開演ブザー「チビ! 勝負だ! 事務所まで先についたほうが勝ちだからな!」
言うが早いか、アイツはあっという間に駆け出した。いや、オマエはさっきまでたいやきを食べていたはずだろう。少し円城寺さんと話してただけで、すぐこれだ。円城寺さんに視線をやれば、その目は『いってこい』と告げている。別に行く義理なんてないのだが、例え無茶苦茶なオレ様ルールに基づいた判定でも、得意分野で負けるのは癪だ。
距離は空いてしまったが、足なら俺のほうが早い。なびく銀の髪を捉えるべく、俺は思い切り駆け出した。
「チビ! 勝負だ! 先に食い終わったほうが勝ちだからな!」
宣言するときには、もうコイツはチャーシューを頬張っている。俺はと言えば、ラーメンを受け取ったばかりで割り箸すら割ってない。
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