傘を変えた日 傘を変えた。
今までお世話になっていた、シックな宵闇色の傘はその大きさが気に入っていた。エンジェルちゃんをいれても、なおスペースが余る大きな傘。エンジェルちゃんを濡らすわけにはいかないからね。でもここしばらく、長年の相棒には傘立てでおやすみしてもらっている。
代わりに、折りたたみ傘を買った。今までの傘とは逆に、小ささで選んだ傘。色は、光の加減で紫に見える黒。色はなんでもよかったけど、この色は気に入っている。
まぁ、この傘は御守りみたいなものなのだけれど。
「冬馬、いれて」
「なんだよ、最近傘忘れすぎじゃねぇか?」
冬馬が傘を開いたら、鞄の中の傘を忘れたふりをしてその中に入る。冬馬はいつも呆れた声で俺を咎めるけど、口調は柔らかいし拒まれたことはない。
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