香水の話(22/5/19)謙虚、陶酔、初恋 季節外れの、金木犀の香りがした。 気がついたのはきっと僕だけだ。ここには雨彦さんと僕しかいなくて、ここにやってくる人間も今日はいない。ここは僕の家──というよりは兄の家で、家主はあと三日ほど、職場に閉じ込められるとの連絡があったばかりだ。 そんな兄さんの不在に乗じるのは少しだけ心が痛むが、こんなときでないと恋人ひとり呼ぶことのできない男が僕だった。別にひとりで暮らすのが嫌なわけでもそれが不可能なわけでもないが、ひとり暮らしを望む理由に雨彦さんが混ざるのは少し癪だった。しかし雨彦さんを除外すると一人暮らしをするための動機がない。結局僕には現状がしっくりと来ていて、この食えない男との逢瀬だって、頻繁じゃないくらいがちょうどいいんだ。 2554 85_yako_pDONE雰囲気概念の想雨。100本チャレンジ、その24(22/5/7)雨男「なにこれー?」 記憶の中にある小学校。その教室にそっくりな空間に僕はいた。教室には椅子と、机と、僕。後ろの壁や目の前の黒板には、僕の詠んだ川柳が所狭しと飾られている。黒板の真ん中に、誇らしげに賞状が飾られていた。 窓からは草原が見える。そして、頭上には飲み込まれそうなほど鮮やかな青空が広がっていた。そう、空が見える。 教室に天井はなかった。蓋のない箱のなかに僕はいた。扉の先の気配は華やかに萌えていて、きっとこの箱は草原の中にぽつりと置かれているんだろう。 どこに行くつもりもないのに僕は扉に手をかける。が、開かない。振り向いて開け放たれた窓を見ると、そこには雨が吹き込んでいた。僕の頭上は快晴なのに、外はひどい雨だ。引き寄せられるように窓から乗り出して外を見れば、覗いた窓の下には見知った人影が座り込んでいた。 950 85_yako_pDONE月がきれいですね系の想楽雨(2021/11/1)いつかあなたと海岸で 月がきれいですねってやつ、たぶん伝わると思うんだ。雨彦さん、僕はね、あなたを愛しているんだ、って。 それでも例えば僕が雨彦さんの家に行って、ベランダから見える位置で電話を鳴らしてちょっと月を見ませんかなんて言う日はたぶんこない。きてたまるか、くらいの心境だ。雨彦さんがどう反応するかは何パターンもイメージが浮かぶけど、必ずそこには僕の若さってやつが浮き彫りになってしまうのは目に見えていて、それは僕の望むところではない。 メッセージはどうだろう。ねぇ雨彦さん、月を見て。雨彦さんがどう捉えるかはまだわからないけど、その表情が見えないのはちょっと、いや、かなり惜しい。照れるにせよ、笑うにせよ、それは一回きりの表情だと思うから。 1954 1