今度こそ一緒に生きてほしい「ここで七海とはお別れか。寂しいね」
未来を望んでいなくてもその日はやってくる。空港の出発口に向かいながら灰原は寂しさを吐露した。
「来世で会えるのでは?」
「無理だよ」
「何故」
「僕たちには『縁』が足りないからね」
「縁?」
聞き慣れない単語が灰原の口から発せられる。
「なんて言ったらいいのかな…家族とか恋人とか…そうでなくも伏黒くんのお父さんを通じての五条さんと伏黒くんの繋がりとか、そういうの」
「私たちだってあるじゃないか」
二人は唯一の同級生。灰原が亡くなるまではあの箱庭の中でずっと一緒だったのに。
「高専に通う同級生。いくら思い入れが強くても、十七年の、二十八年のうちの一年半なんてほんの少しだ」
「…なら、灰原は誰との縁ならあるんだ?」
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