言葉が足りないし、頭が固いあの日から灰原に避けられている。そうでなくても彼と何を話せばいいかわからない。手詰まりになった七海は、夏油に助力を願った。
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「一目惚れ以外の恋の始まりもあるんだよ」
七海から相談を受けた夏油は灰原と話をした結果、二人の価値観の違いに切り込むことにした。
「恋愛は必ずしもロマンチックな物ではないからね。一緒にいて少しずつ育っていく愛もあるんじゃないかな」
夏油の言葉に灰原は不満気に口を開く。
「僕は、はじめて会った時から七海のことが好きだったのに」
「先に惚れた方が負けだよ、灰原」
好きになるまでのタイムラグ。多分だが灰原は直感で互いの相性を理解していて、七海は気がつくのが遅かった。
「ほぼ同時に会った五条さんには惚れてたくせに」
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